ICSD アンチ・ドーピング規則

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ICSDアンチ・ドーピング規則は、2004年に第1版が発行され、2006年、2009年、2013年に修正がなされた、ICSDアンチ・ドーピング規則の改訂版である。本ICSDアンチ・ドーピング規則改訂版は、2015年3月1日、ICSD執行委員会で承認を受けた。

目 次

 前文
 第1条―ドーピングの定義
 第2条―アンチ・ドーピング規則違反
 第3条―ドーピングの証拠
 第4条―禁止リスト
 第5条―検査およびドーピング捜査
 第6条―検体の分析
 第7条―結果管理
 第8条―公正なヒアリングに参加する権利
 第9条―個人結果の自動的失効
 第10条―個人に対する制裁措置
 第11条―チームに対する措置
 第12条―国のスポーツ団体に対する制裁措置と負担
 第13条―不服申立て
 第14条―守秘義務及び報告
 第15条―決定の適用及び承認
 第16条―ICSDのドーピング防止規則の編入および国内競技連盟の義務
 第17条―時効
 第18条―ICSDによるWADAへの通知義務
 第19条―教育
 第20条―アンチ・ドーピング規則の修正および解釈
 第21条―世界アンチ・ドーピング規定の解釈
 第22条―競技者又はその他の人の追加的な役割及び責務
 付録1―定義集
 付録2―第10条の適用事例
 付録3―同意書

※本規程を翻訳するにあたっては、日本アンチ・ドーピング規程に従い、専門用語を訳しました。
(訳注:参照サイト)2016年4月9日現在
 ・World Anti-Doping Code, World Anti-Doping Agency.
 ・日本アンチ・ドーピング機構.

序論

国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)は、世界のろう者のすべてのスポーツおよび、デフリンピック運動、とりわけ夏季デフリンピック・冬季デフリンピックの国際統括組織である。その会員として、国内ろう者スポーツ連盟(NDSFs)、国際ろう者スポーツ連盟(IDSFs)、国際連盟および地域ろう者スポーツ連合がある。
 
ICSDは、夏季デフリンピック・冬季デフリンピック、ろう者世界選手権大会、およびろう者ユース世界選手権大会を監督・調整する。
 
ICSDは、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が推進する世界アンチ・ドーピング・プログラムを支援し、世界アンチ・ドーピング規程の受け入れを、2006年2月26日に承諾する署名をしている。
 
ICSDは、ろう社会におけるドーピング撲滅の戦いに寄与することを期待し、世界アンチ・ドーピング規程(Code、以下「規程」)の基本原則に則り、ICSDアンチ・ドーピング規則(Rules、以下「規則」)を作成した。本規則に記されるICSD規則及び規程の国際基準は、本規則を補完するものである。
 
本規則は、スポーツをプレーする状況において統括をする規則である。国際的かつ調和のとれた方法で、アンチ・ドーピングの原則を進めることを目的とした本スポーツ規則は、刑事・民事法とは性質を異にし、このような手続き行程に該当する、いかなる国内の強制力や法基準の拘束下、もしくは制約を受けることを意図するものではない。すべての事実や事例を検討するにあたり、すべての法廷、仲裁機関、その他判決を下す機関は、WADA規程の内容を実効化する本規程の、特化した本質を理解、尊重するものとし、また本規則は、公正なスポーツを保護および保障するための、世界各地のさまざまな立場の当事者の合意を表すものである
 
世界アンチ・ドーピング規程の基本原理
アンチ・ドーピング・プログラムの目標は、スポーツ固有の価値を保護することである。これは、「スポーツの精神」と呼ばれる。これは、デフリンピック運動の真髄でもあり、各人に自然に備わった才能を磨き上げることを通じ、人間の卓越性を追求することでもある。これにより、我々は「プレイ・トゥルー」の精神を実現する。スポーツの精神は、人間の魂、身体及び心を祝福するものであり、次に掲げる事項を含む、スポーツに内在し、スポーツを通して実現する価値に反映されている。

  • 倫理観、フェアプレーと誠意
  • 健康
  • 卓越した競技能力
  • 人格と教育
  • 楽しみと喜び
  • チームワーク
  • 献身と真摯な取組み
  • 規則・法を尊重する姿勢
  • 自分自身とその他の参加者を尊重する姿勢
  • 勇気
  • 共同体意識と連帯意識

本規則の適用
アンチ・ドーピング規則は、競技規則と同様に、スポーツ競技が実施される条件を司るものである。すべての参加者(競技者及び競技者の支援者)は、参加の条件としてこれらの規則を受け入れ、それに従わなければならない。本規則は、デフリンピックおよび、ICSDが管轄し、そのためICSDがアンチ・ドーピングの権限を有するすべての大会・競技会、ならびに競技会の準備期間にも適用される。
 
すべての競技者ならびに、このような大会にコーチ、トレーナー、マネージャー、チームスタッフ、役員、医療スタッフとして参加するサポートスタッフ各位は、参加の条件として、本規則に従うことに同意する。
 
団体に向けて:
本規則は、ICSDがデフリンピック運動の国際監督組織として行動する際に適用される。ICSD会員国は、WADA規程を実効化し、かつ本規則に整合した、各自のアンチ・ドーピング規則を定め、遵守する。
– NDSF諸団体
– 地域連盟
– IF諸団体およびlDSF諸団体
(訳注:「NDSF諸団体」とは国内ろう者スポーツ連盟を意味し、ICSDに加盟している世界各国のろう者スポーツ全国組織を指す。日本では一般財団法人全日本ろうあ連盟スポーツ委員会がこれにあたる。)
 
本規則はまた、ICSDが主要な大会組織として活動する際、たとえば夏季/冬季デフリンピック、世界ろう者選手権大会、地域ろう者選手権大会(以後「選手権大会」は、ICSD世界選手権・地域選手権とも関連する)、およびその準備期間も含めて適用される。ICSDが国際連盟としてではなく、主要競技会機関として行動する場合、主要競技会機関に特定して適用されるWADA規程の条項は、参照によって全面的に組み込まれて適用されるものとし、従って、本規則の中で、とりわけ国際競技連盟にとって、対立もしくは該当しないいかなる条項も適用されず、かつ本規則の一部ではないものとして取り扱われる。
 
個人に向けて:
本規則は、以下の競技者、サポートスタッフ、その他個人に対し、本規則に従うことを承認することと(および、第8条および第13条に定められるように、本規則の施行と聴聞会の管轄、また本規則の下での聴聞および上訴に対する決定におけるICSDの権限を認める)が、会員ステータス、アクレディテーションおよび/また競技への参加の条件として適用される。
 
a) ICSD会員、もしくはICSD会員団体の会員、ICSD会員団体の傘下団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)であるすべての競技者およびサポートスタッフ
 
b) ICSDが管轄し、かつICSDがアンチ・ドーピングの権限を有する大会およびその他の活動に参加するすべての競技者およびサポートスタッフ、もしくは場所を問わず、ICSDが会員もしくは提携団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)になっているもの
 
c) その他すべての競技者もしくはサポートスタッフ、またはアクレ、ライセンス、もしくは契約合意書を有するその他個人は、アンチ・ドーピングを目的として、ICSD、もしくはあらゆるICSD会員、ICSDが会員もしくは傘下団体(クラブ、チーム、協会、もしくはリーグを含む)になっているものの管轄下にあり、かつ:
 
d) ICSDの一般会員ではない競技者、または、ICSD会員団体の会員ではない競技者、特定の国際大会への出場資格を得たい競技者。ICSDはそのような競技者を検査対象者協力リストに載せることで、本規則の下での検査のため、居場所情報を提出するよう求めるものとする。
 
ICSDが管轄する大会の参加資格を得るためには、競技者はICSDが発行するICSDのID(登録番号)を持たなければならない。
 
本規則の適用を目的とし、上記a)からd)の事項に記述されているすべての競技者は、国際レベルの競技者と見なされることになる。

ICSDアンチ・ドーピング規則の運営

ICSD執行委員会
 
ICSD執行委員会は、本規則およびすべての改訂を承認するものとし、本規程が定める、さらなる責務を行使する。 ICSDの執行委員会は、ドーピングと闘い、アンチ・ドーピング規則の違反の管理、国際的に認められている規則とアンチ・ドーピング規程に従うための政策、方針、プロセスなどを策定する責任を負う。また、ICSD執行委員会の構成員は、ICSDが結果の管理権限を行使する場合、聴聞機関の構成員となる。
 
ICSDアンチ・ドーピング委員会
 
ICSDアンチ・ドーピング委員会は、本規則に則って提出された、各治療使用特例(TUE)申請を評価・調査し、かつ本規則第4.4項の要件を管理運営する。
 
WADAのアンチ・ドーピング規程に具体的な指示がある場合を除き、本規則の実施責任は、ICSD会長が負うものとする。ICSD会長は、自らの判断において、特定の任務を他の者に委任することができる。
 
冒頭が大文字によって記される用語(斜体の文字で表記されている)は、付録1において解説されている。
 
本規則の英語版は、不特定の人物に言及する場合、すべて男性形を用いて書かれているが、特に断りがない限り、すべての条項は女性にも適用される。

第1条―ドーピングの定義
ドーピングとは、本規則の第2.1項から第2.10項に定められている1つ又は2つ以上のアンチ・ドーピング規則に対する違反が発生することをいう。
第2条―アンチ・ドーピング規則違反
 
第2条は、アンチ・ドーピング規則違反が成立する状況及び行為を明記することを目的とする。ドーピング事案の聴聞会は、一又は二以上のこれらの個別の規則に対する違反の主張に基づき開始されることになる。
 
競技者又はその他の人は、アンチ・ドーピング規則違反の構成要件、禁止表に掲げられた物質及び方法を知る責任を負わなければならない。
 
次に掲げる事項が、アンチ・ドーピング規則違反を構成する。
2.1. 競技者の検体に、禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーが存在すること
2.1.1. 禁止物質が体内に入らないようにすることは、各競技者が自ら取り組まなければならない責務である。自己の検体に禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーが存在した場合には、競技者はその責任を負う。ゆえに、第2.1項に基づくアンチ・ドーピング規則違反を証明するためには、競技者側の使用に関しての意図、過誤、過失又は使用を知っていたことが証明される必要はない。
2.1.2. 次のいずれかが証明された場合には、上記第2.1項に基づくドーピング防止規則違反の十分な証拠となる。競技者のA検体に禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーが存在した場合であって、当該競技者がB検体の分析を放棄し、B検体の分析が行われない場合、又は、競技者の B検体が分析され、B検体が、A検体で発見された禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーの存在を追認した場合、又は、競技者のB検体が二つの瓶に分けられ、第二の瓶の分析が、第一の瓶において発見された禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーの存在を追認した場合。
2.1.3. 禁止表に量的閾値が明記されている物質を除き、競技者の検体に禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーの存在が検出された場合、その量の多寡にかかわらず、アンチ・ドーピング規則違反が成立する。
2.1.4. 第2.1 項における一般原則の例外として、内因的にも生成されうる禁止物質についての評価に関する特別な基準を禁止表又は国際基準において定めることができる。
2.2. 競技者が禁止物質若しくは禁止方法を使用すること又はその使用を企てること
2.2.1. 禁止物質が体内に入らないようにすること及び禁止方法を使用しないようにすることは、各競技者が自ら取り組まなければならない責務である。ゆえに、禁止物質又は禁止方法の使用についてのアンチ・ドーピング規則違反を証明するためには、競技者側の使用に関しての意図、過誤、過失又は使用を知っていたことが証明される必要はない。
2.2.2. 禁止物質若しくは禁止方法の使用又は使用の企てが成功したか否かは重要ではない。アンチ・ドーピング規則違反は、禁止物質若しくは禁止方法を使用したこと、又は、その使用を企てたことにより成立する。
2.3. 検体の採取の回避、拒否又は不履行
適用されるアンチ・ドーピング規則において定められた通告を受けた後に、検体の採取を回避し、又は、やむを得ない理由によることなく検体の採取を拒否し若しくはこれを履行しないこと。
2.4. 居場所情報関連義務違反
検査対象者登録リストに含まれる競技者による12ヶ月間の期間内における、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に定義されたとおりの3回の検査未了及び/又は提出義務違反の組み合わせ。
2.5. ドーピング・コントロールの一部に不当な改変を施し、又は不当な改変を企てること
ドーピング・コントロールの過程を妨害するものの、別途禁止方法の定義には含まれない行為。不当な改変とは、ドーピング・コントロール役職員を意図的に妨害し若しくはこれを妨害しようと企てること、アンチ・ドーピング機関に虚偽の情報を提供すること、又は、潜在的な証人を脅かし若しくは脅かすことを企てることを含むが、これに限らない。
2.6. 禁止物質又は禁止方法を保有すること
2.6.1. 競技会(時) において禁止物質若しくは禁止方法を競技者が保有し、又は、競技会外において競技会外における禁止物質若しくは禁止方法を競技者が保有すること。但し、の規定に従って付与された治療使用特例(以下、「TUE」という。)又はその他の正当な理由に基づくものであることを競技者が証明した場合は、この限りではない。
2.6.2. 競技者、競技会又はトレーニングに関係して、禁止物質若しくは禁止方法を競技会(時)においてサポートスタッフが保有し、又は、競技会外で禁止されている禁止物質若しくは禁止方法を競技会外においてサポートスタッフが保有すること。但し、当該保有が第4.4項の規定に従って競技者に付与されたTUE又はその他の正当な理由に基づくものであることをサポートスタッフが証明した場合は、この限りではない。
2.7. 禁止物質若しくは禁止方法の不正取引を実行し、又は、不正取引を企てること
2.8. 競技会(時)において、競技者に対して禁止物質若しくは禁止方法を投与すること、若しくは投与を企てること、又は、競技会外において、競技者に対して競技会外で禁止されている禁止物質若しくは禁止方法を投与すること、若しくは投与を企てること
2.9. 違反関与
他の人によるアンチ・ドーピング規則違反、アンチ・ドーピング規則違反の企て、又は第10.12.1項の違反に関する、支援、助長、援助、教唆、共謀、隠蔽、又はその他のあらゆる違反への意図的な関与。
2.10. 特定の対象者との関わりの禁止
 
アンチ・ドーピング機関の管轄に服する競技者又はその他の人による、職務上又はスポーツと関連する立場での以下の事項に該当するサポートスタッフとの関わり。
2.10.1. アンチ・ドーピング機関の管轄に服するサポートスタッフであって、資格停止期間中であるもの。
2.10.2. アンチ・ドーピング機関の管轄に服しておらず、WADA規程に基づく結果の管理過程において資格停止の問題が取り扱われていないサポートスタッフであって、仮にかかる人にWADA規程に準拠した規則が適用されたならばアンチ・ドーピング規則違反を構成したであろう行為について、刑事手続、懲戒手続若しくは職務上の手続において有罪判決を受け、又は、かかる事実が認定されたもの。かかる人の関わりが禁止される状態は、刑事、職務上若しくは懲戒の決定から6年間又は課された刑事、懲戒若しくは職務上の制裁措置の存続期間のいずれか長い方の期間、有効とする。又は、
2.10.3. 第2.10.1項又は第2.10.2項に記載される個人のための窓口又は仲介者として行動しているサポートスタッフ。
 
本条項が適用されるためには、競技者又はその他の人が、従前より、競技者又はその他の人を管轄するアンチ・ドーピング機関又はWADAから、書面にて、サポートスタッフが関わりを禁止される状態にあること及び関わりを持った場合に課されうる措置の内容について通知されており、かつ、当該競技者又はその他の人が関わりを合理的に回避できたことを要する。また、アンチ・ドーピング機関は、第2.10.1項及び第2.10.2項に記載される基準が自己に適用されない旨の説明をサポートスタッフが15日以内にアンチ・ドーピング機関に対して提起できるということについて、競技者又はその他の人に対する通知の対象であるサポートスタッフに知らせるよう、合理的な努力を行うものとする(第17条に関わらず、サポートスタッフの関わり禁止の原因となった行為が第25条に定める効力発生日に先立ち行われた場合であっても、本条は適用される。)。
 
第2.10.1項又は第2.10.2項に記載されたサポートスタッフとの関わりが、職務上又はスポーツと関連する立場においてなされたものではないことの挙証責任は、競技者又はその他の人がこれを負う。
 
第2.10.1項、第2.10.2項又は第2.10.3 項に記載された基準に該当するサポートスタッフを認識したアンチ・ドーピング機関は、当該情報をWADA に提出するものとする。
第3条―ドーピングの証明
3.1. 挙証責任及び証明の程度
アンチ・ドーピング規則違反が発生したことを証明する責任は、ICSDおよび競技連盟が負うものとする。証明の程度は、聴聞パネルがアンチ・ドーピング機関の主張が真摯に行われているという心証を持ち、納得できる程度にアンチ・ドーピング規則違反をICSDもしくは競技連盟が証明できたか否かとする。当該証明の程度は、すべての事案について単なる証拠の優越の程度は超えるべきであるが、合理的疑いの余地がない程度に証明される必要はない。一方、アンチ・ドーピング規則に違反したと主張された競技者又はその他の人が推定事項に反論し、又は、特定の事実や事情を証明するための挙証責任を本規程によって負わされる場合には、証明の程度は、証拠の優越とする。
3.2. 事実の証明方法及び推定の方法
アンチ・ドーピング規則違反に関する事実は、自認を含むあらゆる信頼性のおける手段により証明される。ドーピング事案においては、次の証明原則が適用される。
3.2.1. 関係する科学コミュニティ内における協議を経た後WADAにより承認され、ピアレビューを経た分析方法及び閾値の設定は、科学的に有効なものであると推定される。当該科学的有効性の推定に反論を加えようとする競技者又はその他の人は、当該反論の前提条件として、まず当該反論及び当該反論の根拠につきWADAに通知することを要する。CASも独自の判断に基づき、当該反論につきWADAに通知することができる。CASパネルは、WADAから要請があった場合、当該パネルによる当該反論の評価作業につき補助を受けるために、適切な科学的専門家を任命するものとする。WADAは、WADAによる当該通知の受領及びWADAによるCASの案件記録の受領から10日以内に、当該手続において当事者として介入し、法廷助言人として参加し、又は、別途証拠を提供することができるものとする。
3.2.2. WADA認定の分析機関その他WADAの承認する分析機関では、「分析機関に関する国際基準」に基づいて検体の分析及び管理の手続を実施しているものと推定される。競技者又はその他の人は、違反が疑われる分析報告の合理的な原因となりうるような「分析機関に関する国際基準」からの乖離が発生したことを証明することにより上記の推定に反論できる。
 
