オージオグラムに関する規則
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改訂版 – 2018年3月14日
コピーライト: © 2018 International Committee of Sports for the Deaf
この文書はICSDによって作成され、同機関が所有権を有する。
目 次
- 前文
- 参加資格に関する規則
- 定義とろうであることの証明
- オージオグラム承認の提出手順
- デフリンピックおよびその他ICSD認定競技大会において
- 選手の自己責任
- 発覚
- 違反と罰則
- 機密事項
- オージオグラム・データベースで使用されている重要な記号
1. 前文
スポーツ精神とは、人間の精神・肉体・心を祝し、以下の価値観によって特徴づけられるものである:
- 倫理感、フェアプレイ、正直さ
- 健康
- すぐれたパフォーマンス
- 人格と教育
- 楽しみと喜び
- チームワーク
- 専心と献身
- 規則や規約の遵守
- 自身および他の参加者の尊重
- 勇気
- コミュニティと連帯
ICSDは、PER LUDOS AEQUALITAS 「スポーツによる平等」というオリジナルのモットーを掲げ、 オリンピック精神の本質をろう者とわかちあう。
夏季・冬季デフリンピックおよび世界選手権、地域選手権、その他ICSD認定競技大会には、ろうおよび難聴の選手だけが参加することができる。
正会員、準会員、地域連盟および賛助会員は、地域別および国際スポーツイベントにおいて、以下のオージオグラム規則を遵守する。
2. 参加資格に関する規則
夏季・冬季デフリンピック、世界選手権、地域選手権、その他ICSD認定競技大会は、加盟団体である全国ろう者スポーツ協会のろうの選手が集結する場である。
デフリンピックおよびその他のICSD認定競技大会の参加者は、以下のとおりでなければならない:
- 良耳の平均聴力レベル(PTA)が55dB以上の聴覚障害を有する(500, 1000, 2000ヘルツの三つの純音平均聴力レベル、気導、ISO1969基準)ろう者であること。
- 加盟団体である全国ろう者スポーツ協会の会員であり、その国の国民であること。
選手は、禁止エリア内でのウォームアップおよび試合中には、いかなる補聴機器、増幅器および人工内耳体外装置の装着も厳しく禁止されている。スポーツ競技において、音の増幅器の使用が、使用していない者よりも有利に作用することは明白である。そのため、ウォームアップならびに試合中は使用が禁止されている。「禁止エリア」は、各々の競技において定義されている。詳細は、各競技の技術規則を参照のこと。
3. 定義とろうであることの証明 | |
3.1. | 「ろう」とは、良耳の平均聴力レベルが55dB以上の聴力障害を有することと定義される(500, 1000, 2000ヘルツの三つの音の周波数平均、ISO1969基準)が、55-65dBの境界域の 聴力については、慎重に審査すること。 |
3.2. | 選手が片耳に人工内耳を装着している場合には、その耳については検査をする必要はないが、オージオロジストは人工内耳が装着された耳がどちらであるかを明確にオージオグラムシートに記載しなければならない。 選手は人工内耳を装着していない耳については検査を受ける必要がある。 |
3.3. | 各選手の聴力検査の確認とその個々のオージオグラムについての正確さと誠実性については、各国ろう者スポーツ協会が全責任を負う。 |
3.4. | 初参加の選手は、ICSD公式オージオグラムの書式を用いなければならない。書式はインターネット(http://www.deaflympics.com/audiogramform.php)からダウンロードできる。 |
3.5. | オージオグラム検査は、以下の4項目の全てがそれぞれの耳について完全に記載されなくてはならない。 1. 気導 250Hz – 8kHz 2. 骨導 500Hz, 1kHz, 2kHz, 4kHz 3. ティンパノグラム(ティンパノメトリー) 音量 圧 コンプライアンス 4. 耳小骨筋反射(リフレクソメトリー) 同側 反対側 適切な検査が行われない場合には、承認が遅れることになる。 |
3.6. | 全てのオージオグラムは、正当と認められ、検査を受けた選手自身のものである。その有効性については、各国ろう者スポーツ協会が保障しなければならない。 |
4. オージオグラム承認の提出手順 | ||||||||||||||||||
4.1. | 競技前: | |||||||||||||||||
