各省庁へ聴覚障害者の社会参加に関わる要望を提出
2023年7月7日、全日本ろうあ連盟理事らが各省庁へ要望書を提出し、意見交換を行いました。また、一部の省庁へは要望書を送付しました。
※ 7月31日追記:7月27日 厚生労働省の交渉風景と要望書を追加掲載しました。
各省庁名・担当課 | 全日本ろうあ連盟出席者 |
---|---|
文部科学省(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 大臣官房 会計課 初等中等教育局 初等中等教育企画課 初等中等教育局 特別支援教育課 高等教育局 医学教育課 |
事務局長 久松三二 教育文化委員長 山根昭治 教育文化副委員長 堀米泰晴 スポーツ委員長 太田陽介 スポーツ事務局長 山田尚人 |
スポーツ庁(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 政策課 健康スポーツ課 参事官(民間スポーツ担当) 参事官(国際担当) 大臣官房総務課法令審議室 審議第二係 |
|
こども家庭庁(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 支援局障害児支援課 |
|
警察庁(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 長官官房教養厚生課 長官官房企画課 交通局運転免許課 |
副理事長 大竹浩司 機関紙部長 中橋道紀 情コミ副委員長 河原雅浩 出版事業副委員長 有山一博 |
総務省(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 情報流通行政局地上放送課 情報流通振興課 情報活用支援室 自治行政局選挙部 管理課 自治行政局選挙部 選挙課 |
|
国土交通省(7月7日)交渉風景と提出した要望書へ 大臣官房総務課 都市局 街路交通施設課 道路局 高速道路課 鉄道局 鉄道サービス政策室 自動車局 旅客課 バス産業活性化対策室 総合政策局 バリアフリー政策課 |
副理事長 大竹浩司 組織委員長 藤平淳一 福祉労働副委員長 深川誠子 高齢部長 川本忠夫 女性部長 佐々木柄理子 |
厚生労働省(7月27日)交渉風景と提出した要望書へ 老健局 老人保健課 職業安定局 障害者雇用対策課 障害保健福祉部 障害福祉課 障害保健福祉部 企画課自立支援振興室 |
常任理事・事務局長 久松 三二 福祉労働委員会委員長 吉野 幸代 情コミ委員会委員長 中西久美子 福祉労働委員会委員 河合めぐみ 福祉労働委員会委員 渡部 繁子 |
厚生労働省(7月27日)交渉風景と提出した要望書へ 障害保健福祉部 企画課自立支援振興室 障害保健福祉部 障害福祉課 老健局 介護保険計画課 老健局 高齢者支援課 老健局 認知症施策・地域介護推進課 |
全日本ろうあ連盟 常任理事・事務局長 久松 三二 福祉・労働委員会 委員長 吉野 幸代 福祉・労働委員会 委員 河合めぐみ 福祉・労働委員会 委員 渡部 繁子 全国手話通訳問題研究会 |
送付した要望書一覧:
内閣府: きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について |
【 送付した要望書 】
連本第230186号
2023年7月7日
内閣総理大臣
岸田 文雄 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
1.障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)及び改正障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各省庁や全国自治体の担当部局や団体等において、手話通訳者等を含めた情報アクセシビリティに要する経費の予算措置を義務化するよう、周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、各省庁・全国自治体部局等へ周知徹底ください。
2.ろう者の言語である手話言語を言語として認める「手話言語法」の早期制定に向けて取り組みを進めてください。
<説明>
全日本ろうあ連盟では2010年より「手話言語法」の早期制定を求めて取り組みを進めてまいりました。手話言語については、改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知されてはいますが、ろう者の手話言語獲得や手話言語を使えるための環境整備を保障する独立法としての「手話言語法」は未だ制定されていません。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の附帯決議や障害者権利委員会からの総括所見でも言及いただいているとおり、ろう者が手話言語を用いて、きこえる人と対等に社会参加をしていくためにも、「手話」を言語として規定し、手話言語を獲得し手話言語で学べるようにするための環境整備と手話言語を研究・普及・保存していくことを保障するための法律「手話言語法」の制定に向けて、早急に検討を進めてください。
3.全国の全ての官公庁および支所に電話リレーサービスの対応について一層の周知を図ってください。
<説明>
全国各地の税務署、年金事務所、法務省出張所、警察署や消防署、などに、電話リレーサービスで電話をかけると、電話リレーサービスの仕組みなどの説明に時間がかかり、すぐに対応して頂けないことがあります。
電話リレーサービスの対応について、全国の全ての官公庁および支所に、一層の周知を図ってください。
<各省庁共通事項>
4.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
5.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上
連本第230187号
2023年7月7日
金融庁長官
中島 淳一 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
1.2021 年から公的インフラとしてスタートした電話リレーサービスについて、更に周知を進めてください。また、電話リレーサービスを利用した場合に「本人確認」に支障が出ないよう周知をしてください。
<説明>
金融庁が実施している「障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査」の結果を見ると、「電話リレーサービスを用いた連絡に対応しているか」の問いに対し、主要行等では対応いただいているものの、地方銀行、信用組合、信用金庫等では50%前後にとどまっています。引き続き、電話リレーサービスの周知徹底を更に取り組んでください。