競技者又はその他の人が、違反が疑われる分析報告の合理的な原因となりうるような「分析機関に関する国際基準」からの乖離が発生したことを提示することによって上記の推定に反論しようとする場合には、ICSDもしくは競技連盟は、当該乖離が、違反が疑われる分析報告の原因ではないことを証明する責任を負うものとする。
3.2.3. その他の何らかの国際基準、又は、WADA規程若しくはアンチ・ドーピング機関の規則に定める他のアンチ・ドーピング規則若しくは規範からの乖離があっても、違反が疑われる分析報告、又は、その他のアンチ・ドーピング規則違反が当該乖離を原因とするものではない場合には、これらの証拠若しくは結果等は無効にはならないものとする。競技者又はその他の人が、違反が疑われる分析報告に基づくアンチ・ドーピング規則違反その他アンチ・ドーピング規則違反の合理的な原因となりうるその他の何らかの国際基準又は他のアンチ・ドーピング規則若しくは規範からの乖離を証明した場合には、ICSDもしくは競技連盟は、当該乖離が、違反が疑われる分析報告の原因となるものではないこと、又は、アンチ・ドーピング規則違反の根拠となった事実の基礎をもたらしたものではないことを証明する責任を負うものとする。
3.2.4. 管轄権を有する裁判所又は職務上の懲戒の裁決機関により下され、それについて不服申立てがなされていない決定によって証明された事実については、その事実に関する決定の名宛人である競技者又はその他の人において、当該決定が自然的正義の原則に反するものであることを証明しない限り、その競技者又はその他の人にとって反証できない証拠となる。
3.2.5. 聴聞会までに合理的な時間的余裕を与えた上での要請の後に、(直接又は聴聞パネルの指示に基づき電話により)聴聞会に出頭し、かつ、聴聞パネル又はICSDからの質問に対して回答することについて、競技者又はその他の人がこれを拒絶した場合には、聴聞パネルは、アンチ・ドーピング規則違反の聴聞会において、その事実を根拠として、アンチ・ドーピング規則に違反した旨を主張された競技者又はその他の人に対して不利益となる推定を行うことができる。
第4条―禁止表
4.1. 禁止表の組み込み
本規則は、WADA規程第4.1項に記載されたとおり、WADAによって公表・改訂された禁止表を組み込んでいる。
4.2. 禁止表において特定される禁止物質及び禁止方法
4.2.1. 禁止物質及び禁止方法
禁止表および/もしくはその改訂に明記されない限り、禁止表およびその改訂は、WADAにより公表された3ヶ月後に、ICSDもしくは競技連盟による特別の行為を要さずに、本規程のもとで有効となる。競技者およびその他の人全員は、さらなる形式的手続きを伴うことなく、この禁止表および、以後発効したあらゆる改訂に従うものとする。競技者およびその他の人全員は、最新版の禁止表およびそのすべての改訂事項を熟知しておくことについて責任を負う。
4.2.2. 特定物質
第10条の適用にあたり、すべての禁止物質は、蛋白同化薬及びホルモンの各分類、並びに禁止表に明示された興奮薬、ホルモン拮抗薬及び調節薬を除き、特定物質とされるものとする。「特定物質」の分類は、禁止方法を含まないものとする。
4.3. WADAによる禁止表の決定
禁止表に掲げられる禁止物質及び禁止方法、禁止表の区分への物質の分類、並びに常に若しくは競技会(時)のみにおいて禁止される物質の分類に関するWADAの判断は終局的なものであり、当該物質及び方法が隠蔽薬ではないこと、又は、競技力向上効果がなく、健康被害を及ぼさず、若しくはスポーツの精神に反するおそれがないことを根拠に競技者又はその他の人が異議を唱えることはできないものとする。
4.4. 治療使用特例(TUEs)
4.4.1. 禁止物質若しくはその代謝物、マーカーの存在、及び/又は禁止物質若しくは禁止方法の使用、使用の企て、保有若しくは投与、投与の企ては、「治療使用特例に関する国際基準」に基づき付与されたTUEの条項に適合する場合には、アンチ・ドーピング規則違反とは判断されないものとする。
4.4.2. 国際レベルの競技者が、禁止物質もしくは禁止方法を、治療目的で使用する場合は:
4.4.2.1. 競技者が、対象となる物質又は方法につき、国内アンチ・ドーピング機関より既にTUEを付与されていても、当該TUEは自動的に国際レベルの競技会に対して有効とならない。しかしながら、競技者はICSDに対し、第7条の治療使用特例の国際基準に則り、TUEを承認するよう求めることが出来る。当該TUEが「治療使用特例に関する国際基準」に定められている基準を充足する場合には、国際レベルの競技会参加を目的とする場合も同様に、ICSDはこれを承認することが出来る。ICSDによって、TUEがこれらの基準を充足しないと判断され、そのためにこれを承認しない場合には、ICSDは、当該競技者及びその国内アンチ・ドーピング機関に速やかにその旨を理由とともに通知しなければならない。当該競技者又は国内アンチ・ドーピング機関は当該通知から21日以内に、当該案件について審査してもらうために、第4.4.6項に基づいて、WADAに回付することができる。この案件が審査のためにWADAに回付された場合には、国内アンチ・ドーピング機関が付与したTUEは、WADAによる決定が下されるまでは、国内の競技会(時)及び競技会外の検査において引き続き有効となる(但し、国際レベルの競技会においては無効となる。)。この案件が審査のために、WADAに回付されなかった場合には、21日間の審査期限の経過とともにTUEはいかなる目的についても無効となる。
4.4.2.2. 競技者が、対象となる物質又は方法につき、国内アンチ・ドーピング機関よりまだTUEを付与されていない場合には、当該競技者は、必要性が生じたら、治療特例使用の国際基準の定める行程に則り、ICSDのウェブサイト(www.deaflympics.com)に掲載されている書式を用いて、すぐにICSDにTUEを直接申請しなければならない。ICSDが競技者の申請を却下するときには、ICSDは、当該競技者のみならずその国内アンチ・ドーピング機関にも速やかにその旨を理由とともに通知しなければならない。ICSDが競技者の申請を承認する場合、ICSDは、当該競技者のみならずその国内アンチ・ドーピング機関にもその旨を通知する。国内アンチ・ドーピング機関は、ICSDにより付与されたTUEが「治療使用特例に関する国際基準」に定められた基準を充足しないと考える場合には、第4.4.6項に則り、当該通知から21日以内に、この案件について審査してもらうためにWADAに回付することができる。この案件が審査のためにWADAに回付された場合には、ICSDが付与したTUEは、WADAによる決定が下されるまでは、国際レベルの競技会(時)及び競技会外の検査において引き続き有効となる(但し、国内レベルの競技会においては無効となる。)。この案件が審査のために国内アンチ・ドーピング機関によりWADAに回付されなかった場合には、ICSDの付与したTUEは、21日間の審査期限の経過とともに国内レベルの競技会について有効となる。
4.4.3. ICSDが、国際レベルの競技者ではない競技者を検査しようとする場合には、ICSDは、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関により当該競技者に付与されたTUEを認めるものとする。ICSDが、国際レベルの競技者もしくは国内レベルの競技者ではない競技者を検査する場合には、ICSDは、当該競技者が治療目的で使用している禁止物質もしくは禁止方法について遡及的TUEを申請することを認めるものとする。
4.4.4. ICSDに対し、TUEの承諾・認定を申請する場合は、必要が生じ次第直ちに、かついかなる大会においても(緊急もしくは例外的状況、または治療使用特例の国際基準第4.3項の定める状況を鑑み)、少なくとも当該競技者が次の競技会に出場する30日前に、手続きを行わなければならない。ICSDはTUEの承諾・認定を検討するパネル(「TUE委員会」)を任命するものとする。TUE委員会は、治療使用特例の国際基準に則り、速やかに申請を検討・決定するものとする。その決定は、ICSDの最終決定となり、治療使用特例の国際基準に則り、ADAMSを通じて、WADAおよび、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関を含めた、その他関連するアンチ・ドーピング機関に報告するものとする。
4.4.5. TUEの終了、取り消し、撤回、又は取り下げ
4.4.5.1. 本規程に従い付与されたTUEは、(a) さらなる告知もしくはその他の通告を要することなく、付与された期間の末日において自動的に終了するものとする。(b) TUEの付与にあたりTUE委員会が課した義務・条件に競技者が速やかに従わなかった場合、取り消されることがある。(c) TUEを付与するための条件が事実上満たされていないと後日に判断された場合、TUE委員会はこれを撤回することができる。または、(d) WADAによる審査もしくは不服申し立てにより、取り下げることができる。
4.4.5.2. このような場合、競技者は、TUEの期限切れ、取消、取り下げ、もしくは逆転前の日付に先立ち、当該競技者が問題の禁止物質もしくは禁止方法を使用もしくは保有していたとする理由に基づくいかなる措置にも従わないものとする。第7.2項に基づく、違反が疑われる分析報告の検討は、アンチ・ドーピング規則違反が疑われることをしていない日付に先立って、当該分析報告が禁止物質もしくは禁止方法の使用との整合性があるか否かという点の考慮も含むものとする。
4.4.6. TUE決定の審査及び不服申し立て
4.4.6.1. WADAは、競技者又は当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関から回付されたICSDによるTUE不承認決定について審査する。更に、WADAは競技者の国内アンチ・ドーピング機関から回付されたICSDのTUE付与決定も審査する。WADAは、影響を受ける者の要請又は独自の判断により、いつでもその他のTUE決定を審査することができる。審査されているTUE決定が「治療使用特例に関する国際基準」に定められる基準を充足する場合には、WADAはこれに干渉しない。当該TUE決定がこれらの基準を充足していない場合には、WADAはこれを取り消す。
4.4.6.2. WADAが審査しなかった、又は、WADAが審査の結果、取り消さなかったICSD(又は、国内アンチ・ドーピング機関がICSDに代わって当該申請を検討する旨を合意した場合には、国内アンチ・ドーピング機関)によるTUE決定について、競技者及び/又は競技者の国内アンチ・ドーピング機関は、第13条に則り、CASに対してのみ不服申立てを提起することができる。
4.4.6.3. TUE決定を取り消す旨のWADAの決定は、第13条に従い、影響を受ける競技者、国内アンチ・ドーピング機関及び/又はICSDによって、CASに対してのみ不服申立てを提起することができる。
4.4.6.4. TUEの付与/承認又はTUE決定の審査を求める、適切に提出された申請に対して、合理的な期間内に所定の対応を行わなかった場合には、当該申請は却下されたものとする。
第5条―検査及びドーピング捜査
5.1. 検査及びドーピング捜査の目的
検査及びドーピング捜査は、専らアンチ・ドーピングの目的でのみ行われるものとする。これらは、検査の国際基準の条項および、ICSDによる、国際基準を補足する特定の手順に則って行われる。
5.1.1. 検査は、禁止物質又は禁止方法の存在/使用のWADA規程による厳格な禁止に対する、競技者の遵守(又は非遵守)に関する分析証拠を得るために行われるものとする。検査配分、検査、検査後の活動およびすべての関連する活動は、検査に関する国際基準に適合するものとする。ICSDは、最終配置検査、ランダム検査、特定対象検査の数を、検査に関する国際基準の定める基準に沿って決定するものとする。検査および捜査に関する国際基準のすべての条項は、こうしたすべての検査に自動的に適用されるものとする。
5.1.2. ドーピング捜査は以下のとおり行われる。
5.1.2.1. 非定型報告、非定型パスポート報告、及びアスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告に関連して、第7.4項及び第7.5項にそれぞれ従い、第2.1項及び/又は第2.2項に基づきアンチ・ドーピング規則違反が発生したかを判定するためにインテリジェンス又は証拠(特に分析的証拠を含む。)を収集する目的で行われる。
5.1.2.2. その他のアンチ・ドーピング規則違反となりうる事項に関連して、第7.6項及び第7.7項にそれぞれに従い、第2.2項乃至第2.10項のいずれかの条項に基づきアンチ・ドーピング規則違反が発生したか判定するためにインテリジェンス又は証拠(特に非分析的証拠を含む。)を収集する目的で行われる。
5.1.3. ICSDは、効果的かつ高度で均衡のとれた検査配分計画、特定対象検査の計画、および/また起こり得るアンチ・ドーピング規則違反の捜査の基盤策定を目的として、入手可能なすべての情報源からアンチ・ドーピング情報を入手、評価、処理することができる。
5.2. 検査を行う権限
5.2.1. WADA規程第5.3項が定める、競技大会時の検査における司法上の制約に従い、本規則の前文に定めるすべての競技者に対し、ICSDは競技会(時)および競技会外の検査権限を有する。
5.2.2. ICSDは、検査を行う権限を有する(資格停止中の競技者も含む)あらゆる競技者に対し、いかなる時、またいかなる場所においても、検体を提供することを要請することができる。
5.2.3. WADAは、WADA規程第20.7.8条に定めるとおり、競技会(時)検査権限及び競技会外の検査権限を有するものとする。
5.2.4. ICSDが検査の一部を(直接又は国内競技連盟を経由して)国内アンチ・ドーピング機関に委託、又は、請け負わせる場合には、当該国内アンチ・ドーピング機関は、追加の検体を採取し、若しくは国内アンチ・ドーピング機関の費用負担において追加の種類の分析を行うよう分析機関に指示を与えることができる。追加の検体が採取され、又は、追加の種類の分析が行われた場合には、ICSDはその旨の通知を受けるものとする。
5.3. 競技大会時の検査
5.3.1. 別途WADA規程5.3項に定める場合を除き、単一の機関のみが、競技大会の期間の間に競技大会会場において検査を主導し、指示することにつき責任を負うべきである。国際競技大会では、検体の採取はICSD(もしくは当該競技大会の所轄組織である国際機関)により主導され、指示されるべきである。ICSD(もしくは競技大会の所轄組織である国際機関)の要請に基づき、競技大会の期間中における競技大会会場の外での検査の実施は、ICSD(もしくは当該所轄組織)と連携して行われるものとする。
5.3.2. 検査権限を有するが、競技大会において検査を主導し、指示する責任を負わないアンチ・ドーピング機関が、競技大会の期間中に競技大会会場にて競技者の検査の実施を希望する場合には、当該アンチ・ドーピング機関は当該検査を実施し、調整するための許可を取得するため、まずICSD(もしくは当該競技大会の所轄組織である国際機関)と協議するものとする。もしアンチ・ドーピング機関が、ICSD(もしくは当該競技大会の所轄組織である国際機関)からの回答に満足しない場合には、当該アンチ・ドーピング機関はWADAが公表する手続に従い、検査を実施し、調整するための方法を決定することを許可するようWADAに要請することができる。WADAは、当該検査の承認をするに先立ち、事前にICSD(もしくは当該競技大会の所轄組織である国際機関)と協議し、連絡を行わなければならない。WADAによる決定は終局的なものとし、これに対し不服を申し立てることはできないものとする。別途検査権限が付与された場合を除き、当該検査は競技会外の検査とみなされるものとする。当該検査の結果の管理は、別途当該競技大会の所轄組織の規則に定める場合を除き、当該検査を主導するアンチ・ドーピング機関が、これにつき責任を負うものとする。
5.4. 検査配分計画
検査および捜査の国際基準に従い、かつ同一の競技者に対して検査を実施する他のアンチ・ドーピング機関と連携して、ICSDは種目、競技者のカテゴリー、検査のタイプ、収集する検体のタイプ、および検体分析のタイプによって、適切に優先順位を付けた、効果的かつ高度で均衡のとれた検査配分計画を策定し、これらはすべて検査および捜査の国際基準の要件適合するものとする。ICSDは、現行の検査配分計画の写しを、WADAの求めに応じて提出するものとする。
5.5. 検査の連携
実現可能な状況において、検査は、検査に関する様々な取り組みを最大限に活用し、かつ、不要な再検査を避けることを目的として、ADAMSもしくはWADAの承認するその他のシステムを通して調整されるものとする。
5.6. 競技者の居場所情報
5.6.1. ICSDは、検査登録リスト中の、検査および捜査に関する国際基準の付録Iによる、居場所情報提出を義務付けられた競技者を特定し、検査登録リストの氏名、もしくは明確かつ特定の基準を明示したリストはADAMSを通して閲覧できるようにする。ICSDは、国内アンチ・ドーピング機関とともに、こうした競技者を特定し、その居場所情報を収集する。ICSDは必要に応じて、検査登録リストに掲載されている競技者も含め、その基準を見直し、修正し、設定する基準に合わせて、検査登録リストの掲載者を随時改訂する。競技者は、検査登録リストに登録、また削除される前に通告を受ける。検査登録リストに登録された各競技者は、検査および捜査に関する国際基準付録Iに則り、以下の行為を行う(a)自身の居場所を年に4回、ICSDに申告し、(b)常に的確かつ完全な方法で、当該情報を必要に応じて申請し、(c)どこにいても検査に対応できるようにする。
5.6.2. 第2.4項において、競技者が検査および捜査に関する国際基準の要件に従わなかったことは、居場所情報提出義務違反もしくは検査未了を宣言するための検査及び操作に関する国際基準の定める条件が充足される場合には(検査および捜査に関する国際基準において定義されるとおり)居場所情報提出義務違反もしくは検査未了とみなされるものとする。
5.6.3. ICSDの検査対象者登録リストに入っている競技者は、付録1の居場所情報要件および検査と捜査の国際基準に従う義務を、(a) 当該競技者がICSDに書面による引退届を提出する、もしくは(b) ICSDが当該競技者に対し、ICSDの検査対象者登録リストに入る基準を満たしていないことを通告する状況に至らない限り、もしくはそのようになるまでは保持するものとする。
5.6.4. 競技者に関する居場所情報は(ADAMSを通して)、WADAおよび当該競技者に検査を行う権限を有するその他アンチ・ドーピング機関と共有し、常時厳重な守秘管理下に置き、WADA規程第5.6項の定める目的のみのために使用し、こうした目的との関連が失われた際には、プライバシーおよび個人情報保護の国際基準に則って破棄されるものとする。
5.7. 引退した競技者の競技会への復帰
5.7.1. ICSDの検査対象者登録リストに含まれる競技者がICSDに引退の通知をし、その後に競技に復帰する場合には、当該競技者は、ICSDに対し、競技に復帰する意図を書面により通知し、競技会に復帰する前に6ヶ月間にわたり検査を受けられるようにする(要請された場合には、検査および捜索に関する国際基準付属文書1の居場所情報関連義務に従うことを含む。)まで、国際競技もしくは国際競技大会における競技に復帰できない。WADAは、6ヶ月前の事前の書面による通知の要件の厳格な適用が競技者にとって明白に不公平である場合には、ICSD及び国内アンチ・ドーピング機関と協議の上、その通知要件を適用しないことができる。当該決定に対しては、第13条に基づき不服申立てを提起することができる。第5.7.1項に違反して得られたすべての競技の結果は失効するものとする。
5.7.2. 競技者が資格停止期間中に競技から引退し、その後競技へ現役復帰しようとする場合には、当該競技者は、その国際競技連盟及び国内アンチ・ドーピング機関に対し、6ヶ月前に事前の書面により通知(又は当該競技者の引退した日において残存する資格停止期間が6ヶ月を超える場合、当該残存期間に相当する期間前の通知)を行い、検査を受けられるようにするまで(要請された場合には、検査および捜索に関する国際基準付属文書1の居場所情報関連義務に従うことを含む。)国際競技大会又は国内競技大会における競技に復帰しないものとする。
5.7.3. 検査対象者登録リストに含まれない競技者がICSDに引退の報告をし、その後競技に現役となり復帰しようとする場合には、当該競技者は、該当する国内アンチ・ドーピング機関に対し、6ヶ月前に事前の書面による通知を行い、通告なしの競技会外の検査を受けられるようにする(要請された場合には、検査および捜索に関する国際基準付属文書1の居場所情報関連義務に従うことを含む。)場合を除き、競技に復帰できない。
5.8. 独立オブザーバー
ICSDならびにICSDの競技会の組織委員会、また競技連盟および国内大会の組織委員会は、こうした競技大会に際して、独立オブザーバーに権限を付与し、協力する。
第6条―検体の分析
 