4.1.1 | 新しいオージオグラムを提出する前にICSD事務局(office@ciss.org)に連絡し、当該選手 がすでにICSDのオージオグラムデータベースの中に登録されているかどうか、自国の最新リストを確認する。もしリストに選手名がない場合、ICSD事務局はその選手のオージオグラムデータを保有していないことを意味する。 | |||||||||||||||||
4.1.2 | いかなるICSD認可の競技大会(夏季/冬季デフリンピック、世界選手権、地域選手権を含む)においても、全ての新しいオージオグラムは大会の3ヶ月前までに提出されなければならず、かつ1年以内のデータでなければならない。 | |||||||||||||||||
4.1.3 | 新規参加選手のオージオグラム提出遅滞の罰金は、書式受領日を基準に1書式・選手あたり40米ドル(競技前3ヶ月未満)、また1書式・選手あたり100米ドル(競技前1ヶ月未満)となる。 | |||||||||||||||||
4.1.4 | 新規参加選手の競技初日にオージオグラムが未提出の場合には、試合参加は認められない。 | |||||||||||||||||
4.1.5 | すべての 新しいオージオグラムは、各国のろう者スポーツ協会によってのみ、直接ICSD事務局に送付されなくてはならない。 | |||||||||||||||||
4.1.6 | 受領されたオージオグラムはICSDのデータベースに入力され、「自国検査済み」であることを示す「N」(国内)と入力される。 | |||||||||||||||||
4.1.7 | 3.5に規定されたとおりに全ての記入がされていない場合、完全な情報を記載して再提出されるまで、そのオージオグラムは「INC」(不完全)と入力される。提出が3ヶ月未満となった場合には、提出遅滞料金40または100米ドルを支払うものとする。 | |||||||||||||||||
4.1.8 | 次に、オージオグラムは更なる確認のためICSDオージオロジストへ送付される。 | |||||||||||||||||
4.1.9 | ICSDオージオロジストは承認するものと危険/境界線上にあるものとを明示する。 | |||||||||||||||||
4.1.10 | 承認されたオージオグラムは、ICSDオージオロジストによってのみ「N」から「C」(CISS)に変更される。 | |||||||||||||||||
4.1.11 | 「X」記号の「危険」な選手、または「N」記号の自国検査のみの選手は、ICSDオージオロジストによって夏季・冬季デフリンピック、世界選手権、地域選手権、その他ICSD認定競技大会期間中に再検査される。 | |||||||||||||||||
4.1.12 | 平均聴力レベル55dB以上という資格要件に当てはまらない選手は「DQ」記号で参加資格なしと判定され、書式受領日から最低2年間はオージオグラムを再提出できない。 | |||||||||||||||||
4.2. | 最終登録用紙: | |||||||||||||||||
4.2.1 | 最終登録用紙には「選手のID番号」欄がある。 | |||||||||||||||||
4.2.2 | オージオグラムがICSDのデータベースに既に登録されている選手は、全国ろう者スポーツ協会が該当箇所に選手のID番号を入力する。これらの選手は、改めてオージオグラムを提出する必要はない。以下の例参照。
上の例では、 DOE, John と SHARP, Alfred はICSDのデータベースにオージオグラムが登録されているが、SMITH Davidは登録されていないことを示している。 |
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4.2.3 | オージオグラムのデータベース上、不十分であることを示す「INC」あるいは資格がないことを示す「DQ」が記載されている場合には、参加は許可されない。 | |||||||||||||||||
4.2.4 | オージオグラムを提出していない者には参加資格が与えられない。 |
5. デフリンピックおよびその他ICSD認定競技大会において | ||
5.1. | オージオグラム・データベース上、その選手が各国のオージオロジストによって検査されたことを示す「N」である場合、当該選手は夏季・冬季デフリンピック、世界選手権、地域選手権、その他ICSD認定競技大会期間中に、ICSDのオージオロジストによって再検査される場合がある。 | |
5.2. | 新規登録選手(「N」ステータス)の予備的聴力検査が、ICSD認定の全ての大会と予選、地域大会および世界大会を問わずに行われる。ICSDは全ての大会に対し、ICSD公認オージオロジストを派遣できる。予備的聴力検査は選手が試合に来る前に行われなければならない。ICSDは1人または2人の公認オージオロジストをデフリンピックおよびいくつかの地域・世界選手権のために選任する。 | |
