各省庁へ聴覚障害者の福祉施策に関わる要望書を提出



 例年7月、要望書を持参し省庁との意見交換を行ってきましたが新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、昨年度同様、今年度も全て要望書を送付いたしました。

要望書一覧:

  1. 国土交通省:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  2. 内閣人事局:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  3. 金融庁:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  4. 内閣官房:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  5. 厚生労働省:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  6. 経済産業省:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  7. 消費者庁:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  8. 警察庁:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  9. 消防庁:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  10. 人事院:公務部門におけるきこえない・きこえにくい者の採用および労働環境の整備への要望について
  11. 衆議院:きこえない・きこえにくい者の情報保障について(要望)
  12. 総務省:きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  13. 内閣府(障害者施策):きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について
  14. 外務省:国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について
  15. スポーツ庁:きこえない・きこえにくい者のスポーツ施策への要望について
  16. 文部科学省:ろう教育等に関する要望について
  17. 文化庁:きこえない・きこえにくい者の映画鑑賞にかかる要望について

連本第210181号
2021年7月13日

国土交通大臣
 赤羽 一嘉  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心、安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.きこえない者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、空港及び機内での音声情報は緊急時のみでなく、すべて可視化できるようにしてください。機内でも、音楽や映画などエンターテイメントなども楽しめるようにしてください。
<説明>
 国内の航空会社では、機内アナウンスや緊急時の放送に関する情報アクセシビリティは整備されつつありますが、混雑するピーク時間帯に保安検査場付近で、出発直前便への優先搭乗案内が音声でされていることがあります。きこえない者は何を案内されているのか分かりませんでしたが、最近、登録したメールに音声と同様の内容が届くようになり、以前より情報が把握できるようになり、便利に感じています。しかし、日本語の読み書きが苦手なきこえない者もいますので、手話言語等による案内も検討をしてください。
 また機内のエンターテインメントサービス(特に音楽や邦画)には字幕が挿入されているものもありますが、音声のみのものは、きこえない者は楽しむことができません。  
 機長の挨拶や話も音声のみで、ディスプレイには「アナウンス中」の表示のみです。時折、フライトアテンダントの方から内容の書かれたメモを渡されることもありますが、簡潔なものなので音声の内容とは大きな隔たりがあるのではと不安になります。
 字幕や手話言語での情報保障が難しければ、UDCast(専用の眼鏡(グラス)に字幕が映る)等の機器の貸し出しやフライトアテンダントの手話言語の研修等、情報が視覚的に分かるように情報アクセシビリティの基礎的環境の整備を国内便すべての航空会社に働きかけてください。

2.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声のやり取りについて、きこえない者も安心して利用できる仕組みに改善し、好事例があればひろく周知してください。
<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、きこえない者はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、きこえない者は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、引き続き関係会社に働きかけてください。なお、民間事業者について2020年度の進捗および好事例があればご教示ください。

3.観光地や名所等において、音声による車内ガイダンスをきこえない・きこえにくい者も楽しめるように改善してください。
<説明>
 電車が観光地や名所を通る時に、歴史や背景など、音声による車内ガイダンスがありますが、きこえない者は楽しむことができません。
 字幕や手話の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備をすべての鉄道会社に働きかけてください。
 昨年も同様の要望をしましたが、2020年度の進捗および好事例があればご教示ください。

4.国交省バリアフリー法関連の会議に参加されている交通事業者等をはじめとする各種業界団体と障害者団体の意見交換場を設けていただけますようお願いいたします。

5.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

6.店舗等のレジ(受付)における配慮について、「コミュニケーション支援ボード」を常置するよう、企業や事業者に周知してください。
<説明>
 食品や日用品を取り扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア等はきこえない者にとっても身近な存在ですが、レジ(受付)での店員の問いかけに気がつかなかったり、話の内容が理解できず誤解が生じたり等、困る事例が多くあります。
 また、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、新しい生活様式として店舗等でもマスク着用が必須となりましたが、マスク着用によって口の動きや表情が見えなくなり、ますますコミュニケーションが困難となっています。きこえない者が安心してより円滑なコミュニケーションが取れるよう、「コミュニケーション支援ボード」の常置を企業や事業者に周知してください。
<参考>
「コミュニケーション支援ボード」の例
一般財団法人全日本ろうあ連盟 新型コロナウイルス危機管理対策本部
URL:https://www.jfd.or.jp/covid19/arc/1959

以 上

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 連本第210182号
2021年7月13日

内閣総理大臣
 菅 義偉 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 障害者権利条約の前文において「障害者が、政策及び計画(障害者に直接関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮し」と明文化されていることに加え、「働き方改革実行計画」で示された「障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進」を実現するためにも、より一層の基礎的環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.国の行政機関における障害者採用状況と定着率をおしえてください。民間企業の模範となるべくきこえない・きこえにくい者の職場環境の改善を図ってください。
<説明>
 国の公部門における障害者雇用率の未達成が発覚して以降、積極的に障害者を雇用していただき感謝申し上げます。国の行政機関における障害者別(聴覚障害がわかるよう身体障害の三種別も明記してください)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。
 また、その中できこえない・きこえにくい者の職場環境整備において情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障をどのように図っているか、ご教示ください。また、その職員への環境整備における配慮や好事例などあればご教示ください。

2.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化についても貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210183号
2021年7月13日

金融庁長官
 中島 淳一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.きこえない者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、金融機関への問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレス掲載の義務化を講じてください。
<説明>
 昨年も同様の要望をしていますが、全ての金融機関の問い合わせ先に電話番号やファックス番号が設置されているわけではありません。きこえない者が問い合わせたい時には、家族や手話通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせが困難です。
 貴庁の広報誌やパンフレット、ホームページ等は率先してFAX番号もしくはEメールアドレスを掲載することはもちろん、貴庁だけでなく金融機関等に対しても同様の対応をするように周知徹底したご指導の程、お願いいたします。

2.2021年から公的インフラとなった電話リレーサービスの認知を拡げ、その通話が拒否されないよう周知いただくとともに、金融機関等をはじめとする様々な事業者における電話による「本人確認」と同等に電話リレーサービスでも「本人確認」ができるよう働きかけをしてください。
<説明>
 電話リレーサービスの効果的かつ継続的な周知(例:携帯の買い替え時やネット回線の契約時等)をお願いします。
 また、電話リレーサービスの「本人確認」が認められない一例として、別の場所にいるオペレーターと詐欺による電話の区別がつかないことを理由に電話リレーサービスでは本人確認ができない事業者が数多くあります。貴庁から改善の指導いただくとともに、早急にeKYC等のオンラインによる本人確認の仕組みを使えるよう電話リレーサービス事業者に、国として働きかけてください。 

3.現金自動預け払機(ATM)において故障などのトラブルが生じた時、備え付けの電話以外の方法で問い合わせできるようにしてください。
<説明>
 有人店舗が併設されていない現金自動預け払い機(ATM)でトラブルが生じた際、備え付けの電話で問い合わせることになっていますが、きこえない者は家族や手話通訳者といった支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。音声の問い合わせがないと、警備の方が対応に来る場合もありますが、対応のない店舗もあり、電話に代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど情報アクセシビリティの基礎的な環境の整備を関係会社に働きかけてください。2020年度の進捗および好事例があればご教示ください。

