旧優生保護法被害訴訟判決を受けての緊急声明



旧優生保護法被害訴訟判決を受けての緊急声明

2019年5月30日
一般財団法人全日本ろうあ連盟

 旧優生保護法による被害はろう者にも及んでおり、全日本ろうあ連盟としても、聴覚障害者の強制不妊手術等の実態調査により、不妊手術と中絶を合わせて現在148名の被害者を把握している(5月16日現在)。また、計7名のろう者が、兵庫・大阪・静岡(提訴順)の各地で国に対して補償を求めて裁判を行っている。全日本ろうあ連盟としても、裁判を支援するとともに、問題の実態解明、権利救済及び補償が適切に行われるように取り組んでいるところである。
 この5月28日、強制不妊手術について定めた旧優生保護法について、仙台地方裁判所において、憲法違反を認めながらも原告の請求を棄却する判決を言い渡した。被害の重要性について社会的に大きく報道されるなどし、司法による被害回復がなされるものと期待したが、原告の請求を棄却した判決は極めて遺憾である。

1 判決において、旧優生保護法が「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に不妊手術を強制したことについて、障害のある人の子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を一方的に奪い、個人の尊厳をふみにじるものとして、憲法13条違反であり無効と認めた点については一定の評価ができる。
 しかし、憲法違反を認めながらも、優生手術から20年間の除斥期間の規定による損害賠償請求権の消滅を認めた。また、本件の場合は、20年間が経過する前に国に対して賠償を請求することは困難であり、国会が賠償のための特別立法を行うことが必要不可欠だったことを認めつつも、最終的な結論としては、リプロダクティブ権についての議論の蓄積が少ないことや現在まで司法判断もなされていないこと等を理由に、国会が賠償のための特別立法しなかったことについての国家賠償責任は認められないとして、原告らの請求を棄却したことは到底容認できない。

2 原告らは、何の落ち度なく、長期に渡って苦しみ続けている人々である。「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立したが、一時金320万円が不妊手術を受けた原告らの被害実態を正しく反映した金額とは到底評価しがたい。今回の判決は、原告らの被害実態から目を背け、司法の役割として国民から期待されている紛争解決機能、被害者救済機能を果たさないものであり、極めて遺憾である。

3 当連盟としては、各地の裁判所が正義の判断を示すことを心から希望し、またその実現のために、引き続き、全国の原告・弁護団・支援の方々とたたかう決意である。また、裁判への支援とともに、権利救済及び補償が適切になされるための運動、支援に取り組んでいく所存である。

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