5.3. | 非公認のオージオロジストがICSD認定の大会にいた場合、その検査はICSDオージオグラム検査規則に則って行う。そのオージオロジストは選手のオージオグラムステータスを「N」から「C」に変更することはできない。その選手も検査機関に行き、最新の聴覚検査技術(携帯検査機器)を使用した検査対象となる。ICSD執行理事代表は、聴力レベルの詐称の有無を検査するためにその場で新規登録選手(「N」ステータス)を選ぶことができる。万一、不正や疑惑が検査中に見つかった場合には、当該選手は病院の聴覚センターで更なる検査を受け、その費用は選手が所属する全国ろう者スポーツ協会が負担する。 | |
5.4. | 現場で検査を受けて「境界線上」と判定され、参加資格基準に適合しない選手は、PTA(純音平均)が参加資格要件から5デシベル以内であることが明らかになっていれば、再度検査を受けることができる。一度だけICSDオージオロジストにより資格認定以前の別の日程で検査を受ける。 | |
5.5. | ICSDの公認オージオロジストによって検査・認証を受けた選手は「V」と表示される。 | |
5.6. | ICSDは、以前に承認を受けている選手であっても、いつでも検査、再検査を行う権利を有する。 | |
5.7. | 選手の聴力の資格基準に疑義が持たれる場合、ICSDはまず選手のオージオグラム・データベースを、下記の要領に従って調べる。 | |
5.7.1 | 当該選手が「V」で示されている場合は既にICSDによって検査されているため、その場のオージオロストがこれ以上の検査を行う必要はない。 | |
5.7.2 | 当該選手が「C」「N」もしくは「X」で示されている場合は、過去にICSDによる検査がなされていないため、オージオロジストは必ずこの選手の検査を行う必要がある。 | |
5.8. | オージオグラム検査は、試合のスケジュールを邪魔したり、変更させたりしてはならない。 | |
5.9. | 選手管理の下、検査時間の確保はチームリーダーの責任である。 | |
5.10. | 当該選手のチームリーダーは、検査を受ける選手とともに決められた時間にICSDオージオロジストと会う。その選手と同行者は各自のパスポートを持参しなければならない。 | |
5.11. | 予約を守らなかった場合、料金が課せられる。 | |
5.12. | オージオグラム規則にしたがって検査を受けずに大会終了時に去った選手は、参加資格を失う。 |
6. 選手の自己責任 | |
6.1. | ウォームアップ中ならびに試合中にいかなる補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置も禁止エリア内で装用しないようにすることは、各選手の完全なる自己責任である。 |
6.2. | 試合会場に入る際、全ての選手はいかなる補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置の装着を認められない。全ての選手は、試合前の最終練習の間に、補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置をはずさなければならない。 |
7. 発覚 | |
7.1. | 聴力機器類の使用 ウォームアップ中ならびに試合中に、禁止エリア内で選手が補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置を装用していることが発覚した場合、ただちに、当該競技の技術委員と異議申し立て委員会にその旨を報告しなければならない。 当該試合において承認を受けているリーダーおよびトレーナーだけが、補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置の装用について、公式な異議申し立て文書を提出することができる。 異議申し立て文書と共に、日時が刻印されたビデオによる、追加の証拠を作成しなければ ならない。伝聞による証拠は作成できない。 |
7.2. | 参加資格認定期間中の聴力検査 選手が55dB以上の平均聴力レベルに適合しないことが、デフリンピックまたは地域・世界選手権においてICSDオージオロジストによって判明した場合、またはその大会のために任命されたオージオロジストにより判明した場合、当該選手は参加資格を得ることができない。選手が役割を「役員」等に変更しても、いかなる形の参加資格をも与えられない。 |
