「自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟」総会に出席



 「自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟」総会が2025年5月29日(木)に開催されました。連盟からは河原副理事長、山根本部事務所長が出席しました。
 各省庁よりバリアフリー化やユニバーサルデザイン、インクルージョンの推進への取り組みと関連予算の説明が行われました。内閣府からは、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法に関し、障害者差別に関する相談窓口を適切な窓口につなぐ国の「つなぐ窓口」の本格実施の紹介がありました。また、厚生労働省からは意思疎通支援従事者の確保について、若年層の手話通訳者養成モデル事業により人材確保に取り組んでいる旨説明がありました。
 その後、各障害者団体からの要望説明がされ、連盟は河原副理事長より、情報面におけるユニバーサル化の実効性について課題を投げかけ、きこえない・きこえにくい人が、きこえる人と同時に同等の情報にアクセスできるよう「手話施策推進法(仮)」の1日も早い制定を要望しました。また、政見放送への手話言語通訳の義務化、選挙活動での手話言語通訳者の位置付けについて、公職選挙法の改正を求めました。そして、司法場面での情報アクセスの課題にも触れ、あらゆる場面で情報アクセシビリティが保障される社会となることを強く求めました。(提出した要望書は下記参照)。
 また、他の障害者団体より、東京2025デフリンピックの開催をきっかけに手話言語に興味を持つ人が増えている一方で、手話言語は未だ身近ではないことから、公共施設へ聴覚障害者用情報受信装置を設置することについての要望、観劇・鑑賞時の情報保障において、歌詞の字幕表示が著作権の問題によりできない場合があるという課題への対応を求める要望がありました。
 その他、障害者権利条約の総括所見を踏まえ、障害者基本法の改正を行うこと、セルフレジのタッチパネルや注文端末のバリアフリー化を行うこと、列車や新幹線のウェブ予約の弊害など、それぞれの要望が出されました。

総会の様子
総会の様子
総会の様子

連本第250097号
2025年5月29日

自由民主党
ユニバーサル社会推進議員連盟
 会 長  石破 茂 様

東京都新宿区原町3-61 桂ビル2F
電話03-6302-1430・Fax.03-6302-1449
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石橋 大吾

要 望 書

 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい人の社会参加促進にご理解とご支援を賜り厚く御礼申し上げます。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法、障害者差別解消法改正、障害者総合支援法や国連・障害者権利委員会から出された総括所見等を受け、さらに社会参加に関する施策を充実させるべく、下記の通り要望します。

1.「手話施策推進法」の制定を早急に進めてください。また、制定後は、法の実効性が担保されるよう、速やかに予算措置をおこない施策に反映してください。

<説明>
 きこえない・きこえにくい人が手話言語を用いて、きこえる人と対等に社会参加をしていくためにも、手話言語を獲得し手話言語で学べる環境整備と手話言語の研究・普及・保存を保障するための法律「手話施策推進法」の制定を早急に進めてください。また制定後は、自治体間で格差が生じないよう速やかに予算措置を行い、法の理念が施策に反映できるようにしてください。

2.司法における手話言語等の情報保障を進めてください。

(1)きこえない・きこえにくい人が裁判所の傍聴を希望する場合、裁判所の責任で情報保障を行なってください。
<説明>
 裁判は原則公開で傍聴は誰でも自由にできることになっていますが、きこえない・きこえにくい人は、情報保障なしには、内容を把握することができません。
 きこえない・きこえにくい人が、傍聴を希望した場合、事前抽選券交付時も含め裁判所の責任で手話言語通訳・筆記通訳者を配置してください。きこえない・きこえにくい人が、情報保障の不足で困惑することがないよう、情報保障の実施の際は、事前に当事者と一緒に確認できる場を設けてください。

(2)裁判所(法廷内)における情報保障にかかる費用は裁判所負担としてください。
<説明>
 きこえない・きこえにくい人が関わる民事裁判において、現状では裁判所の費用負担による情報保障はありません。敗訴・勝訴にかかわらず裁判所による情報保障を行ってください。
 民事訴訟法に、障害のある訴訟当事者に対する民事訴訟手続における合理的配慮にかかる費用は国の負担とする旨の規定を設ける(民事訴訟法第61条の訴訟費用に含めないものとする。)等の対応を求めます。

(3)司法における要望及び意見交換の場を設置してください。
<説明>
 裁判所は行政と違い、要望書は受理するのみで回答や意見交換等が行われません。きこえない・きこえにくい人がアクセスしやすい司法の環境整備を行い、裁判所を始めとする司法関連機関と要望交渉や意見交換ができるよう、窓口や機会を作ってください。