検体は、次に掲げる原則に基づいて分析されるものとする。
6.1. 認定分析機関及び承認分析機関の使用
第2.1項において、検体は、WADA認定分析機関、そうではない場合は、WADAにより承認された分析機関によってのみ分析される。検体分析のために使用されるWADA認定分析機関又はWADA承認分析機関の選択は、ICSDのみが決定するものとする。
6.2. 検体の分析の目的
6.2.1. 検体の分析は、禁止表において特定されている禁止物質及び禁止方法の検出、並びに、WADA規程第4.5項に記載される監視プログラムに従ってWADAが定めるその他の物質の検出、競技者の尿、血液若しくはその他の基質に含まれる関係するパラメーターについて、DNA検査及びゲノム解析を含む検査実施の支援又はその他正当なアンチ・ドーピング上の目的のために行われるものとする。検体は、将来分析を行うために採取し、保管することができる。
6.2.2. ICSDは、WADA規程第6.4項および検査と捜査の国際基準第4.7項に則り、検体の分析を分析機関に求めるものとする。
6.3. 検体の研究
競技者から書面による同意を得ない限り、研究目的のために検体を使用することはできない。WADA規程第6.2項に記載された以外の目的で検体を使用する際は、そこから特定の競技者にたどり着くことができないように、個人を特定する手段をすべて取り除かなければならない。
6.4. 検体分析及び報告の基準
分析機関は、「分析機関に関する国際基準」に基づいて検体を分析し、その結果を報告するものとする。効果的な検査を確保するために、規程第5.4.1項に引用されるテクニカルドキュメントは特定のスポーツ及び競技種目に適合するリスク評価に基づく検体分析項目を確立するものとし、分析機関は、以下の各項に定める場合を除き、これらの項目に適合する形で検体を分析するものとする。
6.4.1. ICSDは、テクニカルドキュメントに記載された分析の項目よりも広範な分析項目を使用してその検体を分析するよう、分析機関に要請することができる。
6.4.2. ICSDは、その検査配分計画に定めるとおり、そのスポーツにおける個別の事情を理由として、より簡易な分析が適切であるとWADAにより認められた場合に限り、テクニカルドキュメントに記載された項目よりも簡易な項目を使用してその検体を分析するよう、分析機関に要請することができる。
6.4.3. 「分析機関に関する国際基準」に定められているとおり、分析機関は、独自の判断及び費用負担において、テクニカルドキュメントに記載された、又は、検査管轄機関により特定された検体分析項目には含まれていない禁止物質又は禁止方法を検出する目的で、検体を分析することができる。このような分析の結果は報告されるものとし、その他のすべての分析結果と同様の有効性及び結果を有するものとする。
6.5. 検体の更なる分析
 
いかなる検体も、第6.2項の目的のため、保管され、引き続き更なる分析の対象とされる場合がある。いつでも(a) WADAおよび/また (b) ICSDによって、そのA検体及びB検体の双方の分析結果(又は、B検体の分析をする権利が放棄され若しくは分析が行われない場合には、A検体の結果)を競技者に通知するのに先立ち、更なる分析の対象とされることができる。そのような検体の更なる分析は、「分析機関に関する国際基準」並びに「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」の各要件に適合するものとする。
第7条―結果の管理
7.1. 結果の管理を実施する責任
7.1.1. ICSDは、WADA規程第7条の定める原則に従い、その監督下において競技者およびその他の人がアンチ・ドーピング規則違反を犯した場合、その結果の管理について責任を負うものとする。
7.1.2. ICSD執行委員会は、委員長および2名の委員からなるICSDアンチ・ドーピング委員会を任命するものとする。委員各位の任期は4年とする。アンチ・ドーピング委員会はICSDから、アンチ・ドーピング規則違反の疑いの通知を受け、ICSDアンチ・ドーピング委員長は本規則第7条に基づく審議を行うため、1名以上の委員(委員長を含む場合がある)を任命する。
7.2. ICSDの主導による検査からの、違反が疑われる分析報告に関する審査
 
ICSDによる検査の結果に関する管理(ICSDとの合意に基づいてWADAが実施する検査を含む)は、以下の行程で実施する:
7.2.1. すべての分析の結果は、権限を与えられた分析機関の正当な代表者がサインした報告の中で、暗号化された様式によりICSDに送付されなければならない。全ての連絡やりとりは守秘の上、ADAMSに従って行わなければならない。
7.2.2. ICSDは、違反が疑われる分析報告を受領するにあたり、(a) 適用のあるTUEが、「治療使用特例に関する国際基準」に定めるとおり既に付与され、若しくは付与される予定であるか否か、又は(b)違反が疑われる分析報告の原因となる「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」若しくは「分析機関に関する国際基準」からの明らかな乖離が存在するか否かを判断するために、審査を行うものとする。
7.2.3. 第7.2.2項の下での違反が疑われる分析報告の審査を行い、適用可能なTUE、もしくは検査および捜査の国際基準、当該違反が疑われる分析結果を検出した検査機関の国際基準からの乖離が確認された場合は、検査全体が陰性とみなされ、競技者、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関、およびWADAはその旨の通知を受けるものとする。
7.3. 違反が疑われる分析報告に関する審査を行った後の通知
7.3.1. 第7.2.2項に基づき違反が疑われる分析報告に関する審査を行った結果、適用のあるTUEの存在若しくは「治療使用特例に関する国際基準」に定められたTUEの資格、又は違反が疑われる分析報告の原因となる乖離も確認されない場合、ICSDは、第14.1項により、競技者に対して次に掲げる事項を速やかに通知しなければならない。
(a) 違反が疑われる分析報告、
(b) 違反が問われたアンチ・ドーピング規則の内容、
(c) 競技者は、B検体の分析を速やかに要求できる権利を有しており、指定された期限までに当該要求を行わなかった場合には、B検体の分析を要求する権利を放棄したとみなされること、
(d) 競技者又はICSDがB検体の分析を要求した場合にB検体の分析が行われる日時及び場所、
(e) B検体の分析が要求された場合には、競技者又は競技者の代理人は、「分析機関に関する国際基準」において規定された期間内に行われる当該B検体の開封と分析に立会う機会を有すること、及び、
(f) 競技者は、「分析機関に関する国際基準」により要請される情報を含む、A検体及びB検体の分析機関書類一式の写しを要求する権利を有すること。
ICSDが、違反が疑われる分析報告をアンチ・ドーピング規則違反として扱わないことを決定した場合には、ICSDは競技者、国内アンチ・ドーピング機関およびWADAにその旨を通知するものとする。
7.3.2. 競技者もしくはICSDの求めがあった場合、検査機関の国際基準に則り、B検体を分析する調整を行うものとする。競技者はB検体の分析に関する要件を放棄することにより、A検体の分析結果を受諾することができる。また、上記に関わらず、ICSDはB検体の分析を進めることを選択することができる。
7.3.3. 競技者および/もしくはその代理人は、B検体の分析に立ち会うことが出来るものとする。また、ICSDの代表ならびに当該競技者の国内ろう者スポーツ連盟の代表者も、立ち会うことが出来るものとする。
7.3.4. B検体の分析によりA検体の分析が確定されなかった場合には(ICSDが本件を第2.2項に基づくアンチ・ドーピング規則違反として継続して扱わないい限り)、検査全体が陰性とみなされ、競技者、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関、およびWADAはその旨の通知を受けるものとする。
7.3.5. B検体の分析により、A検体の分析が確定された場合には、競技者、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関、およびWADAはその旨の通知を受けるものとする。
7.4. 非定型報告の審査
7.4.1. 「分析機関に関する国際基準」に規定されているように、ある状況下においては、分析機関は、内生的にも生成されうる禁止物質の存在を、非定型報告、すなわち、更なるドーピング捜査の対象となる報告として、報告するように指示されることがある。
7.4.2. 非定型報告を受け取った場合には、ICSDは、(a) 適用のあるTUEが付与されているか否か、若しくは「治療使用特例に関する国際基準」に定めるとおり付与されるのか否か、又は、(b) 非定型報告の原因となる「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」若しくは「分析機関に関する国際基準」からの明らかな乖離が存在するか否かを確認するために、審査を実施するものとする。
7.4.3. 仮に、第7.4.2項に基づく非定型報告の審査を行った結果、適用のあるTUEの存在又は非定型報告の原因となる乖離が確認された場合、検査全体が陰性とみなされ、競技者、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関およびWADAは、非定型報告が、違反が疑われる分析報告として提出されるか否かについて通知を受ける。
7.4.4. 仮に、審査を行った結果、適用のあるTUEの存在又は非定型報告の原因となる乖離も確認されない場合、ICSDは、所要のドーピング捜査を実施しなければならない。当該ドーピング捜査が完了した後、第7.3.1項に則り、競技者、当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関およびWADAは、非定型報告が、違反が疑われる分析報告として提出されるか否かについて通知を受ける。
7.4.5. ICSDは、ドーピング捜査を完了し、かつ、非定型報告を、違反が疑われる分析報告として提出するかを決定するまでは、次に掲げるいずれかの事情が存在する場合を除き、非定型報告に関する通知を行わない。
7.4.5.1. ICSDがドーピング捜査の結果を出す前にB検体の分析を実施すべきであると決定した場合には、ICSDは、非定型報告や第7.3.1項(d) 乃至(f) に記載された情報に関する記述を含む通知を競技者に行った後でB検体の分析を実施することができる。
7.4.5.2. ICSDが (a) 主要競技会機関から主催する国際大会直前に (b) 国際競技大会のチームメンバーの選定の締切日に差し迫ったスポーツ団体から、主要競技会機関もしくはスポーツ機関の提供するリストに掲載されている、いかなる競技者であっても、保留となっている非定型報告があるか否か、開示するよう求められた場合、ICSDは当該競技者に対して非定型報告の最初の通知をした後、主要競技会機関もしくはスポーツ機関に、その旨を通知するものとする。
7.5. アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告及びアスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告の審査
 
アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告及びアスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告の審査は、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」及び「分析機関に関する国際基準」の定めに従い行われる。ICSDが、アンチ・ドーピング規則違反が発生したと認めた場合には、ICSDは、違反されたアンチ・ドーピング規則及び違反とされる根拠について、競技者(および当該競技者の国内ドーピング機関およびWADA)に速やかに通知するものとする。
7.6. 居場所情報関連義務違反の審査
 
ICSDは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」の付録Iに定めるとおり、ICSDに居場所情報を登録している競技者に対して、潜在的な提出義務違反及び検査未了の審査を行うものとする。ICSDが、第2.4項のアンチ・ドーピング規則違反が発生したと認めた場合には、ICSDは、自己の規則に定める方法に従い、第2.4項の違反を主張する旨及び当該主張の根拠について、競技者に(同時に当該競技者の国内アンチ・ドーピング機関およびWADAに)速やかに通知するものとする。
7.7. 第7.2項から第7.6項の規定の適用が及ばないその他のアンチ・ドーピング規則違反の審査
 
ICSDは、第7.2項から第7.6項に定められている以外のアンチ・ドーピング規則違反の可能性に関して、追加のドーピング捜査を実施するものとする。ICSDは、アンチ・ドーピング規則違反が発生したと認めた場合には、競技者又はその他の人(同時に当該競技者もしくはその他の人の国内アンチ・ドーピング機関およびWADA)に対して、違反されたアンチ・ドーピング規則及び違反とされる根拠についての通知を速やかに通知するもとする。
7.8. 従前のアンチ・ドーピング規則違反の特定
 
ICSDは、上記に定めたとおり、主張されたアンチ・ドーピング規則違反を競技者又はその他の人に通知するのに先立ち、従前のアンチ・ドーピング規則違反が存在するか否かを判断するために、ADAMSを照会し、WADAその他の関連アンチ・ドーピング機関に連絡を取るものとする。
7.9. 暫定的資格停止
7.9.1. 強制的な暫定的資格停止:A検体の分析によって、特定物質ではない禁止物質による、もしくは禁止方法による違反が疑われる分析報告が得られた結果、第7.2.2項に従って審査を行い、該当するTUEもしくは、当該違反が疑われる分析報告を検出した検査と捜査の国際基準からの乖離が認められなかった場合、第7.2項、7.3項、もしくは第7.5項が記載する通知の後直ちに、暫定的資格停止が課せられるものとする。
7.9.2. 任意の暫定的資格停止:特定物質による違反が疑われる分析報告、もしくは第7.9.1項がカバーしていないその他すべてのアンチ・ドーピング規則違反があった場合、ICSDはアンチ・ドーピング規則違反が疑われる競技者もしくはその他の人に対し、第7.2項-第7.7項に記載する検討と通知、および第8条に記載する最終聴聞に先立って、いつでも暫定的資格停止を課すことができる。
7.9.3. 第7.9.1項もしくは第7.9.2項によって暫定的資格停止が課せられる場合、当該競技者もしくはその他の人は、以下のいずれかの機会を提供されるものとする:(a) 暫定的資格停止が課せられる前もしくはその後の適切な折に、暫定的聴聞会を行う。(b) 暫定的資格停止後の適切な折に、第8条に則った迅速な最終聴聞を行う。さらに、競技者もしくはその他の人は、第13.2項に則り(第7.9.3.1項に示すように)、暫定的資格停止時の上訴を行うことができる。
7.9.3.1. 競技者が聴聞パネルにおいて、違反が汚染製品による可能性があることを立証した場合は、暫定的資格停止は解除される場合がある。聴聞パネルが、汚染製品と当該競技者が関連していると断定せず、強制的な暫定的資格停止を解除しない決定をした場合、これに対し不服申し立てを行うことはできないものとする。
7.9.3.2. 競技者もしくはその他の人が、以下の事項を証明しない限り、暫定的資格停止は実施される(もしくは解除されない):(a) アンチ・ドーピング規則違反の主張が、例えば競技者もしくはその他の人対する訴訟における明らかな欠陥により、支持されると合理的に予測することができないこと、(b) 競技者もしくはその他の人が、アンチ・ドーピング規則違反の過誤または過失がないことについての強力な反論点を有しており、そのため、そうでなければ別途当該違反を理由として課せられたであろう資格停止期間が第10.4項の適用によって完全に撤廃される可能性が高いこと、もしくは、(c)第8条に従い最終的な聴聞会に先立ち資格停止が課される場合、上京全体を考慮すると、明らかに不公平となる他の事実が存在すること。この根拠事由は狭く解釈され、真に例外的な状況にのみ適用されるべきである。例えば、競技者またはその他の人が、暫定的資格停止によってある特定の競技会もしくは大会に参加できないという事実は、上記との関係では例外的な状況下にあるということを確証するものではないものとする。
7.9.4. A検体の違反が疑われる分析報告に基づき暫定的資格停止が課されたが、それに続くB検体がA検体の分析結果を追認しない場合には、競技者は第2.1項の違反を理由としてそれ以上の暫定的資格停止は課されないものとする。競技者(又は競技者のチーム)が第2.1項の違反により競技会の出場資格を失ったが、続くB検体の分析結果がA検体の分析結果を追認しないという状況において、その時点で当該競技会にその他の影響を与えることがない場合は、当該競技者又はチームは、当該競技会に出場できるものとする。加えて、当該競技者もしくはチームは、同じ大会の他の競技会にも引き続き出場できるものとする。
7.9.5. 競技者もしくはその他の人が、アンチ・ドーピング規則違反を通告されても、暫定的資格停止が課されていないあらゆるケースにおいて、本件の問題が解決されるまで暫定的資格停止を任意に受諾する機会を与えられるものとする。
7.10. 聴聞会を行わない解決
7.10.1. アンチ・ドーピング規則違反が主張された競技者又はその他の人は、当該違反をいつでも自認し、聴聞会を放棄し、及び本規程により義務付けられ又は(本規程に基づき措置につき裁量が認められる場合には)ICSDが申し入れる措置を受諾することができる。
7.10.2. 前項の方法に代わり、アンチ・ドーピング規則違反が主張された競技者又はその他の人が、当該違反を主張するICSDが送付した通知において指定された期限内に当該主張を争わなかった場合には、当該競技者又はその他の人は、当該違反を自認し、聴聞会を放棄し、及び本規程により義務付けられ又は(本規程に基づき措置につき裁量が認められる場合には)ICSDが申し入れる措置を受諾したものとみなされるものとする。
7.10.3. 第7.10.1 項又は第7.10.2 項が適用される場合には、聴聞パネルにおける聴聞は要請されないものとする。代わりに、ICSDは当該アンチ・ドーピング規則違反行為が行われた旨及びその結果として賦課された措置を確認し、(該当する場合には)資格停止期間の最長期間が賦課されなかったことを正当化する理由を含む、賦課された資格停止期間についての完全な理由を記載した決定書を速やかに発行するものとする。ICSDは、第13.2.3 項に基づき不服申立てを行う権利を有する他のアンチ・ドーピング機関に当該決定の写しを送付するものとし、第14.3.2項に従い当該決定を一般開示するものとする。
7.11. 結果の管理に関する決定の通知
ICSDが、アンチ・ドーピング規則違反行為が行われたことを主張し、アンチ・ドーピング規則違反の主張を撤回し、暫定的資格停止を課し、又は、聴聞会の開催のない制裁の賦課につき競技者又はその他の人と合意するすべての場合において、ICSDは、第14.2.1項に定めるとおり、第13.2.3項に基づき不服申立てを提起する権利を有する他のアンチ・ドーピング機関に通知するものとする。
7.12. 競技からの引退
ICSDによる結果管理過程の進行中に競技者又はその他の人が引退する場合には、結果の管理を実施しているICSDは、当該結果管理過程を完了させる権限を保有し続ける。仮に、競技者又はその他の人が結果管理過程の開始前に引退する場合には、競技者又はその他の人がドーピング防止規則に違反した時点において競技者又はその他の人についての結果の管轄に責任を有していたICSDが、アンチ・ドーピング規則に則り、結果の管理を実施する権限を有する。
第8条:公正な聴聞を受ける権利
8.1. 公正な聴聞会の原則
8.1.1. ICSDが競技者もしくはその他の人に、アンチ・ドーピング規則違反の疑いの通知を送付し、競技者もしくはその他の人が、第7.10.1項もしくは第7.10.2項に則り、聴聞会を放棄しない場合には、聴聞と判決はICSDアンチ・ドーピング委員会に委ねられる。
8.1.2. 聴聞は合理的な時期に設定し、完了するものとする。本アンチ・ドーピング規則下にある大会と連動して聴聞を実施する時は、聴聞パネルが許可によって、簡易に行う場合がある。
8.1.3. ICSDアンチ・ドーピング委員会は、聴聞後の手続き行程を決定するものとする。
8.1.4. WADAおよび、当該競技者もしくはその他の人の国内ろう者スポーツ連盟は、オブザーバーとして聴聞に出席することができる。あらゆる場合も、ICSDはWADAに保留の現況およびすべての聴聞の結果を常に報告するものとする。
8.1.5. ICSDアンチ・ドーピング委員会は、すべての当事者に対し、いかなる時も公正中立に行動するものとする。
8.2. 決定
8.2.1. 聴聞終了時、もしくはその後の適切な時に、ICSDアンチ・ドーピング委員会は、決定の理由を全面的に記述し、課す予定の資格停止の期間、(該当する場合は)将来的に起こり得る措置を行わない正当な理由も含めて記載した文書を発行するものとする。
8.2.2. 第13条に示すとおり、決定はCASに上訴される場合がある。決定の文書の写しは、競技者もしくはその他の人、および第13.2.3項に基づき、上訴の権利を有するアンチ・ドーピング機関に提供するものとする。
8.2.3. 決定に対する上訴がない場合、(a) 当該決定が、アンチ・ドーピング規則違反が行われたことを認定している場合は、第14.3.2項が示す通り、決定を一般開示するものとする。だが、(b) 当該決定が、アンチ・ドーピング規則違反が行われていないことを認定している場合は、当該決定に従う競技者もしきはその他の人との合意があった時のみ、決定を一般開示するものとする。ICSDはそのような合意を得るために、合理的な方法を用いるものとし、合意が得られた場合、当該決定は全面的に、もしくは当該競技者その他の人が承認した形式で一般開示するものとする。18歳未満の者の場合、第14.3.6項に含まれる原則が適用されるものとする。
8.3. CASにおける1回限りの聴聞会
 