また、令和3年4月20日付、総務省総合通信基盤局長から金融庁監督局長及び経済産業省商務・サービス審議官宛ての依頼文書として、金融機関等に対して、電話リレーサービスを介した「本人確認」が有効であるという通知が出されています。電話リレーサービスの利用に支障が出ないよう、金融機関等へ一層の周知を進めてください。
2.ATMを利用中にトラブルが生じた場合、備え付けの電話以外の方法で問い合わせができるようにしてください。
<説明>
ATMのみの無人店舗や有人店舗でも早朝・夜間や休日など営業時間外でトラブルが生じた時、備え付けの電話で問い合わせることになりますが、きこえない者は電話での通話ができません。周囲に人がいない場合は問い合わせすらできません。
緊急電話の受話器を持ち上げ応答がない場合には、職員や警備会社が駆けつけて対応するとのことですが、きちんと伝わっているのか、どのくらいの所要時間がかかるのか分からず、かえって不安が増します。電話に代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの環境整備について金融機関等に働きかけてください。
また今後ATMを開発される際には、きこえない立場からの意見を取り入れながら進めてください。
3.銀行のアプリを使ってインターネットバンキングで振り込みを行ったり、住所変更などの手続きをする際のワンタイムパスワードを有効にする手順の中で、電話による確認を求められることがあります。きこえない・きこえにくい人でも利用しやすいよう、電話の音声に代わる方法を導入するよう、金融機関等へ働きかけてください。
4.銀行などの金融機関に聞こえない行員がいる場合は、職場内の合理的配慮として手話通訳等の情報保障に要する経費の予算化について、貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
2016年4月より「改正障害者雇用促進法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられるところがあります。しかし、複数のきこえない行員がいる銀行は手話通訳派遣や合理的配慮の提供がなされていますが、一つの銀行(または支店)に一人のきこえない行員の場合は、このような合理的配慮の提供がされていないというのが現状です。
きこえない行員がいる銀行に対し、きこえない行員に対する合理的配慮の提供が行えるよう、早急に環境整備をすすめてください。
<各省庁共通事項>
1.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。
2.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
例)各金融機関等も含む
(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
3.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上
連本第230188号
2023年7月7日
消費者庁長官
伊藤 明子 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
1.事業者や法人等に2021年から公的インフラとなった電話リレーサービスの認知を拡げ、その通話が拒否されないよう周知いただくとともに、電話による「本人確認」と同等に電話リレーサービスでも「本人確認」ができるよう働きかけをしてください。
<説明>
電話リレーサービスの効果的かつ継続的な周知をお願いします。
また、電話リレーサービスの「本人確認」が認められない一例として、別の場所にいるオペレーターと詐欺による電話の区別がつかないことを理由に電話リレーサービスでは本人確認ができないとする事業者がいまだ数多くあります。貴庁から改善の指導いただくとともに、早急にeKYC等のオンラインによる本人確認の仕組みを使えるよう電話リレーサービス事業者に、国として働きかけてください。
<各省庁共通>
1.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。
2.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
例)地域の消費者センター、消費者庁の消費者ホットライン(188番号)以外の対応
(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
3.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上
連本第230189号
2023年7月7日
経済産業大臣
西村 康稔 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
1.事業者や法人等へ電話リレーサービスについて、引き続き周知を進めてください。また、電話リレーサービスを介した「本人確認」に支障が出ないよう周知をしてください。
<説明>
令和3年4月20日付、総務省総合通信基盤局長から金融庁監督局長及び経済産業省商務・サービス審議官宛ての依頼文書として、各企業等に対して、電話リレーサービスを介した「本人確認」が有効であるという通知が出されています。電話リレーサービスの利用に支障が出ないよう、信販会社等をはじめとする様々な事業者への周知を進めてください。
2.店舗等のレジ(受付)における配慮について、「コミュニケーション支援ボード」を常置すること、またきこえない者への接遇研修を行うよう、企業や事業者に周知してください。
<説明>
スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア等、身近な店舗のレジや受付では、店員の問いかけに気がつかなかったり、話しの内容が理解できず誤解が生じる等、困る事例が多くあります。また、マスク着用によって口の動きや表情が見えない場合や、日本語が堪能ではない外国人店員の場合など、更にコミュニケーションが困難となっています。きこえない者が安心して買い物ができるよう、使いやすい「コミュニケーション支援ボード」の常置や、きこえない者への対応方法等を学習できるよう、企業や事業者に周知してください。
3.2025 年日本国際博覧会において、情報アクセシビリティおよびコミュニケーションを保障する人材育成のための予算化をしてください。
