ICSD アンチ・ドーピング規則
この資料を PDFでダウンロード | 原文へのリンク
ICSDアンチ・ドーピング規則は、2004年に第1版が発行され、2006年、2009年、2013年に修正がなされた、ICSDアンチ・ドーピング規則の改訂版である。本ICSDアンチ・ドーピング規則改訂版は、2015年3月1日、ICSD執行委員会で承認を受けた。
目 次
前文
第1条―ドーピングの定義
第2条―アンチ・ドーピング規則違反
第3条―ドーピングの証拠
第4条―禁止リスト
第5条―検査およびドーピング捜査
第6条―検体の分析
第7条―結果管理
第8条―公正なヒアリングに参加する権利
第9条―個人結果の自動的失効
第10条―個人に対する制裁措置
第11条―チームに対する措置
第12条―国のスポーツ団体に対する制裁措置と負担
第13条―不服申立て
第14条―守秘義務及び報告
第15条―決定の適用及び承認
第16条―ICSDのドーピング防止規則の編入および国内競技連盟の義務
第17条―時効
第18条―ICSDによるWADAへの通知義務
第19条―教育
第20条―アンチ・ドーピング規則の修正および解釈
第21条―世界アンチ・ドーピング規定の解釈
第22条―競技者又はその他の人の追加的な役割及び責務
付録1―定義集
付録2―第10条の適用事例
付録3―同意書
※本規程を翻訳するにあたっては、日本アンチ・ドーピング規程に従い、専門用語を訳しました。
(訳注:参照サイト)2016年4月9日現在
・World Anti-Doping Code, World Anti-Doping Agency.
・日本アンチ・ドーピング機構.
国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)は、世界のろう者のすべてのスポーツおよび、デフリンピック運動、とりわけ夏季デフリンピック・冬季デフリンピックの国際統括組織である。その会員として、国内ろう者スポーツ連盟(NDSFs)、国際ろう者スポーツ連盟(IDSFs)、国際連盟および地域ろう者スポーツ連合がある。
ICSDは、夏季デフリンピック・冬季デフリンピック、ろう者世界選手権大会、およびろう者ユース世界選手権大会を監督・調整する。
ICSDは、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が推進する世界アンチ・ドーピング・プログラムを支援し、世界アンチ・ドーピング規程の受け入れを、2006年2月26日に承諾する署名をしている。
ICSDは、ろう社会におけるドーピング撲滅の戦いに寄与することを期待し、世界アンチ・ドーピング規程(Code、以下「規程」)の基本原則に則り、ICSDアンチ・ドーピング規則(Rules、以下「規則」)を作成した。本規則に記されるICSD規則及び規程の国際基準は、本規則を補完するものである。
本規則は、スポーツをプレーする状況において統括をする規則である。国際的かつ調和のとれた方法で、アンチ・ドーピングの原則を進めることを目的とした本スポーツ規則は、刑事・民事法とは性質を異にし、このような手続き行程に該当する、いかなる国内の強制力や法基準の拘束下、もしくは制約を受けることを意図するものではない。すべての事実や事例を検討するにあたり、すべての法廷、仲裁機関、その他判決を下す機関は、WADA規程の内容を実効化する本規程の、特化した本質を理解、尊重するものとし、また本規則は、公正なスポーツを保護および保障するための、世界各地のさまざまな立場の当事者の合意を表すものである
世界アンチ・ドーピング規程の基本原理
アンチ・ドーピング・プログラムの目標は、スポーツ固有の価値を保護することである。これは、「スポーツの精神」と呼ばれる。これは、デフリンピック運動の真髄でもあり、各人に自然に備わった才能を磨き上げることを通じ、人間の卓越性を追求することでもある。これにより、我々は「プレイ・トゥルー」の精神を実現する。スポーツの精神は、人間の魂、身体及び心を祝福するものであり、次に掲げる事項を含む、スポーツに内在し、スポーツを通して実現する価値に反映されている。
- 倫理観、フェアプレーと誠意
- 健康
- 卓越した競技能力
- 人格と教育
- 楽しみと喜び
- チームワーク
- 献身と真摯な取組み
- 規則・法を尊重する姿勢
- 自分自身とその他の参加者を尊重する姿勢
- 勇気
- 共同体意識と連帯意識
本規則の適用
アンチ・ドーピング規則は、競技規則と同様に、スポーツ競技が実施される条件を司るものである。すべての参加者(競技者及び競技者の支援者)は、参加の条件としてこれらの規則を受け入れ、それに従わなければならない。本規則は、デフリンピックおよび、ICSDが管轄し、そのためICSDがアンチ・ドーピングの権限を有するすべての大会・競技会、ならびに競技会の準備期間にも適用される。
すべての競技者ならびに、このような大会にコーチ、トレーナー、マネージャー、チームスタッフ、役員、医療スタッフとして参加するサポートスタッフ各位は、参加の条件として、本規則に従うことに同意する。
団体に向けて:
本規則は、ICSDがデフリンピック運動の国際監督組織として行動する際に適用される。ICSD会員国は、WADA規程を実効化し、かつ本規則に整合した、各自のアンチ・ドーピング規則を定め、遵守する。
– NDSF諸団体
– 地域連盟
– IF諸団体およびlDSF諸団体
(訳注:「NDSF諸団体」とは国内ろう者スポーツ連盟を意味し、ICSDに加盟している世界各国のろう者スポーツ全国組織を指す。日本では一般財団法人全日本ろうあ連盟スポーツ委員会がこれにあたる。)
本規則はまた、ICSDが主要な大会組織として活動する際、たとえば夏季/冬季デフリンピック、世界ろう者選手権大会、地域ろう者選手権大会(以後「選手権大会」は、ICSD世界選手権・地域選手権とも関連する)、およびその準備期間も含めて適用される。ICSDが国際連盟としてではなく、主要競技会機関として行動する場合、主要競技会機関に特定して適用されるWADA規程の条項は、参照によって全面的に組み込まれて適用されるものとし、従って、本規則の中で、とりわけ国際競技連盟にとって、対立もしくは該当しないいかなる条項も適用されず、かつ本規則の一部ではないものとして取り扱われる。
個人に向けて:
本規則は、以下の競技者、サポートスタッフ、その他個人に対し、本規則に従うことを承認することと(および、第8条および第13条に定められるように、本規則の施行と聴聞会の管轄、また本規則の下での聴聞および上訴に対する決定におけるICSDの権限を認める)が、会員ステータス、アクレディテーションおよび/また競技への参加の条件として適用される。