アンチ・ドーピング規則違反が主張された事案は、競技者、ICSD、WADA、その他、第一審の聴聞会決定に対してCASに不服申し立てを提起する権利を有する国内アンチ・ドーピング機関の同意をもって、CASが直接聴聞を行うことができ、その場合にはこれに先立つ聴聞会を行うことは課せられない。
第9条―個人の成績の自動的失効
 
個人スポーツにおける競技会(時)検査に関してアンチ・ドーピング規則違反があった場合には、当該競技会において得られた個人の成績は、自動的に失効し、その結果として、当該競技会において獲得されたメダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。
第10条―個人に対する制裁措置
10.1. アンチ・ドーピング規則違反が発生した競技大会における成績の失効
競技大会開催期間中又は競技大会に関連してアンチ・ドーピング規則違反が発生した場合、当該競技大会の所轄組織である組織の決定により、当該競技大会において得られた個人の成績は自動的に失効し、当該競技大会において獲得されたメダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。但し、第10.1.1項に定める場合は、この限りではない。
 
競技大会における他の結果を失効させるか否かを検討する際の要素としては、例えば、競技者によるアンチ・ドーピング規則違反の重大性の程度や、他の競技会において競技者に陰性の検査結果が出たか否かなどが挙げられる。
10.1.1. 競技者が当該違反に関して自己に「過誤又は過失がないこと」を証明した場合には、アンチ・ドーピング規則違反が発生した競技会以外の競技会における競技者の個人の成績は失効しないものとする。但し、アンチ・ドーピング規則違反が発生した競技会以外の競技会における当該競技者の成績が、当該違反による影響を受けていると考えられる場合は、この限りではない。
10.2. 禁止物質及び禁止方法の存在、使用若しくは使用の企て、又は、保有に関する資格停止
 
第2.1項、第2.2項又は第2.6項の違反による資格停止期間は、第10.4項、第10.5項又は第10.6項に基づく短縮又は猶予の可能性を条件として、以下のとおりとする。
10.2.1. 資格停止期間は、次に掲げる場合には4 年間とする:
10.2.1.1. アンチ・ドーピング規則違反が特定物質に関連しない場合。但し、競技者又はその他の人が、当該アンチ・ドーピング規則違反が意図的ではなかった旨を立証できた場合を除く。
10.2.1.2. アンチ・ドーピング規則違反が特定物質に関連し、ICSDが、当該アンチ・ドーピング規則違反が意図的であった旨立証できた場合。
10.2.2. 第10.2.1項が適用されない場合には、資格停止期間は2年間とする。
10.2.3. 「意図的」という用語は、第10.2項及び第10.3項において用いられる場合には、ごまかす行為を行う競技者を指す。したがって、当該用語は、競技者又はその他の人が、自らの行為がアンチ・ドーピング規則違反を構成することを認識した上でその行為を行ったか、又は、当該行為がアンチ・ドーピング規則違反を構成し若しくはアンチ・ドーピング規則違反の結果に至りうる重大なリスクがあることを認識しつつ、当該リスクを明白に無視したことを求めている。競技会(時)においてのみ禁止された物質についての違反が疑われる分析報告の結果としてのアンチ・ドーピング規則違反は、当該物質が特定物質である場合であって、競技者が、禁止物質が競技会外で使用された旨を立証できるときは、「意図的」ではないものと推定されるものとする。競技会(時)においてのみ禁止された物質による違反が疑われる分析報告の結果としてのアンチ・ドーピング規則違反は、当該物質が特定物質ではない場合であって、競技者が、禁止物質が競技力とは無関係に競技会外で使用された旨を立証できるときは、「意図的」であったと判断してはならない。
10.3. その他のアンチ・ドーピング規則違反に関する資格停止
 
第10.2項に定められた以外のアンチ・ドーピング規則違反に関する資格停止期間は、第10.5項又は第10.6項が適用される場合を除き、次のとおりとするものとする。
10.3.1. 第2.3項又は第2.5項の違反の場合には、資格停止期間は4年間とする。但し、競技者が検体の採取に応じない場合に、(第10.2.3項で定義するところにより)アンチ・ドーピング規則違反が意図的に行われたものではない旨を立証できた場合はこの限りではなく、その場合には資格停止期間は2年間とするものとする。
10.3.2. 第2.4項の違反の場合には、資格停止期間は2年間とするものとする。但し、競技者の過誤の程度により最短1年間となるまで短縮することができる。本項における2年間から1年間までの間での資格停止期間の柔軟性は、直前の居場所情報変更パターン又はその他の行為により、競技者が検査の対象となることを避けようとしていた旨の重大な疑義が生じる場合には当該競技者にはこれを適用しない。
10.3.3. 第2.4項(居場所情報未提出又は検査未了)の違反の場合、資格停止期間は、当該競技者の過誤の程度に基づき、最低1年間から最高で2年間とする。
第2.7項又は第2.8項の違反の場合には、資格停止期間は、違反の重大性の程度により、最短で4年間、最長で永久資格停止とするものとする。18歳未満の者に関連する第2.7項又は第2.8項の違反は、特に重大な違反であると考えられ、サポートスタッフによる違反が特定物質に関する違反以外のものであった場合には、当該サポートスタッフに対して永久資格停止が課されるものとする。さらに、第2.7項又は第2.8項の重大な違反がスポーツに関連しない法令違反にも及ぶ場合には、権限のある行政機関、専門機関又は司法機関に対して報告がなされるものとする。
10.3.4. 第2.9項の違反につき、賦課される資格停止期間は、違反の重大性の程度により、最短2年、最長4年とするものとする。
10.3.5. 第2.10項の違反につき、資格停止期間は2年間とするものとする。但し、競技者又はその他の人の過誤の程度及び当該事案のその他の事情により、最短1年間となるまで短縮することができる。
10.4. 過誤又は過失がない場合における資格停止期間の取消し
 
個別事案において、競技者が「過誤又は過失がないこと」を証明した場合には、その証明がなければ適用されたであろう資格停止期間は取り消されるものとする。
10.5. 「重大な過誤又は過失がないこと」に基づく資格停止期間の短縮
10.5.1. 第2.1項、第2.2項又は第2.6項の違反に基づく特定物質又は汚染製品に関する制裁措置の短縮
10.5.1.1. 特定物質
アンチ・ドーピング規則違反が特定物質に関連する場合において、競技者又はその他の人が「重大な過誤又は過失がないこと」を立証できるときには、資格停止期間は、競技者又はその他の人の過誤の程度により、最短で資格停止期間を伴わない譴責とし、最長で2年間の資格停止期間とする。
10.5.1.2. 汚染製品
競技者又はその他の人が「重大な過誤又は過失がないこと」を立証できる場合において、検出された禁止物質が汚染製品に由来したときには、資格停止期間は、競技者又はその他の人の過誤の程度により、最短で資格停止期間を伴わない譴責とし、最長で2年間の資格停止期間とするものとする。
10.5.2. 第10.5.1.の適用を超えた「重大な過誤又は過失がないこと」の適用
競技者又はその他の人が、第10.5.1項が適用されない個別の事案において、自らが「重大な過誤又は過失がないこと」を立証した場合には、立証がなかった場合に適用されたであろう資格停止期間は、第10.6項に該当した場合の更なる短縮又は取消しに加え、競技者又はその他の人の過誤の程度により、短縮することができる。但し、かかる場合において、短縮された後の資格停止期間は、立証がなかった場合に適用されたであろう資格停止期間の2分の1を下回ってはならない。別段適用されたであろう資格停止期間が永久に亘る場合には、本項に基づく短縮された後の資格停止期間は8年を下回ってはならない。
10.6. 資格停止期間の取消し、短縮若しくは猶予又は過誤以外を理由とするその他の措置
10.6.1. アンチ・ドーピング規則違反を発見又は証明する際の実質的な支援
10.6.1.1. ICSDは、第13条に基づく不服申立てに対する終局的な決定又は不服申立期間の満了に先立ち、競技者又はその他の人がアンチ・ドーピング機関、刑事司法機関又は懲戒機関に対して、実質的な支援を提供し、その結果、(i)アンチ・ドーピング機関が他の人によるアンチ・ドーピング規則違反を発見し若しくは該当手続を提起し、又は、(ii) 刑事司法機関若しくは懲戒機関が他の人により犯された刑事犯罪若しくは職務規程に対する違反を発見し若しくは該当手続を提起するに至り、実質的な支援を提供した人により提供された情報が、ICSDにより利用可能となった場合には、その事案において課される資格停止期間の一部を猶予することができる。
第13条による不服申立てに対する終局的な決定又は不服申立ての期間満了の後においては、ICSDは、WADAの承認を得た場合にのみ、実質的な支援及びそれに伴う結果がなければ適用されたであろう資格停止期間の一部を猶予することができる。実質的な支援及びそれに伴う結果がなければ適用された資格停止期間が猶予される程度は、競技者又はその他の人により行われたアンチ・ドーピング規則違反の重大性及び競技者又はその他の人により提供されたスポーツにおけるドーピングの根絶のための実質的な支援の重要性により定まるものとする。資格停止期間は、実質的な支援及びそれに伴う結果がなければ適用された資格停止期間の4分の3を超えては猶予されない。実質的な支援及びそれに伴う結果がなければ適用されたであろう資格停止期間が永久である場合には、本項に基づき猶予されない期間は8年間を下回らないものとする。競技者又はその他の人が、継続的に、協力せず、資格停止期間の猶予の根拠となった完全かつ信頼性を有する実質的な支援を行わない場合には、ICSDは、元の資格停止期間を復活させるものとする。ICSDが、猶予された資格停止期間を復活させ、又は、猶予された資格停止期間を復活させない旨決定した場合には、第13条に基づき不服申立てを行う権利を有するいかなる人も、当該決定に対して不服申立てを提起することができる。
10.6.1.2. WADAは、競技者又はその他の人がアンチ・ドーピング機関に更に実質的な支援を提供することを促すために、ICSDの要請又はアンチ・ドーピング規則違反を行った(又は、行ったと主張される)競技者若しくはその他の人の要請により、第13条に基づく終局的な不服申立ての決定の後を含む、結果の管理の過程のいかなる段階においても、本来適用されたであろう資格停止期間その他の措置に関して適切な猶予となると判断する内容について、承認することができる。WADAは、例外的な状況においては、実質的な支援があった場合、資格停止期間その他措置に関し、本条に定める期間・措置を上回ってこれを猶予することのみならず、資格停止期間を設けないこと並びに/又は賞金の返還若しくは罰金・費用の支払を命じないことについても承認することができる。WADAによる承認は、本項で別途定めるとおり、制裁措置の復活に服するものとする。第13条に関わらず、本項の文脈におけるWADAの決定は、他のアンチ・ドーピング機関による不服申立ての対象とはならないものとする。
10.6.1.3. ICSDが、実質的な支援を理由として、実質的な支援がなければ適用されたであろう制裁措置の一部を猶予した場合には、当該決定を根拠づける正当な理由を記載する通知を、第14.2項の定めに従い、第13.2.3項に基づき不服申立てを行う権利を有する他のアンチ・ドーピング機関に対して提供するものとする。WADAは、アンチ・ドーピングの最善の利益に適うと判断する特殊な状況においては、実質的な支援に関する合意又は提供されている実質的な支援の性質についての開示を制限し、又は、遅延させる適切な機密保持契約を締結する権限をICSDに授権することができる。
10.6.2. その他の証拠がない場合におけるアンチ・ドーピング規則違反の自認
アンチ・ドーピング規則違反を証明しうる検体の採取の通知を受け取る前に(又は、第2.1項以外のアンチ・ドーピング規則違反事案において、第7条に従って自認された違反に関する最初の通知を受け取る前に)、競技者又はその他の人が自発的にアンチ・ドーピング規則違反を自認し、当該自認が、自認の時点で当該違反に関する唯一の信頼できる証拠である場合には、資格停止期間を短縮することができる。但し、短縮された後の資格停止期間は、当該事情がなければ適用されたであろう資格停止期間の半分を下回ることはできない。
10.6.3. 第10.2.1項又は第10.3.1項に基づき制裁措置の賦課される違反について問われた後における、アンチ・ドーピング規則違反の速やかな自認
 
第10.2.1項又は第10.3.1項(検体の採取を回避し若しくは拒絶し、又は、検体の採取を不当に改変した場合)に基づき4年間の制裁措置を課される可能性のある競技者又はその他の人は、ICSDにより問われた後に、主張されたアンチ・ドーピング規則違反につき速やかに自認することにより、またWADA及びICSD双方の裁量及び承認に基づき、違反の重大性及び競技者又はその他の人の過誤の程度により、最短2年間となるまで資格停止期間の短縮を受けることができる。
10.6.4. 制裁措置の軽減に関する複数の根拠の適用
 
競技者又はその他の人が、第10.4項、第10.5項又は第10.6項における2つ以上の規定に基づき、制裁措置の軽減について権利を有することを証明した場合には、当該事情がなければ適用されたであろう資格停止期間は、第10.6項に基づく短縮又は猶予の適用前に、第10.2項、第10.3項、第10.4項及び第10.5項に従って決定されるものとする。競技者又はその他の人が資格停止期間の短縮又は猶予の権利を第10.6項に基づき証明した場合には、資格停止期間は、短縮又は猶予できる。但し、短縮又は猶予された後の資格停止期間は、当該事情がなければ適用されたであろう資格停止期間の4分の1を下回ることはできない。
10.7. 複数回の違反
10.7.1. 競技者又はその他の人によるアンチ・ドーピング規則に対する2回目の違反につき、資格停止期間は、以下に掲げる事項のうち、最も長い期間とする。
(a) 6ヶ月間
(b) アンチ・ドーピング規則に対する1回目の違反につき、課された資格停止期間の2分の1。但し、第10.6項に基づく短縮を考慮しない。又は、
(c) 2回目のアンチ・ドーピング規則違反を、あたかも初回の違反であるかのように取り扱ったうえで、それに適用可能な資格停止期間の2倍。但し、第10.6項に基づく短縮を考慮しない。
上記において定まった資格停止期間は、第10.6項の適用により、更なる短縮の対象となりうる。
10.7.2. 3回目のアンチ・ドーピング規則違反は常に永久の資格停止となる。但し、3回目のアンチ・ドーピング規則違反が第10.4項若しくは第10.5項の資格停止期間の取消し若しくは短縮の要件を満たす場合、又は、第2.4項に対する違反に関するものである場合にはこの限りではない。上記の場合には、資格停止期間は8年から永久資格停止までとする。
10.7.3. 競技者又はその他の人が過誤又は過失がないことを立証したアンチ・ドーピング規則違反は、本項において従前の違反とは判断されないものとする。
10.7.4. 潜在的な複数違反に関する追加的な規則
10.7.4.1. 第10.7項に基づいて制裁措置を課すことにおいて、競技者又はその他の人が第7条に基づくアンチ・ドーピング規則違反の通知を受けた後に、又は、ICSDがアンチ・ドーピング規則違反の通知をするために合理的な努力を行った後に、当該競技者又は当該人が別のアンチ・ドーピング規則違反を行ったことをICSDが証明できた場合にのみ、当該アンチ・ドーピング規則違反は2回目のアンチ・ドーピング違反であると判断される。ICSDが当該事実を証明することができない場合には、当該2 回の違反は、全体として一つの1回目の違反として扱われ、当該2回の違反各々に対する制裁措置のうち、より厳しい制裁措置が課されるものとする。
10.7.4.2. 1回目のアンチ・ドーピング規則違反に対する制裁措置の賦課の後、ICSDが1回目の違反に関する通知以前に発生した競技者又はその他の人によるアンチ・ドーピング規則違反の事実を発見した場合には、ICSDは、仮に2つの違反が同時に裁定されていたならば課されたであろう制裁措置に基づいて追加の制裁措置を課すものとする。複数のアンチ・ドーピング規則違反のうちより早い方のアンチ・ドーピング規則違反まで遡ったすべての競技会における結果は、第10.8項に規定されているとおりに失効する。
10.7.5. 10年以内の複数回のアンチ・ドーピング規則違反
 
