視覚・聴覚に障害のある当事者団体4団体で要望書を提出
①河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣宛に「視聴覚障害者が新型コロナウイルスワクチン接種を円滑に受けられるための支援に関する要望」を提出
視覚・聴覚に障害のある当事者団体4団体(全日本ろうあ連盟、日本視覚障害者団体連合、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会)が連名にて、河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣宛に「視聴覚障害者が新型コロナウイルスワクチン接種を円滑に受けられるための支援に関する要望」を提出するとともに、2021年9月2日には河野大臣とオンラインで面談し、それぞれの団体から直接要望を伝えました。
連盟からは石野理事長・石橋副理事長・久松事務局長・倉野本部事務所長が出席し、ワクチン接種会場での情報保障の在り方の地域格差や手話通訳者の優先接種についても地域によっての差が大きいため、改めて通知を出してほしいことを要望しました。
河野大臣からは、現状を踏まえたうえで、自治体に積極的な対応を依頼するとともに、自治体に対し、優先枠を含め障害のある人がスムーズに予約できるための配慮を厚労省とともに考えたいとのコメントがありました。
河野大臣とのオンライン面談(2021年9月2日実施)
②田村憲久厚生労働大臣宛に「視聴覚障害者が新型コロナウイルスワクチン接種を円滑に受けられるための支援に関する要望」を提出
2021年8月30日に厚生労働省担当局と4団体(全日本ろうあ連盟、日本視覚障害者団体連合、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会)とでオンラインによる意見交換を行いました。連盟からは石橋副理事長・久松事務局長が出席しました。
厚生労働省からは今回の意見交換を踏まえ、全国自治体へ再度の文書通達を検討したいとコメントがありました。
視覚・聴覚に障害がある人たちにとって、ワクチン接種に関しては、円滑に接種できる環境が整っていない状況が、全国的にまだまだ散見されています。
この要望を通じ、ワクチン接種に関する地域格差の解消が図られるよう、引き続き取り組んでいきます。
令和3年8月30日
厚生労働大臣 田村憲久 殿
新型コロナワクチン接種推進担当大臣 河野太郎 殿
情報コミュニケーション4団体連絡会
(各団体 公印省略)
一般財団法人 全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎
一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 新谷友良
社会福祉法人 全国盲ろう者協会
理事長 真砂 靖
社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合
会長 竹下義樹
視聴覚障害者が新型コロナウイルスワクチン接種を
円滑に受けられるための支援に関する要望
平素は、視覚・聴覚に障害がある人たちに対しまして、ご支援をいただき大変感謝しております。
また、新型コロナウイルス感染の早期収束のため、円滑なワクチン接種に向けてご尽力いただいていることにも敬意を表します。
さて、全国的にワクチン接種を受けられる環境も整備されてきており、本年3月3日に厚生労働省より、各都道府県に対して障害特性に応じた合理的配慮の提供に関する事務連絡も発出されたことで、視覚・聴覚に障害がある人たちも、感染予防に向けて、適切に接種を受けられる環境が整いつつあります。
しかしながら、視覚・聴覚に障害がある人たちにとって、ワクチン接種に関しては、円滑に接種できる環境が整っていない状況が、全国的にまだまだ散見されます。
希望している視覚・聴覚に障害のある人たちも、感染収束のためのワクチン接種が円滑に受けられるよう、個々のニーズに応じた手段での情報提供と、接種会場での支援体制を整備することについて、以下を要望します。
1.接種前日までの支援について(案内通知、申し込み等)
(1)視覚・聴覚に障害がある人への接種券送付や通知等の情報提供に関しては、個々にあった手段による丁寧な情報提供を要望します。
接種券を送付する場合、封筒に点字や拡大文字等で発信元や送付内容の記載があることで、視覚に障害がある人が接種券が届いたことに気付くことができます。さらに、送付書類を点字や拡大文字等により記載することで、詳細に内容が確認できます。
また、通知が届いたことに気付けない、書類内容が確認できない視覚に障害がある人には、市区町村職員や民生委員等から電話やメールで知らせる等、丁寧な情報提供が必要です。さらに、同行援護・居宅介護等の従事者、代筆・代読支援や通訳・介助等の意思疎通支援者、これら事業所と自治体、あるいは地域の障害当事者団体との連携により、個々に応じた方法で確実に情報を伝えることができます。
(2)視覚・聴覚に障害のある人が、接種予約を、個々のニーズに応じた方法で円滑に行えるよう配慮することを要望します。
視覚・聴覚に障害のある人が、インターネットやLINEを利用して接種予約をすることは、まだまだ難しい状況にあります。そのため、視覚・聴覚に障害のある人が確実に接種予約をできるよう、電話受付の開設や代行予約等、市区町村職員や民生委員等の支援が必要です。加えて、同行援護や居宅介護等の従事者、遠隔手話通訳や要約筆記、代筆・代読支援、通訳・介助等の意思疎通支援者、これらの事業所を仲介して自治体と連携することにより、個々のニーズに応じた方法で接種予約を確実に行うことが可能となります。
また、視覚・聴覚に障害のある人が接種予約を完了した場合、確実に受理されたことが確認できるよう、FAXや音声等、申込者が確認できる方法で情報提供が行われるよう配慮をする必要があります。
(3)意思疎通支援者の優先接種について、訪問系サービス事業所等の範囲に限らない弾力的な優先接種が行えるよう、本年3月3日に厚生労働省より発出された事務連絡の見直しを要望します。
厚生労働省より通達された事務連絡では、意思疎通支援事業・専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業についても優先接種の対象として明記されていますが、あくまでも「訪問系サービス事業者等の従事者への接種」として扱われており、意思疎通支援事業単独での優先接種については地域格差が大きくなっています。
事務連絡を見直していただくことで、接種会場や医療機関等に出向き対面通訳を行う可能性のある意思疎通支援者への優先接種について、ワクチン接種の見込みがある程度整ってきた今だからこそ、柔軟に対応できるようになります。
2.接種当日の支援について(会場内での支援等)
(1)接種会場内で視覚・聴覚に障害がある人が安心して接種を受けられるよう、支援体制を整備することを要望します。
単独で訪れた聴覚に障害がある人が円滑に接種できるよう、「耳マーク」を設置した上での筆談やコミュニケーションボードの設置、遠隔での手話通訳や要約筆記環境の整備等、個々のニーズに応じた意思疎通環境を整備することが必要です。
また、会場内で広く案内される内容については、モニターやホワイトボード等による文字や画像での音情報への配慮、音声案内による文字や画像情報への配慮を行うことで、視覚・聴覚に障害がある人も同じ情報を共有することができます。
さらに移動に困難がある人に対して、会場内に支援者を配置し、適切な誘導を行うことにより、安心して会場内を移動することができます。
(2)接種会場や医療機関で本人が安心して接種を受けられるよう、家族や支援者が本人に付き添って行動できる配慮を要望します。
接種会場や医療機関での接種の際は、ガイドヘルパー、手話通訳者、要約筆記者、通訳・介助員や家族が付き添えるようにすることで、本人が接種担当者と円滑な意思疎通を計り、安心して移動することができます。
(3)上記(1)(2)の支援体制が整備されていることを、自治体と地域の障害当事者団体とが連携し、丁寧な周知を行うことを要望します。