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第17回デフリンビック派遣委員会
委員長 石野富志三郎
(財団法人全日本ろうあ連盟理事長)

第17回冬季デフリンピック(ハイタトラス2011)の中止について経過報告

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 標記について、本年2月11日夕(日本時間12日早朝)、ICSDから中止のプレスリリースが出され、続いてデフリンビック組織委員会からホームページで中止の宣言が出されました。
 これを受けて、日本選手団はスロバキアへの派遣を中止し、先に出発した選手団の早期帰国に尽力しました。その後、2月20日に最後に残った粟野達人総監督等スタッフが帰国し、現地報告を受けましたので、皆様に中止に至る経過を下記の通り報告いたします。

記 

1.大会中止の経緯について
 ICSD及びスロバキア組織委員会の当初の発表では、今回のデフリンピックは、資金の調達に失敗し、開催に至ることができなかったとあります。
 事実、本大会開催に際し、カーリング及びアイスホッケーの会場を改装することが計画されていましたが、その費用の支払いが滞っており、途中で改装が中断されていました。
 しかしICSDによると、今回のデフリンピックでは、選手団の宿泊及び輸送を組織委員会が一括管理しており、その費用を各国から徴収していました。その費用は100万ユーロ(約1億2千万円)とも言われています。また企業から集めた寄付金も1,000万ユーロを超えると言われています。それら資金の行方について警察が調査を進めており、現在、スロバキア組織委員会のルーダ会長は警察に保護されており、デフリンピック資金の詐欺及び横領の容疑がかけられています。
 さらにスロバキア組織員会は、2005年の立候補の時点で国の支援証明書がないまま立候補を行っていたことも明らかになりました。開催国の支援がないまま、今回のデフリンピックが進められていたということになります。
 
2.ICSD(国際ろう者スポーツ委員会)の対応について
 ICSDはスロバキアにおいて、スロバキア組織委員会及びルーダ組織委員長を刑事告訴しました。この刑事告訴には、ホテル宿泊や他のデフリンピック関連の費用のために、各国のろう者スポーツ連盟からスロバキア・デフリンピック組織委員会へ送金された資金の返還要求も含まれています。
 また、スロバキア・デフリンピック委員会とスロバキアろう者スポーツメン・ユニオン協会は、すでに予定している評議員会で最終承認されるまで、ICSDに関係するあらゆる行事への出席を停止されています。
 しかし、各国の賠償問題についてICSDは各国ごとの対応とする姿勢を取っており、デフリンピックと同時に開催される予定であった、第43回ICSD評議員会も開催のめどがありません。加盟国へ中止に対する具体的な説明を求める声が世界各国から寄せられています。
 
3.賠償金の問題について
 日本選手団は、2月25日付で組織委員会及びICSD事務局へ損害金約2,000万円の返還要求を出しております。スロバキア組織員会は、ICSD加盟国に対し、3月20日から3月31日までに返金を行うことを発表していますが、返還について、今後も注意深く監視を続けていきます。
 なお、日本選手団は、デフリンピックのために交付された国庫金および助成金の費用精算を現在行っており、現時点での費用精算が終わり次第、選手団関係者への費用についての説明を行う予定です。
 
4.今後の対応について
 今回の事態は、大きく4つの原因が挙げられます。
①立候補の際に必要な国の支援証明がなかったことが公にされていなかったこと
②ICSDの現地視察結果が公開されていなかったこと
③組織委員会への内外からのチェックが十分に機能していなかったこと
④中止にかかるあらゆる責任が、デフリンピック規則に明記されていないこと
 
 デフリンピックは、ろう者の手によって運営される、ろう者の最高峰のスポーツ大会です。デフリンピックに出場することは、ろう者にとって大きな誇りであり、多くの声援や支援を受け、国の代表として大会に臨みます。
 この大会は、主催団体や組織委員会からの一方的な通知で開催が左右されて良いものではありません。今回のようなことを2度と起こさないためにも、私たちろう者が一丸となり皆で守るべきものは守り、支援すべきことは支援し、意見すべきことは意見しながら、支えていかなければなりません。
 
 全日本ろうあ連盟は、今回の出来事を踏まえて総括し、ICSDに対し、本件に係るあらゆる情報の公開と中止に至る経緯に関する情報の公開を求めるとともに、その責任を加盟国と共に分かち合い、デフリンピックの信用回復と選手スタッフの心の回復、競技生活への復帰へ全力を注いでいきます。

以 上

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