第10.7項の適用において、各アンチ・ドーピング規則違反を複数回の違反とみなすためには、当該各違反が10年以内に発生していなければならない。
10.8. 検体の採取又はアンチ・ドーピング規則違反後の競技会における成績の失効
 
第9条に基づき、検体が陽性となった競技会における成績が自動的に失効することに加えて、陽性検体が採取された日(競技会(時)であるか競技会外であるかは問わない。)又はその他のアンチ・ドーピング規則違反の発生の日から、暫定的資格停止又は資格停止期間の開始日までに獲得された競技者のすべての競技成績は、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効するものとし、その結果として、メダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。
10.9. CAS仲裁費用及び剥奪賞金の負担
 
CAS仲裁費用及び剥奪賞金の支払いの優先順位は、次のとおりとする。第一に、CASの裁定した費用の支払い。第二に、ICSDの費用の償還。
10.10. 金銭的措置
競技者もしくはその他の人がアンチ・ドーピング規則違反を犯した場合、ICSDはその裁量かつ比例制の原則に基づき、a) 課された資格停止期間の如何に関わらず、当該アンチ・ドーピング規則違反に関連して生じた負担を競技者またはその他の人へ弁済すること/または、b)別段適用される資格停止期間の上限期間がすでに課された場合に限り、500米ドルを上限として、当該競技者もしくはその他の人に対し罰金を科すること、を選択することができる。
 
金銭的制裁措置もICSDの負担への弁済も、本規程もしくは世界規程に基づき適用される資格停止その他の制裁措置を軽減する根拠とは判断されない。
10.11. 資格停止期間の開始
 
以下に定める場合を除き、資格停止期間は、聴聞パネルが資格停止を定める終局的な決定を下した日、又は、聴聞会に参加する権利が放棄され若しくは聴聞会が行われない場合には、資格停止を受け入れた日若しくは別途資格停止措置が課された日を起算日として開始するものとする。
10.11.1. 競技者又はその他の人の責に帰すべきではない遅延
聴聞手続又はドーピング・コントロールの各局面において競技者又はその他の人の責に帰すべきではない大幅な遅延が発生した場合には、ICSDは、最大で、検体の採取の日又は直近のその他のアンチ・ドーピング規則違反の発生日のいずれかまで、資格停止期間の開始日を遡及させることができる。資格停止期間(遡及的資格停止を含む)の間に獲得された一切の競技結果は、失効するものとする。
10.11.2. 適時の自認
 
競技者又はその他の人が、ICSDもしくは国内ろう者スポーツ連盟により、アンチ・ドーピング規則違反に問われた後、速やかに(競技者にとっては、どのような場合であっても競技者が再度競技に参加する前に)アンチ・ドーピング規則違反を自認した場合には、最大で、検体の採取の日又は直近のその他のアンチ・ドーピング規則違反の発生日のいずれかまで資格停止期間の開始日を遡及させることができる。但し、いずれの事案においても、本条が適用される場合には、競技者又はその他の人は少なくとも資格停止期間の半分について、競技者又はその他の人が制裁措置の賦課を受け入れた日、制裁措置を賦課する聴聞パネルが決定を下した日又は制裁措置がその他の方法で賦課された日から開始して、これに服するものとする。本項は、資格停止期間が第10.6.3項により既に短縮されている場合には適用されないものとする。
10.11.3. 服した暫定的資格停止又は資格停止期間の控除
10.11.3.1. 競技者又はその他の人に暫定的資格停止が課され、かつ、当該競技者又はその他の人がこれを遵守した場合、当該競技者又はその他の人は最終的に課されうる資格停止期間から、当該暫定的資格停止期間の控除を受けるものとする。決定に従い資格停止期間に服した場合で、当該決定に対し後日不服申立てが提起されたときには、当該競技者又はその他の人は、不服申立て後に最終的に課される資格停止期間から、服した資格停止期間の控除を受けるものとする。
10.11.3.2. 競技者又はその他の人が、書面により、ICSDからの暫定的資格停止を自発的に受け入れ、その後暫定的資格停止を遵守した場合には、当該競技者又はその他の人は最終的に課される資格停止期間から、自発的な暫定的資格停止期間の控除を受けるものとする。競技者又はその他の人の自発的な暫定的資格停止の受入れを証する書面の写しは、第14.1項に基づき速やかに、主張されたアンチ・ドーピング規則違反の通知を受ける資格を有する各当事者に対して提出されるものとする。
10.11.3.3. 資格停止期間に対する控除は、競技者が競技に参加せず、又は、所属チームから参加を停止させられていたか否かにかかわらず、暫定的資格停止又は自発的な暫定的資格停止の発効日以前の期間に対しては与えられないものとする。
10.11.3.4. チームスポーツにおいて、資格停止期間がチームに課される場合には、公平性の観点から別段の要請がなされる場合を除き、資格停止期間は資格停止を賦課した聴聞パネルによる終局的決定日に開始するものとし、又は、聴聞を受ける権利が放棄されたときには、資格停止期間が受諾された日若しくは別途賦課された日に開始するものとする。チームに対する暫定的資格停止期間は(賦課されたか、自発的に受諾されたかを問わず)、服すべき合計資格停止期間から控除されるものとする。
10.12. 資格停止期間中の地位
10.12.1. 資格停止期間中の参加の禁止
資格停止を宣言された競技者又はその他の人は、当該資格停止期間中、署名当事者、署名当事者の加盟機関又は署名当事者の加盟機関のクラブ若しくは他の加盟機関が認定し、若しくは主催する競技会若しくは活動(但し、認定されたアンチ・ドーピング関連の教育プログラム若しくはリハビリテーション・プログラムは除く。)又は、プロフェッショナルリーグ、国際レベル若しくは国内レベルの競技大会機関が認定し、若しくは主催する競技会、又は、政府機関から資金拠出を受けるエリート若しくは国内レベルのスポーツ活動には、いかなる立場においても参加できない。
 
課された資格停止期間が4年間より長い競技者又はその他の人は、4年間の資格停止期間経過後、本規程署名当事者若しくはWADA規程署名当事者の一員から公認されておらず、又は、その他これらの管轄の下にない国内スポーツの競技大会に、競技者として参加することができる。但し、当該競技の競技大会は、資格停止期間でなければ当該競技者又はその他の人が、国内選手権大会又は国際競技大会への出場資格を直接的又は間接的に取得できる(又は、国内選手権大会若しくは国際競技大会に向けて得点を累積できた)水準の大会であってはならず、また、いかなる立場においても、18歳未満の者と共に活動する競技者又はその他の人に関連する大会であってはならない。
 
資格停止期間が課された競技者又はその他の人は、引き続き検査の対象となるものとする。
10.12.2. トレーニングへの復帰
 
第10.12.1項の例外として、競技者は (1) 競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は (2) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間のうち、いずれか短い方の間に、チームとトレーニングするために、又は、ICSDの加盟機関の加盟クラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。
10.12.3. 資格停止期間中の参加の禁止の違反
 
資格停止の宣告を受けた競技者又はその他の人が、資格停止期間中に第10.12.1項の参加の禁止に違反した場合には、当該参加に伴う結果は失効し、元の資格停止期間と同じ長さの新たな資格停止期間が元の資格停止期間の終わりに追加されるものとする。新たな資格停止期間は競技者又はその他の人の過誤の程度及び当該事案のその他の状況に基づき調整されうる。競技者又はその他の人が参加の禁止に違反したか否か、及び、調整が妥当であるか否かは、当初の資格停止期間の賦課に至った結果管理を行ったアンチ・ドーピング機関により決定されなければならない。当該決定に対しては、第13条に基づき不服申立てを提起することができる。
 
サポートスタッフ又はその他の人が、資格停止中の参加禁止に違反した人を支援した場合には、ICSDは、当該支援につき、第2.9項違反に基づく制裁措置を課すものとする。
10.12.4. 資格停止期間中の補助金の停止
加えて、第10.4項又は第10.5項のとおり制裁措置が軽減される場合を除き、アンチ・ドーピング規則違反については、当該人が受けていたスポーツ関係の補助金又はその他のスポーツ関係の便益の全部又は一部は、ICSD、ICSDの加盟機関により停止される。
10.13. 制裁措置の自動公開
各制裁措置のうちの義務的事項として、第14.3項に定めるとおり、自動公開が含まれるものとする。
第11条―チームに対する措置
11.1. チームスポーツの検査
 
チームスポーツのチーム構成員の2名以上が競技大会に関連して、第7条のアンチ・ドーピング規則違反の通知を受けた場合には、当該競技大会の所轄組織は、当該競技大会の期間中に、当該チームに対し適切な特定対象検査を実施するものとする。
11.2. チームスポーツに対する措置
 
チームスポーツのチーム構成員の3名以上が競技大会の期間中にアンチ・ドーピング規則に違反したことが明らかになった場合には、当該競技者個人に対するアンチ・ドーピング規則違反の措置に加え、当該競技大会の所轄組織は、当該チームに対しても、適切な制裁措置(例、得点の剥奪、競技会又は競技大会における失効その他の制裁措置)を課すものとする。
11.3. 競技大会の所轄組織はチームスポーツに関してより厳格な措置を定めることができる
 
競技大会の所轄組織は、当該競技大会について、チームスポーツに対し第11.2項よりも厳格な措置を課す競技大会の規則を定めることを選択できる。
第12条―国内ろう者スポーツ連盟に対する制裁措置と負担
12.1. ICSDは、本アンチ・ドーピング規則を遵守しない国内ろう者スポーツ連盟に対し、一部またはすべての資金援助、あるいは非資金援助を留保する権限を有する。
12.2. 当該競技者もしくはその他の人が属する国内競技連盟は、本規程違反にかかるICSDのすべての負担(検査機関利用料、聴聞の費用、旅費を含む。ただし、これだけに限定はされない)を弁済する義務を負うものとする。
12.3. ICSDは、競技大会に参加する役員ならびに競技者の認識ならびに適格性を鑑み、国内ろう者スポーツ連盟に対して、とりわけ、国際競技大会および罰金に関し、以下の要件に基づき、追加の規律上の措置を下すことがある。
12.3.1. 国内ろう者スポーツ連盟に属する競技者もしくはその他の人が、国内競技連盟や国内アンチ・ドーピング機関の他、ICSDもしくはアンチ・ドーピング機関が実施した検査において、12ヶ月間の期間中に本規程に4回以上違反した場合(第2.4項に関連する違反を除く)。ICSDは裁量に応じて以下のいずれかの措置を選択する:(a) 国内ろう者スポーツ連盟のすべての役員が、最長2年間、ICSDのいかなる活動にも参加することを禁じる。かつ/または (b) 国内ろう者スポーツ連盟に5,000米ドル以内の罰金を科す。(本規則の目的のため、第12.3.2項に従って支払われたすべての罰金は、査定をうけたいかなる罰金からも控除される)
12.3.1.1. 国内ろう者スポーツ連盟に属する競技者もしくはその他の人が、第12.3.1項に明記された違反の他に、4件を超える本アンチ・ドーピング規則違反(第2.4項に関わる違反を除く)を、ICSDもしくは、競技連盟あるいは国内アンチ・ドーピング機関ではないアンチ・ドーピング機構が実施した検査から12か月以内に犯した場合、ICSDは当該国内ろう者スポーツ連盟の会員資格を、最長4年間停止する場合がある。
12.3.2. 国内競技連盟に属する1名以上の競技者もしくはその他の人が、国際大会期間中にアンチ・ドーピング規則違反を犯した場合、ICSDは国内ろう者スポーツ連盟に最大2,500米ドルの罰金を科す場合がある。
12.3.3. 国内ろう者スポーツ連盟が、ICSDから競技者の居場所情報の提供を求められてから、それを堅実に提供する努力を怠った場合、ICSDは当該国内ろう者スポーツ連盟に対し、競技者1名に対し最大1,000米ドルの罰金に加え、当該競技連盟の競技者に対する検査にかかる費用を請求する場合がある。
第13条―不服申立て
13.1. 不服申立ての対象となる決定
関連諸規則に基づいて下された決定については、以下の第13.2項から第13.7項までの規程又はWADA規程若しくは国際基準に従い不服申立てを行うことができる。当該決定は、不服申立審査機関が別の命令を下さない限り、不服申立期間中においても引き続き効力を有するものとする。不服申立手続が開始されるためには、事前にアンチ・ドーピング機関の規則に規定された事後的審査が十分にし尽くされなければならない。但し、当該審査は、以下の第13.2.2項(第13.1.3項に規定された事項を除く。)に定められた原則を遵守しなければならない。
13.1.1. 審査範囲の非限定
 
不服申立ての審査範囲は、当該案件に関連するすべての論点を含み、当初の決定の審査者が審査した論点又は審査範囲に限定されない。
13.1.2. 不服申立機関は不服申立てのなされた判断に拘束されない
 
CASはその決定を下すにあたり、その決定に対し不服申立てが提起されている組織により行使された裁量に服することを要さない。
13.1.3. WADAは内部的救済を尽くすことを義務づけられない
 
第13条に基づきWADAが不服申立てを行う権利を有し、かつ、ICSDもしくは当該競技連盟の手続において、その他の当事者が終局的な決定に対し不服申立てをしない場合には、WADAは当該決定に対し、ICSDもしくは当該競技連盟の過程における他の救済措置を尽くすことなく、CASに対し直接不服申立てを行うことができる。
13.2. アンチ・ドーピング規則違反、措置、暫定的資格停止、決定の承認、及び管轄に関する決定に対する不服申立て
 
アンチ・ドーピング規則に違反した旨の決定、アンチ・ドーピング規則違反の措置を課す、又は、課さない旨の決定、アンチ・ドーピング規則違反がなかった旨の決定、アンチ・ドーピング規則違反に関する手続が手続上の理由(例えば、時効を含む。)により進めることができないという決定、引退した競技者が競技に復帰する際の第5.7.1項に基づく6ヶ月前の通知要件に対し例外を付与しない旨のWADAによる決定、WADA規程第7.1項に基づき結果の管理を課すWADAによる決定、違反が疑われる分析報告又は非定型報告をアンチ・ドーピング規則違反として主張しないこととするICSDによる決定、若しくは第7.7項によるドーピング捜査の後にアンチ・ドーピング規則違反に関する手続を進めないこととするアンチ・ドーピング機関による決定、暫定聴聞会の結果として暫定的資格停止を課す決定、ICSDによる第7.9項の非遵守、アンチ・ドーピング機関が、主張されたアンチ・ドーピング規則違反若しくはその措置につき判断する管轄権を有さない旨の決定、資格停止期間を猶予し若しくは猶予しない旨、若しくは第10.6.1項に基づき猶予された資格停止期間を復活し若しくは復活しない旨の決定、第10.12.3項の決定、並びに第15条に基づく別のアンチ・ドーピング機関の決定を承認しない旨のアンチ・ドーピング機関の決定については、本第13.2項から第13.7項の定めに基づいてのみ不服申立てを行うことができる。
13.2.1. 国際レベルの競技者又は国際競技大会に関連する不服申立て
国際競技大会への参加により発生した事案又は国際レベルの競技者が関係した事案の場合には、当該決定は、CASにのみ不服申立てを行うことができる。
13.2.2. その他の競技者又はその他の人が関係する不服申立て
第13.2.1項が適用されない場合には、当該決定は、当該競技者およびその他の人を管轄する国内アンチ・ドーピング機関が定めた規則に従って独立かつ公平な機関に不服申立てを行うことができる。当該不服申立てに関する規則は、次に掲げる原則を尊重するものとする:適時の聴聞会、公正かつ公平な聴聞パネル、自費で代理人を立てる権利、適切な時期における、書面による、理由付の決定。もし国内アンチ・ドーピング機関がそのような機関を設立していない場合、そのような訴訟に該当する条項に則り、その決定はCASに上告される場合がある。
13.2.3. 不服申立てを行う権利を有する人
第13.2.1項に定められている事案の場合、CASに不服申立てを行う権利を有する当事者は次のとおりとする。
(a) 不服申立てを行う決定の対象となった、競技者又はその他の人
(b) 当該決定が下された事案の他の当事者
(c) ICSD
(d) 当該人の居住地国又は当該人が国民若しくは市民権者である国の国内アンチ・ドーピング機関
(e) WADA
第13.2.2項に定められている事案の場合、国内レベルの不服申立機関に不服申立てを行う権利を有する当事者は、国内アンチ・ドーピング機関の定めのとおりとするものとするが、最低限、次の者を含むものとする。
(a) 不服申立てを行う決定の対象となった、競技者又はその他の人
(b) 当該決定が下された事案の他の当事者
(c) ICSD
(d) 当該人の居住地国の国内アンチ・ドーピング機関
(e) WADA
第13.2.2項に定められている事案の場合、WADA、ICSDは、国内レベルの不服申立機関の決定に関して、CASにも不服申立てを行う権利を有するものとする。不服申立てを行う当事者は、不服申立ての対象となる決定を下したアンチ・ドーピング機関からすべての関係情報を取得するためにCASからの支援を受けることができるものとし、また、CASが命じた場合には当該情報は提供されるものとする。
 
本規程の他の規定にかかわらず、暫定的資格停止について不服申立てを行うことができる人は、当該暫定的資格停止が課された、競技者又はその他の人に限られる。
13.2.4. 交差不服申立て及びその他認められる後続の不服申立て
 
