ごあいさつ



理事長 石野富志三郎

ごあいさつ

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

 初めて九州にて全国ろうあ者大会が開催された1953年の大分大会より70年の時を超えて、再びこの大分の地で第71回全国ろうあ者大会を全国から2,500名の参加者を迎え開催できる喜びを、ここに集う皆さまと分かち合いたいと思います。

 今年2月、大阪府立生野聴覚支援学校児童の事故を巡り、大阪地方裁判所にて障害を理由に「逸失利益」は全労働者の平均年収の85%をもとに算出するのが相当と判断されました。裁判所が優生思想を認めるかのような発言をしたことは、私たちにとって大変残念なことであり、この判決を認めてはなりません。命の価値はみな平等であり、将来の可能性は障害の有無によって左右されません。

 旧優生保護法による強制不妊手術問題についても、札幌高裁と大阪高裁にて訴えが認められ、国に賠償命令が下されましたが、政府は「除斥期間の法律上の解釈・適用に関する論点について、最高裁の判断を仰ぐため」として上告をしました。被害者の高齢化により問題の早期解決が求められる中、もどかしい状況が続いています。私たちはこの問題を過去のこととして捉えるのではなく、今を生きる私たちに起こりうる問題として、この過ちを繰り返さないように社会に働きかけていきます。

 昨年5月に成立した「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」により、情報取得に必要な各種機器の開発に障害当事者またはその関係者による協議の場が設けられるようになるなど、私たちにとって嬉しい変化が起きています。2025東京デフリンピック開催準備を進めていく中で、きこえない・きこえにくい人や手話言語への理解を社会へ広め、「障害は個人の能力を妨げるものではない」ことや「障害の有無は命の価値を図る物差しにはならない」ことを強く示していきます。また、これらの取り組み1つ1つが手話に関する施策やきこえない私たちの悲願である手話言語法の立法に向けた一歩に繋がるはずです。

 本大会のテーマ「よみがえれ 昭和の息吹き 大分の地で!~時はうつろい令和の世ではばたく~」に込められた想いの通り、先人たちより引き継がれてきた歴史や熱意を私たちがさらに飛躍させ、次の世代にも伝えていきましょう。

 最後になりますが、本大会開催にご努力いただきました実行委員会の皆さま、公私ともお忙しいところをご臨席くださいました大分県および大分市、別府市をはじめ、ご来賓の皆さまに厚く御礼を申し上げます。

2023年6月11日
第71回全国ろうあ者大会 in おおいた