内閣府障害者政策委員会へ視覚・聴覚に障害のある当事者団体4団体より要望書を提出



 2022年11月29日、視覚・聴覚に障害のある当事者団体4団体(全日本ろうあ連盟、日本視覚障害者団体連合、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会)が連名にて、内閣府障害者政策委員会 石川准委員長宛に障害者政策委員会の進行・運営についての改善・検討を申し入れるための要望書を提出しました。

2022年11月29日

障害者政策委員会
委員長 石川准様

社会福祉法人日本視覚障害者会連合  
会長 竹下 義樹  

一般財団法人全日本ろうあ連盟  
理事長 石野富志三郎  

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会  
理事長 新谷 友良  

社会福祉法人全国盲ろう者協会  
理事長 真砂 靖  

 障害者政策委員会(以下「委員会」と表記)の進行・運営について、下記の点につき改善・検討をいただきたく、申し入れをいたします。

1.事前の資料配布について、視覚情報または音声情報にアクセスしにくい障害のある当事者に対する配慮を改めて、委員会全体に求めます。具体的には下記の通りです。

①PDF版またはテキスト版等で事前に送信される資料は、最低でも会議の1週間前に送信してください。

②点字版の資料は、最低でも会議の5日前に届けてください。また、点字版の資料には誤訳(誤読や分かち書きの誤り等)が多いことから、誤訳を起こさないための体制を整備してください。

 障害者政策委員会の資料は常に多くの資料が配布されることから、事前に資料を読みこみ、資料の内容を理解した上で発言内容を準備することが必要です。しかし、視覚情報にアクセスしにくい障害のある当事者は、点字、音声、拡大文字で資料を確認するため、資料の内容を理解するまでに時間を要します。また、音声情報にアクセスしにくい障害のある当事者は、事前に手話通訳者や要約筆記者等に資料を渡す必要があります。委員会には、これらの点を踏まえた資料配布を求めます。
 そして、これまでに配布された点字版の資料は誤訳が多く、視覚情報にアクセスしにくい障害のある当事者にとっては大変読みづらいものとなっています。委員会の事務局が点字版を作成しているものと推察しますが、その結果誤訳を生む要因となっているのではないかと思料します。そのため、外部の点字印刷所に発注する、点訳の専門職員を委員会の事務局に雇用してその者が点字版を作成する等、点字版の資料を確実に作るための体制を整備してください。

2.当日の会議進行について、音声情報または視覚情報にアクセスしにくい障害のある当事者に対する配慮を改めて、委員会全体に求めます。具体的には下記の通りです。

①事務局からの資料読み上げについて、早口での読み上げは避けてください。手話通訳者も要約筆記者も通訳しきれない現状があり、情報アクセシビリティが保障されない状況です。

②省庁側の発言の際、所属と氏名等、基本的な情報を加えて発言してください。きこえない委員は話者の声の変化で話し手が交替したことを理解しているのではありません。手話通訳者・要約筆記者が「誰が話しているか」を伝えられるようにしてください。

③省庁側が発言する際は、委員長の指名後、カメラをオンにしてください。

④省庁、あるいは委員に限らず、委員長の指名後に発言をするようにしてください。最近の委員会では、チャットのように発言が流れて進んでいくことが多く、発言者に画面切り替えが追い付かない状況に加えて、音声情報にアクセスできない委員にとっては、その情報を十分に理解できない状況が生まれていることを理解してください。

 委員会の内容を理解する高度な知識や技術を持つ手話通訳者や要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助者の確保は容易ではありません。
 また仮に確保ができたとしても、適切な会議運営が行われなければ、高度な技術を持つ通訳者であっても十分な情報保障は行えません。
 上記はきこえない・きこえにくい参加者がいる際の、最低限の会議運営上のルールであると考えます。改めてこれらの情報ないし意見を委員会の参加者全員に共有してください。

3.上記に加え、政策委員会の開催について、ハイブリッド(一部対面)を含めた会議方法への変更を求めます。

 従来、委員会は対面で開催されており、進行上の配慮が行いやすい環境がありました。新型コロナウィルス感染拡大により、会議がオンラインとなり、はや2年以上が経過しています。政府は「ウィズコロナ」を掲げているにもかかわらず、会議進行上の配慮の必要な委員や集合を希望する委員の会場集合は、本委員会では認められていません。
 一方、他省庁の会議においては、会場での会議参加が認められる場合があり、本委員会が感染防止対策を行いながら「集合型」で行えないという、合理的な理由を見出せません。
 「オンラインの完全廃止」ではなく、少なくとも「会場集合を希望する参加者が会議場での参加」を可能とする会議運営方法にしてください。

 私たちは障害当事者として、本委員会において十分な理解と情報を持って審議し、施策に命を吹き込む責務を負っています。障害者差別解消法や障害者権利条約についての議論を行っている本委員会において、障害のある当事者委員への合理的配慮の提供は、他省庁のどの委員会よりも十分に行われるべきと考えます。会議に参加しても議論に参画できないような形での会議運営では、十分に委員としての責務が果たせません。
 どのような障害を持っていても、会議に十分に参加できる体制と運営を委員会と事務局に改めて望みます。

以  上