a) ICSD会員、もしくはICSD会員団体の会員、ICSD会員団体の傘下団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)であるすべての競技者およびサポートスタッフ
b) ICSDが管轄し、かつICSDがアンチ・ドーピングの権限を有する大会およびその他の活動に参加するすべての競技者およびサポートスタッフ、もしくは場所を問わず、ICSDが会員もしくは提携団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)になっているもの
c) その他すべての競技者もしくはサポートスタッフ、またはアクレ、ライセンス、もしくは契約合意書を有するその他個人は、アンチ・ドーピングを目的として、ICSD、もしくはあらゆるICSD会員、ICSDが会員もしくは傘下団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)になっているものの管轄下にあり、かつ:
d) ICSDの一般会員ではない競技者、または、ICSD会員団体の会員ではない競技者、特定の国際大会への出場資格を得たい競技者。ICSDはそのような競技者を検査対象者協力リストに載せることで、本規則の下での検査のため、居場所情報を提出するよう求めるものとする。
ICSDが管轄する大会の参加資格を得るためには、競技者はICSDが発行するICSDのID(登録番号)を持たなければならない。
本規則の適用を目的とし、上記a)からd)の事項に記述されているすべての競技者は、国際レベルの競技者と見なされることになる。
ICSDアンチ・ドーピング規則の運営
ICSD執行委員会
ICSD執行委員会は、本規則およびすべての改訂を承認するものとし、本規程が定める、さらなる責務を行使する。 ICSDの執行委員会は、ドーピングと闘い、アンチ・ドーピング規則の違反の管理、国際的に認められている規則とアンチ・ドーピング規程に従うための政策、方針、プロセスなどを策定する責任を負う。また、ICSD執行委員会の構成員は、ICSDが結果の管理権限を行使する場合、聴聞機関の構成員となる。
ICSDアンチ・ドーピング委員会
ICSDアンチ・ドーピング委員会は、本規則に則って提出された、各治療使用特例(TUE)申請を評価・調査し、かつ本規則第4.4項の要件を管理運営する。
WADAのアンチ・ドーピング規程に具体的な指示がある場合を除き、本規則の実施責任は、ICSD会長が負うものとする。ICSD会長は、自らの判断において、特定の任務を他の者に委任することができる。
冒頭が大文字によって記される用語(斜体の文字で表記されている)は、付録1において解説されている。
本規則の英語版は、不特定の人物に言及する場合、すべて男性形を用いて書かれているが、特に断りがない限り、すべての条項は女性にも適用される。
第1条―ドーピングの定義 ドーピングとは、本規則の第2.1項から第2.10項に定められている1つ又は2つ以上のアンチ・ドーピング規則に対する違反が発生することをいう。 |
第9条―個人の成績の自動的失効 個人スポーツにおける競技会(時)検査に関してアンチ・ドーピング規則違反があった場合には、当該競技会において得られた個人の成績は、自動的に失効し、その結果として、当該競技会において獲得されたメダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。 |
第17条―時効 アンチ・ドーピング規則違反が発生したと主張された日から10年以内に、競技者又はその他の人が第7条の定めに従いアンチ・ドーピング規則違反の通知を受けなかった場合、又は通知の付与が合理的に試みられなかった場合には、当該競技者又はその他の人に対してアンチ・ドーピング規則違反の手続は開始されないものとする。 |
第18条―ICSDによるWADAへの通知義務 ICSDは、WADA規程第23.5.2項に従って、ICSDによるドーピング防止規程の遵守状況をWADAに報告する。 |
第19条―教育 ICSDは少なくとも、WADA規程第18.2項においてドーピングのないスポーツを目指して掲げる事項についての情報・教育・防止プログラムを計画、実行、評価、かつ監督し、競技者およびサポートスタッフがこれらのプログラムに積極的に参加するよう支援するものとする。 |
「ADAMS(Anti-Doping Administration and Management System、ドーピング防止管理運営システム)」とは、情報保護に関する法とあいまって、関係者及び WADAのドーピング防止活動を支援するように設計された、データを入力し、保存し、共有し、報告するためのウェブ上のデータベースによる管理手段をいう。
Administration(投与)とは、他の人による、禁止物質又は禁止方法の、提供、供給、管理、促進、その他使用又は使用の企てへの参加をいう。但し、当該定義は、真正かつ適法な治療目的その他認められる正当理由のために使用された禁止物質又は禁止方法に関する誠実な医療従事者の行為を含まないものとし、又、当該禁止物質が真正かつ適法な治療目的のために意図されたものでないこと若しくは競技力を向上させるために意図されたものであることについて状況全体から立証された場合を除き、当該定義は、競技会外の検査において禁止されない禁止物質に関する行為を含まないものとする。
Adverse Analytical Finding(違反が疑われる分析報告)とは、WADA 認定分析機関又は「分析機関に関する国際基準」及びこれに関連するテクニカルドキュメントに適合するWADA 承認分析機関からの報告のうち、禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーの存在(内因性物質の量的増大を含む。)が検体において確認されたもの、又は禁止方法の使用の証拠が検体において確認されたものをいう。
Adverse Passport Finding「アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告」とは、適用のある国際基準において記載されているアスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告として特定された報告をいう。
