「国連障害者権利委員会」委員会声明採択



 国連障害者権利委員会は、第32回会期中に障害者権利委員会の会議における手話言語通訳の提供及び障害者権利委員会のろう者委員への支援についての声明を採択しました。

 原文は国連人権高等弁務官事務所サイト障害者権利委員会の声明、宣言、見解ページ内の 2025 / Statement / Statement of the Committee adopted during its 32nd Session (3-21 March 2025)(Word形式)でご覧頂けます。

試訳

障害者権利委員会

第32回会期中(2025年3月3日から21日)に
採択された委員会声明

障害者権利委員会の会議における手話言語通訳の提供および
障害者権利委員会のろう者委員への支援

当委員会は、障害者権利委員会における手話言語通訳の提供に影響を与えている最近の動向を遺憾に思います。これらの変更は、委員会の効果的な機能および、他の委員と平等な立場で職務を遂行する委員の能力に重大な影響を及ぼします。

  • 2011年から2024年まで、国連ジュネーブ事務所(UNOG)は、障害者権利委員会に対し、国際手話通訳と各国手話言語通訳の2つの形態で手話通訳手話言語通訳を提供してきました。2019年に発行された「アクセシブルな会議および会議の標準作業手順書」(UNOG/DCM/2019/6)は、手話言語通訳の提供においてこれらの2つの形態を認めています。2025年1月、委員会事務局はメールを通じて、UNOGが委員会に対し各国手話言語通訳を今後提供しないと知らされました。国連障害者インクルージョン戦略に反して、障害者権利委員会が、この決定について事前に相談を受けることや正式な通知を受けることはありませんでした。
  • 2025年3月、第32回委員会会合において、UNOGは自国の手話言語通訳者を派遣する締約国代表団に対し、手数料を課す措置を開始しました。この手数料は1,500米ドルで、委員会会議が開催される会議室と接続できるようZoomリンクを3時間利用するための費用として課されました。この措置は、委員会やろう者参加者、締約国との協議はされず、委員会にも正式には通知されませんでした。委員会事務局に簡単なメールメッセージが送付されたのみでした。
  • 2024年6月、日本のろう者である田門浩氏が、障害者権利委員会の委員に選出されました。田門氏は2024年12月、UNOGに対し、自分が日本手話言語とアメリカ手話言語を使用していることを伝え、3人のアメリカ手話言語通訳者の派遣を要請しました。2025年2月(※ 原文では2024年2月となっているが誤記と思われる)、人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、田門氏に対し、たまたまアメリカ手話言語通訳者であるパーソナルアシスタント1名を付けました。UNOGは、第32回委員会会合において、田門氏に対し、公式会議時間中の公開および非公開の会議に国際手話通訳を提供しました。公式会議時間外には、田門氏はOHCHRが提供するパーソナルアシスタントよる支援のみを受けました。田門氏は、自身の費用で2人目のアメリカ手話言語通訳者を雇わなければなりませんでした。2024年12月、世界ろう連盟、世界手話言語通訳者協会、国際障害同盟は、田門氏の要請を支持する書簡をUNOGとOHCHRに送付しました。

これらの事態が、ろう者の国連活動への効果的な参加、委員会委員の効果的な参加、およびインクルージョンやアクセシビリティに関するより広範な原則に与える影響を考慮し、委員会は、国連事務局の関係部局に対し、以下のことを要請します。

国連障害者インクルージョン戦略(UNDIS)事務局宛:

  • UNDIS の原則に反するこれらの事態に留意すること。
  • UNOGおよびOHCHRと協力し、以前の各国手話言語通訳の基準を回復し、田門氏が職務を効果的に遂行するために必要な支援を受けることを確保すること。

国連ジュネーブ事務所(UNOG)宛:

  • 委員会に対する各国手話言語通訳の廃止決定を見直し、撤回すること。
  • 委員会や世界ろう連盟と意味のある協議を行い、国際手話通訳や各国手話言語通訳の両方の継続的な提供を確保すること。
  • 田門氏が会議中に完全な支援を受けられるよう、アメリカ手話言語に精通した通訳者を少なくとも2名確保すること。

人権高等弁務官事務所(OHCHR)宛:

  • 田門氏の通訳ニーズを支援するため、予算外資金を含む追加の資金を割り当てること。
  • OHCHRの合理的配慮政策の対象となるすべての権利を有する者が必要な支援を受けられるよう、合理的配慮に関する任意基金を設立または拡大すること。
  • 委員会が完全にアクセス可能かつインクルーシブな方法で運営されることは、CRPDの原則と国連障害者インクルージョン戦略に基づく責務を維持するために必要不可欠である。これらの問題に対処し、委員会の効果的な機能を回復するために、必要な措置が速やかに講じられることを私たちは信じる。

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