4.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210184号
2021年7月13日

内閣総理大臣
 菅 義偉 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.首相官邸の記者会見等における手話通訳について、テレビ放映でも手話通訳者が映るようにしてください。
<説明>
 2011年3月11日の東日本大震災の発生後、首相官邸で行われる記者会見には手話言語通訳が付くようになりました。また、今般の新型コロナウイルス感染症関連の記者会見においては、多くのテレビ局がライブ放送で手話言語通訳者も入れて放送されており、リアルタイムに情報を得ることができました。
 きこえる人のためには会見場にマイクが準備され、話者の音声を増幅させて、会場にいる誰もがその音声を聞くことができるよう配慮されています。また放送事業者は、その音声をテレビ放送に乗せ、視聴者が音声で発言の内容を知ることができるようにしています。
 同様にきこえない人のためには会見場に手話言語通訳を準備し、放送事業者はその手話言語通訳の映像をテレビ放送に乗せて、視聴者が手話言語で発言内容を知ることができるようにすることが、ユニバーサルな環境の整備となります。
 これまでの回答では、放送法との兼ね合いから内閣府から放送局に指導することはできないとのことでしたが、音声言語も手話言語も同等の言語です。きこえる視聴者は会見場の話者の音声をテレビ放送で知ることが可能です。会見では音声及び手話言語で情報を提供しているにもかかわらず、音声のみの言語が放送で流れることについて、どのようにお考えか見解をお聞かせください。
 なお、この要望事項については総務省にも提出をしています。

2.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用と障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210185号
2021年7月13日

厚生労働大臣
 田村 憲久  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.国の行政機関、地方自治体、民間企業すべての法定雇用率制度の徹底を図り、きこえない・きこえにくい者の積極的な採用を行ってください。

(1)国の行政機関、地方自治体、民間企業すべてが法定雇用率を達成するよう、また未達成の団体に対しては法定雇用率を遵守するよう、雇用率のアップを図ってください。
 また採用後の職場定着支援についても国の行政機関、地方自治体、民間企業の隔てなく採用された障害者が長く働けるよう支援体制を構築してください。

<説明>
 2021(令和3年)年1月発表の障害者の実雇用率は過去最高を更新しています、民間企業における実雇用率は2.15%(昨年比0.04ポイント上昇)で法定雇用率達成の企業割合は48.6%と半分以下の状況が続いています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16030.html すべての民間企業が法定雇用率を遵守するよう、対策を講じてください。
 また、官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成の再発防止と雇用率アップを図ってください。
 国が率先し、採用されているきこえない・きこえにくい者の職場での情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障や職場環境作りの範を示していただき、貴省をはじめとする各省庁、地方自治体、民間企業においてきこえない・きこえにくい者への理解を促進するとともに、民間企業に派遣されているジョブコーチのような支援体制も公務部門に構築し長く働ける職場環境を作ってください。
 国の行政機関における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

(2)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものにするためにも、障害種別の雇用の状況を表示し、雇用納付金制度のあり方を再検討してください。

<説明>
 雇用率を算出する際に「身体障害者」は一括りにされています。聴覚障害者をはじめとする障害種別の雇用率の表示をしてください。
 また、聴覚障害者の雇用数と離職数が公表されていないため、聴覚障害者の雇用の実情が分かりません。きこえない・きこえにくい者に対する情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障が必要なことを理解されていない事業所が多い中で、きこえない・きこえにくい者の雇用改善のための分析を行い、きこえない・きこえにくい者の実雇用率増加を図るためにも、障害種別の実雇用率、雇用数、離職数が分かるようにしてください。

(3)ろう重複障害者(盲ろう者含む)の就業について全国的な実態調査を実施し、その結果に基づき、一日も早くろう重複障害者の働く場の保障に関する施策を講じるようお願いします。

<説明>
 厚生労働省の施策として、「福祉的就労」から「一般就労」へ促すようになっていると思います。しかし、ろう重複障害者の就労状況は依然として厳しい現況です。ろう重複障害者の就労をスムーズに進めるために、まず、全国的なろう重複障害者の就労状況に関する実態調査を実施し、その結果を踏まえて、適切な就労支援施策を講じるよう求めます。

2.貴省の所管である、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者介助等助成金による「手話通訳担当者の委嘱助成金の制度」の一層の拡充および事業所や職業安定所に利用の周知徹底を図ってください。

(1)1回の助成額を1人3/4(6千円)ではなく、手話通訳料1回の3/4にしてください。

(2)年間の助成額の上限28万8千円を取り払い、必要に応じて手話通訳を利用できるようにしてください。

(3)申請提出期間は、事業所が必要と認めた場合いつでも申請できることとし、利用可能期間も雇用後10年間と限定することなくきこえない・きこえにくい者が就労している限りにおいていつでも利用できるようにしてください。

(4)「委嘱助成金の制度」について、障害をもつ雇用主(自営業者)も利用しやすくなるよう条件を緩和してください。

<説明>
 雇用福祉連携に関する省内プロジェクトチームで関係団体からヒアリングを行いとりまとめ、その後、専門家や関係者を交えて検討を進めていく予定と以前に伺いました。どのような検討がすすんでいるのか、進捗をご説明ください。
 特に、委嘱助成金制度の条件の撤廃についてどのような議論が進んでいるのか教えてください。

3.個人事業主もしくは被用者である障害者が就労上の業務遂行において必要となるサポートを提供するための経済的あるいは人的な支援制度(障害者業務遂行支援制度)を新設してください。
<説明>
 2(4)でも要望しましたが、現行の制度では障害者が就労上必要なサポートを確実に利用できるシステムがありません。障害者総合支援法に基づく自治体による福祉サービスとしての各種事業は提供主体である自治体の判断により利用範囲が制限される結果として障害者のニーズにそぐわない結果となることが多いこと、また、障害者雇用納付金制度は利用主体が企業であり、障害者はその客体であって利用するかどうかは結局企業の判断次第となること等の課題があり、必ずしも障害者の就労促進に繋がっていないという実態があります。事業所における合理的配慮を促進するという観点から、障害者の意思で業務遂行上のニーズに応じて必要な支援を提供する、就労に特化した制度の創設をしてください。

4.ろう者等ワークライフ支援事業を国の制度として新設してください。
<説明>
 現在、大阪府の独自事業として実施されている「聴覚障害者等ワークライフ支援事業」は、就職前後のろう者等(重複聴覚障害者を含む)に対して、個々のニーズに応じた雇用・労働相談・支援を行い、ろう者等の職場定着に成果を上げています。ろう者等の就労面での相談支援機能の充実を図るため、ろう者等等ワークライフ支援事業を国の制度として実施してください。また地方の好事例を積極的に周知するようにしてください。

5.きこえない・きこえにくい者の職場定着を確実なものとしていくために、コミュニケーションや意思疎通に不安を感じることなく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話言語ができる」ことを明記し、ジョブコーチ養成のカリキュラムに「手話言語」を取り入れてください。
<説明>
 現在、手話言語ができるジョブコーチが非常に少なく、きこえない・きこえにくい者に対する支援が十分にできていません、手話通訳を介すのではなく手話言語のできるジョブコーチの育成をお願いいたします。

6.きこえない・きこえにくい者が安心して利用するために、全国に約300ヶ所設置されている障害者就業・生活支援センターに手話通訳者を配置してください。
<説明>
 きこえない・きこえにくい者にとって、公的な就労相談の場である障害者就業・生活支援センターでは、筆談対応を中心とした支援が多く、手話言語を第一言語とする者にとっては利用しにくく、相談支援機能が十分に果たされているとは言えません。当事者団体である私どもも働きかけては行きますが、貴省からも委託費から手話言語通訳の雇用は可能であることを周知いただくとともに、きこえない・きこえにくい者の特性を理解した手話言語通訳者の配置を働きかけてください。

7.貴省の労働政策審議会 (障害者雇用分科会)の委員にろう者を加えてください。
<説明>
 労働政策審議会障害者雇用分科会には身体障害のうち視覚障害、肢体不自由の委員はいらっしゃいますが、きこえない委員がおらず、その意見や状況が障害者の労働施策に反映されにくい状況です。貴省の社会保障審議会 (障害者部会)ではきこえない委員がいますので、同様の対応をお願いいたします。

