国土交通省に「きこえない・きこえにくい者の施策等」への要望書を提出

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 公共交通機関等における音声情報を視覚的に把握できるための対応や、人的対応等について要望しました。
 基本的にはガイドライン等に沿って進めているが、事業者に伝え、更なる工夫や周知を検討していきたいとの回答がありました。

要望書を提出

連本第230197号
2023年7月7日

国土交通大臣
 斉藤 鉄夫 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の施策等への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の社会参加促進にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、本年6月11日大分県において開催された第71回全国ろうあ者大会にて、きこえない・きこえにくい者の様々な施策等に関する大会決議を行ないました。
 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」の成立や、「改正障害者差別解消法」で合理的配慮の提供が義務となり、情報の取得やアクセスが容易になっていくことが期待されているところです。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。
 つきましては、下記の通り要望いたしますので、すべての国民が安心、安全に生活ができるよう、早期実現をお願い申し上げます。

1.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声のやり取りについて、きこえない者も安心して利用できる仕組みに改善するようと要望を出しましたが、未だ改善が見られていません。これから無人化が増えつつある中、電話ができない聞こえない方が取り残されてしまいます。早急に改善されてください。また好事例があれば広く周知してください。

<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、きこえない者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、きこえない者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、引き続き関係会社に働きかけてください。
 例【駅】

・無人改札通過時にゲートが閉まり通過できなかった。音声インターホンしかないため連絡ができなかった。

・駅の無人改札で「電話して下さい」とエラー表示されている。

・券売機で障害者割引乗車券を購入するため、福祉ボタンを押すも駅員が来なかった。
音声インターホンで対応していたようだがコミュニケーションが取れなかった。

【有料道路】

・無人の有料道路料金所で割引を利用のため、呼び出しボタンを押したが、対応されなかった。(声だけで返答していたと後に分かった)

・自動精算機で無人の場合係員が来るまで時間が要する。また、電話のみの対応が多い。一部、聴覚障害者対応の機器があるが高齢者はやり方が分からない人もいる。

【駐車場】

・コインパーキングでトラブルが発生したが、電話しかなく連絡ができなかた。モニターで確認できるとよい。

2.国交省バリアフリー法関連の会議に参加されている交通事業者等をはじめとする各種業界団体と障害者団体の意見交換の場を設けてください。

<説明>
 現在、駅の無人化意見交換会等、各種会議において意見交換を行える場を設けて、それぞれ異なる障害者の立場から意見交換を行っています。意見交換会の場で行うのも重要ですが、現場にて実際に体験(切符購入方法やトラブルが生じた時の連絡手段等)しながら意見交換を行うことが重要です。会議の場で意見を述べても現場でない場合はイメージが難しい場合があります。そのために現場(現物)にて実際に体験しながら意見交換を行う場を設けてください。

<各省庁共通>

3.「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」及び「改正障害者差別解消法」施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算措置を明文化するよう、貴省からも周知ください。

<説明>
 上記2法により、国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定、並びに実施することのみならず、民間企業も合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人の社会参加がしやすくなります。
 これらの法律では、当事者が手話通訳を手配する福祉的な側面からのアプローチではなく、あらゆる公的機関で、その機関の責任においてアクセシビリティに関する環境整備や合理的配慮を提供することを求めています。
 しかしながら、国や自治体の出先機関を含めた行政機関において、手話通訳等を含めた情報アクセシビリティに関する予算措置がされていないことを理由に、「過重な負担」として手話通訳等の情報保障の配慮を拒否・または手話通訳等を用意できないとして、障害当事者に情報保障を自ら手配させることを要請する例は後を絶ちません。
 行政を含む公的機関において、きこえない・きこえにくい人への環境整備や情報アクセシビリティなどの合理的配慮が提供できない状況があってはなりません。それは明らかに障害を理由とする差別的取り扱いです。
 利用者から手話通訳等の希望の有無にかかわらず、情報アクセシビリティ整備に対応するため、各公的機関で手話通訳等の情報保障の予算は、障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の出先機関を含め、地方自治体部局へ周知徹底ください。

4.改正障害者差別解消法に基づく対応要領・対応指針等に以下を検討してください。

(1)事業者や省庁出先機関等から出される情報に、ろう者が容易にアクセスできるよう、情報アクセシビリティ保障を進めてください。

<説明>
 現在、消費者や利用者が問い合わせをする「相談窓口」「販売申し込み先」、省庁出先機関等の受付窓口は、電話番号のみの対応が多く存在しています。2021年7月からは公共インフラとして電話リレーサービスが利用できるようになりましたが、きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい方法(メール・FAX等)でのアクセシビリティ保障について、見直しが進められている対応要領・対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。

(2)公共施設・商業施設等における音声情報の文字化について、具体的に記述してください。

<説明>
 平時から公共施設・商業施設等における音声情報を文字情報にて掲示することで、緊急時にも有用な情報源となります。公共施設や商業施設等における音声によるアナウンス情報について、「文字または手話言語表示」をすることを、見直しが進められている対応指針に記載したうえで、その通りに運用してください。

例)①観光地や名所等の音声による車内ガイダンスなど(各鉄道会社)
  ②空港での搭乗アナウンス、優先搭乗アナウンスなど
  ③機内での音楽や映画などエンターテイメントなどへの手話・字幕挿入
  ④機内での緊急アナウンス(「アナウンス中」しか表示されない)
  ⑤列車の緊急停止を示す電光掲示板や、緊急を示すランプなどがあると分かりやすい

5.きこえない・きこえにくい人への環境整備や合理的配慮として、手話通訳者等の配置が行われる例が増えていますが、配置する情報保障者の質についても担保できるようにしてください。

<説明>
 きこえない・きこえにくい人へのアクセシビリティ保障として手話通訳等の配置がありますが、手話通訳者等の社会的資源は限られているため、環境整備や合理的配慮を要求するきこえない・きこえにくい人のニーズに応えられるだけの十分な人数が確保されにくい状況があります。
 社会的な流れにより、行政機関による手話通訳派遣依頼の際、競争入札により手話通訳派遣事業者を選定する例が増えていますが、選定条件の中に、派遣する手話通訳者の質について明記されていることはほとんどなく、機械的に応札額が最も低額であった事業者が選定されているのが現状です。
 金額のみで派遣事業者が決定され、派遣された手話通訳者の技術が担保されないことで、環境整備や合理的配慮の提供が不十分だった例が生じています。
 情報アクセシビリティは、単に提供されるだけでは不十分であり、提供される配慮が障害者の希望に沿ったものであり、かつ目的を十分達成できるようなものであるべきです。
 配置する手話通訳を含めた情報保障者の質の保障について、十分な配慮を行ってください。

以 上

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