WADA規程に基づきCASに提起された事案における被不服申立人による交差不服申立てその他後続の不服申立ては、明示的に認められる。本第13条に基づき不服申立てを提起する権利を有する当事者は、遅くとも当該当事者の答弁時までに、交差不服申立て又は後続の不服申立てを提起しなければならない。
13.3. 時機に後れた決定
WADAが定めた合理的な期間内に、ICSDもしくは当該競技連盟が個々の事案におけるアンチ・ドーピング規則違反の有無に関し、決定を下さなかった場合には、WADAは、ICSDもしくは当該競技連盟がアンチ・ドーピング規則違反がないと判断する決定を下したものとして、CASに対して直接に不服申立てを行うことを選択できる。CASの聴聞パネルが、アンチ・ドーピング規則違反があり、かつ、WADAのCASに対する直接の不服申立ての選択が合理的なものであると判断した場合には、不服申立ての手続遂行に関するWADAの費用及び弁護士報酬は、ICSDもしくは当該競技連盟からWADAに対して償還されるものとする。
13.4. TUEに関連する不服申立て
TUE決定に対しては、第4.4項に定められているとおりにのみ、不服申立てを提起することができる。
13.5. 不服申立決定の通知
 
不服申立ての当事者であるアンチ・ドーピング機関は、第14.2項に定めるとおり、競技者又はその他の人並びに第13.2.3項に基づき不服申立てを提起する権利を有する他のアンチ・ドーピング機関に、不服申立決定を速やかに提供するものとする。
13.6. 本規程第12条に従って下された決定に対する不服申立て
本規則第12条に従って、ICSDが下した決断に対する不服申し立ては、国内ろう者スポーツ連盟によってのみ行うことが出来、CASに提出する。
13.7. 不服申し立て提出の時期
13.7.1. CASへの不服申し立て
 
CASへの不服申し立ての提起時期は、不服申立てを提起する当時者による決定の受領の日から21日以内とする。上記にかかわらず、不服申立て提起権者であるが、決定の不服申立てに至る手続きの当事者ではなかった当事者による不服申立ての提起については、以下の事項が適用される。
a) 不服申し立てを行う者は、決定が通知されてから15日以内に、当該決定を発行した団体に対し、当該決定の根拠となった記録の写しを要求することができる。
b) 上記の申し出が15日以内になされた場合、当該要求を行った当事者は、記録を受領してから21日以内にCASへ不服申立てを提起する権利を有する。
本規則の上記項目の規定にかかわらず、WADAの提起する不服申立ての提起期限は、下記のうちいずれか遅いほうとする。
(a) 当該事案における他の当事者が不服申立てを提起し得た最終日から21日後
(b) WADAが当該決定に関する完全な記録を受け取ってから 21日後
13.7.2. 第13.2.2項に従った不服申し立て

国内アンチ・ドーピング機関によって制定された規則に則って設立された、国レベルの独立および中立機関への不服申し立ての受理の日程は、国内アンチ・ドーピング機関の同一の規則に従って定められるものとする。
 
本規則の上記項目の規定にかかわらず、WADAによる不服申立て又は参加の期限は、遅くとも、次の各時期のうちいずれか遅い時期までとする。

(a) 当該事件における他の当事者が不服申立てを提起し得た最終日から 21日後
(b) WADAが当該決定に関する完全な記録を受け取ってから 21日後
第14条―守秘義務及び報告
14.1. 違反が疑われる分析報告、非定型報告、その他の主張されたアンチ・ドーピング規則違反に関する情報
14.1.1. 競技者又はその他の人に対するアンチ・ドーピング規則違反の通知
 
競技者もしくはその他の人へのアンチ・ドーピング規則違反が疑われる旨の通知は、本規程第7条および第14条の示すように行われるものとする。競技連盟の会員である競技者もしくはその他の人への通知は、国内競技連盟に対する通知の交付によって行われる場合がある。
14.1.2. 国内アンチ・ドーピング機関及びWADAに対するアンチ・ドーピング規則違反の通知
 
アンチ・ドーピング規則違反が疑われる旨の通知は、競技者もしくはその他の人への通知と同時に、本規程第7条および第14条に従い、国内アンチ・ドーピング機関およびWADAに通知するものとする。
14.1.3. アンチ・ドーピング規則違反の通知の内容
 
第2.1項の下でのアンチ・ドーピング規則違反の通知には、以下の事項を含むものとする:競技者の名前、国、競技とその競技内での種目、競技者の競技レベル、検査が競技会(内)もしくは競技会外であるか、検体採取の日付、検査機関による分析結果の報告、および検査と捜査の国際基準により定められている他の情報。
 
第2.1項以外のアンチ・ドーピング規則違反の通知は、違反した規則および違反が疑われる根拠の各情報を含むものとする。
14.1.4. 状況の報告
 
第14.1.1項に従い、アンチ・ドーピング規則違反の通知に至らなかった捜査の場合を除き、国内アンチ・ドーピング機関およびWADAは、第7条、第8条、第13条に従って行われるいかなる検討もしくは手続き行程の状況および発見について、定期的に最新状況の報告を受けるものとし、書面による理由を付した説明文書、もしくは問題の解決について説明する判断が迅速に行われるものとする。
14.1.5. 守秘義務
 
報告を受けた組織は、ICSDが一般開示、もしくは第14.3項が義務付けている一般開示を行わない時までの間、情報を知る必要のある人(該当する国内オリンピック委員会、競技連盟、チームスポーツのチーム等の適切なメンバーを含む)の範囲を超えて、情報を開示してはならないものとする。
14.1.6. ICSDは、違反が疑われる分析報告、非定型報告、およびその他アンチ・ドーピング規則違反が疑われる情報を、第14.3項に従って一般開示するまでは、必ず守秘するものとし、ICSDとその職員(正職員であるか否かに関わらず)、あらゆる契約業者、エージェント、コンサルタントとの間において締結された契約に、このような極秘情報の保護ならびに捜査、および不適切かつ/または権限のない状態で開示しない旨の条項を含めるものとする。
14.2. アンチ・ドーピング規則違反決定の通知及びファイルに対する要請
14.2.1. 第7.11項、第8.2項、第10.4項、第10.5項、第10.6項、第10.12.3項又は第13.5項に従い下されたアンチ・ドーピング規則違反の決定は、当該決定に至る完全な理由を含み、該当する場合には、賦課可能な制裁措置が最大限まで賦課されなかったことの正当な理由も含むものとする。決定が英語ではない場合には、ICSDは当該決定及び決定を裏づける理由の英語での要約を提供するものとする。
14.2.2. 第14.2.1項に従い受領した決定に不服申立てを提起する権利を有するアンチ・ドーピング機関は、受領後15日以内に、当該決定に関する完全な案件記録の写しを要請することができる。
14.3. 一般開示
14.3.1. ICSDからアンチ・ドーピング規則に違反したと主張されている競技者又はその他の人の身元は、第7.3項、第7.4項、第7.5項、第7.6項又は第7.7項に基づき当該競技者又はその他の人に対し、もしくは同時に、WADAおよび第14.1.2項に基づき該当するアンチ・ドーピング機関に対し、それぞれ通知がなされた後にはじめて、ICSDによって一般開示されることができる。
14.3.2. 第13.2.1項又は第13.2.2項に基づく終局的不服申立決定のとき、当該不服申立ての放棄のとき、第8条に基づく聴聞を受ける権利の放棄のとき又は主張されたアンチ・ドーピング規則違反に対して適切な時期に異議が唱えられなかったときから20日以内に、ICSDは、競技、違反の対象となったアンチ・ドーピング規則、違反をした競技者又はその他の人の氏名、関係する禁止物質又は禁止方法及び課せられた措置を含む当該アンチ・ドーピング事案に関する処理について一般報告しなければならない。ICSDはまた、20日以内に、上記情報を含む、アンチ・ドーピング規則違反に関する終局的な不服申立ての決定の結果についても一般報告しなければならない。
14.3.3. 聴聞会又は不服申立ての後に競技者又はその他の人がアンチ・ドーピング規則に違反していない旨決定された場合には、当該決定は当該決定の対象となった競技者又はその他の人の同意がある場合にのみ一般開示される。ICSDは、当該同意を得るために合理的な努力を行うものとし、また、同意が得られた場合には、当該決定を完全な形で、又は、競技者若しくはその他の人が認める範囲で編集した形で一般開示するものとする。
14.3.4. 開示は、少なくとも、義務づけられた情報をICSDのウェブサイトにおいて1ヶ月間又は資格停止期間の存続期間のいずれか長い方の期間、掲載することにより、行われるものとする。
14.3.5. ICSD若しくは当該国内競技連盟又はそれらの役職員等は、当該競技者若しくはその他の人又はその代理人に起因する公のコメントに対応する場合を除き、(手続及び科学的知見の一般的な説明とは異なる)未決の事案における特定の事実につき公に見解を述べてはならない。
14.3.6. 第14.3.2項において要請される義務的な一般報告は、アンチ・ドーピング規則違反を行ったと判断された競技者又はその他の人が18歳未満の者の場合には要請されないものとする。18歳未満の者に関する事案における任意的な一般報告は、当該事案の事実及び状況に釣り合うものとする。
14.4. 統計数値の報告
 
ICSDは、少なくとも年1回、ドーピング・コントロール活動の全体的な統計数値の報告書を公表し、その写しをWADAに対して提出するものとする。ICSDは、各検査において検査を受けた各競技者の氏名及び検査の日付に関する報告書についても公表することができる。
14.5. ドーピング・コントロール情報に係るクリアリングハウス
 
複数のアンチ・ドーピング機関による検査配分計画の調整を促進すると共に、不要な検査重複を回避するために、ICSDは、ADAMSその他WADAの承認するシステムを使用して、当該競技者に関する競技会(時)検査及び競技会外の検査の内容を、検査実施後、可及的速やかにクリアリングハウスたるWADAに対して報告するものとする。当該情報は、必要に応じて、該当規則に従い、競技者、国内アンチ・ドーピング機関、並びに競技者に対して検査権限を有するその他アンチ・ドーピング機関に利用可能なものとされる。
14.6. データプライバシー
14.6.1. ICSDは競技者およびその他の人に関する個人情報を、WADA規程ならびに諸国際基準(とりわけプライバシーおよび個人情報保護の国際基準を含む)、および本アンチ・ドーピング規則の下、必要かつ適切なアンチ・ドーピング活動を行うことを目的として、収集、保管、処理、もしくは開示する場合がある。
14.6.2. 本アンチ・ドーピング規則に則り、いかなる人に提出した個人データを含め、情報を提出したいかなる参加者も、該当する情報収集の法律に従い、本アンチ・ドーピング規則の実現を目的として、プライバシーと個人情報保護の国際基準、乃至本アンチ・ドーピング規則がその実効化のために求める要件に則り、その人によってこのような情報が収集、処理、開示、使用されることに同意したものとみなされる。
第15条―決定の適用及び承認
15.1. 本規程に適合し、かつ、署名当事者の権限内でなされる検査、聴聞会の結果もしくは当該署名当事者によるその他の終局的な決定は、第13条が規定する不服申立ての権利を条件として、世界中で適用され、ICSDおよびすべての国内競技連盟より承認され、尊重されるものとする。
15.2. ICSDおよび各国内競技連盟は、本規程を受諾していないその他の機関が行った方法についても、当該機関の規則が本規程に適合している場合には、これを承認するものとする。
15.3. 第13条による不服申し立ての権利に則り、本ドーピング防止規則違反に関するICSDのすべての決定は、全国内競技連盟によって認知され、またこのような決定を有効にするために必要な措置を講ずるものとする。
第16条―ICSDのドーピング防止規則の編入および国内競技連盟の義務
16.1. すべての国内競技連盟およびその会員は、アンチ・ドーピング規則を遵守する。すべての国内競技連盟およびその他の会員は、直接その管轄下にある競技者に対して(国内レベルの競技者を含む)、ICSDが本アンチ・ドーピング規則を施行できるよう保障するために、必要な条項を自分たちの規則に含めるものとする。本アンチ・ドーピング規則は、直接その管轄下にある競技者に対して(国内レベルの競技者を含む)、国内連盟が本アンチ・ドーピング規則を施行できるよう保障するために、各国内連盟の規則に、直接もしくは参照する形で編入される。
16.2. すべての国内競技連盟は、競技者および、コーチ、トレーナー、マネージャー、チームスタッフ、役員、医療者もしくはパラメディカルとして、競技会、もしくは国内連盟またはその会員組織が権限をもち、また組織する活動に参加する各サポートスタッフに対し、本アンチ・ドーピング規則に従い、および参加の条件として、WADA規則の下で結果管理の権限を持つアンチ・ドーピング機関に付託することを義務付ける規則を確立するものとする。
16.3. すべての国内競技連盟は、ICSDおよび当該国内アンチ・ドーピング機関に対し、アンチ・ドーピング規則違反を示唆する、もしくは関係するいかなる情報も報告するものとし、捜査を実施する権限を持つ、いかなるアンチ・ドーピング機関による捜査に協力するものとする。
16.4. すべての国内競技連盟は、ICSDもしくは国内競技連盟の管轄下にある競技者を支援するサポートスタッフが、禁止物質もしくは禁止方法を、有効かつ正当な理由なく使用することを防ぐため、懲戒規律的なルールを作成するものとする。
16.5. すべての国内競技連盟は、アンチ・ドーピング教育を、国内アンチ・ドーピング機関と調整して行うものとする。
第17条―時効
 
アンチ・ドーピング規則違反が発生したと主張された日から10年以内に、競技者又はその他の人が第7条の定めに従いアンチ・ドーピング規則違反の通知を受けなかった場合、又は通知の付与が合理的に試みられなかった場合には、当該競技者又はその他の人に対してアンチ・ドーピング規則違反の手続は開始されないものとする。
第18条―ICSDによるWADAへの通知義務
 
ICSDは、WADA規程第23.5.2項に従って、ICSDによるドーピング防止規程の遵守状況をWADAに報告する。
第19条―教育
 
ICSDは少なくとも、WADA規程第18.2項においてドーピングのないスポーツを目指して掲げる事項についての情報・教育・防止プログラムを計画、実行、評価、かつ監督し、競技者およびサポートスタッフがこれらのプログラムに積極的に参加するよう支援するものとする。
第20条―本規程の修正及び解釈
20.1. ICSD執行委員会は、定期的に本規程を修正することができる。
20.2. 本規程は自主・独立した文書として解釈を行うものとし、既存の法令を参照して解釈されないものとする。
20.3. 本規程の各部及び各条項の見出しは、便宜上のものであって、本規程の実体規定の一部とは見なされず、当該見出しが言及する規定の文言に対して影響を及ぼすものとも見なされない。
20.4. 序論、付録1、定義集、WADA規程ならびに国際基準は、本アンチ・ドーピング規則を構成する不可分な一部と見なされ、紛争発生時に援用される。
20.5. 本規程は、WADA規程の適用条項に従い採択されたものであり、かつ、WADA規程の適用条項に一致する形で解釈されるものとする。序論は、これら本規程の不可分の一部として扱われるものとする。
20.6. WADA規程の各条項に付されている解説は、本規則の参照資料となり、補完するものとみなされ、解釈に使用されるものとする。
20.7. 本規程は、2015年1月1日(発効日)より全面的に発効する。留保されている事項については、発行日よりさかのぼって適用されることはない。しかしながら、以下の条件下においては例外とする:
20.7.1. 発効日よりも前に行われたアンチ・ドーピング規則違反は、発効日以降に行われた違反に関する第10条下で行われた制裁の決定を目的とし、「一回目の違反」もしくは「二回目の違反」と数えられる。
20.7.2. 第10.7.5項の下の複数の違反に基づく、過去に遡った期間の違反、および第17条にて定められる時効は、いずれも手続き上の規則であるため、過去にさかのぼって適用されるべきであるが、しかしながら、第17条は発効日の開始によって、時効期間がいまだ満了となっていない場合においてのみ適用されるものとする。そうでなければ、発効日時点で保留となっているあらゆるアンチ・ドーピング規則違反、および発効日以前に発生し、発効日以降に持ち込まれた、あらゆるアンチ・ドーピング規則違反のケースについては、聴聞パネルが当該ケースを"lex mitior"(訳注:「より軽い刑罰を適用する」の意のラテン語)の原則を、適切な状況の下で適用すると決定しない限り、アンチ・ドーピング規則違反が疑われる事象が発生した時点で効力を有する、実質的なアンチ・ドーピング規則の下にあるとする。
20.7.3. 発効日以前の、第2.4項のあらゆる居場所情報通知義務不履行(未登録、検査未受診、および検査と捜査の国際基準が定義する事項)は、その消滅までは検査と操作の国際基準に従って、これについての手続きを進め、かつ、これに依拠することが可能であるが、発生日から12ヶ月に消滅したと見なされるものとする。
20.7.4. 発効日以前にアンチ・ドーピング規則が行われたとする最終決定が言い渡されるも、競技者もしくはその他の人が発効日の時点でいまだ資格停止状態にあるケースについては、当該競技者またはその他の人は、結果の管理に責任を有するアンチ・ドーピング機関に対し、本アンチ・ドーピング規則に照らして、資格停止期間を短縮することを検討するよう求めることが出来る。このような申請は、資格停止期間が満了する前に行わなければならない。言い渡された決定は第13.2項に従って上訴される場合がある。アンチ・ドーピング規則違反が行われたとする最終決定が言い渡され、および資格停止期間が満了しているあらゆるケースは、本アンチ・ドーピング規則は適用されないものとする。
20.7.5. 第10.7.1項に基づく2回目の違反につき資格停止期間を課す上では、1回目の違反の制裁が効力発生日前に効力を有していたルールに基づき決定された場合には、本規程が提供可能であったならば1回目の違反について課されていたであろう資格停止期間が適用されるものとする。
第21条―世界規程の解釈
21.1. 本規程の正文はWADAが維持するものとし、英語及びフランス語で公表されるものとする。英語版とフランス語版との間に矛盾が生じた場合、英語版が優先するものとする。
21.2. 本規程の各条項に付されている解説は、本規程の解釈に使用されるものとする。
21.3. 本規程は独立、かつ自立した文書として解釈されるものとし、署名当事者又は各国政府の既存の法令を参照して解釈されないものとする。
21.4. 本規程の各部及び各条項の見出しは、便宜上のものであって、本規程の実体規定の一部とはみなされず、また、当該見出しが言及する規定の文言に対して影響するものであるとはみなされない。
21.5. 本規程は、署名当事者によって受諾され、当該署名当事者の規則にて実施される以前から審理中の事案に対し、遡及して適用されない。但し、本規程以降に発生した違反について第10条に基づいて制裁措置を認定する場合には、本規程以前におけるアンチ・ドーピング規則違反も「1回目の違反」又は「2回目の違反」として数えられる。
21.6. 「世界アンチ・ドーピング・プログラム及び本規程の目的、範囲及び構成」、「付属文書1-定義」及び「付属文書2-第10 条の適用例」は、本規程の不可分の一部として扱われる。
第22条―競技者又はその他の人の追加的な役割及び責務
22.1. 競技者の役割及び責務
22.1.1. 本規程のすべてについて精通し、遵守すること。
22.1.2. いつでも検体採取に応じること。
22.1.3. アンチ・ドーピングとの関連で、自己の摂取物及び使用物に関して責任を負うこと。
22.1.4. 医療従事者に対して自らが禁止物質及び禁止方法を使用してはならないという義務を負っていることを伝達するとともに、自らが受ける医療処置について、アンチ・ドーピング規則に対する違反に該当しないようにすることに関して責任を負うこと。
22.1.5. 競技者が過去10年の間に、アンチ・ドーピング規則違反を行った旨、非署名当事者により認定された決定があれば、それをその国内アンチ・ドーピング機関及びICSDに開示すること。
22.1.6. アンチ・ドーピング規則違反についてドーピング捜査を実施するアンチ・ドーピング機関に協力すること。
22.1.7. 競技者が、アンチ・ドーピング機関によるアンチ・ドーピング規則違反の捜査に対する全面的な協力を怠った場合、ICSD倫理条項に基づき、不正行為として罰せられる場合がある。
22.2. サポートスタッフの役割及び責務
22.2.1. アンチ・ドーピング規則のすべてについて精通し、遵守すること。
22.2.2. 競技者の検査プログラムに協力すること。
22.2.3. 競技者の価値観及び行動に対して自らの影響力を行使して、アンチ・ドーピングに対する姿勢を指導すること。
22.2.4. サポートスタッフが過去10年間の間に、アンチ・ドーピング規則違反を行った旨、非署名当事者により認定された決定があれば、それを、その国内アンチ・ドーピング機関及びICSDに開示すること。
22.2.5. アンチ・ドーピング規則違反についてドーピング捜査を実施するアンチ・ドーピング機関に協力すること。
22.2.6. サポートスタッフが、アンチ・ドーピング機関によるアンチ・ドーピング規則違反の捜査に対する全面的な協力を怠った場合、ICSD倫理条項に基づき、不正行為として罰せられる場合がある。
22.2.7. サポートスタッフは、正当な理由なく禁止物質又は禁止方法を使用し、又は、保有しないものとする。
22.2.8. サポートスタッフが、禁止物質もしくは禁止方法を、効力のある正当な理由なく、使用もしくは保有した場合、ICSD倫理条項に基づき、不正行為として罰せられる場合がある。

