厚生労働省へ聴覚障害者の福祉施策について要望書を提出

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写真下(左から):厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室 田仲室長
         全国手話通訳問題研究会 理事・事務所長 浅井貞子
         全日本ろうあ連盟 理事 大竹浩司(福祉・労働委員会 委員長)
         全日本ろうあ連盟 理事長 石野富志三郎
         厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 宮嵜部長

連本第170266号
2017年7月19日

厚生労働大臣
 塩 崎 恭 久 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策に関する要望について

 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 平素より聴覚障害者福祉の向上にご理解、ご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、我が国は「障害者権利条約」批准に向けての国内法整備の一環として「障害者差別解消法」を制定し、1年が経過致しました。障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、聴覚障害者にとっては手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。
 全日本ろうあ連盟では、聴覚障害者情報提供施設、ろう重複障害者、ろう高齢者等の聴覚障害者福祉の関係諸団体とともに、聴覚障害者の福祉施策の充実のための施策について協議をし、これまで関係団体が各々要望している事項をもとに、下記の通り統一要望として取りまとめました。
 つきましては、ぜひとも施策に反映し、必要な予算措置を講じていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.全国の聴覚障害者が地域格差なく福祉サービスを利用することができるよう、社会福祉施設等の社会資源の整備を図ってください。

(1)全ての都道府県特に政令指定都市に「聴覚障害者情報提供施設」を早期に設置するよう助成措置等の充実を図ってください。全聴情提

①身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準第40条「聴覚障害者情報提供施設の職員の配置基準」の見直しで、施設長の他に意思疎通支援のコーディネート及び養成担当者、相談支援担当者等の明示で職員の配置基準を明確にしてください。全聴情提

②「聴覚障害者情報提供施設」運営費の増額で、職員待遇改善および現行の都道府県1施設に支所を追加設置できる仕組みを導入してください。全聴情提

(2)障害者権利条約の批准、また障害者差別解消法に基づく環境整備、合理的配慮の提供の義務で、聴覚障害者また他に障害をもつ重複聴覚障害者が利用できるために障害福祉サービスの充実を図ってください。

①意思疎通支援事業が連携して、聴覚障害者のニーズを取りこぼすことなく対応するよう施策を講じ、必要な予算を確保してください。例に聴覚障害者が働く上で必要な資格を取得するために研修や講習を受けたくても複数回の場合は意志疎通支援者の反復派遣は困難になる例があります。全通研 ろうあ連盟

②意志疎通支援事業以外の障害福祉サービスの充実を図る施策を講じ、必要な予算を確保してください。具体的にはどの障害福祉サービス利用でも意志疎通の面で保障される仕組みをつくることです。全員 新規要望

(3)全ての都道府県に聴覚障害児や聴覚障害者が、情報アクセスとコミュニケーションのバリアなく、自ら選択する言語やコミュニケーション手段により利用できる放課後等デイサービス、地域活動支援センター、グループホーム・ケアホーム、特別養護老人ホーム等の社会資源を計画的に整備してください。そのために、市町村単位だけでなく、広域で事業運営ができるように施策を講じてください。ろう重複施設

(4)児童福祉法の障害児通所支援(児童発達・放課後等デイサービス)に「視覚聴覚障害者支援体制加算」を適用してください。ろう重複施設

(5)高齢ろう者が利用できる介護保険サービスは限られています。高齢ろう者が、聴覚障害の特性に対する理解や配慮のない介護保険サービスを受けざるを得ない現状を改善するため、障害福祉サービスと介護保険サービスどちらも選択できるように施策を講じてください。ろう高齢施設

(6)障害福祉サービスと介護保険の適用関係について、65歳になって一律の対応をしないよう、地方自治体に対して指導を徹底してください。
 65歳以降の障害福祉サービスについて、介護保険に同等のサービスがない事業(就労継続支援A型・B型事業)や、適用除外施設(障害者支援施設)については、引き続き障害福祉サービスを受けられることになっています。しかし現状では、65歳になったことで障害福祉サービス利用日数を減少や支給を打ち切る自治体が見られます。このようなことが無いよう再度指導の徹底をしてください。ろう高齢施設