<説明>
2025年の大阪万博の基本計画には、「バリアフリー・ユニバーサルデザインを考慮するとともに、先端技術を用いることにより、国・地域、文化、人種、性別、世代、障がいの有無等に関わらず、大阪・関西万博を訪れる世界中の人々が利用しやすいユニバーサルデザインの実現を目指す」とあります。また、サービス提供体制として「来場者へ高品質のサービスを提供するため、十分な人員を確保し、多言語や手話言語対応等の適切な研修を実施すると同時にICTによる運営従事者サポートツールを活用できる体制の構築を図る」とも記されています。
情報アクセス・コミュニケ―ションの支援は全て機械で対応できるものではなく、人による対応が必要な場合が生じることが想定されます。
万博成功のためには、情報アクセシビリティの担い手である手話言語通訳者をどのように養成し、配置していくかを含め情報アクセシビリティに関する計画の策定が必要不可欠ですです。
折しも障害者差別解消法が改正され、2024年より施行されます。新たな国際博覧会のモデルとしてアクセシビリティ環境整備にかかる予算をぜひ確保してください。
<各省庁共通事項>
1.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。
2.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
例)新聞、書籍、パンフレット、チラシ等の広報誌、ネット広告、テレビショップ等
(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
3.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上
連本第230190号
2023年7月7日
文化庁長官
都倉 俊一 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の文化芸術の推進等にかかる要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となることで、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
1.きこえない・きこえにくい人たちが演劇や古典芸能の観劇や映画等を鑑賞するための映像コンテンツの情報保障を拡充してください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人向けにタブレットを用いて台本を見ながら観劇できる演劇や、字幕メガネを装用して鑑賞ができるバリアフリー映画が増えていますが、まだ十分ではありません。近年、インターネットでの映像コンテンツが増えてきましたが、字幕や手話言語の付与がまだ不十分です。また映画の焼き付け字幕を廃止する動きがみられていますが、存続をお願いします。
きこえない・きこえにくい人が文化芸術に触れる機会や場所を増やすべく、演劇や古典芸能等の観劇及び映画等の映像コンテンツの情報保障の拡充を求めます。
2.公開された映画やテレビ等で放映されたドラマ等をDVD化する際は必ず字幕を挿入するよう、制作会社に対して働きかけてください。
<説明>
公開された映画やドラマ等が収録されたDVDが販売されていますが、制作会社等の判断によっては字幕が挿入されない場合があります。観たい映画やドラマがあるのに、字幕がないためにDVDの購入をあきらめるケースがあります。
きこえない・きこえにくい人が、きこえる人と同様の文化芸術に触れる機会を保障するためにも、また障害者情報・アクセシビリティ施策推進法の成立も鑑み、制作会社に対して必ず字幕を挿入したDVDを作成するよう働きかけてください。
3.きこえない・きこえにくい人も利用しやすいように、「障害者芸術文化活動支援センター」での情報アクセスおよびコミュニケーションの保障を図ってください。
<説明>
障害者による芸術文化活動を支援するために、全国に「障害者芸術文化活動支援センター」、または、「広域センター」が設置されています。きこえない・きこえにくい人が利用しやすいように、センターの動画に手話言語や字幕を付与したり、相談支援の際に手話言語通訳が付くなど、きこえない・きこえにくい人の情報アクセスとコミュニケーションの保障を図るよう働きかけてください。
<各省庁共通事項>
4.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。
5.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
6.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上
連本第230196号
2023年7月7日
国税庁 長官
阪田 渉 様
東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎
きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。
記
<各省庁共通項目>
1.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。
<説明>
上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。
2.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。
(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。
<説明>
現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
例)税務署等も含む
(2)公共施設・商業施設等(税務署なども含む)における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。
<説明>
平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。
3.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。
<説明>
きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会的資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。
以 上