佐賀・福岡視察報告(2021年8月九州豪雨被害)について
日時 12月23日(木)~25日(土)
場所 佐賀県武雄市及び福岡県久留米市
視察者 聴覚障害者災害救援中央本部 事務局長 倉野直紀、委員 森川まなみ
2021年8月に大雨による特別大雨警報が発令され、きこえない人や手話関係者が被災した佐賀県、福岡県を中央共同募金会の助成を受けて現地を視察しました。
被災者に災害や避難の情報がいつ、どんな方法で伝わったのか、それを受けてどう動いたか、あるいは伝わらなかったのか。支援者や支援体制は、行政や消防署、聴覚障害者情報提供施設等と連携はあったのか等を中心に聞き取り調査を行いました。
今回の調査にはNHKの同行取材もありましたが、放送日などは未定です。
1.佐賀県武雄市
武雄市役所(福祉課・防災課)と被災者(4名)、支援者(約20名)、佐賀県聴覚障害者サポートセンターにヒアリングを行いました。
①武雄市役所
出席者:副市長 北川政次氏 、 福祉部長・福祉事務所長 松尾徹氏
福祉課長 黒尾聖洋氏 、福祉課長代理 松尾伊都子氏
福祉課障がい福祉係主幹 宮﨑恭洋氏 、
総務部 防災減災課災害に強いまちづくり係長 松尾博文氏
行政としては2年前の経験を生かして情報発信に努めていましたが、ろう者には伝わらなかったケースもあったようです。支援者が防災アプリ『たけぼう』を知らず、情報の発信手と受け取り手がなかなかつながらないという課題があります。また、平常時の要援護者名簿作成や防災行事でも、手話通訳者の配置が課題となります。
武雄市役所との懇談
②被災者
ろうの自営業の方で浸水した工房にお伺いしました。3日間水が引かず、防災情報を知る方法はテレビのテロップだけで、市の防災アプリ『たけぼう』は今年の水害後にインストールしたとのことです。
復旧作業は、たくさん知り合い(ろう者、手話サークル)がお願いしていないのに自発的にきてくれて感謝しているとの話しでした。
罹災証明や災害見舞金などの手続きは大変、文が苦手なので、手話通訳者に手話を読み取ってもらって、福祉課側で文にしてもらったとのことです。
武雄市被災者工房でのヒアリング
被災者への見舞金贈呈
③支援者ヒアリング
出席者:支援者約20名
今年の雨で支援を行った西部聴覚障害者協会(武雄市を含む広域組織)のみなさんと手話サークル関係のみなさんに集まってもらい意見交換をしました。
西部聴覚障害者協会のグループLINEを活用して「被災者が大変らしい」「支援しよう」と会員同士のつながりで支援活動が行われました。また、鹿島手話サークルの会長が、手話サークル会員に呼びかけ、被災者の職場復旧支援活動をしました。今回の視察で、手話関係者にも3人の被災者がいたことがわかりました。
武雄市 被災者支援ヒアリングの様子
④佐賀県聴覚障害者サポートセンター(聴覚障害者提供施設)
出席者:佐賀県聴覚障害者サポートセンター長 伊藤康博氏
センター 手話通訳士・社会福祉士・相談支援専門員 香田佳子氏
センター参事 佐賀県聴覚障害者協会理事長 中村稔氏
災害時支援体制の構築に取り組み、独自の安否確認システムを運用していると報告がありました。また、避難者を受け入れられるよう、センターでは
会議室に畳を敷けるようにし、食料や飲料など備蓄物も整えています。さらに、機関紙で熊本地震や今回の水害等を発信、防災学習会も行い、防災意識を高めるよう取り組んでいるとのことでした。
佐賀県聴覚障害者
サポートセンター会議室
←避難者を受け入れられる
畳や備蓄機材
2.福岡県久留米市
久留米市(障害福祉課、防災対策課)と被災者(1名)、福岡県聴覚障害者センターにヒアリングを行いました。
①久留米市役所
出席者 健康福祉部障害者福祉課長補佐 下津浦丈弥氏
健康福祉部地域福祉課地域福祉チーム事務主査 中河原葉一氏
総務部防災対策課防災チーム主査 湯口秀隆氏
久留米市は久留米市ろうあ協会と年に1回意見交換を行っていて、これまでに防災メールや安否確認FAXなどを市ろうあ協会からの意見を元に整備し、今は、よりピンポイントで情報を送れる「エリアメール」を活用したいとの要望を受けて実現に向けて進めているとのことでした。
久留米市役所
②福岡県聴覚障害センター(情報提供施設)
出席者 福岡県聴覚障害者センター施設長 太田陽介氏
身体障害者福祉法での聴覚障害者情報提供施設の事業に「災害時の支援」が含まれていないので、福岡県聴覚障害者協会として動くしかなく、法改正が課題とのことでした。九州ブロックとしての体制や色々な事例についてもききました。
被災者への見舞金贈呈
福岡県聴覚障害センターでのヒアリング
③被災者
久留米市での被災者は4人いますが、今回面談できたのは1名だけでした。被災者の自宅にお伺いし、お話しをききました。2年前は床上浸水、2021年は床下浸水の被害を受けたので、引っ越しも考えたいとのことでした。避難指示はテレビ、メールを見て把握し、水が来ていることは外を何回も見に行って確認したそうです。コロナ感染へのおそれ、ペット、避難所でのコミュニケーション問題等の理由で、避難はしなかったそうです。罹災証明の手続きや説明は手話通訳が必要でした。
被災者へのヒアリング
聴覚障害者災害救援中央本部では、今回の視察で得られた知見や課題を整理し、今後の災害救援活動につなげていきます。