7.3. | 異議申し立てもしくはICSD役員の選出による聴力検査 競技者が55dB以上の聴力障害を有していないことが、ICSDのオージオロジストによって判明した場合、当該選手は参加資格を剥奪される。また、当該選手の出場したすべての競技において、失格とされる。当該選手が団体競技に出場していた場合、それまで出場していた試合は没収試合とされ、そのスコアは国際スポーツ連盟(ISF)の規則に従って没収される。 |
8. 違反と罰則 | ||
8.1. | 違反: | |
8.1.1 | 個人競技の選手が補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置を装着している場合は、当該選手は即時に競技から除外されなければならない。当該選手が同じ競技で他の種目や、別の競技にも出場している場合には、違反が行われた種目についてのみ失格となる。 例A:陸上競技:選手が100m、200m、400mに登録している。その選手は200mのレース中に補聴器/増幅器の装着が発覚した。この選手は200mは失格となるが、100mと400mレースには影響はない。リレーで違反が行われた場合には、チーム全員がそのレースを失格となる。 例B:バドミントン:選手がシングル、ダブルス、ミックスダブルスに登録している。その選手は、ダブルスでの補聴器/増幅器の装着が発覚した。当該選手はダブルスのみ失格となり、シングルスとミックスダブルスには影響しない。もし違反がチーム競技で行われた場合には、チーム全員がその種別は失格となる。 |
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8.1.2 | チーム競技の選手が競技中に補聴器/増幅器ないしは人工内耳体外装置を装用していた場合、各競技の試合没収に関する規則に従い試合が没収され、チームは負けとなる。選手は、次の試合には自由に出場することができる。しかし、試合の得点状況によっては、負けることがかえってそのチームにとって有利になる場合がある。このことも考慮にいれ、チームが没収試合の敗戦によって逆に有利になることが決してないようにしなければならない。 | |
8.1.3 | 同じ選手が違反を繰り返した場合、当該選手とチームは、即座に試合から除外されると同時にICSD事務総長に報告され、執行委員会が定める一定期間出場停止になる。 | |
8.2. | 罰則: | |
8.2.1 | これらの規則に違反した場合、技術委員とICSD役員はすべての違反をICSD事務総長に報告する。失格した選手と(あるいは)そのチームに授与されたすべての賞品、賞、メダル、証書が取り消され返還される。更にICSD執行委員の決議に基づき、1000米ドルの罰金が課される。 | |
8.2.2 | いずれかの全国ろう者スポーツ協会が、2度以上、本規則3.1、3.2、3.6の規定違反をした場合、ICSD執行理事会は、当該全国ろう者スポーツ協会に対し認定競技大会への2年間の出場停止を言い渡す場合がある。 | |
8.2.3 | 出場資格を失っている期間中は、その全国ろう者スポーツ協会とその国のチームは、ICSD認定の競技大会に出場することはできない。 |
9. 機密事項
データや選手個人情報は機密扱いにしなければならない。管理スタッフも同時に選手のデータの機密性の維持において誠実に細心の注意を払うことを確実にするために注意深い管理が必要となる。参加者の機密性を保護し、尊重するために適切な予防措置というのは:
- 個人情報を公にすることのない漏洩発見リサーチ
- リサーチ記録の確実な保存と権限保持者のみの限られたアクセス
- 個人情報の削除、隠秘、コード化
ICSD理事会、ICSD事務局スタッフ、地域ろう者スポーツ連盟、各国ろう者スポーツ協会、国際ろう者スポーツ連盟を含むICSD関係者全てが、選手の医学的記録の機密性を保持することを求められる。各国ろう者スポーツ協会が受領している全ての選手の記録は機密扱いとされ、情報が非特定化され統計や概要データとしての目的以外では、受領者の書面での同意なしに開示されない。
10. オージオグラム・データベースで使用されている重要な記号 | ||
PTA – | 平均聴力レベル、純音平均 | |
dB – | デシベル | |
V – | ICSDのオージオロジストによって検査され、有効とされた選手 | |
C – | ICSDのオージオロジストによって確認され、承認されている申請書 | |
R – | 地域のオージオロジストによって承認されている「地域検査済み」 | |
N – | 自国のオージオロジストによって審査、承認されている | |
X – | 危険/境界線上 | |
DQ – | 平均聴力 55 dBの基準を満たしておらず失格 | |
INC – | オージオグラムが不完全。詳細は 3.5参照 | |
TD – | 技術役員 | |
ICSD – | 国際ろう者スポーツ委員会 |