Anti-Doping Organization(ドーピング防止機関)とは、ドーピング・コントロールの過程に関する規則を採択し、ドーピング・コントロールの過程の開始、実施、又は執行に責任を負う署名当事者をいう。具体例としては、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、その他の主要競技大会機関であって自己の競技大会において検査を実施する団体、WADA、国際競技連盟、国内ドーピング防止機関等が挙げられる。
Athlete(競技者)とは、国際レベル(定義については各国際競技連盟が定める。)又は国内レベル(定義については各国内アンチ・ドーピング機関が定める。)のスポーツにおいて競技するすべての人をいう。アンチ・ドーピング機関は、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のいずれでもない競技者につき、アンチ・ドーピング規則を適用することによりこれらの者を「競技者」の定義に含める裁量を有する。国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のいずれでもない競技者につき、アンチ・ドーピング機関は以下の事項を行う選択権を有する。限定した検査を行い若しくは検査を行わないこと、すべての禁止物質を対象として網羅的に分析するのではなく、その一部について検体分析を行うこと、限定的な居場所情報を要請し若しくは居場所情報を要請しないこと、又は、事前のTUE を要請しないこと。但し、アンチ・ドーピング機関が、国際レベル又は国内レベルに至らずに競技する競技者につき権限を有し、当該競技者が第2.1 項、第2.3 項又は第2.5 項のアンチ・ドーピング規則違反を行った場合には、本規程に定める措置(但し、第14.3.2 項を除く。)が適用されなければならない。第2.8 項及び第2.9 項並びにアンチ・ドーピング情報及び教育との関係では、本規程を受諾している署名当事者、政府その他のスポーツ団体の傘下において競技に参加する人は、競技者に該当する。
[「競技者」の解説:本定義は、国際レベルの競技者及び国内レベルのすべての競技者に対して本規程のアンチ・ドーピング規則が適用される旨を明らかにするものである。なお、国際レベル及び国内レベルの競技の厳密な定義は、国際競技連盟及び国内アンチ・ドーピング機関のアンチ・ドーピング規則が各々定める。また、上記の定義は、国内アンチ・ドーピング機関が、適切であると判断した場合に、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のみならず、より低い水準の競技会における競技参加者及びフィットネス活動を行うが競技会には全く出場しない個人に対しても自己のアンチ・ドーピング・プログラムの適用範囲を拡大することをも認めている。よって、例えば、国内アンチ・ドーピング機関は、レクリエーション・レベルの競技参加者を検査するが、事前のTUE を要請しないよう、選択することができる。但し、違反が疑われる分析報告又は不当な改変に関するアンチ・ドーピング規則違反は、本規程に定めるすべての措置(但し、第14.3.2 項を除く。)をもたらす。フィットネス活動に従事するものの、競技会に参加しないレクリエーション・レベルの競技参加者に、措置が適用されるか否かの決定は、国内アンチ・ドーピング機関に委ねられる。同様に、マスター・レベルの競技参加者のためのみに競技大会を開催する主要競技大会機関は、競技参加者を検査するが、すべての禁止物質を対象とする網羅的な検体分析を行わないことを選択することができる。競技水準の如何に拘らず、競技参加者がアンチ・ドーピング関連の情報及び教育を受けられるようにしなければならない。]
Athlete Biological Passport(アスリート・バイオロジカル・パスポート)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」及び「分析機関に関する国際基準」において記載される、データを収集及び照合するプログラム及び方法をいう。
Athlete Support Personnel(サポートスタッフ)とは、スポーツ競技会に参加し、又は、そのための準備を行う競技者と共に行動し、治療を行い、又は、支援を行う指導者、トレーナー、監督、代理人、チームスタッフ、オフィシャル、医療従事者、親又はその他の人をいう。
Attempt(企て)とは、アンチ・ドーピング規則違反に至ることが企図される行為の過程における実質的な段階を構成する行動に意図的に携わることをいう。但し、企てに関与していない第三者によって察知される前に人が当該企てを放棄した場合には、違反を行おうとした当該違反の企てのみを根拠としてアンチ・ドーピング規則違反があったことにはならない。
Atypical Finding(非定型報告)とは、違反が疑われる分析報告の決定に先立ってなされる、「分析機関に関する国際基準」又はこれに関連するテクニカルドキュメントに規定された更なるドーピング捜査を要求する旨の、WADA 認定分析機関又はその他のWADA 承認分析機関からの報告をいう。
Atypical Passport Finding(アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告)とは、該当する国際基準において、アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告として記載される報告をいう。
CAS(The Court of Arbitration for Sport)とは、スポーツ仲裁裁判所をいう。
Code(規程)とは、世界アンチ・ドーピング防止規程(The World Anti-Doping Code)をいう。(訳注:JADAの訳文では、この箇所は「本規程」となっているが、ICSD規則との混同を避けるため、ICSD規則では、原則として「規程」もしくは「WADA規程」と訳する)
Competition(競技会)とは、一つのレース、試合、ゲーム又は単独のスポーツでの競争をいう。具体例としては、バスケットボールの試合又はオリンピックの陸上競技100 メートル走の決勝戦が挙げられる。段階的に進められる競争及びその他のスポーツ競技のうち日々又はその他の中間的な基準で賞が授与されるものについては、適用される国際競技連盟の規則において競技会と競技大会との区別が定められる。
