コロナウイルス感染症拡大の影響により困っているきこえない人たちへ

医療支援チーム:新型コロナウイルス感染及び疑いにおける受診にかかる手話言語通訳派遣等について

2020年5月5日

加盟団体長 各位

一般財団法人全日本ろうあ連盟
医療支援チーム    
 責任者 中西久美子
 副責任者 嶋本恭規

新型コロナウイルス感染及び疑いにおける受診にかかる
手話言語通訳派遣等について

 ご存じの通り、昨日、政府より5月31日までの緊急事態宣言の延長がなされました。皆様も、”Stay at home (外出を自粛、自宅待機)” を余儀なくされる状態を、もどかしくまた不安に思いながら、お過ごしことと思います。
 そんな中、発熱や息苦しい等、症状が出たろう者が受診をしようと、手話言語通訳の派遣を依頼したにも関わらず、派遣を断られてしまうという事例が寄せられています。以下に3つの事例を紹介しますので、ご対応くださいますようお願いします。

(1)ろう者が福祉事務所を訪れ、「発熱と咳が続くのでコロナウイルスの心配があるから通訳同行で病院に行きたい」と訴え、電話通訳により派遣事務所(派遣窓口)に依頼しました。派遣事務所から市へ「派遣してもかまわないか」という問い合わせをしたが、翌日、市から「感染の恐れがあるので通訳派遣はできない」と返答があり、派遣事務所から本人にFAXでその旨を伝えました。感染の疑いがあるにも関わらず、ろう者は直接福祉事務所へ出向いたことは、本来やってはいけない行動ですが、「派遣を依頼するのにまずろう者が出向かなければならない」という手続き上の問題が課題となっています。平常時ではなく、緊急事態宣言時の通訳派遣手続きを検討することが必要です。また、市から「感染の恐れがあるので通訳派遣はできない」のであれば、遠隔医療通訳のように、別の手段を提示する必要があります。新型コロナウイルス感染及びその疑いにおける受診にかかる手話通訳派遣の形態についても検討してください。

(2)ろう者が発熱、無味覚などの症状を相談窓口にFAXで伝えたところ、保健所より「発熱外来に行ってください」との連絡があったため、市に手話言語通訳派遣を依頼したところ、「通訳者の二次感染の恐れがある」ために、派遣は認められませんでした。県が実施する遠隔手話サービスを利用したいと要望したにもかかわらず、県からも「発熱外来の受診段階ではまだ新型コロナウイルス感染の疑いがない」と断られました。その上に、病院の発熱外来では「聞こえない人は受け入れられない」と拒否されました。理由は、検査をした後、医師からその結果を患者に電話で説明するという流れになっており、「聞こえない人は電話ができないため無理」だと断られたということです。メールでのやり取りや筆談または郵送という方法も行わないとのことです。発熱外来の受診における手話言語通訳派遣、そして検査の結果を受け取る方法についても、県や市、保健所などと協議することが必要です。

(3)夜中にろう者から「母親が発熱しているので通訳を派遣してほしい」とメールを受けた通訳者から、派遣担当者に電話でその旨を伝え、通訳派遣を認めるよう依頼をしました。しかし、夜間は派遣ができないことや、発熱している人の近くに通訳者を派遣するには市の判断が必要として、その場では派遣を認めることはできませんでした。新型コロナウイルスの感染の恐れがあっても、その相談や診察に手話言語通訳がつかないケースが出ていることや、夜間の手話言語通訳派遣体制が整っていないことは、重大な結果が生じる恐れもあり、このようなケースはあってはならないことです。都道府県への働きかけていただくよう厚生労働省にも働きかけを行いますが、都道府県・市区町村の自治体に周知が行き渡るまで時間がかかってしまいます。

加盟団体におかれましては、

① 会員の皆さまに、新型コロナウイルスに感染した疑いがあるために受診を希望する際は、周囲に感染を広げることがないよう周囲との接触を避け、まずは帰国者・接触者相談センターなどに電話リレーサービスやファックスを使って連絡するよう周知してください。
※ 添付のパワーポイント及び文末のリンクをぜひご参考にしてください。

② 県および自治体と、新型コロナウイルスに感染の疑いがあるろう者が受診をする際の手話言語通訳者の派遣について確認また協議を行ってください。
なお、その際、医療機関にも聞こえない人が受診する際の配慮(検査の結果の説明方法も含む)についても、確認をしてください。

【添付ファイル】