付属文書1- 定義集

「ADAMS(Anti-Doping Administration and Management System、ドーピング防止管理運営システム)」とは、情報保護に関する法とあいまって、関係者及び WADAのドーピング防止活動を支援するように設計された、データを入力し、保存し、共有し、報告するためのウェブ上のデータベースによる管理手段をいう。
 
Administration(投与)とは、他の人による、禁止物質又は禁止方法の、提供、供給、管理、促進、その他使用又は使用の企てへの参加をいう。但し、当該定義は、真正かつ適法な治療目的その他認められる正当理由のために使用された禁止物質又は禁止方法に関する誠実な医療従事者の行為を含まないものとし、又、当該禁止物質が真正かつ適法な治療目的のために意図されたものでないこと若しくは競技力を向上させるために意図されたものであることについて状況全体から立証された場合を除き、当該定義は、競技会外の検査において禁止されない禁止物質に関する行為を含まないものとする。
 
Adverse Analytical Finding(違反が疑われる分析報告)とは、WADA 認定分析機関又は「分析機関に関する国際基準」及びこれに関連するテクニカルドキュメントに適合するWADA 承認分析機関からの報告のうち、禁止物質又はその代謝物若しくはマーカーの存在(内因性物質の量的増大を含む。)が検体において確認されたもの、又は禁止方法の使用の証拠が検体において確認されたものをいう。
 
Adverse Passport Finding「アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告」とは、適用のある国際基準において記載されているアスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく違反が疑われる報告として特定された報告をいう。
 
Anti-Doping Organization(ドーピング防止機関)とは、ドーピング・コントロールの過程に関する規則を採択し、ドーピング・コントロールの過程の開始、実施、又は執行に責任を負う署名当事者をいう。具体例としては、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、その他の主要競技大会機関であって自己の競技大会において検査を実施する団体、WADA、国際競技連盟、国内ドーピング防止機関等が挙げられる。
 
Athlete(競技者)とは、国際レベル(定義については各国際競技連盟が定める。)又は国内レベル(定義については各国内アンチ・ドーピング機関が定める。)のスポーツにおいて競技するすべての人をいう。アンチ・ドーピング機関は、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のいずれでもない競技者につき、アンチ・ドーピング規則を適用することによりこれらの者を「競技者」の定義に含める裁量を有する。国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のいずれでもない競技者につき、アンチ・ドーピング機関は以下の事項を行う選択権を有する。限定した検査を行い若しくは検査を行わないこと、すべての禁止物質を対象として網羅的に分析するのではなく、その一部について検体分析を行うこと、限定的な居場所情報を要請し若しくは居場所情報を要請しないこと、又は、事前のTUE を要請しないこと。但し、アンチ・ドーピング機関が、国際レベル又は国内レベルに至らずに競技する競技者につき権限を有し、当該競技者が第2.1 項、第2.3 項又は第2.5 項のアンチ・ドーピング規則違反を行った場合には、本規程に定める措置(但し、第14.3.2 項を除く。)が適用されなければならない。第2.8 項及び第2.9 項並びにアンチ・ドーピング情報及び教育との関係では、本規程を受諾している署名当事者、政府その他のスポーツ団体の傘下において競技に参加する人は、競技者に該当する。
 
[「競技者」の解説:本定義は、国際レベルの競技者及び国内レベルのすべての競技者に対して本規程のアンチ・ドーピング規則が適用される旨を明らかにするものである。なお、国際レベル及び国内レベルの競技の厳密な定義は、国際競技連盟及び国内アンチ・ドーピング機関のアンチ・ドーピング規則が各々定める。また、上記の定義は、国内アンチ・ドーピング機関が、適切であると判断した場合に、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者のみならず、より低い水準の競技会における競技参加者及びフィットネス活動を行うが競技会には全く出場しない個人に対しても自己のアンチ・ドーピング・プログラムの適用範囲を拡大することをも認めている。よって、例えば、国内アンチ・ドーピング機関は、レクリエーション・レベルの競技参加者を検査するが、事前のTUE を要請しないよう、選択することができる。但し、違反が疑われる分析報告又は不当な改変に関するアンチ・ドーピング規則違反は、本規程に定めるすべての措置(但し、第14.3.2 項を除く。)をもたらす。フィットネス活動に従事するものの、競技会に参加しないレクリエーション・レベルの競技参加者に、措置が適用されるか否かの決定は、国内アンチ・ドーピング機関に委ねられる。同様に、マスター・レベルの競技参加者のためのみに競技大会を開催する主要競技大会機関は、競技参加者を検査するが、すべての禁止物質を対象とする網羅的な検体分析を行わないことを選択することができる。競技水準の如何に拘らず、競技参加者がアンチ・ドーピング関連の情報及び教育を受けられるようにしなければならない。]
 
Athlete Biological Passport(アスリート・バイオロジカル・パスポート)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」及び「分析機関に関する国際基準」において記載される、データを収集及び照合するプログラム及び方法をいう。
 
Athlete Support Personnel(サポートスタッフ)とは、スポーツ競技会に参加し、又は、そのための準備を行う競技者と共に行動し、治療を行い、又は、支援を行う指導者、トレーナー、監督、代理人、チームスタッフ、オフィシャル、医療従事者、親又はその他の人をいう。
 
Attempt(企て)とは、アンチ・ドーピング規則違反に至ることが企図される行為の過程における実質的な段階を構成する行動に意図的に携わることをいう。但し、企てに関与していない第三者によって察知される前に人が当該企てを放棄した場合には、違反を行おうとした当該違反の企てのみを根拠としてアンチ・ドーピング規則違反があったことにはならない。
 
Atypical Finding(非定型報告)とは、違反が疑われる分析報告の決定に先立ってなされる、「分析機関に関する国際基準」又はこれに関連するテクニカルドキュメントに規定された更なるドーピング捜査を要求する旨の、WADA 認定分析機関又はその他のWADA 承認分析機関からの報告をいう。
 
Atypical Passport Finding(アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告)とは、該当する国際基準において、アスリート・バイオロジカル・パスポートに基づく非定型報告として記載される報告をいう。
 
CAS(The Court of Arbitration for Sport)とは、スポーツ仲裁裁判所をいう。
 
Code(規程)とは、世界アンチ・ドーピング防止規程(The World Anti-Doping Code)をいう。(訳注:JADAの訳文では、この箇所は「本規程」となっているが、ICSD規則との混同を避けるため、ICSD規則では、原則として「規程」もしくは「WADA規程」と訳する)
 
Competition(競技会)とは、一つのレース、試合、ゲーム又は単独のスポーツでの競争をいう。具体例としては、バスケットボールの試合又はオリンピックの陸上競技100 メートル走の決勝戦が挙げられる。段階的に進められる競争及びその他のスポーツ競技のうち日々又はその他の中間的な基準で賞が授与されるものについては、適用される国際競技連盟の規則において競技会と競技大会との区別が定められる。
 
Consequences of Anti-Doping Rule Violations(アンチ・ドーピング規則違反の措置)(「措置」)とは、競技者又はその他の人がアンチ・ドーピング規則違反を行った場合に、次に掲げるもののうちの一又は二以上の措置が講じられることをいう。(a) Disqualification(失効)とは、特定の競技会又は競技大会における競技者の成績が取り消されることをいい、その結果として、獲得されたメダル、得点、及び褒賞の剥奪を含む措置が課される。(b) Ineligibility(資格停止)とは、一定期間にわたって、競技者又はその他の人に対して、アンチ・ドーピング規則違反を理由として、第10.12.1 項の規定のとおり、競技会若しくはその他の活動への参加が禁止され、又は資金拠出が停止されることをいう。(c) Provisional Suspension(暫定的資格停止)とは、第 8 条の規定に従って開催される聴聞会において終局的な判断が下されるまで、競技者又はその他の人による競技会への参加又は活動が暫定的に禁止されることをいう。(d) Financial Consequences(金銭的措置)とは、アンチ・ドーピング規則違反を理由として賦課される金銭的制裁措置又はアンチ・ドーピング規則違反に関連する費用回収をいう。(e) Public Disclosure or Public Reporting(「一般開示」又は「一般報告」)とは、一般公衆又は第14条に基づき早期通知の権利を有する人以外の人に対する情報の拡散又は伝達をいう。チームスポーツにおけるチームもまた、第11条に定めるとおり措置に服する場合がある。
 
Contaminated Product(汚染製品)とは、製品ラベル及び合理的なインターネット上の検索により入手可能な情報において開示されていない禁止物質を含む製品をいう。
 
Disqualification(失効)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の結果(Consequences of Anti-Doping Rule Violations)」を参照すること。
 
Doping Control(ドーピング・コントロール)とは、居場所情報の提出、検体の採取及び取扱い、分析機関における分析、TUE 、結果の管理並びに聴聞会を含む、検査配分計画の立案から、不服申立ての最終的な解決までのすべての段階及び過程をいう。
 
Event(競技大会)とは、単一の所轄組織の下で実施される一連の個別競技会のことをいう(例、オリンピック大会、FINA 世界選手権大会、パンアメリカン大会)。
 
Event Venues(競技大会会場)とは、競技大会の所轄組織により指定された会場をいう。
 
Event Period(競技大会の期間)とは、競技大会の所轄組織により定められた、競技大会の開始と終了の間の時間をいう。
 
Fault(過誤)とは、義務の違反又は特定の状況に対する適切な注意の欠如をいう。競技者又はその他の人の過誤の程度を評価するにあたり考慮すべき要因は、例えば、当該競技者又はその他の人の経験、当該競技者又はその他の人が18 歳未満の者であるか否か、障がい等の特別な事情、当該競技者の認識すべきであったリスクの程度、並びに認識されるべきであったリスクの程度との関係で当該競技者が払った注意の程度及び行った調査を含む。競技者又はその他の人の過誤の程度を評価する場合に考慮すべき事情は、競技者又はその他の人による期待される行為水準からの乖離を説明するにあたり、具体的で、関連性を有するものでなければならない。そのため、例えば、競技者が資格停止期間中に多額の収入を得る機会を失うことになるという事実や、競技者に自己のキャリア上僅かな時間しか残されていないという事実又は競技カレンダー上の時期は、第10.5.1 項又は第10.5.2 項に基づき資格停止期間を短縮するにあたり関連性を有する要因とはならない。
 
[解説:競技者の過誤の程度を評価する基準は、過誤が考慮されるすべての条項に共通である。但し、10.5.2 項の場合、過誤の程度を評価する際に、競技者又はその他の人に「重大な過誤又は過失がないこと」が認定される場合を除き、制裁措置を軽減することは適切ではない。]
 
Financial Consequences(金銭的措置)について、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
 
In-Competition(競技会(時))とは、国際競技連盟又は該当する競技大会の所轄組織の規則に別段の定めがない限り、競技者が参加する予定の競技会の12 時間前に開始され、当該競技会及び競技会に関係する検体採取過程の終了までの期間をいう。
 
Independent Observer Program(インディペンデント・オブザーバー・プログラム)とは、オブザーバー・チームが、WADA の監督下で、特定の競技大会におけるドーピング・コントロールの過程を監視し、ドーピング・コントロールの過程について助言を提供し、監視事項に関して報告を行うことをいう。
 
Individual Sport(個人スポーツ)とは、チームスポーツ以外のスポーツをいう。
 
Ineligibility(資格停止)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置(Consequences of the Anti-Doping Rules Violations)」を参照すること。
 
International Event(国際競技大会)とは、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、国際ろう者スポーツ委員会、国際競技連盟、主要競技大会機関又はその他の国際的スポーツ団体が当該競技大会の所轄組織であるか、又は、当該競技大会に関してテクニカルオフィシャルを指名している競技大会又は競技会をいう。
 
International-Level Athlete(国際レベルの競技者)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に適合し、各国際競技連盟の定義する、国際レベルにおいて競技する競技者をいう。
 
International Standard(国際基準)とは、WADA規程を支持する目的でWADA によって採択された基準をいう。(他に採りうる基準、慣行又は手続とは対立するものとして)国際基準を遵守しているというためには、国際基準に定められた手続を適切に実施していると判断されることが必要である。国際基準は、国際基準に基づき公表されたテクニカルドキュメントを含むものとする。
 
Major Event Organizations(主要競技大会機関)とは、国内オリンピック委員会の大陸別連合及びその他の複数のスポーツを所轄する国際的な機関であって、大陸、地域又はその他の国際競技大会の所轄組織として機能する機関をいう。
 
Marker(マーカー)とは、化合物、化合物の集合体又は生物学的変数であって、禁止物質又は禁止方法の使用を示すものをいう。
 
Metabolite(代謝物)とは、生体内変化の過程により生成された物質をいう。
 
Minor(18 歳未満の者)とは、18 歳に達していない自然人をいう。
 
National Anti-Doping Organization(国内アンチ・ドーピング機関)とは、国内において、アンチ・ドーピング規則の採択及び実施、検体採取の指示、検査結果の管理並びに聴聞会の実施に関して第一位の権限を有し、責任を負うものとして国の指定を受けた団体をいう。関連当局によって当該指定が行われなかった場合には、当該国の国内オリンピック委員会又はその指定を受けた者が国内アンチ・ドーピング機関となる。
 
National Event(国内競技大会)とは、国際レベルの競技者又は国内レベルの競技者が参加する競技大会又は競技会のうち国際競技大会に該当しないものをいう。
 
National Federation(国内競技連盟)とは、ICSDの会員である、もしくはICSDから当該国内もしくは地域のスポーツを統括する団体として認知された、国内もしくは地域のスポーツ団体をいう。
 
National-Level Athlete(国内レベルの競技者)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に適合する、各国内アンチ・ドーピング機関が定義する、国内レベルで競技する競技者をいう。
 
National Olympic Committee(国内オリンピック委員会)とは、国際オリンピック委員会公認の組織をいう。国内競技連合が国内オリンピック委員会のアンチ・ドーピングの分野における典型的な責任を負う国においては、国内オリンピック委員会は、当該国内競技連合を含むものとする。
 
No Fault or Negligence(過誤又は過失がないこと)とは、競技者又はその他の人が禁止物質若しくは禁止方法の使用若しくは投与を受けたこと又はその他のアンチ・ドーピング規則に違反したことについて、自己が知らず、又は、推測もせず、かつ最高度の注意をもってしても合理的には知り得ず、推測もできなかったであろう旨を当該競技者が証明した場合をいう。18 歳未満の者の場合を除き、第2.1項の違反につき、競技者は禁止物質がどのように自らの体内に入ったかについても証明しなければならない。
 
No Significant Fault or Negligence(重大な過誤又は過失がないこと)とは、競技者又はその他の人が、事情を総合的に勘案し、過誤又は過失がないことの基準を考慮するにあたり、アンチ・ドーピング規則違反との関連において、当該競技者又はその他の人の過誤又は過失が重大なものではなかった旨を証明した場合をいう。18 歳未満の者の場合を除き、第2.1 項の違反につき、競技者は禁止物質がどのように自らの体内に入ったかについても証明しなければならない。
 