Consequences of Anti-Doping Rule Violations(アンチ・ドーピング規則違反の措置)(「措置」)とは、競技者又はその他の人がアンチ・ドーピング規則違反を行った場合に、次に掲げるもののうちの一又は二以上の措置が講じられることをいう。(a) Disqualification(失効)とは、特定の競技会又は競技大会における競技者の成績が取り消されることをいい、その結果として、獲得されたメダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。(b) Ineligibility(資格停止)とは、一定期間にわたって、競技者又はその他の人に対して、アンチ・ドーピング規則違反を理由として、第10.12.1 項の規定のとおり、競技会若しくはその他の活動への参加が禁止され、又は資金拠出が停止されることをいう。(c) Provisional Suspension(暫定的資格停止)とは、第 8 条の規定に従って開催される聴聞会において終局的な判断が下されるまで、競技者又はその他の人による競技会への参加又は活動が暫定的に禁止されることをいう。(d) Financial Consequences(金銭的措置)とは、アンチ・ドーピング規則違反を理由として賦課される金銭的制裁措置又はアンチ・ドーピング規則違反に関連する費用回収をいう。(e) Public Disclosure or Public Reporting(「一般開示」又は「一般報告」)とは、一般公衆又は第14条に基づき早期通知の権利を有する人以外の人に対する情報の拡散又は伝達をいう。チームスポーツにおけるチームもまた、第11条に定めるとおり措置に服する場合がある。
Contaminated Product(汚染製品)とは、製品ラベル及び合理的なインターネット上の検索により入手可能な情報において開示されていない禁止物質を含む製品をいう。
Disqualification(失効)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の結果(Consequences of Anti-Doping Rule Violations)」を参照すること。
Doping Control(ドーピング・コントロール)とは、居場所情報の提出、検体の採取及び取扱い、分析機関における分析、TUE 、結果の管理並びに聴聞会を含む、検査配分計画の立案から、不服申立ての最終的な解決までのすべての段階及び過程をいう。
Event(競技大会)とは、単一の所轄組織の下で実施される一連の個別競技会のことをいう(例、オリンピック大会、FINA 世界選手権大会、パンアメリカン大会)。
Event Venues(競技大会会場)とは、競技大会の所轄組織により指定された会場をいう。
Event Period(競技大会の期間)とは、競技大会の所轄組織により定められた、競技大会の開始と終了の間の時間をいう。
Fault(過誤)とは、義務の違反又は特定の状況に対する適切な注意の欠如をいう。競技者又はその他の人の過誤の程度を評価するにあたり考慮すべき要因は、例えば、当該競技者又はその他の人の経験、当該競技者又はその他の人が18 歳未満の者であるか否か、障がい等の特別な事情、当該競技者の認識すべきであったリスクの程度、並びに認識されるべきであったリスクの程度との関係で当該競技者が払った注意の程度及び行った調査を含む。競技者又はその他の人の過誤の程度を評価する場合に考慮すべき事情は、競技者又はその他の人による期待される行為水準からの乖離を説明するにあたり、具体的で、関連性を有するものでなければならない。そのため、例えば、競技者が資格停止期間中に多額の収入を得る機会を失うことになるという事実や、競技者に自己のキャリア上僅かな時間しか残されていないという事実又は競技カレンダー上の時期は、第10.5.1 項又は第10.5.2 項に基づき資格停止期間を短縮するにあたり関連性を有する要因とはならない。
[解説:競技者の過誤の程度を評価する基準は、過誤が考慮されるすべての条項に共通である。但し、10.5.2 項の場合、過誤の程度を評価する際に、競技者又はその他の人に「重大な過誤又は過失がないこと」が認定される場合を除き、制裁措置を軽減することは適切ではない。]
Financial Consequences(金銭的措置)について、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
In-Competition(競技会(時))とは、国際競技連盟又は該当する競技大会の所轄組織の規則に別段の定めがない限り、競技者が参加する予定の競技会の12 時間前に開始され、当該競技会及び競技会に関係する検体採取過程の終了までの期間をいう。
Independent Observer Program(インディペンデント・オブザーバー・プログラム)とは、オブザーバー・チームが、WADA の監督下で、特定の競技大会におけるドーピング・コントロールの過程を監視し、ドーピング・コントロールの過程について助言を提供し、監視事項に関して報告を行うことをいう。
Individual Sport(個人スポーツ)とは、チームスポーツ以外のスポーツをいう。
Ineligibility(資格停止)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置(Consequences of the Anti-Doping Rules Violations)」を参照すること。
International Event(国際競技大会)とは、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、国際ろう者スポーツ委員会、国際競技連盟、主要競技大会機関又はその他の国際的スポーツ団体が当該競技大会の所轄組織であるか、又は、当該競技大会に関してテクニカルオフィシャルを指名している競技大会又は競技会をいう。
International-Level Athlete(国際レベルの競技者)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に適合し、各国際競技連盟の定義する、国際レベルにおいて競技する競技者をいう。
International Standard(国際基準)とは、WADA規程を支持する目的でWADA によって採択された基準をいう。(他に採りうる基準、慣行又は手続とは対立するものとして)国際基準を遵守しているというためには、国際基準に定められた手続を適切に実施していると判断されることが必要である。国際基準は、国際基準に基づき公表されたテクニカルドキュメントを含むものとする。