8.「手話言語法」および「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の早期制定を進めてください。
 特に、「手話言語法」ではろう乳幼児の手話言語の獲得の保障と、そのための保護者への必要な情報提供の規定が重要な条項の一つとなっております。ろう児の療育の面から「手話言語の獲得」を含めた情報提供や関連の支援体制の構築のためにも「手話言語法」の一日も早く制定してください。

<説明>
 改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知され、貴省においても障害者総合支援法・意思疎通支援事業において手話通訳制度が実施されているところですが、ろう者等への手話言語獲得・手話言語を使える環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報アクセス・コミュニケーションを保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。
 関係省庁との連携状況をお聞かせいただくと共に、「手話言語法」および、ろう者等をはじめ広く障害者を対象とした「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定をしてください。

9.意思疎通支援事業の「手話通訳者設置事業」の拡充が重要であることについて、自治体へ改めて周知してください。
<説明>
 「手話通訳者設置事業」は市町村の必須事業となっていますが、平均実施率はまだ約40%(令和元年度実績)と低いままになっています。ろう者が手話通訳を介して、自己選択、自己決定をするために、相談、生活支援などの様々な支援を必要とするろう者等も少なくありません。そのため、単に音声言語と手話言語の置き換えだけの通訳にとどまらず、必要に応じて様々な関係機関とつなぐという重要な役割もあります。しかしながら、現状では前述の通り実施率が低いこと、また、実施市町村の中でも手話通訳者の資格を有しない人がその職に就いている事例もあります。
 「手話通訳者設置事業」を実施していない自治体に対しては、事業実施を促進してください。
 なお、2017年(平成29)年度から、手話通訳を設置できない自治体において、遠隔手話通訳の導入が認められるようになりました。また、令和2年度の新型コロナウイルス対策の補正予算でも導入が進められるようになりましたが、「手話通訳設置事業および派遣事業」の補完的な役割を担うものであり、代替手段ではないことを各自治体に改めて周知をお願いいたします。

10.遠隔手話通訳の安定的運用を進めるため、運用経費について継続的な予算措置をしてください。また、地域の手話通訳者が通訳を担える仕組みとして一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)が制定した「遠隔手話通訳サービス・システム仕様書」の普及を図ってください。
<説明>
 新型コロナウイルス感染症対策として遠隔手話通訳の環境整備のための補正予算を組んでいただきましたが、初期費用の他に、システム保守などのランニングコストがかかるため導入を見送るというケースがあり、地域格差を生む要因となってしまいます。意思疎通支援事業とは別に、遠隔手話通訳のランニングコストについて、継続的な予算措置を講じてください。
 また、感染症対策や災害時の対応としての遠隔手話通訳を考えた時、地域の状況を把握している設置手話通訳者または登録手話通訳者が通訳を担うことが望ましいと考えます。そのため、地域の手話通訳者が担う仕組みの周知を図ってください。

11.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を福祉部局からも働きかけるように周知してください。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための予算化を、福祉部局からも働きかけるように周知してください。

12.店舗等のレジ(受付)における配慮について、「コミュニケーション支援ボード」を常置するよう、企業や事業者に周知してください。
<説明>
 食品や日用品を取り扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア等はきこえない者にとっても身近な存在ですが、レジ(受付)での店員の問いかけに気がつかなかったり、話の内容が理解できず誤解が生じたり等、困る事例が多くあります。
 また、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、新しい生活様式として店舗等でもマスク着用が必須となりましたが、マスク着用によって口の動きや表情が見えなくなり、ますますコミュニケーションが困難となっています。きこえない者が安心してより円滑なコミュニケーションが取れるよう、「コミュニケーション支援ボード」の常置を企業や事業者に周知してください。
<参考>
「コミュニケーション支援ボード」の例
一般財団法人全日本ろうあ連盟 新型コロナウイルス危機管理対策本部
URL:https://www.jfd.or.jp/covid19/arc/1959

13. 電話リレーサービスが公的サービスになったことを受けて、民間企業等、関係団体へその周知をお願いするとともに、きこえない従業員が電話を利用し仕事ができるように、電話リレーサービスの法人契約の周知及びその導入における助成制度を設けてください。
<説明>
 今後、電話リレーサービスはきこえない者の就労支援やキャリアアップの一助になると考えます。そのためには電話リレーサービスの周知とともに、職場で利用が可能となるよう法人契約の導入促進のための助成制度を設けていただけますようお願いいたします。

以 上

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連本第210186号
2021年7月13日

経済産業大臣
 梶山 弘志  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.きこえない・きこえにくい者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、自治体や民間企業のサービスの問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレスを掲載するよう講じてください。
<説明>
 昨年も同様の要望をしていますが、きこえない者が問い合わせたい時には、家族や手話言語通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせが困難です。
 貴庁の広報誌やパンフレット、ホームページ等は率先してウェブアクセシビリティ基準のAAAである手話言語の付与もお願いいたします。
 新聞、書籍、パンフレット、チラシ等広報誌またテレビショップ、ネット広告等に電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレスを掲載し、基礎的環境の整備を図るよう、周知徹底したご指導の程、お願いいたします。

2.2021年から公的インフラとなった電話リレーサービスの認知を拡げ、その通話が拒否されないよう周知いただくとともに、信販会社等をはじめとする様々な事業者における電話による「本人確認」と同等に電話リレーサービスでも「本人確認」ができるよう働きかけをしてください。
<説明>
 電話リレーサービスの効果的かつ継続的な周知をお願いします。
 また、電話リレーサービスの「本人確認」が認められない一例として、別の場所にいるオペレーターと詐欺による電話の区別がつかないことを理由に電話リレーサービスでは本人確認ができない事業者が数多くあります。貴庁から改善の指導いただくとともに、早急にeKYC等のオンラインによる本人確認の仕組みを使えるよう電話リレーサービス事業者に、国として働きかけてください。 

3.2025年日本国際博覧会において、情報アクセシビリティおよびコミュニケーションを保障する人材育成のための予算化をしてください。
<説明>
 2025年の大阪万博の基本計画には、「バリアフリー・ユニバーサルデザインを考慮するとともに、先端技術を用いることにより、国・地域、文化、人種、性別、世代、障がいの有無等に関わらず、大阪・関西万博を訪れる世界中の人々が快適に本万博を楽しむことができるサービスを提供する」とあります。また、「来場者へ高品質のサービスを提供するため、十分な人員を確保し、多言語や手話言語対応等の適切な研修を実施すると同時に、ICTによる運営従事者サポートツールを活用できる体制の構築を図る」とも記されています。
 そこで、手話言語による情報アクセシビリティの担い手である手話言語通訳者の養成は急務です。手話言語通訳者養成に係る予算の確保、および現時点での養成に係る計画等をご教示ください。

4.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

5.店舗等のレジ(受付)における配慮について、「コミュニケーション支援ボード」を常置するよう、企業や事業者に周知してください。
<説明>
 食品や日用品を取り扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア等はきこえない者にとっても身近な存在ですが、レジ(受付)での店員の問いかけに気がつかなかったり、話の内容が理解できず誤解が生じたり等、困る事例が多くあります。
 また、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、新しい生活様式として店舗等でもマスク着用が必須となりましたが、マスク着用によって口の動きや表情が見えなくなり、ますますコミュニケーションが困難となっています。きこえない者が安心してより円滑なコミュニケーションが取れるよう、「コミュニケーション支援ボード」の常置を企業や事業者に周知してください。
<参考>
「コミュニケーション支援ボード」の例
一般財団法人全日本ろうあ連盟 新型コロナウイルス危機管理対策本部
URL:https://www.jfd.or.jp/covid19/arc/1959

以 上

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連本第210187号
2021年7月13日

消費者庁長官
 伊藤 明子  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.きこえない者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、地域にある消費者センター等の問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレスの設置していただきたく周知徹底したご指導をしてください。
 また消費者ホットライン(188番)をはじめ地域の消費者センターの相談窓口は、きこえない者も利用できるようにFAXやEメールアドレスを設置してください。

