コロナウイルス感染症拡大の影響により困っているきこえない人たちへ

医療機関への無線LAN導入普及啓発などについて、厚生労働省へ緊急要望を提出

下記要望書を提出しました。

連本第200451号
2021年1月8日

厚生労働大臣
田村 憲久 様

東京都新宿区山吹町130 SK ビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

医療機関への無線LAN導入普及啓発などに関わる緊急要望

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい人(以下、きこえない人)への福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。また、新型コロナウイルス感染症対策で、国民の生命と健康を守るために尽力されておられることに大変感謝いたします。
 新型コロナウイルス感染症対応において、きこえない人への診療を支える手話通訳者の命と安全を守るために、第一次補正予算及び第3次補正予算によって、厚生労働省意思疎通支援事業における遠隔手話通訳を行う「遠隔手話通訳サービスシステム」の整備が進められています。
 しかし、スマホやタブレットによる遠隔手話通訳を行うにあたり、医療機関の現場で「電波を使うと医療機器に影響が出るから」と拒否される案件が発生しております。
 つきましては、無線LANの利用について、全医療機関への周知と環境整備を進めていただけますよう、下記の通り要望します。

(1)全医療機関への無線LAN導入ガイドラインの周知と適切な無線LAN環境整備を

 「医療機関において 安心・安全に電波を利用するための手引き」が電波環境協議会より平成28年4月に発行され、総務省電波利用ホームページ等への掲載や各地域で、医療機関における電波利用推進協議会等による説明会などが開催されていますが、まだ周知が不十分です。
 上記の手引きによりますと、平成28年時点で無線LANが医療機関の75%弱にすでに設置されていますが、医療機関の無線LANはイントラネットになっていて、院内や医療ネットワーク内で閉じたネットワークになっており、外来患者や入院患者が無線LANに接続できないようになっております。
 通院や入院しているきこえない人への情報保障のために、全ての医療機関において、遠隔手話通訳を必要とする患者が診療を受ける際に接続出来る無線LAN環境の整備を強く望みます。
 つきましては、都道府県医師会と全医療機関への無線LAN利用に関わるガイドラインの周知と適切な無線LAN環境を整備するための予算付けを要望します。

(2)遠隔手話通訳システムとオンライン医療システムの連携の実現を

 令和2年8月26日に、厚労省医政局より「オンライン診療に手話通訳者等が参加する場合の取扱いについて」の通知が出され、患者が手話通訳者を同行して受診した際に、手話通訳者を第三者として除外しないように周知されています。
 しかし、コロナ感染症から手話通訳者の命と安全を守るために、遠隔で手話通訳できる仕組みが必要とされ、厚労省意思疎通支援事業で遠隔手話通訳を行う「遠隔手話通訳サービスシステム」の整備が進んでいます。
 しかし、現時点では、この「遠隔手話通訳サービスシステム」と「オンライン診療システム」の両システムの連携が出来ず、結果的にきこえない人は情報保障がない状態でオンライン診療を受けざるをえません。
 早急に「遠隔手話通訳サービスシステム」と「オンライン診療システム」の両システムの連携について検討の上、整備してください。

(3)遠隔手話通訳システムの必要性について各地域医療機関に理解を

 きこえない人の受診の際、医師との意思疎通のためには手話通訳が必要ですが、手話通訳や遠隔手話通訳について十分な理解がなかったために、手話通訳または遠隔手話通訳を拒否されたケースがあります。
 つきましては、都道府県医師会を通して、きこえない人から「手話通訳者の同行」もしくは「遠隔手話通訳」の利用を拒否しないように全ての医療機関へ周知をお願いします。

以上