ごあいさつ



理事長 石橋 大吾
ごあいさつ

理事長 石橋 大吾

 このたび、全日本ろうあ連盟の第7代理事長を拝命いたしました。
 創立80年を間近に控え、これまで連盟の長い歴史と使命を背負うことの重責を感じています。
 今、ろうあ運動は新たな時代を迎えています。より包括的で公正かつ公平な社会の実現に微力ながらも貢献できるよう励んでまいります。
 「真の共生社会」の実現に向けて4つの重要な柱を提起します。

①医学モデルから社会モデルへ
これまで障害に関するあらゆる制度は、医学モデルの考え方に基づいてきていました。障害を個々の身体や精神的な特性として捉え、個人の問題であるとみなし、その差を埋めようという考え方です。しかし、それは常にきこえない・きこえにくい人が、きこえる社会に合わせることを強いるものです。
障害は、「障害のない人が多数を占める社会」の仕組みによって作られていると考え、社会のあり方を変えることで、多様性と個々の尊厳を尊重し、きこえない・きこえにくい人がいつでもどこでも自由に生き、自己実現できる社会を築くことをめざします。

②優生思想をなくす
過去の歴史において、きこえない・きこえにくい人に対する偏見や差別を助長し、こどもを生み育てる権利が奪われてきたのは、わが国に根差している優生思想によるものです。
日本国憲法がありながらも、きこえない・きこえにくい人の人権が尊重されず、手話言語を禁じ、口話教育を推し進められたことやこどもを産み育てる自由と生まれてくるこどもの生命が奪われた時代を二度と繰り返してはなりません。
被害者が声を上げ、全国で運動を展開している今こそ、優生思想の撲滅に取り組んでいきます。

③手話言語法の早期制定
手話言語はきこえない・きこえにくい人の言語であり、その言語権を法的に保障することは、きこえない・きこえにくい人が社会に完全に参加し、自己実現を果たすための重要な一歩です。
手話言語法があることで、きこえない・きこえにくい人が、手話言語を獲得する機会が保障され、手話言語を利活用できる機会が守られることになります。
きこえない・きこえにくい人が、自らの言語の権利を主張できる社会の実現に向け、全力を尽くします。

④東京2025デフリンピックの成功
2025年11月に4年に1度のきこえない・きこえにくい人による国際スポーツ大会であるデフリンピックが東京で開催されます。2023年よりデフリンピック運営委員会が設置され、大会開催に向けた準備が着々と進んでいます。連盟は今、手話言語アナウンサーや手話言語解説者、国際手話通訳者の養成研修が始まる等放送や通信のバリアフリー、情報保障体制の構築を推し進めています。東京2025デフリンピックをきっかけに、日本でのデフスポーツのさらなる発展と、スポーツを通した共生社会の実現をめざします。

 この4つの柱と併せ、連盟の長い歴史と誰一人取り残さない「真の共生社会」の実現という未来に向け、全国のきこえない・きこえにくい仲間とともに歩んでいくという使命感をもって進んでいきたいと思います。皆さまのご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

2024年6月9日
第72回全国ろうあ者大会 in 和歌山