<説明>
 地域の消費者センターへ相談したいときに、その問い合わせ先にFAX番号が必ずしも設置されているわけではありません。きこえない者が問い合わせたい時には、家族や手話言語通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。
 貴庁から消費者センターをはじめとする所管する事業所の問い合わせ先にFAX番号もしくはEメールアドレスの設置をするよう促してください。
 また消費者ホットラインのポスターをよく見かけますが、電話番号の188番だけでなくFAXやEメールアドレスも目立つ場所にわかるよう掲載をしてください。

2.2021年から公的インフラとなった電話リレーサービスの認知を拡げ、その通話が拒否されないよう周知いただくとともに、様々な事業者における電話による「本人確認」と同等に電話リレーサービスでも「本人確認」ができるよう働きかけをしてください。
<説明>
 電話リレーサービスの効果的かつ継続的な周知をお願いします。
 また、電話リレーサービスの「本人確認」が認められない一例として、別の場所にいるオペレーターと詐欺による電話の区別がつかないことを理由に電話リレーサービスでは本人確認ができない事業者が数多くあります。貴庁から改善の指導いただくとともに、早急にeKYC等のオンラインによる本人確認の仕組みを使えるよう電話リレーサービス事業者に、国として働きかけてください。 

3.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以  上

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 連本第210188号
2021年7月13日

警察庁 長官
 松本 光弘 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.都道府県の警察本部にきこえない者等への理解を深めるための研修を行うように働きかけてください。また自動車免許試験場や交番に連絡する手段を電話だけでなくFAXやメールでの対応ができる環境を漏れなく整備してください。
<説明>

①事件や事故現場など緊急時の対応、また自動車免許更新手続きでは、きこえない者の特性やその障害の理解不足により、手話言語通訳の要請があったにも関わらず、(読み書きの苦手な者に)筆談で対応を強要するケースがあります。障害者差別解消法の観点からも、全国の現場で働く警察官のみならず、県警の通信指令室等も含めた全職員が「聴覚障害」の特性や障害の理解、手話言語の実技などを研修ができる場(手話言語学習・手話言語講座)の確保及びその予算化を都道府県警察本部へ講じるよう指導してください。

②自動車免許更新手続き(特に、高齢者講習)の予約方法が電話だけになっているところがあります、きこえない者が予約できるようFAX番号やメールアドレスも設置してください。

③交番に警察官が不在時に「電話をください。」と表示があります。きこえない者は電話ができません。きこえない・きこえにくい者が連絡できるようメールやチャットツール(LINE等)で連絡ができるよう環境を整備してください。

2.緊急車両の警光灯に、緊急走行か、それ以外の走行かがきこえない者にもわかるような表示を義務付けてください。
<説明>
 昨年も同様の要望をしましたが、パトカーや消防自動車、救急車等の緊急車両は、警光灯の点灯・回転が緊急時も緊急時以外でも同じである場合があり、きこえない者の場合はサイレンの音が聞こえず、緊急走行か、そうでないかを判断することが困難です。
 きこえない者も、緊急車両が緊急走行をしているかどうかを判断できるような警光灯の表示もしくはそれに代わる視覚的な表示を義務付けてください。
 海外の事例も参考に、どのような検討がすすんでいるのか進捗をお聞かせください。

3.運転免許更新での高齢者の認知機能検査において、検査の事前説明から検査中の説明まで、手話通訳が行えるような体制を整えてください。
<説明>
 75歳以上の運転者は免許更新の際に、高齢者講習の前に「認知機能検査」を受けることになっていますが、検査中の手話通訳は、その設置が試験場によって統一されていません。検査中の手話通訳がないために、検査員からの説明が分からず、回答できない事例があります。事前説明から検査終了まで、手話通訳が行えるような体制を整えてください。

4.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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 連本第210189号
2021年7月13日

消防庁 長官
 林﨑 理 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.緊急車両の警光灯に緊急走行かそれ以外の走行かが、きこえない者にもわかるような表示を義務付けてください。
<説明>
 パトカーや消防自動車、救急車等の緊急車両は、警光灯の点灯・回転が緊急時も緊急時以外でも同じである場合があり、きこえない者の場合はサイレンの音が聞こえず、緊急走行か、そうでないかを判断することができません。
 きこえない者も、緊急車両が緊急走行をしているかどうかを判断できるような警光灯の表示もしくはそれに代わる視覚的な表示(信号機などの点滅の工夫等)を義務付けてください。昨年も同様の要望しましたが、検討の進捗をお聞かせください。

2.ろう者を含め、いつでもだれでもどこでも緊急通報をできるNet119緊急通報システムが全国の消防本部で導入されるよう、引き続き働きかけを行ってください。
 また、居住地とは違う場所でNet119通報をした場合、双方の消防本部が契約した会社が異なっていても、迅速な対応ができるよう改善してください。

<説明>
 Net119緊急通報システムの導入状況は、726本部中499本部(2021年1月1日現在)となっており、この1年で250以上の本部で導入していただいたことに対しお礼申し上げます。引き続き全国の消防本部で導入が進むよう積極的な働きかけをしてください。
 また、居住地とは違う場所でNet119通報した場合、居住地が所管する消防本部が契約した会社と、通報した場所を所管する消防本部が契約した会社が異なった場合、連絡に時間を要する恐れがあると聞いています。契約する会社が違っていても、一元的に迅速に対応できるよう、改善してください。

3.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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 連本第210190号
2021年7月13日

人事院
 総裁 川本 裕子 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

公務部門におけるきこえない・きこえにくい者の採用および
労働環境の整備への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.障害者を採用後、民間企業の模範となるべくきこえない・きこえにくい者の職場環境の整備を図り、能力が発揮できるよう定着支援制度の構築やキャリアアップにおける環境改善を図るよう各省庁に周知徹底してください。
<説明>
 採用だけではなく、採用後には長期の職場定着ができるよう厚生労働省のアドバイザーとも連携し、障害をもつ職員が働きやすくなるよう環境改善を各省庁に周知徹底してください。昨年も同様の要望をしましたが、具体的な対応や状況をご教示ください。

2.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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 連本第210191号
2021年7月13日

衆議院 
議長 大島 理森 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の情報保障について(要望)

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.衆議院本会議や各種委員会に手話言語通訳を付けつるよう早急に対応してください。
<説明>
 2018年より、首相の所信表明演説など一部に字幕付き放送の実現で、初めて国会中継の様子を生で知ることができました。しかし、字幕がついたのは国会中継の一部であり、全てをきこえる人と等しいタイミングで国会審議の情報を得ることができません。
 参議院においては、本年1月から政策方針演説等のインターネット中継で手話言語通訳導入が実現しました。
 今後、衆議院においても、手話言語通訳付きで審議の内容も知ることができるよう早急に対応をしてください。

以 上

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 連本第210192号
2021年7月13日

総務大臣
 武田 良太 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.ろう者等の参政権の保障のために、下記の通り要望します。

(1)市町村長選挙を含むすべての選挙について、ろう者等の参政権の保障のために手話通訳、字幕・要約筆記等の導入を義務付けてください。また、ろう者等の被選挙権の保障のために手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付けてください。