Major Event Organizations(主要競技大会機関)とは、国内オリンピック委員会の大陸別連合及びその他の複数のスポーツを所轄する国際的な機関であって、大陸、地域又はその他の国際競技大会の所轄組織として機能する機関をいう。
Marker(マーカー)とは、化合物、化合物の集合体又は生物学的変数であって、禁止物質又は禁止方法の使用を示すものをいう。
Metabolite(代謝物)とは、生体内変化の過程により生成された物質をいう。
Minor(18 歳未満の者)とは、18 歳に達していない自然人をいう。
National Anti-Doping Organization(国内アンチ・ドーピング機関)とは、国内において、アンチ・ドーピング規則の採択及び実施、検体採取の指示、検査結果の管理並びに聴聞会の実施に関して第一位の権限を有し、責任を負うものとして国の指定を受けた団体をいう。関連当局によって当該指定が行われなかった場合には、当該国の国内オリンピック委員会又はその指定を受けた者が国内アンチ・ドーピング機関となる。
National Event(国内競技大会)とは、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者が参加する競技大会又は競技会のうち国際競技大会に該当しないものをいう。
National Federation(国内競技連盟)とは、ICSDの会員である、もしくはICSDから当該国内もしくは地域のスポーツを統括する団体として認知された、国内もしくは地域のスポーツ団体をいう。
National-Level Athlete(国内レベルの競技者)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に適合する、各国内アンチ・ドーピング機関が定義する、国内レベルで競技する競技者をいう。
National Olympic Committee(国内オリンピック委員会)とは、国際オリンピック委員会公認の組織をいう。国内競技連合が国内オリンピック委員会のアンチ・ドーピングの分野における典型的な責任を負う国においては、国内オリンピック委員会は、当該国内競技連合を含むものとする。
No Fault or Negligence(過誤又は過失がないこと)とは、競技者又はその他の人が禁止物質若しくは禁止方法の使用若しくは投与を受けたこと又はその他のアンチ・ドーピング規則に違反したことについて、自己が知らず、又は、推測もせず、かつ最高度の注意をもってしても合理的には知り得ず、推測もできなかったであろう旨を当該競技者が証明した場合をいう。18 歳未満の者の場合を除き、第2.1項の違反につき、競技者は禁止物質がどのように自らの体内に入ったかについても証明しなければならない。
No Significant Fault or Negligence(重大な過誤又は過失がないこと)とは、競技者又はその他の人が、事情を総合的に勘案し、過誤又は過失がないことの基準を考慮するにあたり、アンチ・ドーピング規則違反との関連において、当該競技者又はその他の人の過誤又は過失が重大なものではなかった旨を証明した場合をいう。18 歳未満の者の場合を除き、第2.1 項の違反につき、競技者は禁止物質がどのように自らの体内に入ったかについても証明しなければならない。
Out-of-Competition(競技会外)とは、競技会(時) 以外の期間をいう。
Participant(参加者)とは、競技者又はサポートスタッフをいう。
Person(人)とは、自然人、又は組織その他の団体をいう。
Possession(保有)とは、実際に物理的に保有している状態又は擬制保有をいう(これに該当するものは、禁止物質若しくは禁止方法に対して、又は、禁止物質若しくは禁止方法が存在する場所に対して、人が排他的に支配を及ぼし、又は、支配を及ぼすことを意図している場合に限られる。)。但し、禁止物質若しくは禁止方法に対して、又は、禁止物質若しくは禁止方法が存在する場所に対して、人が排他的に支配を及ぼしていない場合には、当該人が禁止物質又は禁止方法の存在を知っており、かつ、これに対して支配を及ぼす意図があった場合のみが擬制保有に該当する。但し、人が、アンチ・ドーピング規則に違反した旨の通知(種類は問わない。)を受ける前に、アンチ・ドーピング機関に対する明確な表明により、保有の意思がなく、保有を放棄した旨を証明する具体的な行為を起こしていた場合には、当該保有のみを根拠としてアンチ・ドーピング規則違反があったことにはならない。本定義における異なる記載にかかわらず、禁止物質又は禁止方法の購入(電子的その他の方法を含む。)は、当該購入者による保有を構成する。
Prohibited List(禁止表)とは、禁止物質及び禁止方法を特定した表をいう。
Prohibited Method(禁止方法)とは、禁止表に記載された方法をいう。
Prohibited Substance(禁止物質)とは、禁止表に記載された物質又は物質の分類をいう。
Provisional Hearing(暫定聴聞会)とは、第7.9項との関係において、第8条に基づく聴聞会に先立って開催される略式の聴聞会であって、競技者に対して通知を交付し書面又は口頭で意見を聴取する機会を与えるものをいう。
Provisional Suspension(暫定的資格停止)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
Publicly Disclose or Publicly Report(「一般開示」又は「一般報告」)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
Regional Anti-Doping Organization(地域アンチ・ドーピング機関)とは、国内アンチ・ドーピング・プログラムにつき委託された領域を調整し、管理する、加盟国の指定する地域的団体をいう。国内アンチ・ドーピング・プログラムにつき委託された領域とは、アンチ・ドーピング規則の採択及び実施、検体の計画及び採取、結果の管理、TUE の審査、聴聞会の実施、並びに地域レベルにおける教育プログラムの実施を含みうる。
