総務省へ「地上放送における手話言語通訳付与に関する要望」を提出しました



 2021年8月24日、総務省へ地上放送のさらなるバリアフリー化、手話言語による情報アクセスの推進を求める要望書を提出しました。

オンライン会議の様子

オンライン会議の様子

連本第210330号
2021年8月24日

総務大臣
 武田 良太  様

東京都新宿区山吹町130SKビル8階
電話03−3268−8847・Fax03−3267−3445
一般財団法人法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

地上放送における手話言語通訳付与に関する要望

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい者の福祉向上にご理解を賜り、厚く御礼申し上げます。
 2021年7月23日の東京2020オリンピックの開会式や、8月15日の大雨特別警報の緊急会見には、オリンピック組織委員会や気象庁で一部・または全編に手話言語通訳を配置していたにもかかわらず、多くの地上放送では、手話言語通訳が映されることはありせんでした。
 国連が定めたSDGsの「誰ひとり取り残さない」という理念、障害者権利条約及び障害者差別解消法の主旨に基づき、きこえない・きこえにくい人が自ら選択する意思疎通手段により情報を受ける権利やテレビ番組等の文化的な活動を享受する機会を保障するために、下記を強く要望します。

1.地上放送における手話言語通訳の付与を義務化してください。
 地上放送における手話言語の付与は、2018年貴省より公表された「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」において「2027年度までに平均15分/週以上に手話付与」とする目標が示されています。
 しかし、現在の手話付与の目標値は字幕放送と比較すると著しく低く、手話を第一言語とするきこえない・きこえにくい人が自ら選択する意思疎通手段を制限され、必要な情報を受け取ることができないと言わざるをえません。

 一方で、東京2020オリンピックの閉会式では、NHK・Eテレにおいて「ろう者のキャスターによる手話解説」が放映されていましたが、NHK総合の放送では一部のみにワイプによる手話言語が付与され、全編への手話言語の付与はされませんでした。
 ワイプではなく大きく映される手話言語通訳に対し、好意的でない視聴者の意見は一定数存在しますが、国連の定めた「誰ひとり取り残さない」という理念に鑑み、「誰もが平等に、リアルタイムで、各人の望む形で情報が受け取れる」という「放送のあるべき姿」を作り上げていくための環境整備こそ、国が積極的に関与していくべきことであり、「平等であること」の意識醸成が重要であると考えます。
 上記の指針の目標値等の見直しが2022年度に実施されていると伺っております。この見直しをきっかけに、きこえない・きこえにくい人も自ら選択する意思疎通手段により情報を受けとれるよう、手話言語通訳付与の義務化を盛り込むべく、貴省と当連盟との協議の場を定期的に設けていただくことを要望するとともに、地上放送における手話言語通訳の付与を義務付けるための方策を検討してください。

2.放送におけるアクセシビリティの改善や手話言語通訳の付与を促進するための国としての方策として、助成事業の新設・活用を推進してください。
 放送分野においてキー局については字幕の付与は大きく前進していますが、地方局のオリジナル番組への字幕付与やキー局であっても手話言語通訳の付与は低調であり、引き続き「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」等で、国としても目標を掲げていく必要があります。
 これまでも貴省において字幕・解説番組等制作費の一部助成が行われていますが、この助成予算額が年間4~5億円ほど、製作費の2分の1~6分の1の上限となっているほか、字幕・解説音声及び手話を付与するための追加的な経費をスポンサー等が負担していないことが条件となっている等、その条件が厳しく、申請についても在京キー5局が多くを占めている状況です。
 放送アクセシビリティの環境を整備し、地域格差をなくしていくためにも、より多くの放送局がこれらの助成金を活用できるよう、助成事業の強化(助成額の増加、助成比率の見直し等)を検討してください。

以上