「優生思想を根絶する運動を強化する」特別決議



 2021年6月12日に開催された第9回(通算第72回)評議員会で、下記の通り「特別決議」が採択されましたことを報告します。

※特別決議の英訳版は英語版ウェブサイトよりご覧いただけます。

「優生思想を根絶する運動を強化する」特別決議

 2018年2月1日に、大阪府立生野聴覚支援学校小学部5年の児童が下校中、校門前の交差点で重機にはねられて亡くなられた。
 亡くなられた児童のご両親は、2020年3月に加害者本人と建設会社を相手取り、損害賠償を求める民事裁判を起こしたが、この裁判の中で被告側は「聴覚障害者には9歳の壁という問題があり、聴覚支援学校高校卒業時での思考力や言語力・学力は小学校中学年の水準に留まるので、逸失利益(将来得られるはずの収入)について、一般女性の40%で計算すべきだ」と主張している。
 この被告側の主張は、きこえない・きこえにくい人のみならず、障害をもつすべての人への尊厳を傷つけるものであり、障害のある人は人間として扱われないという明白な差別である。
 大阪聴力障害者協会は5月26日に公正な判決を求める緊急署名を開始し、わずか4日間で目標1万人をはるかに超える署名が集まり、今も署名数は増え続けている。
 また、旧優生保護法により強制不妊手術を受けさせられた被害者が裁判でたたかっている全国12件の訴訟のうち5件の裁判では、除斥期間を理由に国家賠償を求める訴えが棄却された。
 全日本ろうあ連盟はこれまで旧優生保護法裁判をめぐる緊急声明を4回出し、また兵庫県聴覚障害者協会を中心に展開された「旧優生保護法違憲国賠兵庫訴訟において公正な判決を求める要請署名運動」では、2万1046筆(5月20日現在)の署名を神戸地方裁判所に提出した。
 この2つの署名運動に共通していることは、「障害がある人は社会に存在してはならない」「きこえない人は能力が低い」などの理由で、社会から排除され差別されることは絶対に許さないという運動である。
 もう一つは、優生思想や優生政策は過去の問題だけでなく、現在も雇用、医療、教育などあらゆる日常生活や社会に根を張り続けていることが明らかとなったということである。
 障害者権利条約では、あらゆる障害のある人の尊厳と権利を保障し、差別の禁止を求めている。障害のある人もない人も共に希望溢れる明るい暮らしができる環境やインクルーシブ社会を構築する道は障害者権利条約に示されている。多様性を認めあえる共生社会、インクルーシブ社会を目指していくために、私たちは以下の取り組みを強化していくことを決議する。

  1. 今も根強い優生思想を根絶する運動をさらに強化していくこと
  2. 現在、取り組んでいる大阪や兵庫の署名運動に全力を挙げて取り組むこと
  3. 大阪府立生野聴覚支援学校児童裁判への支援活動に精力的に取り組むこと
  4. 旧優生保護法の被害者であるろう高齢者等の原告への支援を積極的に取り組むこと。

以上、決議します。

2021年6月12日 第9回(通算第72回)評議員会