Registered Testing Pool(検査対象者登録リスト)とは、国際競技連盟又は国内アンチ・ドーピング機関の検査配分計画の一環として、重点的な競技会(時)検査及び競技会外の検査の対象となり、またそのため第5.6項及び「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に従い居場所情報を提出することを義務づけられる、国際競技連盟が国際レベルの競技者として、また国内アンチ・ドーピング機関が国内レベルの競技者として各々定めた、最優先の競技者群のリストをいう。
Sample or Specimen(「検体」又は「標本」)とは、ドーピング・コントロールにおいて採取された生体物質をいう。
Signatories(署名当事者)とは、第23 条に定めるとおり、WADA規程に署名し、WADA規程を遵守することに同意した団体をいう。
Specified Substances(特定物質)については、第4.2.2 項を参照すること。
Strict Liability(厳格責任)とは、アンチ・ドーピング規則違反を立証するためには、アンチ・ドーピング機関において、競技者側の使用に関しての意図、過誤、過失又は使用を知っていたことを立証しなくてもよいとする第2.1 項及び第2.2 項に基づく法理をいう。
Substantial Assistance(実質的な支援):第10.6.1項との関係において、実質的な支援を提供する人は、(1) 自己が保有するアンチ・ドーピング規則違反に関するすべての情報を署名入りの書面により完全に開示し、(2)アンチ・ドーピング機関又は聴聞パネルからの要求がある場合には、例えば、聴聞会において証言をするなど、当該情報に関する事案のドーピング捜査及び裁定に対し十分に協力しなければならない。さらに、提供された情報は、信頼できるものであり、かつ、手続が開始された事案の重大な部分を構成するものでなければならず、仮に手続が開始されていない場合には、手続の開始に十分な根拠を与えるものでなければならない。
Tampering(不当な改変)とは、不適切な目的又は不適切な方法で変更すること、不適切な影響を生じさせること、不適切な形で介入すること又は結果の変更若しくは通常の手続を踏むことの回避を目的として妨害し、誤導し、若しくは詐欺的行為に携わることをいう。
Target Testing(特定対象検査)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に定める基準に基づき、検査のために特定の競技者を抽出することをいう。
Team Sport(チームスポーツ)とは、競技会中に、選手交代が認められるスポーツをいう。
Testing(検査)とは、ドーピング・コントロールの過程のうち、検査配分計画の立案、検体の採取、検体の取扱い並びに分析機関への検体の輸送を含む部分をいう。
Trafficking(不正取引)とは、アンチ・ドーピング機関の管轄に服する競技者、サポートスタッフ又はその他の人が、第三者に対し、(物理的方法、電子的方法その他方法を問わず)禁止物質又は禁止方法を販売、供与、輸送、送付、配送又は頒布すること(又は当該目的のために保有すること)をいう。但し、当該定義は、真正かつ適法な治療目的その他認められる正当理由のために使用された禁止物質に関する誠実な医療従事者の行為を含まないものとし、又、当該禁止物質が真正かつ適法な治療目的のために意図されたものでないこと若しくは競技力を向上させるために意図されたものであることにつき状況全体から立証された場合を除き、当該定義は、競技会外の検査において禁止されない禁止物質に関する行為を含まないものとする。
TUEとは、第4.4 項に記載される、治療使用特例(Therapeutic Use Exemption)をいう。
UNESCO Convention(ユネスコ国際規約)とは、2005年10月19日のユネスコ総会の第33 回会期において採択されたスポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約並びに同規約の締約国及びスポーツにおけるドーピング防止に関する締約国会議において採択されたそのすべての改定をいう。
Use(使用)とは、いずれの禁止物質又は禁止方法において、手段を問わず、これを利用し、塗布し、服用し、注入し若しくは摂取することをいう。
WADA(World Anti-Doping Agency)とは、世界アンチ・ドーピング機構をいう。
例1
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会(時)検査における蛋白同化ステロイドの存在(第2.1項)によりなされ、競技者によるアンチ・ドーピング規則違反の速やかな自認、競技者による重大な過誤又は過失がないことの立証、及び競技者による実質的な支援の提供があった。
措置の適用:
1. まず、第10.2項が適用される。なぜなら、アンチ・ドーピング規則違反が意図的でなかったことを示す十分な裏づけ証拠となる、重大な過誤がないとみなされるからであり(第10.2.1.1項及び第10.2.3項)、その結果、資格停止期間は4年間でなく2年間となる(第10.2.2項)。
2. 第2段階として、パネルは、過誤に関連する軽減(第10.4項及び第10.5項)の適用の可否を分析する。蛋白同化ステロイドは特定物質ではないことから、重大な過誤又は過失がないこと(第10.5.2項)に基づき、適用される制裁措置の範囲は2年から1年(2年間の制裁措置の半分を下限とする。)の幅に軽減される。その後、パネルは競技者の過誤の程度に基づき、当該幅の間で、適用されるべき資格停止期間を決定する(説明目的のため、この例では、パネルは16ヶ月間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
3. 第3段階として、パネルは第10.6項(過誤に関連しない軽減)に基づく猶予又は短縮の可能性を査定する。この例の場合には、第10.6.1項(実質的な支援)のみが適用される(資格停止期間は既に第10.6.3項に定める下限の2年間を下回るため、第10.6.3 項(速やかな自認)は適用されない。)。実質的な支援に基づき、資格停止期間は16ヶ月間の4分の3まで猶予されうる。そのため、この例における最短の資格停止期間は4ヶ月間となる(説明目的のため、この例では、パネルは10ヶ月間猶予し、資格停止期間は6ヶ月間とすると仮定する。)。
4. 第10.11項に基づき、資格停止期間は原則として終局的な聴聞会の決定の日付より開始する。但し、競技者がアンチ・ドーピング規則違反を速やかに自認したことを理由として、資格停止期間は最も早くて検体採取の日より開始することも可能であるが、いかなる場合においても競技者は聴聞会の決定の日付(第10.11.2項)から、資格停止期間の少なくとも半分の期間は(本例においては、3ヶ月間)服さなければならない。
5. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させなければならない(第9条)。
6. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別段の措置を要する場合を除き、失効する。
7. 各制裁措置の義務事項であるため(第10.13項)、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18 歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない。
8. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者の加盟クラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。したがって、競技者は資格停止期間の終わる1ヶ月半前に、トレーニングに復帰することが認められることになる。
例2
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会(時)検査における特定物質である興奮薬の存在(第2.1項)によりなされた。競技者が意図的にアンチ・ドーピング規則違反を行ったことがアンチ・ドーピング機関により立証可能であり、競技者が競技力に関連性のない理由により禁止物質を競技会外で使用したことが立証不可能である。競技者は主張されたアンチ・ドーピング規則違反を速やかに自認せず、競技者が実質的な支援を提供した。
措置の適用:
1. まず、第10.2項が適用される。アンチ・ドーピング機関は、アンチ・ドーピング規則違反が意図的に行われた旨を立証でき、競技者は、物質が競技会外で認められており、禁止物質の使用が競技者の競技力との関連性を有していなかった旨を立証できないため(第10.2.3項)、資格停止期間は4年間となる(第10.2.1.2項)。
2. 違反が意図的であったため、過誤の有無に関連する軽減の余地はない(第10.4項及び第10.5項は適用されない。)。実質的な支援に基づき、制裁措置の猶予の上限は4年間の4分の3となりうる。そのため、最短の資格停止期間は1年となる。
3. 第10.11項に基づき、資格停止期間は聴聞会の終局的な決定の日より開始する。
4. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させる。
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者の加盟クラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
例3
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会外の検査における蛋白同化ステロイドの存在(第2.1項)によりなされた。競技者による重大な過誤又は過失のないことが立証され、また違反が疑われる分析報告が汚染製品より生じたことが競技者により立証された。
措置の適用:
1. まず、第10.2項が適用される。なぜなら、競技者は、例えば、汚染製品の使用において重大な過誤がなかったというように、アンチ・ドーピング規則違反を意図的に行っていないことを裏づけ証拠により立証することができるからであり(第10.2.1.1項乃至第10.2.3項)、資格停止期間は2年間となる(第10.2.2項)。
2. 第2段階として、パネルは軽減の可否を判断する上で過誤に関連する可能性を分析する(第10.4項乃至第10.5項)。競技者は、アンチ・ドーピング規則違反が汚染製品により発生し、自らが第10.5.1.2に基づき重大な過誤又は過失なく行動したことを立証することができるため、資格停止期間の適用範囲は2年間から譴責の幅に軽減される。パネルは競技者の過誤の程度に従い、当該範囲内において資格停止期間を決定する(説明目的のため、この例では、パネルは4ヶ月の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
3. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果は、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
4. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
5. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる1ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
例4
事案:違反の疑われる分析報告がなされず、又は、アンチ・ドーピング規則違反に問われていない競技者が、競技力向上のために蛋白同化ステロイドを使用したことを自発的に自認し、実質的な支援も提供した。
措置の適用:
1. 違反が意図的であったため、第10.2.1項が適用され、賦課される基本的な資格停止期間は4年間である。
2. 過誤に関連する資格停止期間の軽減が適用される余地はない(第10.4項及び第10.5項は適用されない。)。
3. 競技者の自発的な自認(第10.6.2項)のみに基づき、資格停止期間は4年間の半分を上限として短縮されうる。競技者の実質的な支援(第10.6.1項)のみに基づき、資格停止期間は4年間*の4分の3を上限として猶予されうる。第10.6.4項に基づき、自発的自認及び実質的な支援を共に考慮すると、制裁措置が短縮又は猶予されうるのは4年間の4分の3が上限である。よって、最短の資格停止期間は1年となる。
4. 資格停止期間は原則として、聴聞会の終局的な決定の日より開始する(第10.11項)。もし、自発的自認が資格停止期間の短縮の要素とされたのであれば、第10.11.2項に基づく資格停止期間の早期開始は認められない。同条項は、競技者が同じ事実関係により二重に恩恵を受けることのないよう定められている。但し、資格停止期間が実質的な支援のみに基づき猶予された場合には、第10.11.2項は依然として適用することができ、資格停止期間は、競技者による蛋白同化ステロイドの最終の使用の時点より開始する。
