厚生労働省・総務省・気象庁・内閣府へ「平成30年度災害対応及び有事に係る聴覚障害者に関する施策要望(緊急)」を提出



 西日本豪雨、平成30年北海道胆振東部地震、相次ぐ台風等、災害が頻発し、被害は広範にわたっています。聴覚障害者災害救援中央本部では、2018年10月11日に厚生労働省、総務省、気象庁、11月1日に内閣府への要望交渉を行いました。その中で、気象庁緊急記者会見への手話通訳の付与について、今後、年度内の実施に向けて検討を進めているとの説明がありました。
 これらは今もなお被災地で不自由な生活を強いられている聴覚障害者・手話通訳者等の皆さまからの強い働きかけによるものです。引き続き、地域本部等の支援活動、被災者救済等の為、「聴覚障害者災害救援基金」へのご寄付、ご支援をよろしくお願いいたします。

→ 聴覚障害者災害救援基金

厚生労働省に要望書を提出
厚生労働省に要望書を提出
厚生労働省との要望交渉
厚生労働省との要望交渉
総務省に要望書を提出
総務省に要望書を提出
総務省との要望交渉
総務省との要望交渉
気象庁に要望書を提出
気象庁に要望書を提出
気象庁との要望交渉
気象庁との要望交渉
内閣府に要望書を提出
内閣府に要望書を提出
内閣府との要望交渉
内閣府との要望交渉

聴本第180003号
2018年10月11日

内閣府特命担当大臣(防災)
   山本 順三 様
厚生労働大臣
   根本 匠  様
総務大臣
  石田 真敏 様
気象庁長官
   橋田 俊彦 様

聴覚障害者災害救援中央本部
運営委員長 石野 富志三郎

平成30年度災害対応及び有事に係る聴覚障害者に関する施策要望(緊急)

 日頃より、私たち聴覚障害者へのご支援・ご協力を賜り感謝申し上げます。
 さて、2011年に東日本大震災、2016年の熊本地震、そして今年は大阪北部地震と、国民の生活が脅かされる大きな地震が相次いでいます。30年以内に発生すると言われている南海トラフを震源とした巨大地震への備えも、全国的に急務となっています。
 また、7月には西日本豪雨災害が発生し、広島・岡山・愛媛各県を中心に多くの被害が発生し、被災者の中には聴覚障害者も多くいます。音声情報が入らないことで避難が遅れ、救援物資の状況が伝わらないなど、不便な生活を強いられています。
 また、次々とやってくる台風や局地的なゲリラ豪雨などの異常気象や、さらに周辺国家の情勢によっては、北朝鮮からのミサイル発射など、国の存続を脅かす不測の事態が起こりうることも考えられます。
 つきましては、聴覚障害者の“いのち”が守れる体制を進めていただきたく、一刻も早く聴覚障害者に係る施策について下記のとおり要望いたします。

  1. 聴覚障害者の情報を保障する手話通訳者及び要約筆記者(以下、情報保障者)について、全自治体で設置できるよう、設置の拡大・促進する施策を図ってください。情報保障者は、聴覚障害者の社会生活にとって無くてはならないものであり、また災害のような非常時は優先的に聴覚障害者に十分な情報を提供できる体制を整えるよう、全自治体に指導してください。
     
  2. 災害発生後、復興の時期も含め長期的に支援できるよう、被災地に対して十分な情報保障者やろうあ者相談員の設置を行ってください。被災した聴覚障害者は周囲とのコミュニケーションが円滑に取れず、孤立した状態になることが多くあります。その心のケアや、生活再建のためには情報保障者やろうあ者相談員の設置は不可欠です。
     
  3. 現在、災害救助法による被災県以外からの情報保障者やろうあ者相談員等支援者の公的派遣の派遣範囲は、公的機関、避難所の要援護者用窓口、福祉避難所の受付に限定されています。災害時には情報も無く、窓口や避難所に出向くことのできない聴覚障害をもつ被災者もいるため、法改正も含めて派遣範囲を拡大し、要支援者の個人宅の訪問や聞き取り調査への同行にも適用できる等、派遣の範囲が限定されないようにしてください。
    (先の西日本豪雨の際も避難所以外への情報保障者の派遣ができませんでした)
     
  4. 災害・有事関連情報は防災無線等だけでなく、視覚的に聴覚障害者にも伝わるような各自治体(市町村)で整備してください。
    ① 屋内:防災無線や緊急放送を文字で受信できる機器(文字表示装置付き個別受信機等)の
      設置やタブレット型端末での受信システムの整備)
    ② 公共施設等:聴覚障害者へ文字や視覚情報による対応を周知すること
    ③ 街頭無線:光や文字で緊急時やその音声情報を視覚的に知らせる装置の整備
      (文字表示装置付き屋外拡声子局等)
     
  5. 全ての災害関連テレビ番組に「手話」と「字幕」を付与してください。NHK・民放各局、またキー局だけではなくローカル局(NHK地方局も含む)全てが対象です、被災時は聴覚障害者にとって視覚情報が瞬時に得られるテレビが重要な情報源になります。居住する地域や放送局によって、テレビから得られる「情報格差」が出ないよう、各テレビ局に指針を出す等、必要な施策を講じてください。
    (先の西日本豪雨においても、NHK地方局やローカル局において字幕放送はほとんど実施されませんでした。)
     
    リアルタイム字幕・手話放送
  6. 役所等の公的機関や災害時の一般避難所における備品のガイドラインに、手話・字幕付き放送「目で聴くテレビ」が視聴できる「アイ・ドラゴン」(聴覚障害者専用情報受信装置)を設置してください。また、福祉避難所対象となる全ての施設に「アイ・ドラゴン」を設置し、それに係る設置工事費や受信料等の補助の予算化をしてください。
     
  7. 緊急・定例にかかわらず、首相官邸や各省庁が実施する会見においては、必ず手話通訳者を配置してください。会見がテレビやインターネット上で放送される際、事業者の都合で手話通訳者がカット(フレームアウト)されないよう、発表者のすぐ近くに手話通訳者の立ち位置を設定してください。また、放送事業者にも手話通訳を付与した状態で放送するよう、働きかけてください。
     
    (参考)
    2017年にアメリカのフロリダ州に上陸した巨大ハリケーン「イルマ」に関するリック・スコット知事の緊急会見の様子を紹介します。いずれも画面内に手話通訳者が付与されるよう、発表者に近い位置になっています。
       https://youtu.be/wGWtTRYSleU
       https://youtu.be/mQG7KFflYqg
       https://youtu.be/5inlHGIlxEc
      リック・スコット知事の緊急会見の様子
     
  8. 災害時に聴覚障害者支援の拠点となる「聴覚障害者情報提供施設」を全ての都道府県・政令指定都市に設置し、福祉避難所の指定などを含めて災害時に即時に対応できるような体制づくりを進めてください。「聴覚障害者情報提供施設」の役割として、防災への啓発や訓練、災害時の情報発信、避難所等への情報保障者や、ろうあ者支援員等の派遣を担えるように、必要な法整備と予算化を図ってください。
     

以  上 

  聴覚障害者災害救援中央本部         
   (構成団体)               
     一般財団法人全日本ろうあ連盟     
     一般社団法人全国手話通訳問題研究会  
     一般社団法人日本手話通訳士協会    
【連絡先】                  
  一般財団法人全日本ろうあ連盟        
  〒162-0801東京都新宿区山吹町130SKビル8階
    TEL 03-3268-8847 FAX 03-3267-3445  
    メール saigai@jfd.or.jp          

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