<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙では政見放送での手話言語通訳や一部字幕の付与が可能であり、演説会での要約筆記者の配置や報酬の支払いが認められるなど、ろう者等への情報保障は少しずつ改善されてきています。しかし、政見放送ではまだすべてに手話言語通訳・字幕の付与が実現されておらず、義務付けも行われていません。
 また、市町村長選挙では候補者の演説会などに手話言語通訳、要約筆記等をつけることについては、市町村の選挙管理委員会における判断がまちまちです。
 政見放送が義務ではないことは承知していますが、政見放送における手話言語通訳は、手話言語の提供であって候補者や政党の考えを代弁している立場ではありません。それは、国として手話通訳の必要性、重要性を認めているからこそ、貴省において手話通訳士研修の予算を設けていただいていることと思います。ろう者等がすべての選挙に関する情報を得て、その参政権を保障するために、手話言語通訳を付けることによる手話言語による情報保障という観点から、すべての選挙について手話言語通訳、要約筆記等の付与の義務付けができるよう、公職選挙法の改正について総務省主導で進めてください。
 また、きこえない市議会議員等が、その選挙活動において音声に代わる手段に制限があり、きこえる人と等しく選挙活動ができない状況があります。今後、すべての人の被選挙権が等しく保障されるためにも、ろう者等の選挙活動に際しては、手話言語通訳や要約筆記等の情報保障を義務付け、手話言語及び文字による選挙活動を認めてください。

(2)手話言語通訳者及び要約筆記者を公職選挙法の「選挙運動に従事する者」に含めず、独立した条項になるよう改正してください。

<説明>
 公職選挙法では手話言語通訳者及び要約筆記者については「投票勧誘行為」を行う選挙運動に従事する者に該当すると規定されています。しかし手話言語通訳者及び要約筆記者は、候補者や政党の考えを代弁して投票勧誘行為を行う者ではなく、公正・中立を重要な倫理としております。選挙運動員とされることは手話言語通訳者及び要約筆記者の社会的信用に関わるだけでなく、基本的な人権としての参政権を求める私たちろう者等の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話言語通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」に含めず、社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたく、公職選挙法を改正してください。

(3)2017~2020年度、貴省予算で実施しております「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)を2021年度以降も継続して行えますよう、引き続き予算化をしてください。

<説明>
 「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)は、2017年度から貴省にて予算化いただき御礼申し上げます。すべての政見放送において手話言語通訳挿入が実現した後も、政見放送を担える手話通訳士を継続して増やす必要があります。更に政見放送では社会情勢や時事問題等、専門的かつ新しい用語が使われ、手話通訳士も継続して通訳技術を磨く必要があることから、研修の履修更新制を設けております。2021年度以降も地方研修会を継続して行えるよう、予算化をしてください。

2.首相官邸の記者会見等における手話言語通訳について、テレビ放映でも手話言語通訳者が映るように見直してください。
<説明>
 2011年3月11日の東日本大震災の発生後、首相官邸で行われる記者会見には手話通訳が付くようになりました。また、今般の新型コロナウイルス感染症関連の記者会見においては、多くのテレビ局がライブ放送で手話言語通訳者も入れて放送されており、リアルタイムに情報を得ることができました。
 きこえる人のためには会見場にマイクが準備され、話者の音声を増幅させて、会場にいる誰もがその音声を聞くことができるよう配慮されています。また放送事業者は、その音声をテレビ放送に乗せ、視聴者が音声で発言の内容を知ることができるようにしています。
 同様にきこえない人のためには会見場に手話言語通訳を準備し、放送事業者はその手話言語通訳の映像をテレビ放送に乗せて、視聴者が手話言語で発言内容を知ることができるようにすることが、ユニバーサルな環境の整備となります。
 これまでの回答では、放送法との兼ね合いから内閣府から放送局に指導することはできないとのことでしたが、音声言語も手話言語も同等の言語です。きこえる視聴者は会見場の話者の音声をテレビ放送で知ることが可能です。会見では音声及び手話言語で情報を提供しているにもかかわらず、音声のみの言語が放送で流れることについて、どのようにお考えか見解をお聞かせください。
 なお、この要望事項については内閣府にも提出をしています。

3.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

4.民間事業者の動画配信サービスにも、字幕付与の目標値の設定や義務化を検討してください。
<説明>
 昨今、各テレビ局等が運営する動画配信サービスが普及し、コロナ禍の影響もあり、ろう者の間でも利用する人が増えています。しかし、これらの作品のほとんどには字幕が付与されていません。
 地上波放送においては、貴省で策定された「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」をもとにした、字幕放送の目標値が定められていますが、動画配信サービスにおいては各事業者(運営主体)等の判断によるところになっていると思います。これらにおいても字幕付与の目標値の設定や義務化をご検討ください。

5.地上波放送における手話言語付与の目標値設定について、現在の目標値からの段階的な発展を検討いただくとともに、目標値設定にあたっては当事者を加えた協議を行ってください。
<説明>
 2018(平成30)年度に貴省で公表された「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」については、指針内の目標値等の見直しが2022(令和4)年度に実施されると伺っています。現在、手話放送においては、目標値が「15分/1週間」と、字幕放送等と比較すると非常に目標が低く、ろう者がいつでも親しめる放送には程遠い状況です。字幕放送・手話放送の目標値の見直しにあたっては、利用者となる当事者団体も参加のうえ、実現可能な目標値について協議させていただきますようお願い申し上げます。

6.携帯電話の電話による認証(自動音声認証)に対し、きこえない者の認証方法を設けるように事業者へ働きかけてください。
<説明>
 国民の生活必需品である携帯電話について、貴省の主導で携帯電話料金の低廉化に向けた環境整備が推進されています。携帯電話端末の機種変更が円滑に進む一方で、電話など音声言語による認証方法が未だ多く、きこえない者にとって不合理な方法で困っています。機種変更後、電話による認証(自動音声認証)が必須のため、やむを得ずにきこえる親や知人に代理を頼んで対応してもらったという事例もあります。
 2020年12月に実施された「携帯電話料金の低廉化に向けた二大臣会合」では、事業者間の乗り換え及び料金プラン・ブランド間の変更の円滑化、消費者による合理的な選択の促進が検討事項に挙げられています。きこえない人も円滑に変更ができ、合理的な選択ができるようにしてください。例えば、公的インフラである電話リレーサービスで本人認証を受けられるようにする等、音声言語だけでなく非音声言語でも認証できるように事業者へ働きかけてください。

7.現在、電話リレーサービスの利用登録にあたり、身体障害者手帳または電話ができないことを証明する診断書の提出が原則となっています。しかしながら、公共インフラであればだれでもが利用できるようにすることが「公共」であると考えます。きこえる人も利用できるよう検討に加えるとともに登録書類の見直しをしてください。

8.電話リレーサービスが公的サービスになったことを受けて、民間企業等、関係団体へ効果的かつ継続的な周知をお願いするとともに、きこえない従業員が仕事で電話できるように、電話リレーサービスの法人契約の導入が促進されるよう助成制度を設けてください。

以 上

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連本第210193号
2021年7月13日

内閣総理大臣
 菅 義偉 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、対応については地域差があるなどまだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心・安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.「手話言語法」を早急に制定するよう、また「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」を早期に制定するよう進めてください。
<説明>
 全日本ろうあ連盟では2010年より「手話言語法」、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の早期制定を求めて取り組みを進めています。改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知されてはいますが、ろう者の手話言語獲得や手話言語を使えるための環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報アクセス・コミュニケーションを保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策を行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。
 特にろう児の手話言語獲得の保障は急務であると考えます。生まれた子どもがきこえないと分かった時、医療側からは「きこえるように治す」「きこえる人に近づける」という考え方から、人工内耳挿入を勧められるケースが多くありますが、手話を言語として認知しているのであれば手話言語で教育する選択肢も用意が必要であり、ろう乳幼児の手話言語獲得支援が盛り込まれた手話言語法の制定は早急に進めるべきだと考えます。
 併せて、きこえない・きこえにくい者等をはじめ広く障害者を対象とした「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定を進めてください。また、昨年から現在までの進捗についてご教示ください。

