優生保護法訴訟神戸地裁判決を受けての緊急声明



優生保護法訴訟神戸地裁判決を受けての緊急声明

2021年8月10日
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎

 障害を理由に、子どもを産めなくする不妊手術を強制されたことに対し、被害者たちが訴えている裁判で、これまでに仙台、東京、大阪、札幌地方裁判所は「手術から提訴までに20年が経過したという理由により(除斥期間の適用)」その請求が棄却され続けています。
 2021年8月3日、神戸地方裁判所は、旧優生保護法によって不妊手術を受けさせられた5人(うちろう夫婦が2組)の国家賠償請求訴訟の判決を出しました。ろう者の原告への判決は大阪に続き2例目でした。
 判決は、またしても神戸地裁も原告らの請求を棄却するという不当な判決で、非常に残念な結果になりました。

 神戸地裁の判決では、「旧優生保護法が幸福追求権などを定める憲法に違反していること。さらに、国会議員が長期にわたってその違憲状態を放置し優生条項を改廃しなかったことを初めて違法と認め、原告に損害賠償の権利があったとも認めました。」しかしながら、除斥期間(20年)の経過を理由に、「賠償の請求権は法律上、消滅した」として、原告側の訴えを棄却しました。
 このことは、原告の方々の奪われた人生を慮ると、あまりにも非情で到底容認できるものではありません。

 原告であるろう夫婦は「優生保護法という間違った法律があるということを聞いて、初めて自分たちにされたことを知った。私たちに情報が入ったのは非常に遅かった。それなのに遅すぎるというのは我慢ならない、これは差別だ」と心底から怒り、控訴を決意しています。
 これまでに全国8地裁で訴訟を起こしている原告25人のうち、ろう者は11人。当連盟が行った実態調査で判明した被害者数は170名にものぼります。神戸と福岡の6人のろう者の原告のうち2人は既に亡くなっています。札幌の原告1人、仙台の原告1人も亡くなっており、原告25人のうち4人が亡くなっています。被害者は高齢のため、早期に被害回復を実現する必要があります。

 当連盟はこれまでも旧優生保護法裁判に対しての緊急声明を発表し、評議員会においては特別決議を可決しています。加えて兵庫県聴覚障害者協会を中心に展開された「旧優生保護法違憲国家賠償訴訟において公正な判決を求める要請署名運動」でも、全国の仲間たちに呼びかけ、皆の思いが込められた署名合計26,428筆を、今年7月末を最後に神戸地方裁判所に提出しました。

 私たち連盟は全国の仲間に引き継き支援をお願いするとともに、不当判決を下された大阪、兵庫原告の控訴への応援活動や審理を続けている静岡裁判と福岡裁判への支援を行い被害者への救済に尽力するとともに、今も根強く蔓延(はびこ)る優生思想の根絶に向け、気持ちも新たに運動を強化していく決意です。

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