2.介護保険制度に関して、次のことを講じてください。

(1)各市町村で完全実施される『介護予防・日常生活支援総合事業について、障害者差別解消法にうたわれている合理的配慮の理念に基づき、手話ができる職員の配置や同じ聴覚障害のある利用者集団の保障、そしてろう高齢者の障害特性や支援の必要性に配慮した人員や環境整備が確保されるなど、安心して利用できる事業(事業所)となるよう、市町村に働きかけてください。要支援1・2の聴覚障害者は、介護予防・日常生活支援総合事業の対象となりますが、この事業は地域での支え合いや介護予防となる見守り支援事業であり、市町村事業なので地域の格差が生じます。また、地域の社会福祉協議会やボランティア団体が対応することになりますが、手話がない状態では、ろう者は引きこもりになることが懸念されます。ろう高齢施設

(2)要介護1・2に該当する認知症の方々や、ろう高齢者も現状では、特例要件(入所指針)に合えば特別養護老人ホ-ムへの入所が可能となっています。今後の制度見直しに当たっても、軽度な要介護度であっても独居や家族内・地域での孤立し、聴覚障害に配慮した適切な居宅サ-ビスが受けられない実態にあるろう高齢者が、特別養護老人ホ-ムに入居できるよう、現状の入所要件(原則、要介護3以上、特例要件あり)を継続してください。ろう高齢施設

(3)聴覚に障害を持つ高齢者が多く入居する介護施設においては、すべての介護・支援の際に、「介護や行動の目的の説明、納得、了解」のための情報提供とコミュニケーション支援を一体的に行っています。そのため、現在、視覚・聴覚障害のある者が15名以上入居する介護福祉施設において加算されている『障害者生活支援体制加算』では、対象となる入居者が15名をはるかに超える介護施設においては、障害者支援員1名の加算では、障害特性にあった支援を行うのは困難です。ついては、現行の加算対象者15名以上26単位を基準とし、15名~29名は26単位、30名~44名は26単位+α・・・に見直すなど、加算対象者の人数に合わせて区分ごとの加算額増額の検討をお願いします。ろう高齢施設

(4)『介護予防・日常生活支援総合事業』により、要支援1・2の聴覚障害者は、ホームヘルプ・デイサービス利用の対象外となり、そのため、全国的にも絶対的に不足している聴覚障害者の利用者に配慮できている事業所が、事業所閉鎖や労働条件の悪化を招く懸念があります。聴覚障害者が情報とコミュニケーションのバリアなく、地域生活を過ごせるようにするため、ホームヘルプ・デイサービスを継続して利用できるようにしてください。ろう高齢施設

(5)障害者のうち低所得者に対する介護保険サービスにかかる利用者負担額の軽減について、65歳以降初めて利用開始でも軽減措置の適用を行ってください。困難ならば、障害者基礎年金を加算するなど配慮願いたい。新規要望

3.聴覚障害者福祉に関わる人材養成・確保を強化してください。

(1)意思疎通支援事業において、意思疎通支援のネットワークを確立するため、「情報提供施設」や市町村等への手話通訳者の設置(雇用)が推進されるよう講じてください。全通研

(2)意思疎通支援事業において、「情報提供施設」や市町村等への手話通訳者の設置(雇用)が推進されるよう予算面および制度面で講じてください。雇用されている手話通訳者の82%が非正規雇用で(2015年全国手話通訳問題研究会調べ)、不安定な身分のまま働き、健康破壊を起こす手話通訳者が後を絶ちません。雇用を増やし、身分が保障される予算および制度の充実をお願いします。全通研

(3)手話通訳者、要約筆記者の養成、並びに養成を担当する講師の養成事業を、全ての都道府県において、早期に実施するようにしてください。全通研

(4)自治体や情報提供施設において、聴覚障害を専門とする相談支援者の正規雇用を義務付けるとともに、相談支援者の研修事業を新設してください。全聴情提

(5)聴覚障害者を対象とする在宅支援の強化のため、同じ聴覚障害のある介護福祉士やホームヘルパー等の養成及び研修について、自治体の責任で手話通訳者配置等の配慮を行うようにしてください。 また、介護職員の研修についても、聴覚障害のある職員の受講について、自治体の公費負担により手話通訳者・要約筆記者が配置されるようにしてください。具体的には障害者差別解消法施行にもかかわらず、養成及び研修を実施する各事業者から手話通訳者・要約筆記者派遣(事業者負担)を拒否される例が続いていることにあります。ヘルパー連絡会

以 上

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