Out-of-Competition(競技会外)とは、競技会(時) 以外の期間をいう。
 
Participant(参加者)とは、競技者又はサポートスタッフをいう。
 
Person(人)とは、自然人、又は組織その他の団体をいう。
 
Possession(保有)とは、実際に物理的に保有している状態又は擬制保有をいう(これに該当するものは、禁止物質若しくは禁止方法に対して、又は、禁止物質若しくは禁止方法が存在する場所に対して、人が排他的に支配を及ぼし、又は、支配を及ぼすことを意図している場合に限られる。)。但し、禁止物質若しくは禁止方法に対して、又は、禁止物質若しくは禁止方法が存在する場所に対して、人が排他的に支配を及ぼしていない場合には、当該人が禁止物質又は禁止方法の存在を知っており、かつ、これに対して支配を及ぼす意図があった場合のみが擬制保有に該当する。但し、人が、アンチ・ドーピング規則に違反した旨の通知(種類は問わない。)を受ける前に、アンチ・ドーピング機関に対する明確な表明により、保有の意思がなく、保有を放棄した旨を証明する具体的な行為を起こしていた場合には、当該保有のみを根拠としてアンチ・ドーピング規則違反があったことにはならない。本定義における異なる記載にかかわらず、禁止物質又は禁止方法の購入(電子的その他の方法を含む。)は、当該購入者による保有を構成する。
 
Prohibited List(禁止表)とは、禁止物質及び禁止方法を特定した表をいう。
 
Prohibited Method(禁止方法)とは、禁止表に記載された方法をいう。
 
Prohibited Substance(禁止物質)とは、禁止表に記載された物質又は物質の分類をいう。
 
Provisional Hearing(暫定聴聞会)とは、第7.9項との関係において、第8条に基づく聴聞会に先立って開催される略式の聴聞会であって、競技者に対して通知を交付し書面又は口頭で意見を聴取する機会を与えるものをいう。
 
Provisional Suspension(暫定的資格停止)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
 
Publicly Disclose or Publicly Report(「一般開示」又は「一般報告」)については、上記の「アンチ・ドーピング規則違反の措置」を参照すること。
 
Regional Anti-Doping Organization(地域アンチ・ドーピング機関)とは、国内アンチ・ドーピング・プログラムにつき委託された領域を調整し、管理する、加盟国の指定する地域的団体をいう。国内アンチ・ドーピング・プログラムにつき委託された領域とは、アンチ・ドーピング規則の採択及び実施、検体の計画及び採取、結果の管理、TUE の審査、聴聞会の実施、並びに地域レベルにおける教育プログラムの実施を含みうる。
 
Registered Testing Pool(検査対象者登録リスト)とは、国際競技連盟又は国内アンチ・ドーピング機関の検査配分計画の一環として、重点的な競技会(時)検査及び競技会外の検査の対象となり、またそのため第5.6項及び「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に従い居場所情報を提出することを義務づけられる、国際競技連盟が国際レベルの競技者として、また国内アンチ・ドーピング機関が国内レベルの競技者として各々定めた、最優先の競技者群のリストをいう。
 
Sample or Specimen(「検体」又は「標本」)とは、ドーピング・コントロールにおいて採取された生体物質をいう。
 
Signatories(署名当事者)とは、第23 条に定めるとおり、WADA規程に署名し、WADA規程を遵守することに同意した団体をいう。
 
Specified Substances(特定物質)については、第4.2.2 項を参照すること。
 
Strict Liability(厳格責任)とは、アンチ・ドーピング規則違反を立証するためには、アンチ・ドーピング機関において、競技者側の使用に関しての意図、過誤、過失又は使用を知っていたことを立証しなくてもよいとする第2.1 項及び第2.2 項に基づく法理をいう。
 
Substantial Assistance(実質的な支援):第10.6.1項との関係において、実質的な支援を提供する人は、(1) 自己が保有するアンチ・ドーピング規則違反に関するすべての情報を署名入りの書面により完全に開示し、(2)アンチ・ドーピング機関又は聴聞パネルからの要求がある場合には、例えば、聴聞会において証言をするなど、当該情報に関する事案のドーピング捜査及び裁定に対し十分に協力しなければならない。さらに、提供された情報は、信頼できるものであり、かつ、手続が開始された事案の重大な部分を構成するものでなければならず、仮に手続が開始されていない場合には、手続の開始に十分な根拠を与えるものでなければならない。
 
Tampering(不当な改変)とは、不適切な目的又は不適切な方法で変更すること、不適切な影響を生じさせること、不適切な形で介入すること又は結果の変更若しくは通常の手続を踏むことの回避を目的として妨害し、誤導し、若しくは詐欺的行為に携わることをいう。
 
Target Testing(特定対象検査)とは、「検査及びドーピング捜査に関する国際基準」に定める基準に基づき、検査のために特定の競技者を抽出することをいう。
 
Team Sport(チームスポーツ)とは、競技会中に、選手交代が認められるスポーツをいう。
 
Testing(検査)とは、ドーピング・コントロールの過程のうち、検査配分計画の立案、検体の採取、検体の取扱い並びに分析機関への検体の輸送を含む部分をいう。
 
Trafficking(不正取引)とは、アンチ・ドーピング機関の管轄に服する競技者、サポートスタッフ又はその他の人が、第三者に対し、(物理的方法、電子的方法その他方法を問わず)禁止物質又は禁止方法を販売、供与、輸送、送付、配送又は頒布すること(又は当該目的のために保有すること)をいう。但し、当該定義は、真正かつ適法な治療目的その他認められる正当理由のために使用された禁止物質に関する誠実な医療従事者の行為を含まないものとし、又、当該禁止物質が真正かつ適法な治療目的のために意図されたものでないこと若しくは競技力を向上させるために意図されたものであることにつき状況全体から立証された場合を除き、当該定義は、競技会外の検査において禁止されない禁止物質に関する行為を含まないものとする。
 
TUEとは、第4.4 項に記載される、治療使用特例(Therapeutic Use Exemption)をいう。
 
UNESCO Convention(ユネスコ国際規約)とは、2005年10月19日のユネスコ総会の第33 回会期において採択されたスポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約並びに同規約の締約国及びスポーツにおけるドーピング防止に関する締約国会議において採択されたそのすべての改定をいう。
 
Use(使用)とは、いずれの禁止物質又は禁止方法において、手段を問わず、これを利用し、塗布し、服用し、注入し若しくは摂取することをいう。
 
WADA(World Anti-Doping Agency)とは、世界アンチ・ドーピング機構をいう。

付属文書2-第10 条の適用例

例1
 
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会(時)検査における蛋白同化ステロイドの存在(第2.1項)によりなされ、競技者によるアンチ・ドーピング規則違反の速やかな自認、競技者による重大な過誤又は過失がないことの立証、及び競技者による実質的な支援の提供があった。
 
措置の適用
 
1. まず、第10.2項が適用される。なぜなら、アンチ・ドーピング規則違反が意図的でなかったことを示す十分な裏づけ証拠となる、重大な過誤がないとみなされるからであり(第10.2.1.1項及び第10.2.3項)、その結果、資格停止期間は4年間でなく2年間となる(第10.2.2項)。
 
2. 第2段階として、パネルは、過誤に関連する軽減(第10.4項及び第10.5項)の適用の可否を分析する。蛋白同化ステロイドは特定物質ではないことから、重大な過誤又は過失がないこと(第10.5.2項)に基づき、適用される制裁措置の範囲は2年から1年(2年間の制裁措置の半分を下限とする。)の幅に軽減される。その後、パネルは競技者の過誤の程度に基づき、当該幅の間で、適用されるべき資格停止期間を決定する(説明目的のため、この例では、パネルは16ヶ月間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
 
3. 第3段階として、パネルは第10.6項(過誤に関連しない軽減)に基づく猶予又は短縮の可能性を査定する。この例の場合には、第10.6.1項(実質的な支援)のみが適用される(資格停止期間は既に第10.6.3項に定める下限の2年間を下回るため、第10.6.3 項(速やかな自認)は適用されない。)。実質的な支援に基づき、資格停止期間は16ヶ月間の4分の3まで猶予されうる。そのため、この例における最短の資格停止期間は4ヶ月間となる(説明目的のため、この例では、パネルは10ヶ月間猶予し、資格停止期間は6ヶ月間とすると仮定する。)。
 
4. 第10.11項に基づき、資格停止期間は原則として終局的な聴聞会の決定の日付より開始する。但し、競技者がアンチ・ドーピング規則違反を速やかに自認したことを理由として、資格停止期間は最も早くて検体採取の日より開始することも可能であるが、いかなる場合においても競技者は聴聞会の決定の日付(第10.11.2項)から、資格停止期間の少なくとも半分の期間は(本例においては、3ヶ月間)服さなければならない。
 
5. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させなければならない(第9条)。
 
6. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別段の措置を要する場合を除き、失効する。
 
7. 各制裁措置の義務事項であるため(第10.13項)、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18 歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない。
 
8. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者の加盟クラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。したがって、競技者は資格停止期間の終わる1ヶ月半前に、トレーニングに復帰することが認められることになる。
 
例2
 
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会(時)検査における特定物質である興奮薬の存在(第2.1項)によりなされた。競技者が意図的にアンチ・ドーピング規則違反を行ったことがアンチ・ドーピング機関により立証可能であり、競技者が競技力に関連性のない理由により禁止物質を競技会外で使用したことが立証不可能である。競技者は主張されたアンチ・ドーピング規則違反を速やかに自認せず、競技者が実質的な支援を提供した。
 
措置の適用
 
1. まず、第10.2項が適用される。アンチ・ドーピング機関は、アンチ・ドーピング規則違反が意図的に行われた旨を立証でき、競技者は、物質が競技会外で認められており、禁止物質の使用が競技者の競技力との関連性を有していなかった旨を立証できないため(第10.2.3項)、資格停止期間は4年間となる(第10.2.1.2項)。
 
2. 違反が意図的であったため、過誤の有無に関連する軽減の余地はない(第10.4項及び第10.5項は適用されない。)。実質的な支援に基づき、制裁措置の猶予の上限は4年間の4分の3となりうる。そのため、最短の資格停止期間は1年となる。
 
3. 第10.11項に基づき、資格停止期間は聴聞会の終局的な決定の日より開始する。
 
4. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させる。
 
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する
 
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
 
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者の加盟クラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
 
例3
 
事案:違反が疑われる分析報告が、競技会外の検査における蛋白同化ステロイドの存在(第2.1項)によりなされた。競技者による重大な過誤又は過失のないことが立証され、また違反が疑われる分析報告が汚染製品より生じたことが競技者により立証された。
 
措置の適用
 
1. まず、第10.2項が適用される。なぜなら、競技者は、例えば、汚染製品の使用において重大な過誤がなかったというように、アンチ・ドーピング規則違反を意図的に行っていないことを裏づけ証拠により立証することができるからであり(第10.2.1.1項乃至第10.2.3項)、資格停止期間は2年間となる(第10.2.2項)。
 
2. 第2段階として、パネルは軽減の可否を判断する上で過誤に関連する可能性を分析する(第10.4項乃至第10.5項)。競技者は、アンチ・ドーピング規則違反が汚染製品により発生し、自らが第10.5.1.2に基づき重大な過誤又は過失なく行動したことを立証することができるため、資格停止期間の適用範囲は2年間から譴責の幅に軽減される。パネルは競技者の過誤の程度に従い、当該範囲内において資格停止期間を決定する(説明目的のため、この例では、パネルは4ヶ月の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
 
3. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果は、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
 
4. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
 
5. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる立場においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる1ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
 
例4
 
事案:違反の疑われる分析報告がなされず、又は、アンチ・ドーピング規則違反に問われていない競技者が、競技力向上のために蛋白同化ステロイドを使用したことを自発的に自認し、実質的な支援も提供した。
 
措置の適用
 
1. 違反が意図的であったため、第10.2.1項が適用され、賦課される基本的な資格停止期間は4年間である。
 
2. 過誤に関連する資格停止期間の軽減が適用される余地はない(第10.4項及び第10.5項は適用されない。)。
 
3. 競技者の自発的な自認(第10.6.2項)のみに基づき、資格停止期間は4年間の半分を上限として短縮されうる。競技者の実質的な支援(第10.6.1項)のみに基づき、資格停止期間は4年間*の4分の3を上限として猶予されうる。第10.6.4項に基づき、自発的自認及び実質的な支援を共に考慮すると、制裁措置が短縮又は猶予されうるのは4年間の4分の3が上限である。よって、最短の資格停止期間は1年となる。
 
4. 資格停止期間は原則として、聴聞会の終局的な決定の日より開始する(第10.11項)。もし、自発的自認が資格停止期間の短縮の要素とされたのであれば、第10.11.2項に基づく資格停止期間の早期開始は認められない。同条項は、競技者が同じ事実関係により二重に恩恵を受けることのないよう定められている。但し、資格停止期間が実質的な支援のみに基づき猶予された場合には、第10.11.2項は依然として適用することができ、資格停止期間は、競技者による蛋白同化ステロイドの最終の使用の時点より開始する。
 
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
 
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18 歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
 
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限の下にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる資格においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその他関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
 
例5
 
事案
サポートスタッフが、競技者を虚偽の名前のもと競技会に参加させることにより、当該競技者に賦課された資格停止期間を回避することを助けた。当該サポートスタッフは、アンチ・ドーピング機関によりアンチ・ドーピング規則違反の通知を受ける前に、当該アンチ・ドーピング規則違反を自発的に認めた(第2.9項)。
 
措置の適用
 
1. 第10.3.4項に基づき、資格停止期間は、違反の重大性により、2年間乃至4年間となる(説明目的のため、この例では、パネルは3年間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
 
2. 意図が第2.9項におけるアンチ・ドーピング規則違反の要素であるため、過誤の有無に関連する軽減の余地はない(第10.5.2の解説を参照すること。)。
 
3. 第10.6.2項に基づき、自認が唯一の信頼性のある証拠である場合には、資格停止期間は半分に短縮することができる(説明目的のため、この例では、パネルは18ヶ月間の資格停止期間を賦課すると仮定する。)。
 
4. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、サポートスタッフが18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項)。
 
例6
 
事案:競技者が初めてのアンチ・ドーピング規則違反に対する制裁措置として14ヶ月間の資格停止期間の措置を受けたが、そのうち4ヶ月間は実質的な支援を理由に猶予された。今般、当該競技者は、競技会(時)検査において特定物質には該当しない興奮薬が存在した結果として、第二回目のアンチ・ドーピング規則違反を行った(第2.1項)。当該競技者は、重大な過誤又は過失がないことを立証するとともに、実質的な支援を提供した。これが初回の違反であったならば、パネルは競技者に対し16ヶ月間の資格停止期間の制裁措置を賦課し、実質的な支援を理由として6ヶ月間猶予したであろうと仮定する。
 
措置の適用
 
1. 第10.7.4.1項及び第10.7.5項が適用されるため、第10.7項が第二回目のアンチ・ドーピング規則違反に適用される。
 
2. 第10.7.1項に基づき、資格停止期間は以下のうち最も長い期間となる。

(a) 6ヶ月間
(b) 第10.6項に基づく短縮を考慮せずに初回のアンチ・ドーピング規則違反につき賦課された資格停止期間の半分(この例では、14ヶ月の半分、即ち7ヶ月間となる。)、又は、
(c) 第10.6項に基づく短縮を考慮せずに、初回の違反であるかの如く取り扱われた第二回目のアンチ・ドーピング規則違反に別途適用される資格停止期間の2倍(この例では、16ヶ月間の2倍、即ち32ヶ月間となる。)。

よって、第二回目の違反の資格停止期間は、(a)、(b) 及び(c) のうち最も長い期間となり、それは32ヶ月間の資格停止期間となる。
 
3. 次の段階では、パネルは第10.6項(過誤に関連性を有しない短縮)に基づく猶予又は短縮の可能性を査定する。第二回目の違反の場合には、第10.6.1項(実質的な支援)のみが適用される。実質的な支援を理由として、資格停止期間は32ヶ月間の4分の3を猶予されうる。そのため、最短の資格停止期間は8ヶ月間となる(説明目的のため、この例では、パネルが実質的な支援を理由に資格停止期間のうち8ヶ月間分を猶予し、その結果として賦課された資格停止期間を2年間に短縮すると仮定する。)。
 
4. 違反が疑われる分析報告(の対象となる違反行為)が競技会で行われたため、パネルは当該競技会で得られた結果を自動的に失効させる。
 
5. 第10.8項に従い、検体採取の日の後、資格停止期間の開始までに得られた競技者のすべての結果も、公平性の観点から別途要請される場合を除き、失効する。
 
6. 各制裁措置の義務事項であるため、第14.3.2項に言及される情報は、競技者が18歳未満の者である場合を除き、一般開示されなければならない(第10.13項。)
 
7. 競技者は、当該競技者の資格停止期間中、署名当事者又はその関係当事者の権限にある、競技会その他スポーツ関連活動に、いかなる資格においても参加してはならない(第10.12.1項)。但し、競技者は、(a)競技者の資格停止期間の最後の2ヶ月間又は(b) 賦課された資格停止期間の最後の4分の1の期間(第10.12.2項)のいずれか短い方の間、チームとトレーニングするために、又は、署名当事者若しくはその関係当事者のクラブ若しくは他の加盟機関の施設を利用するために、復帰することができる。よって、競技者は資格停止期間の終わる2ヶ月前に、トレーニングに復帰することが認められる。
 
* WADA の承認のもと、例外的状況において、実質的な支援を理由とする資格停止期間の猶予は最大で4分の3を超える場合があり、報告及び公開が遅れる場合がある。

付属文書3-同意書

[競技連盟名]の一員として、かつ/または国際ろう者スポーツ委員会の認定する大会の参加者として、私は以下のとおり誓約いたします:
 
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則(随時の改訂も含め)および世界アンチ・ドーピング機構が発行し、同機構のウェブサイト上に掲載する国際基準の、すべての条項の制約下にあることを認め、かつそれらに従うことを確約いたします。
 
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則の下で行使される、またICSDアンチ・ドーピング規則に則って結果を管理し、制裁措置を課す、ICSD[および当該国内ろう者スポーツ連盟および/また国内アンチ・ドーピング機関]の権限を認めます。
 
私は、ICSDアンチ・ドーピング規則に則って下された決定に対するすべての紛争について、ICSDアンチ・ドーピング規則の明示する解決方法が尽きた場合、ICSDアンチ・ドーピング規則第13条により、国際レベルの競技者の場合において、最終かつ拘束力を有する唯一の調停機関である、スポーツ仲裁裁判所(CAS)を上訴機関と認めます。
 
私は、上述の調停機関の決定が、最終かつ効力を持つものと認め、その後いかなる抗議、調停、訴訟、係争、またその他の法廷闘争を行いません。
 
 
私は現行の誓約書を読み、また理解しております。

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日付
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活字体による氏名(姓、名の順で)
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生年月日
(日/月/年)
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署名(18歳未満の者である場合、法的保護者の署名)