東日本大震災から4年を経て 3.11声明



 2011年3月11日に発生した東日本大震災から4年を経て、東北はいまだ復興の途上にある。現在なお避難・転居を強いられている人々は24万人、仮設住宅等での不自由な生活を余儀なくされている被災者は9万人にのぼり、多くの人々が生活再建の見通しも立てられないまま、長引く避難生活の疲労で健康を害し、不安感に苛まれている。それを裏付けるように、避難生活での体調悪化や過労、自殺等の間接的な原因で死亡する「震災関連死」の死者数は現在3,194人を数える。また福島第1原発事故後の帰還、汚染廃棄物の処理を巡っては住民意見の対立など故郷の分断にまで至っている。
 聴覚障害者災害救援中央本部では、大震災発生時から全国の仲間とともに支援活動に取り組んできた。その活動の中で、安全や命を守る情報が聴覚障害者に十分届かない、個人情報保護法が壁となり支援活動が遅々として進まない、生活再建や就労の手続き、相談における手話通訳やろうあ者相談員の不足等の課題が浮き彫りとなった。
 上記の課題解消に向けて、自分たちの地域に核となる拠点を作ろうと奮闘し、2013(平成25)年4月1日に福島県、2015(平成27)年1月30日に宮城県で聴覚障害者情報提供施設がオープンした。このことは被災地にとって大きな希望となった。
 一方、国や自治体は被災者のために、医療・介護の推進や心のケア、見守りによる孤立防止等、さまざまな支援事業を実施しているが、聴覚障害者はコミュニケーション障害という壁を前に十分な支援が受けられない状況に置かれている。
 障害者権利条約や改正障害者基本法には「言語(手話を含む)」ことが明記されている。これらにはすべての人々に不可欠な権利及び障害特性等に配慮した支援として、また障害者の社会参加を促進し障害の有無にかかわらず安心して生活できるように、障害者の活動や社会参加を制限している社会的障壁を除去するバリアフリー化の推進やアクセシビリティの保障と向上が掲げられた。しかし、未だ手話を言語として当たり前に使える情報アクセシビリティが保障された社会は実現していない。
 そこで私たちは、手話言語法、情報・コミュニケーション法制定運動を通じて、誰もが安心して生活できる社会への変革を促すべく、法的・社会資源の整備、差別のない社会づくりへ主体的な取り組みを行い、全国地方議会における「手話言語法制定を求める意見書」の採択率は今や100%に迫ろうとする盛り上がりを見せている。
 また、災害時に障害者が必要とする支援に、避難を促す情報伝達手段の確保、避難場所までの移動手段の確保、避難所・仮設住宅のバリアフリー化と生活支援の整備が挙げられるが、これも未だに法整備や社会的環境が整っておらず、国や自治体の早急な取り組みが求められる。
 今、私たちがなすべきことは、被災地の聴覚障害者への支援を継続していくとともに、この悲劇を二度と繰り返さないために、また今後いつ起きうるかわからない災害から命を守るために、全国の聴覚障害者関係団体が連携し、聴覚障害者情報提供施設を中心とした防災・減災・支援体制を構築して、地域や行政との連携を深めていくことである。これと連動して、地域社会や住民に聴覚障害者や手話についての理解を広め、地域と聴覚障害者の繋がりを強固にしていくことが、災害時に命を守り、助け合うことに繋がる。
 東日本大震災は未だ終息していない。被災者が生活再建を果たし、国や自治体の災害時の障害者への支援を含む防災・減災体制が整ってこそ、ようやく終息したといえるのではないだろうか。だからこそ、私たちは東日本大震災を過去のもの、過ぎたものとしてはならない。
 聴覚障害者災害救援中央本部は被災地3県への支援を継続し、また国や自治体へも更なる環境整備を求めていくとともに、すべての障害者、ひいては一人一人の命を守るため、全国の仲間とともに防災・減災体制構築の取り組みを進めていく決意をここに表明する。

2015年3月11日            
聴覚障害者災害救援中央本部  
運営委員長 石野 富志三郎 
 
〈構成団体〉           
一般財団法人全日本ろうあ連盟   
一般社団法人全国手話通訳問題研究会
一般社団法人日本手話通訳士協会  

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