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18 歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる資格においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
例5
事案:
サポートスタッフが、競技者を虚偽の名前のもと競技会に参加させることにより、当該競技者に賦課された資格停止期間を回避することを助けた。当該サポートスタッフは、アンチ・ドーピング機関によりアンチ・ドーピング規則違反の通知を受ける前に、当該アンチ・ドーピング規則違反を自発的に認めた(第2.9項)。
措置の適用:
1. 第10.3.4項に基づき、資格停止期間は、違反の重大性により、2年間乃至4年間となる(説明目的のため、この例では、パネルは3年間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
2. 意図が第2.9項におけるアンチ・ドーピング規則違反の要素であるため、過誤の有無に関連する軽減の余地はない(第10.5.2の解説を参照すること。)。
3. 第10.6.2項に基づき、自認が唯一の信頼性のある証拠である場合には、資格停止期間は半分に短縮することができる(説明目的のため、この例では、パネルは18ヶ月間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
4. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、サポートスタッフが18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
例6
事案:競技者が初めてのアンチ・ドーピング規則違反に対する制裁措置として14ヶ月間の資格停止期間の措置を受けたが、そのうち4ヶ月間は実質的な支援を理由に猶予された。今般、当該競技者は、競技会(時)検査において特定物質には該当しない興奮薬が存在した結果として、第二回目のアンチ・ドーピング規則違反を行った(第2.1項)。当該競技者は、重大な過誤又は過失がないことを立証するとともに、実質的な支援を提供した。これが初回の違反であったならば、パネルは競技者に対し16ヶ月間の資格停止期間の制裁措置を賦課し、実質的な支援を理由として6ヶ月間猶予したであろうと仮定する。
措置の適用:
1. 第10.7.4.1項及び第10.7.5項が適用されるため、第10.7項が第二回目のアンチ・ドーピング規則違反に適用される。
2. 第10.7.1項に基づき、資格停止期間は以下のうち最も長い期間となる。
(a) 6ヶ月間
(b) 第10.6項に基づく短縮を考慮せずに初回のアンチ・ドーピング規則違反につき賦課された資格停止期間の半分(この例では、14ヶ月の半分、即ち7ヶ月間となる。)、又は、
(c) 第10.6項に基づく短縮を考慮せずに、初回の違反であるかの如く取り扱われた第二回目のアンチ・ドーピング規則違反に別途適用される資格停止期間の2倍(この例では、16ヶ月間の2倍、即ち32ヶ月間となる。)。
よって、第二回目の違反の資格停止期間は、(a)、(b) 及び(c) のうち最も長い期間となり、それは32ヶ月間の資格停止期間となる。
3. 次の段階では、パネルは第10.6項(過誤に関連性を有しない短縮)に基づく猶予又は短縮の可能性を査定する。第二回目の違反の場合には、第10.6.1項(実質的な支援)のみが適用される。実質的な支援を理由として、資格停止期間は32ヶ月間の4分の3を猶予されうる。そのため、最短の資格停止期間は8ヶ月間となる(説明目的のため、この例では、パネルが実質的な支援を理由に資格停止期間のうち8ヶ月間分を猶予し、その結果として賦課された資格停止期間を2年間に短縮すると仮定する。)。
4. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させる。
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項。)
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる資格においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
* WADA の承認のもと、例外的状況において、実質的な支援を理由とする資格停止期間の猶予は最大で4分の3を超える場合があり、報告及び公開が遅れる場合がある。
[競技連盟名]の一員として、かつ/または国際ろう者スポーツ委員会の認定する大会の参加者として、私は以下のとおり誓約いたします:
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則(随時の改訂も含め)および世界アンチ・ドーピング機構が発行し、同機構のウェブサイト上に掲載する国際基準の、すべての条項の制約下にあることを認め、かつそれらに従うことを確約いたします。
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則の下で行使される、またICSDアンチ・ドーピング規則に則って結果を管理し、制裁措置を課す、ICSD[および当該国内ろう者スポーツ連盟および/また国内アンチ・ドーピング機関]の権限を認めます。
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則に則って下された決定に対するすべての紛争について、ICSDアンチ・ドーピング規則の明示する解決方法が尽きた場合、ICSDアンチ・ドーピング規則第13条により、国際レベルの競技者の場合において、最終かつ拘束力を有する唯一の調停機関である、スポーツ仲裁裁判所(CAS)を上訴機関と認めます。
私は、上述の調停機関の決定が、最終かつ効力を持つものと認め、その後いかなる抗議、調停、訴訟、係争、またその他の法廷闘争を行いません。
私は現行の誓約書を読み、また理解しております。
____________________________ 日付 |
_____________________________ 活字体による氏名(姓、名の順で) |
____________________________ 生年月日 (日/月/年) |
_____________________________ 署名(18歳未満の者である場合、法的保護者の署名) |