東京2020オリンピック・パラリンピックの開閉会式の放送への手話言語通訳の付与を求める要望への回答書に対する意見書



 NHKからの「東京2020オリンピック・パラリンピックの開閉会式の放送への手話言語通訳の付与を求める要望への回答を受けての再要望(回答)」に対し、意見書を提出いたしました。

【参考】

連本第210222号
2021年8月3日

日本放送協会
会長 前田 晃伸様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎
(公印省略)

東京2020オリンピック・パラリンピックの開閉会式の放送への
手話言語通訳の付与を求める要望への回答書に対する意見書

 標記の件について、貴会から、8月2日付で回答書(以下、「貴会回答書」という)を頂きました。ご回答いただきありがとうございます。
 貴会回答書によりますと、東京2020オリンピック・パラリンピックの開閉会式の放送には全編に手話を付ける形の放送の検討を進めているとされています。そのことにつきましては、貴会が当連盟の要望を前向きにご検討いただき、手話通訳付与の実現に努力いただいたものと評価いたします。
 しかし、貴会がご検討いただく方法につきまして、当連盟は以下の通り意見を述べますので、「多様性と調和のとれた」放送の推進に、より一層の努力をお願い申し上げる次第でございます。

1.「多様性と調和」がなされた放送・サービスといえるようにするためには、オリンピック閉会式及びパラリンピック開閉会式の手話言語通訳付き放送を、NHK総合で実施する必要があります。
 貴会回答書には「NHKではオリンピックの閉会式についてはEテレで全編に手話をつける形で放送できるよう、準備を進めています。また、パラリンピックの開閉会式についても、全編に手話をつけるよう検討しています。」とあります。
 NHK総合で放映される閉会式の映像には手話言語通訳を付与せず、Eテレで放映する閉会式の映像には付与するというご対応いただくことについては、「字幕放送はオンオフできるのに比べ、オンオフができない手話言語通訳の映像は目障りであると視聴者の強い批判があるので、Eテレの方で」という貴会の判断があったものと受け止めております。
 わが国の視聴者の中には、「多様性と調和」への理解がなく手話言語通訳が目障りだとの意見が残念ながら一定数存在します。
 しかし、手話通訳付き放送を実現した台湾や韓国でもわが国と同様に手話言語通訳に否定的な意見は存在します。それでも台湾や韓国の放送事業者は「多様性と調和」の実現に努力すべく、手話言語通訳付き放送を実施しました。「多様性と調和」への意識の高い欧州のいくつかの国では手話言語通訳付き放送を実施していると聞きました。
 「多様性と調和」を掲げるオリンピックだからこそ、NHK総合やEテレのそれぞれとも閉会式を放映するにあたり、手話言語通訳を付与することが多様性と調和がなされた放送・サービスであると考えます。
 総合テレビでオリンピックの閉会式への対応が日程等物理的に難しい場合は、パラリンピックの開会式および閉会式の放送ではその理念に基づき、ぜひ総合テレビで手話言語通訳付き放送を実現していただきたくお願いいたします。

2.日本国外で行われる世界的なスポーツイベントの放映における手話言語通訳の付与体制のあり方について、貴会との「建設的対話」をぜひ進めてください。
 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会とは以前から建設的対話をすすめ、その結果、開会式での手話言語通訳を採り入れていただきました。また、わが国を横断する聖火リレーのイベントでも手話言語通訳を配置していただきました。
 貴会Eテレにおかれましては、以前から積極的に障害のある当事者の出演を拡大し、また当事者の視点での質の高い番組を制作しようと当事者団体との意見交換の場を積極的に設けていただいております。さらに貴会総合テレビの報道部門では、通常の報道番組では手話言語通訳を付与することがないという問題はあるものの、国民の生活や命に直結する重大な内容については、政府が用意した手話言語通訳を付与した放送を時々実施しております。
 このように最近、貴会では手話言語通訳付与に対する意識が高まっていることを私たちは実感しております。わが国で開催される世界最大規模のスポーツ大会を経験することは人生において経験できるものではありません。東京オリンピック開会式での実況中継に手話言語通訳が付与されることは当然のことと思っておりましたので、開会式に手話言語通訳が付与されなかったことは青天の霹靂でありました。
 貴会からは、「今後のオリンピックなどについてのご要望につきましては、今回の取り組みをふまえ、総合的に判断させていただきたい」、「個別にさせていただくのか、視聴覚障害者の皆様と NHK ・民放連の間で行われている定期的な意見交換の枠組みの中で 進めさせていただくのか、改めてご相談させていただければ」とご回答をいただきました。
 国連が定めたSDGsの「誰一人取り残さない」という理念、障害者権利条約及び障害者差別解消法の観点から、またきこえない人が自ら選択する意思疎通手段により情報を受ける権利やテレビ番組等の文化的な活動を享受する機会を保障するために、貴会との「建設的対話」をぜひ実現できるよう心からお願いいたします。

以 上