2.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210194号
2021年7月13日

外務大臣 
 茂木 敏充 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び
在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するきこえない者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心・安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.国連やESCAPの関連会議における情報保障にかかる費用が障害当事者の負担とならないよう、国連やESCAPに日本政府から強く申し入れると共に、情報保障にかかる費用の助成を予算化してください。
<説明>
 現在、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催する、2013-2022年アジア太平洋障害者十年に関するワーキングループ会合(以降、WGとする)に、当連盟からも、世界ろう連盟アジア地域事務局副事務局長を派遣しています。
 国連やESCAPの関連会議のおいては、講演やそれに近い形式の場合は国際手話通訳を配置し、発言の機会がある会議においては、それぞれの当事者の母語の手話言語通訳を配置する事が本来の姿です。
 我々きこえない者が国際会議に参加し発言するためには、日英の音声言語通訳者に加えて、日本語の音声から日本の手話言語への手話通訳者、また盲ろう者の場合は触手話通訳者による情報保障が、他の障害者もそれぞれの介護者が必要であり、自分だけでなく通訳者及び介護者の渡航・宿泊・謝礼などの経費も必要になります。これらの情報保障にかかる費用はESCAP及び開催国政府の全額負担となっていましたが、2016年以降は予算不足を理由に自己負担を強いられており、我々、障害当事者が会議に容易に参加できない状況となっています。障害当事者が会議に参加するためには情報保障が必須です。日本政府として引き続き、ESCAPに情報保障の必要性を働きかけるともに、ESCAPへ情報保障における費用の助成を予算化してください。

2.国際会議における情報保障を実現するために、国際手話通訳者の養成に必要な体制整備と予算化を図ってください。
<説明>
 国際会議における手話の共通言語として国際手話が使用されております。しかしながら、国内における国際手話の養成カリキュラムが確立されておらず、質の高い国際手話通訳者が不足していります。現在、厚生労働省の地域生活支援事業において、国際手話通訳者の養成が含まれていますが、あわせて貴省におきましても、国際会議における国際手話通訳者の養成に必要な体制整備と予算化を図ってください。

3.国際機関にオンラインによる会議に情報保障をつけるよう働きかけてください。
<説明>
 新型コロナウイルス感染症の流行により、国連、ESCAP、WHO、UNESCO等の国際機関において、オンラインによる国際会議が増えてきています。しかしながら、音声のみで行う会議へきこえない者は参加することができません。そのため、オンライン会議においても情報保障(国際手話)を徹底することを、日本政府としても積極的に働きかけてください。

4.貴省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針」に基づき、貴省管轄の在外公館及び国内の部署においても、障害者がアクセスしやすい環境整備、改善を図ってください。
<説明>
 貴省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応指針」が、在外公館にも周知、適用されるようにしてください。
 例えば、在外公館の建物へ入る時にインターホンのみやマジックミラー越しに人物を確認する場合がありますが、聴覚の機能を活用できない我々は音声でやり取りすることが困難です。きこえない、きこえにくい日本国民が、旅行中にパスポートを紛失する等、緊急の事態に遭ったときに、現地の在外公館における円滑な情報アクセシビリティが実現されるように改善と配慮を要望します。
 当連盟は、国内においてきこえない・きこえにくい者等に対するコミュニケーション手段を一目でわかりやすくするため、「手話マーク」・「筆談マーク」を策定しました。
 経済産業省・総務省等をはじめ、各省庁・行政等の窓口で、この「手話マーク」・「筆談マーク」が設置されるところが増えています。貴省からも昨年度、在外公館の入り口のわかりやすい場所に「筆談マーク」を掲示するよう指示を出していただきました。
 引き続き、在外公館、貴省の国内の部署におきましても、スマートフォンやタブレット端末を利用して手話オペレーターによる手話言語通訳を受けることができるサービスである「遠隔手話通訳サービス」を導入するなど、情報保障に対応した体制を構築したうえで、それぞれの入口及びホームページに「手話マーク」・「筆談マーク」を表示してください。

5.訪日するきこえない外国人に対する情報保障を含めた支援の在り方について検討してください。
<説明>
 当連盟は2025年のデフリンピック招致を目指しています。外国人のきこえない者が国内でトラブルにあったときに、その国の手話言語がわからないからと、国内での公的支援や対応が、なおざりになったり、強制送還されたりすることのないようにしてください。
 また、きこえない外国人に対する情報保障を含めて国内の支援方法や体制について、当連盟と貴省において協議する場を設けてください。

6.外務省動画チャンネルや、国連が推進している障害者権利条約(CRPD)と持続可能な開発目標(SDGs)の内容を日本手話言語で発信してください。
<説明>
 国連の障害者権利条約第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ(英文ではAccessibility『アクセシビリティ』)」において、「締約国は、障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること」として、障害者のためのアクセシビリティの確保を締約国に求めています。この障害者権利条約(CRPD)を始め、国連が推進している「持続可能な開発目標(SDGs)」についても、様々なメディアを通して情報発信がされていますが、中には音声だけの場合もあります。
 きこえない者は音声での情報獲得の困難さに加え文書を読むのを苦手な者もいます。CRPD第9条やSDGsの「誰一人取り残さない」精神に鑑み、まずは貴省が発信している外務大臣会見をはじめとする動画全般に手話言語をつけてください。

7.国際条約における「Sign Language」の和訳は「手話言語」にしてください。
<説明>
 一例として、国連の障害者権利条約に、「Sign Language」の記載がありますが、貴省ホームページにある和訳ではいずれも「手話」と記載されています。当連盟より2019年12月17日付で貴省に提出した「連本第190644号 障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見及び要望」(添付)にも記載してあるとおり、手話は言語であることを明確にするためにも「Sign Language」を「手話言語」と和訳したうえで、公開してください。

8.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210195号
2021年7月13日

スポーツ庁長官
室 伏 広 治 様

〒162-0801
東京都新宿区山吹町130SKビル8階
Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 国連の障害者権利条約では、障害をもつ者があらゆるスポーツ活動に平等に参加できるよう求められており、国内においてはそのバリアフリー推進施策について具体的な審議がされていることと思います。
 つきましては、きこえない・きこえにくい者のスポーツ(以下、デフスポーツ)施策の更なる推進を下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.国内で開催する国際総合大会等、大規模スポーツイベントの開催時のアナウンス・ハーフタイムイベント、選手へのインタビュー等の手話言語通訳や字幕付与を支援するとともに障害スポーツの啓発イベントへの助成制度を設けてください。
<説明>
 日本で開催される多くのスポーツイベントには、競技開催会場をはじめ、それを中継するコンテンツの多くに手話言語通訳や字幕が付与されていません。地上波で放送されるスポーツ中継に字幕放送が付与されるようになってきましたが、タイムラグがあるなど、十分なものとは言えません。
 きこえない・きこえにくい者が、きこえる人と同等にスポーツ観戦を楽しめるようにするため、現地の会場やテレビ中継等のコンテンツでも、スポーツイベント開催時のアナウンス・ハーフタイムイベント・選手へのインタビュー等、音声がある場面では手話言語通訳やリアルタイム字幕の費用を主催者に補助するとともに、イベント内でデフスポーツ等障害者スポーツの啓発を行うための助成制度を創設してください。
 本年6月12日に愛知県豊田市で行われたジャマイカとの国際親善試合は日本サッカー協会が取り組む「誰1人取り残さないサッカー体験」の一環として、きこえない観戦者サービスとして手話言語やホワイトボードでの視覚的なアテンドがあり、選手からも手話言語でのメッセージが送られる等の取り組みが行われました。https://www.jfa.jp/social_action_programme/news/00027180/
 このような好事例が多くなるよう、情報保障費の補助や助成金の創設をお願いします。

