国連による言語と情報アクセシビリティに関する差別への声明
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国連による言語と情報アクセシビリティに関する差別への声明
2026年1月、国連が障害者権利委員会に対し、財政難を理由に国際手話通訳や字幕等の義務付けられたアクセシビリティサービスを提供できないと通知したことが、2月に公表された障害者権利委員会からの声明で明らかになりました。3月9日から27日にかけてジュネーブで開催される委員会第34回会期が目前に迫った中での突然の通知でした。
障害者権利委員会は、締約国による条約の実施状況を監視する独立した専門家機関であり、共生社会の実現をめざして、すべての障害者の人権を擁護し、条約に定められた条項の実施を支援するための勧告を行ってきました。
田門浩氏は、2025年1月より障害者権利委員会へ日本から選出された委員として出席しています。これまで田門氏が委員活動の際に必要とする手話言語や文字による情報保障について、国連は先述の通知と同じ理由で、手話通訳派遣をパーソナルアシスタントとみなし、派遣にかかる経費支給を0.5名分程度にとどめています。会議等の期間中、手話言語通訳者は最低でも2名必要なことから、非常に少ない支給額であることがわかります。不足額は助成団体からの助成や日本障害フォーラム(JDF)の募金等で補填してきましたが、それでも足りず、残りは田門氏が負担してきました。
これまでもこの問題に対し、私たち全日本ろうあ連盟をはじめ、世界ろう連盟(WFD)や国際障害同盟(IDA)、JDFなど、国内外の当事者団体が、国連に繰り返し合理的配慮の提供を求めてきたにもかかわらず、今回の通知が出されました。
このような状況の中、会議に必要な国際手話通訳者3名分と字幕等の費用負担まで強いることは、国連自らが掲げる障害者権利条約の理念に照らしても、不当なものであり、到底容認することはできません。
通知が明らかになり、WFDやIDA、JDF等から相次いで声明や要望が出されると、国連は対応を一転させ、アクセシビリティサービスを提供するとの通知を出しました。
国連憲章では、国連の目的の一つに「経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決し、かつ人権および基本的自由の尊重を促進することについて協力すること。」と定めています。それにもかかわらず、当の国連が財政難を理由にきこえない・きこえにくい人の会議参加に必要な情報保障から切り捨て、当事者団体からの声明や要望を受けて対応を一転させるその姿勢は、国連憲章を軽視していると言わざるを得ません。また、締約国に条約遵守を求める立場にありながら、自ら合理的配慮を放棄することは、国連自らが掲げる人権の普遍性と信義を根本から損なう、極めて深刻なダブルスタンダード(二重基準)です。
情報保障は、きこえない・きこえにくい私たちだけでなく、きこえる人にとっても必要なものであるとともに、きこえない・きこえにくい私たちが、自ら望む言語で社会のあらゆる情報等にアクセスし、コミュニケーションする権利として守られるべきものです。
人権を守るために存在する国連が、この権利の擁護を放棄することは、国際会議だけでなく、国際社会からきこえない・きこえにくい人の参画を拒むことになり、国連による直接的な差別です。
情報保障が行われないことは、障害者権利委員が自らの役割を十分に果たすことができないことを意味し、実質的な委員会の機能停止ともいえます。そのような中で作成された総括所見は意義あるものといえるのでしょうか。
そして、財政難によって情報保障から切り捨てられていくということは、非常時には障害のある人から切り捨てていくと、国連自らが発信しているのと同義です。田門委員が直面している多額の自己負担や寄付に頼らざるを得ない現状は、経済力や支援体制の乏しい国々からの障害当事者の参画を阻む「構造的な障壁」であり、委員会の多様性と公平性を根底から揺るがす事態です。
国連が対応を一転させたことは、当初の通知が財政上の不可抗力でなく、単に情報保障の優先順位を低く見積もっていたことを自ら証明しています。情報保障は「慈善」でも「サービス」でもなく、社会のあらゆる場面への参画において不可欠な「権利」です。財政難を理由にこの権利を排除することは、誤ったメッセージを世界に発信することにほかなりません。
全日本ろうあ連盟は、国連に対し、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という障害者権利条約の精神に立ち返り、永続的かつ安定的な情報保障の予算確保を強く要求します。


