旧優生保護法被害訴訟大阪地裁判決を受けての緊急声明



旧優生保護法被害訴訟大阪地裁判決を受けての緊急声明

2020年12月4日
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎

 この11月30日、旧優生保護法によって強制不妊手術を強いられた知的障害者とろう者夫婦が国に対して損害賠償を請求した訴訟の判決が大阪地裁であった。結果、優生保護法の憲法違反は認められたものの、除斥期間の20年の適用により請求が棄却されるという不当判決となった。

1.本判決は、旧優生保護法は憲法第13条・第14条に違反する、障害者の司法アクセス環境が不十分であったと判断したにもかかわらず、除斥期間20年を適用し、単なる時の経過で国の重大な人権侵害に対する損害賠償請求権が消滅したと切り捨てた。

2.「旧法は違憲」と判断したとはいえ、被害者や被害者の家族に対しその損害賠償を認めなかった。これは被害者に対し個人の尊厳を貶めた国の責任を認めながら、その損害賠償請求を退けることで、国の責任は不問とする判決であり、私たちはこれを到底承服することはできない。

3.原告であるろう者夫婦は「判決も障害者差別だ」と怒りを隠せず、上訴を決意している。現在までに、全国各地で25名の原告による訴訟の提起がなされているが、兵庫のろう者の原告はこの判決を見ず、先日この世を去られた。【当連盟は優生保護法の被害を受けたろう者を170名把握しているが(2020年8月31日現在)いうまでもなく被害者は高齢のため、早期の被害回復を実現させる必要がある。】連盟は今後続く判決が正義の判断を示すことを心から強く望むとともに、その実現のために、引き続き、全国の被害者・家族・弁護団・支援者の方々とたたかう決意である。

4.障害をもつ人間を社会から排除した当時の「優生保護法」は、戦時に制定した「国民優生法」を反映させたものであり、しかも重大な問題は、基本的人権などを大原則とした新たな憲法のもとでの最初の障害者にかかわる法律であったことである。障害者の存在を「不良」とする基本的人権をないがしろにしたその障害者観は、昭和24年制定の身体障害者福祉法をはじめ、厚労省関係を最多とする障害者差別法規を生み出すことになった。それは、ろう者はもとより障害者自身の自己肯定への法的・社会的障壁となった。

5.ゆがめられてきた障害者観を最新の科学的知見に基づき、その人権と尊厳を明らかにしたのが国連障害者権利条約である。私たちは、この障害者権利条約に則り、原告並びに被害者の権利としての国家賠償請求権の実現のために、幅広い人々と手をつなぎ運動を続けていく決意である。

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