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全日本ろうあ連盟スポーツ委員会による和訳(2011/04/14 掲載)

ICSD eNews 和訳版 2011年4月号

  (ICSDウェブサイトの原文)

目次(一部)

委員長からのメッセージ−2011年4月

冬季デフリンピックスロバキア大会についての顛末

デフリンピックは、これまでの歴史でかつてないほどの財政的・社会的危機に直面しています。

スロバキアのデフリンピック組織委員会による大会開催の失敗および、委員長のヤロミール・ルーダによる犯罪的詐欺行為は、世界各地のろう者スポーツ選手・スタッフに、多大なる苦難を強いることになりました。

世界中のろう者スポーツの名声は、深く傷つけられる事態となっています。

改革と回復の必要性

冬季デフリンピック開催の失敗がもたらした結果に直面し、ICSDは独自の調査を導入しようとしています。

今求められているものは、単にICSD理事や事務局の顔ぶれを変更することではなく、大会の運営やろう者スポーツの構造について、新たなアプローチを行うことです。

従来のやり方で仕事を進めることで、ICSDはデフリンピックを完全に持続不可能な方向に導いていました。2009年の台湾でのデフリンピックは、7,200万ドルの予算が必要でしたが、100パーセント政府からの出資によるものでした。しかし、このデフリンピック発展のモデルは、完全に政府発の費用に依存するという形態でしたが、ICSDは、将来デフリンピックを招致する都市に対し、政府からの支援のいかなる保障をも求めることは行ってきませんでした。

招致の期間中、政府の支援がまったく得られない状況下にあった、2013年アテネ大会の組織委員会は、2009年のギリシャの総選挙後に解散しました。ギリシャろう者スポーツ連盟は、2013年アテネ大会に政府から支援が得られるよう、最後の試みを続けている最中です。数週間後には、その結果が分かることでしょう。

2015年バンクーバー大会の招致活動は、関連する国内ろう者スポーツ協会の支援を必要とせずに、開催都市が立候補出来る制度の中で展開され、選出されました。そして、2015年バンクーバー大会もまた、開催不可能となりました。

デフリンピックの全面的な失敗と、招致や運営、開催方法の古いあり方に直面し、われわれのなすべきことは、徹底した改革を推し進めることのほかありません。

2009年10月より、ICSD会員は、戦略的な変化を実現するため、新しい委員長と理事の投票を行いました。この変化は今、いまだかつてないほど必要とされるものです。私は、孤立と旧弊なあり方は、もはや必要な答えではないという基盤に立って、役員選挙に立候補をしたのです。

そして今、そのことは一層明白です。

ICSDは、強力な権限に基づき、デフリンピックの失敗に向き合うことによって、何が問題であり、根本的に改善しなければならないことは何なのかを見極める、独立した調査を導入する予定です。この団体が瀕している危機を、独立の立場で、現実的かつ真摯に評価することになるでしょう。

ICSDには既に、オリンピック運動からの敬意を得ている、将来の戦略計画があります。これにはさらに、デフリンピックの改革を加えることになるでしょう。この仕事は理事たちと、そしてもちろん、新しい事務総長によって実現されることになります。私たちは幸運にも、この危機的な時に、IOCでオリンピック・パラリンピックの招致や開催を成功に導き、豊富な経験を積んだスポーツの専門家を迎えることが出来たのです。

オリンピック運動に取り組んでいく方針に従い、孤立の道を歩くのではありません。IOCはわれわれの調査、改革、向上のために喜んで助力する旨、IOC会長から書簡をいただいています。

IOCとの関係

IOCとICSDが対極の地平にあるような状況は、終わりにするべきです。私が策定した戦略計画に則り、理事はIOCやその他スポーツ団体との関係を、注意深く見直しています。ろう者スポーツは、孤立しては成り立ちません。競技のルールは、国際競技団体のものを採用しています。アンチ・ドーピング対応については、WADA(国際アンチ・ドーピング機構)の管理のもとにあります。これら諸団体の提供する機会を、取り込んでいかなければなりません。

国レベルの管理

健全なろう者スポーツの基盤には強固な会員各国の存在があるという認識を、ICSDは持ち続けています。この点において、各国のろう者スポーツ連盟の地位が尊重されることを保障すべく、私たちは新しい作業を行っています。

モデルとなるあり方は、世界各地に存在しています。ICSD会員は、完全に独立した団体であるケース、国内オリンピック委員会や障害者スポーツ協会、パラリンピック委員会の中の自律した組織であるケースと、国によってそのあり方はさまざまです。

国内のスポーツ団体同士が互いに敬意を払うことは、同じ実践をしている国際スポーツ諸団体からも、最も支持されることです。ろう者スポーツの自律を強固に維持しながら、IOC・IPCと協働して、発展を続けていきたいと思います。

ろう者スポーツ選手のためのろう者スポーツ

ろうの選手のニーズを第一に置かない限り、いかなるスポーツ組織も成功することは出来ないでしょう。ICSDは長い間、ろうのスポーツ選手の福祉を第一の優先事項とする取り組みに欠けていたと、私は認識しています。そのことは、実働的な選手委員会が長い間置かれていなかったという事実にも現れています。この委員会を再度立ち上げることを、第一になさねばなりません。

ろう者スポーツ改革

今こそ根本に立ち返るときです。ICSDは、レベルの高い大会を必ず開催することを保障することによって、すぐれたパフォーマンスを行うろうの選手たちのために働く団体であることを、真摯に受け止めなければなりません。優先すべきことは何なのか、再検討が必要です。デフリンピックを通して、私たちは何を獲得しようとしているのか、しっかりと見極めなければなりません。前進への新たな道を見つけましょう。そして、卓越した解決の道を探りましょう。ろうの選手たちが、なおこれ以上失うものがあってはならないはずです。

クレイグ・A・クローリー MBE
委員長