文化庁に文化芸術推進基本計画(第3期)の策定に係る要望を提出



 2026年4月23日、当連盟より浮島とも子衆議院議員に同席いただき、文化庁に要望書を提出しました。

 全日本ろうあ連盟 河原雅浩副理事長、堀米泰晴教育・文化委員長、櫻井貴浩副委員長から要望したのは主に以下です。

  • 第3期基本計画を今後検討するにあたり、文化芸術分野における情報アクセシビリティ指針の策定
  • 文化施設(博物館、美術館、劇場等)・芸術団体のバリアフリーにおける情報アクセシビリティ機器やソフトウェア、システム等への助成対象拡充
  • きこえない・きこえにくい人の文化芸術活動(創作現場や発表の場)における情報保障制度(手話言語通訳等)の構築および環境整備

集合写真
右から、櫻井副委員長、堀米教育・文化委員長、 河原副理事長、
文化庁次長日向氏、浮島とも子議員、文化庁参事官補佐山崎氏、
文化庁地域文化・共生社会担当佐橋氏、政策課専門官井出氏

連本第260012号
2026年4月14日

文 化 庁 次 長
日向 信和 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石橋 大吾

文化芸術推進基本計画(第3期)の策定に係る要望

 平素は当連盟の活動に深いご理解とご支援をいただき誠にありがとうございます。
 また、きこえないことや手話言語への理解促進ならびに東京2025デフリンピック大会の開催に向けて多大なるご支援をいただき、重ねて御礼申し上げます。
 さて、文化芸術基本法に基づき策定された「文化芸術推進基本計画(第2期)」が、2027(令和9)年度で期間満了を迎えるにあたり、今後、第3期基本計画の策定に向けた検討が本格化するものと存じます。
 つきましては、次期基本計画の策定に際し、「障害者等の文化芸術の参加促進による共生社会の実現」の目標を達成するために推進する取組に、以下の要望を反映していただきますよう、お願い申し上げます。

1.目標を達成するための取組として、「文化芸術分野における情報アクセシビリティに関する指針の検討および策定」を追加してください
〈説明〉
 文化芸術基本法および障害者文化芸術推進法では、障害のある人が文化芸術を鑑賞・創造する機会を拡大するため、必要な環境整備や施策を講じることが規定されています。
 また、2022年に施行された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」においても、文化芸術やスポーツ等の分野で、障害者が情報を十分に取得・利用し、円滑に意思疎通を図れるよう、必要な施策(情報保障)を講じることが定められています。
 しかし、現状では具体的な指針や目標値が示されていないため、きこえない・きこえにくい人のための文化芸術分野における情報アクセシビリティ対応は十分に進んでいません。
 放送分野では総務省の管轄下、学識経験者や障害当事者団体、機器メーカー、放送事業者等による議論を経て「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」が公表されています。この指針に基づき、字幕放送や手話放送の普及目標が設定されたことにより、放送における情報アクセシビリティは年々向上しています。
 文化芸術分野においても、学識経験者や障害当事者団体等と連携・協力し、実効性のある指針を検討・策定することを強く要望します。

2.文化施設(博物館、美術館、劇場等)・芸術団体のバリアフリー化助成制度において、鑑賞における情報アクセシビリティを支援するための機器やソフトウェア、システム等の製作費・維持更新費用への対象拡充を「目標を達成する取組」に追加してください
〈説明〉
 都内では、東京2025デフリンピック開催を機に、都内文化施設等の受付窓口や展示物をガイドする展示映像等への手話言語および字幕の付与、スマートグラスやタブレットの貸出、AIを活用したリアルタイム音声のテキスト化技術、音声認識システムの文字修正者の配置、実演芸術における手話通訳の導入、聴覚保障システム(ヒアリングループ、オーラキャスト)の導入鑑賞バリアフリー化の先進的な取り組みが進みました。
 しかし、特に地方での文化施設においては、これらの機器や技術を導入しようとしても、製作費のみならず、その後のシステム維持費や更新費用が大きな負担となり、導入を断念するケースが見られます。その結果、都市部の施設との間で鑑賞機会の質の格差が顕著になっています。
 文化施設のバリアフリー化を真に推進するためには、設備等の初期導入費だけでなく、継続的な運用に不可欠な機器・ソフトウェア・システム等の維持更新費用についても助成制度の対象を拡充する必要があります。
 またこれらを適切に運用でき、かつ、きこえない・きこえにくいこととはどういうことかについて充分理解している人材(アートマネージャーやコーディネーター、手話言語や字幕の監修者等、きこえない人自身が担うことも含む)の育成および配置が重要です。
 東京都では鑑賞サポートに特化した助成制度が令和6年からスタートしており、通年で申請ができるようになっています。東京2025デフリンピックのレガシーの継承・発展のため、国としても鑑賞サポートに特化した助成制度を創設してください。
参考:東京芸術文化鑑賞サポート助成
https://act-kansho.support/