2.障害者スポーツの啓発及び認知度向上のため、「障害者スポーツ週間」を定めてください。加えて、デフリンピックの認知度の目標値を設定した長期計画を策定してください。
<説明>
 わが国における障害者スポーツの総合国際競技大会の認知度は、パラリンピックは98.2%、スペシャルオリンピックスが19.8%に対し、デフリンピックは11.2%にとどまっています。更に、同調査によると、パラリンピック以外のスポーツの直接観戦の経験はわずか4.7%しかありません。東京パラリンピックの開催を間近に控え、「パラリンピック」「パラスポーツ」は社会に浸透してきましたが、「デフリンピック」「デフスポーツ」について社会の認知度は低いままです。このため、デフアスリート達は競技に専念する環境が得られない等、競技環境面や金銭面でも苦しい立場に置かれています。
 2025年デフリンピック日本招致が実現した際には、ほぼ全ての国民がデフリンピックを知っていることを目標とし、認知度の上昇について前年比+15%と具体的な数値を設定した長期計画を策定し、具体的な施策を講じてください。
 障害者スポーツの認知度向上のため国として「障害者週間」と同様に「障害者スポーツ週間」を設け、各地自体で行われるイベント等でデフスポーツのみならず全ての障害者スポーツについて取り上げることや、政府広報等での積極的な啓発を行ってください。
 また、地域の学校に在籍するきこえない・きこえにくい競技者本人やその指導者がデフリンピックの存在を知らないことがあります。「障害者スポーツ週間」中に特別支援学校だけでなく、全ての学校の授業等で「デフスポーツ」を啓発する機会も作ってください。

3.スポーツ庁の中に「デフリンピック課」を設置してください。
<説明>
 2021年3月には、(公財)日本障がい者スポーツ協会から「障がい者スポーツ」という呼称を「パラスポーツ」に統一することが発表されました。この呼称はパラリンピックを連想させ、きこえない者(デフスポーツ)もパラリンピック競技に参加していると思っている国民が圧倒的に多いのではないかと強く懸念しています。スポーツ庁内には2015年の発足当初から「オリンピック・パラリンピック課」が設置されていますが、現在デフスポーツを専門とする課はないので、「パラスポーツ」という基本的な担当部門はあるものの、国内事業と国際大会派遣では担当課が異なっている状態です。
 そこで、「デフリンピック」の認知度向上をはじめ、2025年デフリンピック日本招致の実現や国際総合大会開催に向けて国として招致活動から大会開催、デフアスリートの支援等、さまざまな課題を解決するため、「デフリンピック課」を設置させ、法的な位置づけの確立を要望します。

4.きこえない・きこえにくい者が国歌を手話言語で表現できるよう全国統一の「『国歌』の手話言語訳」を制定してください。
<説明>
 きこえない者が国民の一人として国歌に親しめるように、2年前から全国統一の「『国歌』の手話言語を定めてほしいと各省庁に要望を続けておりますが、いまだ叶っておりません。我々は現状の問題提起の意味も込めて令和2年度貴庁委託事業「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究)」(スポーツに精通した手話通訳者の育成)の一環で国歌の手話言語試行版テキストを作成いたしました。
 2020東京オリンピック・パラリンピックや国民体育大会、全国障害者スポーツ大会等の多くの場面でこの試行版テキストの活用や普及に取り組んでいただき、国歌の手話言語訳制定に向けて一歩をスタートさせてください。

5.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以上

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連本第210196号
2021年7月 13日

文部科学大臣
萩生田 光一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう教育等に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より私どもろう者等の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 我が国は2014年にようやく「障害者権利条約」を批准し、2016年4月より障害者差別解消法が施行され、障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、教育現場では未だ課題が山積している状態です。今年は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、きこえない子どもたち、きこえない保護者、きこえない教職員を取り巻く環境が、平常時にも増して不安定なものとなっています。
 当連盟は「手話言語法」の制定を視野に入れ、子どもたちが教科として「手話言語を学び」、学問を「手話言語で学ぶ」環境整備を強く求めます。
 今後、きこえない子どもたちや保護者、教職員、ひいては国民全体のために、より一層の課題改善に取り組んでいただきたく、下記の通り要望いたします。

1.きこえない子どもたちのアイデンティティ確立のため、きこえない子どもの言語権の保障、きこえない子どもの家族が手話言語を学ぶための支援に関する具体的な取り組みを行ってください。また、手話言語獲得の支援には、積極的に当事者を参画させてください。
<説明>
 貴省では2020(令和2)年より、厚生労働省と共同で「聴覚障害児中核機能モデル事業」を実施されています。2020年度は、全国で8地域(うち2地域は厚労省事業・文科省事業を並行)で協議会の設置と地域の難聴児支援に関する議論が行われていると承知していますが事業実施形態は、その地域における難聴児支援の既存の枠組みを活かしていくところが多く、ろう当事者が、モデル事業の協議会に参加できていないところもあります。モデル事業において構築される難聴児支援ネットワークには、必ずろう当事者団体を構成員として参画させるよう、都道府県および政令指定都市に働き掛けてください。
 また、昨年度の要望時、「家族が手話言語を学ぶ」ということに対して、「所掌外だが、特別支援教育の理解・啓発は重要と考えているため引き続き特別支援教育の理解啓発事業を進めていきたい」と回答をいただきましたが、子どもや保護者の手話言語の獲得を含めて、具体的な取組みについて、どのような進捗があったかご教示ください。

2.大学での教職員養成課程及びろう学校教職員の現任研修に、手話言語を学ぶ授業を組み入れてください。その際の指導者については、各地域のきこえない者の当事者団体や聴覚障害者情報提供施設等と協議してください。また、将来の医療現場を担う学生が「手話言語」を学べるよう医療系大学に働きかけてください。
<説明>
 2020年度の要望時の回答では、「特別支援教育のカリキュラムの中で手話が取り入れられていることは承知しているが、個別具体的な内容については大学の判断に委ねている」とのことでした。取得できる特別支援学校教諭専修免許状(聴覚障害)の対象大学は、全国で10校(私学1校含む) あると伺っています。手話言語に関する知識を深めると共に「手話言語を教える」ことができる教員の養成が必要ですが、教員養成における貴省の取り組みをご教示ください。
 また、特別支援学校教諭免許状(聴覚障害)が取得できる大学が、未設置の県には早急に設置するよう働きかけてください。
 最近は、医療系大学等において「手話言語」の講義・実技を導入する大学等が増えてきています。(詳細は別紙「大学医学部等における手話言語講義」参照)当事者からの講義等を通してきこえない・きこえにくい者に関する知識を深め、その理解に繋げていくことが極めて大切です。貴省としても、手話言語を医療系大学でも学べるように働きかけてください。

3.きこえない子どもたちが求める教育ニーズに対応できるよう、きこえない子どもたちが在籍する学校に「専門性の高い教職員(きこえない教職員を含む)」を配置してください。
<説明>
 2019(平成31)年の「教育委員会における障害者雇用推進プラン」に基づき、障害者雇用の推進を進めておられることと存じます。
 特別支援学校の教師は、通常小学校等教諭の免許状に加えて特別支援学校教諭の免許状を所持することとされていますが、「教育職員免許状」附則第15条により、「当分の間、特別支援学校教諭の免許状を所持していなくても特別支援学校の教師になれる」とあります。 
 「専門性の高い教職員(きこえない教職員を含む)」を配置のため附則第15項規定の撤廃と特別支援学校教諭専修免許状(聴覚障害)を持つ教員の増員・養成強化に早急に取り組んでください。

