7月1日~5日、中央本部メンバーが岩手県、宮城県を訪問



 7月1日(金)~5日(火)、東日本大震災聴覚障害者救援中央本部(以下、「中央本部」と略)から久松事務総括、浅井手話通訳担当、岡安職員が、今後の長期的な支援計画についての調査、協議を行うために、岩手県、宮城県を訪問しましたので、その報告を以下に記します。福島県については、別に日程を調整して訪問する予定です。
 
7月1日(金)
 
13:00 東日本大震災聴覚障害者支援岩手本部(以下、「岩手本部」と略)の高橋本部長とともに、岩手県障がい保健福祉課を訪ね、被災聴覚障害者の実態把握調査への協力を求める。県としては、個人情報保護法により、聴覚障害者の情報を提供することはできないが、できる範囲での協力はしたいとのことであった。

(写真:岩手県障がい保健福祉課にて ※写真クリックで拡大)
 
16:00 岩手本部事務所(岩手県立視聴覚障害者情報センター(以下、「情報センター」と略)内)で今後の対応について協議。(出席者:鈴木情報センター所長、高橋本部長、岩手本部スタッフ、高橋情報センター職員(通訳)、久松、浅井、岡安)
・「岩手県沿岸部被災者調査(案)」について検討し、岩手の現状に合った調査を行うこととし、具体的手法については、別途検討することを確認。
 
7月2日(土)
 
8:30 高橋本部長の車で盛岡を出発し、宮古市に向かう。
 
10:30 宮古市役所で岩手県ろうあ協会宮古支部の方々、宮古市障害者福祉相談員と待ち合わせて、被害の大きかった田老地区へ。
・ガレキは片づけられていて、いまは解体を待つ建物が点在している状況。
・相談員の話によると、宮古市の人口は6万人弱。聴覚障害の手帳保持者70名。
・岩手県ろうあ協会宮古支部の会員7名の内1名が死亡したとのこと。
・亡くなった方(男性)は、地震は分かっても津波が来ることが分からずに逃げ遅れたのではないかとのこと。今は、家も解体されて跡形もなくなっていた。

(写真:宮古で亡くなったろう者の家の跡)
 
13:00 宮古市役所近くで昼食後、盛岡に戻る。
・市役所も1階部分は水に流されたし、商店も浸水したとのことだが、今は奇麗に片付けられて、多くの商店が営業を再開している。
 
7月3日(日)
 
10:00~12:00 第3回岩手本部会議にオブザーバーとして出席
・各構成団体からの報告などが行われ、中央本部からは沿岸部の聴覚障害者の実態調査を県の協力を得て行うことを説明し、了承された。

(写真:岩手本部会議)
 
12:30~14:00 聴覚障害者の実態調査について県障がい福祉課と岩手本部、、情報センター、中央本部で具体的協議
・以下のような方法で行うことを確認。
7月末まで 岩手本部が調査用紙を作成し、岩手県障がい福祉課へ提出
8月上旬  この調査用紙を、岩手県障がい福祉課から沿岸部の聴覚障害手帳保持者へ郵送
 (岩手県の聴覚障害の手帳保持者約5,000人のうち沿岸部在住者は約1,000人)
8月中旬  調査用紙の返信は岩手本部宛てとする
8月末まで 岩手本部で集計
 
7月4日(月)
 
8:30 高橋本部長の車で盛岡を出発し、大船渡市へ向かう。
 
11:00頃 大船渡市役所保健福祉課へ挨拶
・全ての障害者の実態を把握できていないので、ぜひ協力をとのこと。
 
11:30 大船渡市保健福祉課障害福祉係職員の案内で、被災者宅を訪問。他に近所の聴覚障害者と仮設に暮らす聴覚障害者も来て一緒に昼食をとる。
・職員の話では、大船渡で仮設住宅に入っているろう者は2名。他に難聴者も何人か仮設住宅に入っているとのこと。
 
18:00 東日本大震災聴覚障害者救援宮城本部(以下、「宮城本部」と略)と打合せ
・手話通訳の公的派遣について
→6月末で終了しているが、現地の役所も設置通訳の必要性を感じている。今後、当面は派遣制度で代用して、設置に向けて取り組みたいとのこと。
・メンタル支援について
→相談員のコーディネーターを長期派遣し、現地の状況に合わせて相談支援を行い、宮城のろうあ者相談員の活動(増員)にもつなげていくことを説明し、了承を得る。
・手話通訳者の健康相談について
→全国手話通訳問題研究会の健康対策部のメンバーを中心に支援者の健康相談を行うことを計画。地元の医師とも連携を取りながら進めることで了承を得る。
 
7月5日(火)
 
10:00 JDF宮城支援センターを訪問
(中央本部:久松・浅井・小海・岡安、宮城本部:浅野)

(写真:JDF宮城支援センター)
 
14:00 宮城県障害福祉課を訪問し、5月に宮城県ろうあ協会から県に提出した要望書などについて協議
宮城県:峯浦課長・小谷野班長・坂氏・高橋明美(通訳)
中央本部:久松・小海・岡安(通訳)・浅井
宮城本部:小泉・浅野・佐藤可

(写真:宮城県庁にて)
 
1.5月に提出した要望書について
①情報提供施設の設置について
情報提供施設の機能や必要性を理解してもらうための資料を準備し、県と協議を継続していく。
②手話通訳者の設置について
今は生活再建に向けての利用が増えている。公的派遣は6月末で終了しているが、名取市と亘理町は7月以降週1日、派遣事業を使って通訳者を置くことになっている。しかし、1日だけでは、聴障者はその日に合わせて都合を調整しなければならず、不便であり、通訳者の常時設置が今後の課題。
 
2.沿岸部被災者調査について
岩手県が地域支え合い事業を利用して8月からを始める予定の調査と同じ手法での身体障害者手帳所持者への一斉アンケートの協力を求め、概ね了解の様子。
 
3.メンタルケア専門家の派遣について
2回にわたる医療・メンタルチームによる調査により、心のケアの必要性が広範囲で見つかったため、救援中央本部として、専門家を1年間宮城に派遣し、県としても協力体制が取れるよう依頼。
 
<問題点等>
・聴覚障害当事者がきちんと説明・要望できるようにし、当事者が訴えることで、その重要性を理解してもらうことが重要である。
・行政担当者が変わっても、きちんと引き継がれるよう、記録を作ることが必要である。
・情報提供施設建設について運動を進めるために、勉強会を開くことが必要である。
・仮設住宅には、電話回線の引き込みがないためにFAXが使えないところや、電話はあるが、FAXがないところなど、聴覚障害者のことが考慮されていないところもあるので、仮設住宅のバリアフリー化について、他障害者団体と共に国レベルでの働き掛けが必要と思われる。
 
<所 感>
・3地域本部が同じ状況ではないことは想像していたが、やはり現地に行ってわかることがたくさんあった。
・支援をする健聴スタッフも被害を受けている方もいる。その中で聴覚障害者への支援と言っても、なかなか簡単ではないと思った。
・震災から3ヶ月以上が経過し、疲れも出てくるなかで、今まで必死で活動していて気がつかなかった部分にも気付くようになり、地域本部へのサポートの内容を再検討する必要を感じた。
 
以上
 
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