3.「手話文化」の創造的な活動の推進や手話文化資源の保存、ならびに次世代を担う子どもたちが手話文化に触れ、親しむことができる機会の確保や育成支援を、「目標を達成する取組」に追加してください
〈説明〉
 2025年に施行された「手話に関する施策の推進に関する法律」では、手話文化の定義に「手話及び手話による文学、演劇、伝統芸能、演芸その他」の文化的所産が含まれることが明記されました。
 多様な文化芸術の振興のためには、文化の一つに加えられた手話文化の推進が不可欠です。そのためには、手話文化活動に取り組むきこえない・きこえにくい演者やアーティスト等の活動を支援することや、演劇や伝統芸能等の分野において長年蓄積されてきた手話文化資源の保存に取り組む必要があります。
 また、共生社会の実現に向け、次世代を担う子どもたちが手話文化を鑑賞・体験する機会の創出や継続して親しむことができる機会を確保することが重要になります。

4.きこえない・きこえにくい人の幅広い⽂化芸術の創造や活動を推進するため、創作現場や発表の場(劇場、音楽堂、ホール等)における情報保障制度の構築および環境整備および必要な施策の実施を、「目標を達成する取組」に追加してください
〈説明〉
 演劇や伝統芸能等の分野において、長年、きこえない・きこえにくい演者やアーティストが手話言語を用いた文化活動で活躍してきましたが、創作現場や発表の場における手話通訳・要約筆記等の情報保障制度等の環境整備は依然として不十分な状況です。
 特に、きこえる共演者や演出家、スタッフ等との打ち合わせや稽古、発表の場等において、きこえない・きこえにくい演者やアーティストが手話言語通訳費用等を自費で負担しなければならない事例が多くみられます。
 この経済的負担が、きこえない・きこえにくい演者等がオファーの機会を得られない大きな要因にもなっております。
 「きこえない人の役はきこえない俳優が演じる」べきですが、事業者は通訳費用の負担からきこえる俳優にオファーする事例が後を絶ちません。きこえない・きこえにくい人が技術スタッフとして制作の現場に携わる場合でも同様です。
 また、文化芸術の専門性に精通した通訳者およびコーディネーターの育成および配置も喫緊の課題となっています。既存の養成システムに加え、専門知識を習得するための高度な研修体制の構築が必要です。
 誰もが等しく文化芸術を創造し、発信できる環境を整えるため、きこえない・きこえにくい人の文化芸術の創造や活動における情報保障制度の構築や環境整備並びに必要な施策の実施に早急に取り組む必要があります。

5.国語の振興や日本語教育の推進の枠組みに、手話言語の振興および教育施策における手話言語教育の導入推進、環境整備等に必要な施策の実施を、「目標を達成する取組」に追加してください
〈説明〉
 手話に関する施策の推進に関する法律により、国および地方公共団体はきこえない・きこえにくい子どもが手話言語を習得することを支援することや、学校教育の現場において手話言語による教育を享受できるよう、手話言語技能を有する教員や手話言語通訳者等の適切な配置、手話言語教材の提供、その他の必要な施策を講ずることが求められています。
 また、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が少数言語の保護を提唱する中で、手話言語もその対象に含まれています。わが国においても手話言語を記録・保存(アーカイブ化)し、教育や学術の現場で積極的に活用する取り組みが必要です。
 これらを推進するためには、文化芸術推進基本計画における国語の振興や日本語教育の推進の枠組みの中に、手話言語の振興および手話言語教育の導入や環境整備等を明確に位置付け、実効性のある施策の推進が必要です。

以 上