4.きこえない教職員が職務を遂行するうえで、その能力を最大限に発揮するための職場環境の改善、研修機会の充実について、各都道府県教育委員会へ必要な財政上の措置を講ずるよう指示してください。
<説明>
 全国聴覚障害教職員協議会(2019)「2019年度現勢調査」によると、全国のろう学校等には約500名きこえない・きこえにくい教職員が在職しています。障害者権利条約21条では、障害者が自ら望む意思疎通支援手段の行使が謳われており、職員会議等で会議内容を視覚化する等の工夫をしている学校もありますが、同僚の教職員からのインフォーマルな形での情報保障支援を受ける例も多く、このような状況では双方に負担が生じます。
 加えて、きこえない教職員が管理職になったときの校外会議や、電話応対時の情報保障、ろう学校以外の特別支援学校や、地域の学校等へ異動した際の情報保障は皆無に等しい状況です。
 きこえない教職員がその能力を最大限に発揮するための職場環境の改善や、情報保障などを促進させるための財政措置を都道府県教育委員会へ指示するとともに、きこえない教職員が法定研修や免許更新講習を受ける際の情報保障についても、公的に整備し、きこえない教職員の研修の機会を充実させるよう各都道府県教育委員会へ働きかけてください。

5.貴省がその配置を拡充しようとしている「スクールカウンセラー」及び「スクールソーシャルワーカー」を、全てのろう学校に設置・派遣し、早期教育段階での相談支援も含めてその機能を十分発揮できるようにしてください。
<説明>
 2020年度、いくつのろう学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されているか、現状を把握してほしいとお願いしましたが、把握できた状況や活用実例をご教示ください。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置がないろう学校に対して、早急に配置が行われるよう、具体的な働きかけを行ってください。
 昨今では学びの在り方に関しても、一元モデル(「○○だけ」構造)からの脱却が求められています。 きこえない子どもの教育の場も、特別支援学校だけでなく、特別支援学級や通常の学級等、多様な形態があり、どのような場で学んでいても手話言語獲得の権利が保障される教育環境が必要です。そのためにもスクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等を含めた、多職種の介入と連携による、きこえない子どもの権利保障・言語保障に向けた取り組みが必要だです。 
 スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーをはじめとする、ろう教育の現場に関わる専門職に対して、「聴覚障害」に関する十分な研修はもとより、「聴覚障害」支援の専門家から柔軟にアドバイスを受けられる体制を整備してください。

6.コロナウイルス感染症拡大による、学校のオンライン対応(授業、PTA会議等)に関して、きこえない子どもや保護者が、十分に情報を受け取るための体制を整備してください。
<説明>
 今般の新型コロナウイルス感染症の拡大状況をふまえ、義務教育、高等教育ともに、オンラインでの対応が増加してきています。
 しかし、特に、地域の学校に在籍するきこえない子どもにとって、授業で手話通訳等の情報保障がない場合、情報が得られないという声が挙がっています。
 ろう学校においては、オンライン授業できこえない子どもへ情報を伝えるために、様々な工夫がされていますが、一方でPTAの会議がオンラインで行われる際に、きこえない保護者は手話言語が十分に使えず、満足に会議に参加できない例があります。
 こうした喫緊の課題に対し、貴省として、きこえない子どもや保護者に対する情報保障や合理的配慮に関して、具体的な検討を行ってください。

7.2020(令和2年)度スポーツ庁委託事業「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究)」(スポーツに精通した手話通訳者の育成)内で作成した「国歌の手話言語試行版テキスト」について、ろう学校における式典(入学式・卒業式)での普及に取り組んでください。
<説明>
 我が国の国歌である「君が代」は、これまで統一された手話言語表現が定められておらず、それぞれが独自に表現を考えたり、指文字で表したりするなどして対応していました。きこえない者も国民の一人として、国歌に親しみ、斉唱する権利があります。当連盟では現状を鑑み、2020年度スポーツ庁委託事業「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究)」内で「国歌の手話言語試行版」を作成しました。国家の手話言語化は、きこえない子どもに夢を与える大変重要な取り組みでもあり、貴省のご尽力が不可欠となります。是非、ろう学校の式典等で積極的にご活用ください。

8.2020(令和2)年3月に貴省で発行された「聴覚障害教育の手引き〜言語に関する指導の充実を目指して〜」31ページに「手話の捉え方」について、手引書を引用されている教職員へ誤解を与えかねないので、速やかに修正文書を送付するよう取り組んでください。
<説明>
「聴覚障害教育の手引き〜言語に関する指導の充実を目指して〜」31ページ「手話の捉え方について」に以下のような記載がありました。

(1)手話の捉え方
かつて、手話は「伝統的手話」、「同時法的手話」、「中間型手話」という三つの手話に分類することができるとされていた。ここでいう「伝統的手話」とは、日本語とは異なる独自の文法 と語彙体系をもった手話をさし、今日では「日本手話」、「JSL(Japanese Sign Language)」 などとも呼ばれているものである。一方、「同時法的手話」とは、日本語の文法や語順に従って手話単語を配列したもので、日本語を手という媒体で表したものともいえる。今日では、「日本語対応手話」、「シムコム」、「手指日本語」などとも呼ばれている。しかし、実際の手話運用場面では、本人の教育歴や手話力によって、また聞き手の手話力によって、使われる手話は「伝統的手話」と「同時法的手話」の要素が混ざった「中間型手話」が使われることについても言及されている。 今日、手話に関する用語については様々な議論があり、また独自の文法や語彙を有した手話と日本語の語順に合わせた手話を明確に区別すべきであるという主張がある一方で、実際に使 われる手話は人によって様々であり、同じ人でも聞き手が聴覚障害者か聴者かによって手話を変えることもあるため、これらは明確には分けられないという主張もある。

 「日本手話」「日本語対応手話」と、ひとつの国の手話言語を二分化することで、手話言語話者の間に対立や分断が生まれる恐れがあります。当連盟は、同じ言語を使う仲間にそのような分断を生むべきではないと考えており、貴省が発刊される手引きで、「日本手話」「日本語対応手話」の分類が公認のように用いられたことをきわめて残念に思います。またこのような視点での分類は言語学の求める科学的な姿勢ではないと考えます。このままでは手引書を引用されている教職員へ誤解を与えかねないため、以下の当連盟ホームページと参議院事務局企画調整室からのコメントをご覧いただき、速やかに修正文書を送付するよう取り組んでください。

https://www.jfd.or.jp/2021/02/10/pid21617

9.障害者差別解消法施行後の手話言語通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を貴省からも働きかけをお願いします。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話言語通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。また、本年5月に成立した改正障害者差別解消法では民間企業にも合理的配慮の提供が義務となるなど、障害のある人にとっての社会参加がしやすくなります。
 行政を含む公的機関が合理的配慮の提供ができない状況にならないよう、利用者から手話言語通訳等の希望があった場合に対応するための費用を障害福祉とは別建てで予算化するよう、貴省から関係の地方自治体部局へ周知を図るようお願いします。

以 上

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連本第210197号
2021年7月13日

文化庁長官
  都倉 俊一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

きこえない・きこえにくい者の映画鑑賞にかかる要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」等により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その対応については地域差がある等、まだまだ改善すべき課題は残っております。すべての国民が安心、安全に生活ができるように、一層の環境整備を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.邦画における情報保障について、邦画がきこえない者も見られるように字幕付与の助成を行ってください。また、映画館で字幕のない邦画も鑑賞できるように「字幕メガネ」を常備できるよう購入に係る費用の助成を行い、全国の映画館で常備されるよう働き掛けてください。

<説明>
 現在、邦画に字幕がないため、きこえない者は自由に鑑賞ができません。一部の映画館にきこえない者用に日本語の字幕が表示されるメガネを常備し貸出している映画館がありますが、全ての映画館にあるわけではないため、きこえない者は、邦画を上映期間中に自由に鑑賞することができません。
 きこえない者もいつでもどこでも字幕付邦画が鑑賞できるよう字幕付与費用の助成を行ってください。また、すべての映画館が「字幕メガネ」を常備できるよう費用を助成するとともに、それが常備されるよう働き掛けてください。
<参考>
「映画みにいこ!バリアフリー映画上映情報」URL:https://www.bfeiga.net/

以  上

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