(4)国内の刑務所、少年刑務所及び拘置所並びに少年院、少年鑑別所、婦人補導院等でのきこえない・きこえにくい人への情報・コミュニケーション保障の実態を調査してください。
 あわせて各刑務所へ「法務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」に沿った合理的配慮の提供について周知してください。
<説明>
 現在、国内の刑務所、少年刑務所及び拘置所並びに少年院、少年鑑別所、婦人補導院等において、刑務官等からの合図や発言等には、書面によるやり取りや筆談以外に、どのような情報保障の配慮がされているか状況をご教示ください。
 手話言語が必要な受刑者に、情報が伝わっていないのではないかと懸念しています。これまでも、何を言っているのかわからないまま過ごした、他の受刑者の動きをみて自分の行動を決めたといった話もあります。正確な情報が伝わらなければ、更正教育を適切に受ける機会を得ないまま、服役していたことになります。
 手話言語による情報発信や、刑務官等が簡単な手話言語を覚え対応できるための環境を整備してください。
 あわせて、「法務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」に沿い、対象者が望むコミュニケーション手段での合理的配慮が求められることについて、刑務所、少年刑務所及び拘置所並びに少年院、少年鑑別所、婦人補導院等に周知をしてください。

3.緊急災害時の放送について、きこえない・きこえにくい人への情報保障の強化をはかってください。

(1)緊急災害時におけるテレビ放送は、臨時の番組編成を行う場合であっても、必ず手話言語通訳と字幕を含めた情報発信ができるようにしてください。
<説明>
 緊急災害時には臨時の番組編成になり、手話言語通訳や字幕のない映像が断続的に流れます。きこえない・きこえにくい人が災害の現況を把握し、安全に避難等をするためには、情報をリアルタイムに取得することが非常に大切です。
 緊急災害発生時には、手話ニュースや手話言語通訳・字幕を挿入した緊急番組を放送するよう、補助金等を設置するなど国を挙げた政策に取り組んでください。

4.きこえない・きこえにくい人等の参政権を保障するため公職選挙法(議員立法)を改正してください。

(1)政見放送への手話言語通訳、字幕の挿入を義務づけてください。
<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙の政見放送では、すべてに手話言語通訳・字幕の付与が実現されておらず、義務付けも行われていません。経歴放送には字幕もなく、音声放送のみでは候補者の経歴を知ることができません。きこえない・きこえにくい人等がきこえる人と同等に選挙に関する情報を得て、その選挙権を行使できるよう、政見放送への手話言語通訳、字幕付与の義務付けができるよう、改正してください。

(2)候補者が行う街頭演説に手話言語通訳や要約筆記等をつけられるよう、制限を撤廃してください。
<説明>
 現在、「選挙運動に従事する者」の中の「専ら手話通訳のために使用する者」として報酬を支払うことができることになっています。しかしながら、手話言語通訳者は自らの意見を述べたり、候補者の応援をする「選挙運動に従事する者」ではなく、公正中立な立場で情報保障を担う者です。「選挙運動に従事する者」の規定を外し、『手話言語通訳者』として報酬が支払えるようにしてください。

5.東京2025デフリンピックの認知度の向上と、きこえないことやデフスポーツの普及啓発及び東京2025デフリンピック開催に向けた全国的な気運醸成のための取り組みにご協力をください。また、誰もが情報にアクセスしやすく、コミュニケーションバリアフリーな環境整備を進めてください。

<説明>
 2025年11月に東京で、きこえない・きこえにくい者のオリンピック「デフリンピック」が開催されます。しかし、「オリンピック」や「パラリンピック」と比べると、デフリンピックの認知度はまだまだ低いのが現状です。東京2025デフリンピックを成功させるだけでなく、広く知ってもらうことで、きこえない・きこえにくい人を含むすべての人々が共に生きる社会の実現をめざし、大会開催に向けた盛り上がりを高めることが不可欠です。
 全国各地で行う国(省庁)のイベント等で、デフリンピックやデフアスリートを紹介してください。
 また、デフリンピックの前後には、デフアスリートをはじめ多くのきこえない・きこえにくい人や関係者が国内外から訪れます。関係機関にこのことを周知していただき、きこえない・きこえにくい人への対応がスムーズにできるよう、手話言語等の学習機会を設けるなどの対策をしてください。また、公共交通機関(電車、バス、地下鉄、駅構内)、宿泊施設、飲食施設、公共施設、放送・通信においても手話言語を含めた情報アクセシビリテイが計られ、コミュニケーションがバリアフリーになる環境を整備してください。
 そして、これらの取り組みがデフリンピックのレガシーとして全国に普及し、地域格差のない共生社会の構築が図れるよう要望いたします。

以 上