自民党 ユニバーサル社会推進議員連盟 開催



 「自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟」が2021年2月22日(月)に衆議院第一議員会館多目的ホールで開催され、各省庁からの障害者政策への取り組み報告及び内閣府から障害者差別解消法改正の説明がありました。
 その後、各障害者団体からの要望に入り、連盟からは本部事務所長の倉野、理事の唯藤が、限られた時間の中で「手話言語法」と「障害者情報 アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定と新型コロナウィルス感染症のワクチン接種における配慮や情報保障体制の整備について強く求めましました。(要望省は下記参照)
 他の障害者団体や国会議員からは、新型コロナウィルス感染症のワクチン接種に関して優先接種の要望や、創設されるデジタル庁には省庁を跨いだ横断的な問題にも対応して欲しいといった意見が出されていました。

連本第200549号
2021年2月22日

自由民主党
ユニバーサル社会推進議員連盟
 会 長 石破 茂 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

要 望 書

 日頃より、私どもきこえない・きこえにくい人の福祉向上に、ご理解ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。きこえない・きこえにくい人をとりまく環境をバリアフリーにしていただきたく、下記の通り要望いたします。

1.新型コロナウイルスのワクチン接種体制における情報保障や情報提供及び相談支援体制を整備してください

(1) ワクチン接種の際、きこえない・きこえにくい人への情報保障をしてください。
 2月下旬から全国の医療機関や市区町村会場で開始されるワクチン接種の際に、きこえない・きこえにくい人が安心して接種を受けられる、医療従事者からの説明時や医師の問診時(既往症、現在治療中の病気、服用している薬などの説明)には情報保障が必要です。
 医療機関や会場では筆談に加えて、必ず手話言語通訳者の配置やタブレット等での遠隔手話サービスが利用できるよう、予防接種実施マニュアルに「情報保障」について記載し、その経費は国費で賄うよう対策を講じてください。

(2) 新型コロナウイルスワクチンについて手話言語による情報提供と相談支援体制を整備してください。
 新型コロナワクチン接種にあたり、かかりつけの医療機関で接種を受ける「個別予防接種」や市区町村が指定した場所で受ける「集団予防接種」といった場所の選択、接種開始時期や副反応、費用負担等、きこえない・きこえにくい本人がワクチン接種のメリット・デメリットを含めた情報を自分の言語である「手話言語」で、きちんと理解することが重要です。
 接種の情報を整理し理解できるよう、全国各地の聴覚障害者情報提供施設や当事者団体と相談連携し、きこえない・きこえにくい人への情報提供(手話言語動画の作成等)や支援体制を整備し、その経費は国費で賄うよう対策を講じてください。

2.「手話言語法」及び「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」を制定してください

(1) 「手話言語法」を早急に制定してください。
 ニュージーランドやフィリピン等の諸外国では手話を「言語」として規定し、ろう者が手話言語を獲得することをはじめ、手話言語による情報獲得や教育、ろう児を持つ親への支援等が進んでいます。
 わが国でも、地方議会・地方自治体による手話言語法制定推進の後押しを受け、2016年3月3日には1,741全地方議会で『手話言語法制定を求める意見書』が採択された他、「手話言語条例」を制定する自治体は年々その数を増しています。(現在、374自治体:29都道府県・14区/273市/56町/2村)
 また、行政首長による「手話言語市区長会」「全国手話を広める知事の会」の設立や地方議員による手話言語普及推進議員連盟の設立等、全国で手話言語を言語として認める動きは拡大しています。
 しかしながら、国策として手話言語政策がないため様々なところで課題が生じています。例えばオリンピック・パラリンピックや国際競技大会で歌う「国歌の手話表現」は現在でも決まっていないため、連盟からスポーツ庁に要望し『国歌手話試行版』の制作を行っているところです。
 きこえない・きこえにくい人が手話言語を用いて、きこえる人と同等に社会参加をしていくためにも、手話を「言語」として規定し、手話言語を獲得し手話で学び、生活できるようにするための環境整備と、手話言語を日本語やアイヌ語と同様に研究・普及・保存していくことを可能にする「手話言語法」の制定を早急に進めてください。

(2) 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」を早急に制定してください。
 2019年に超党派による「障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟」により、2019年には「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)が成立しました。
 しかしながら、「話すこと・聞くこと・見ること・書くこと・読むこと・認知すること」に困難がある人達は、情報へのアクセスやコミュニケーションに多くの制限があり不自由な生活を強いられています。
 あらゆる場面において、個々人に適した「情報アクセスとコミュニケーション手段」が選択でき、またそれをを保障するための法律「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定を早急に進めてください。

3.電話リレーサービスを公共インフラとして整備また社会への啓発を促進してください

(1) 電話リレーサービスを公共インフラとしてきこえない・きこえにくい人のみが負担をすることなく、きこえる人と平等な負担で使えるようにしてください。
 電話リレーサービスは、きこえない・きこえにくい人ときこえる人双方が手話言語や文字でつながることができる仕組みで、30年前から世界各国で公的インフラとして導入されていましたが、G7主要国では日本だけが未導入でした。
 2020年6月に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が国会にて成立したことにより、日本でも今夏から総務省管轄により電話リレーサービスが始まろうとしています。きこえる人と同じように、電話をいつでもすぐにかけたり受けることができるようになり、あらゆる場面で「電話」ができることで、日常生活が豊かになったり職域も広がります。その電話リレーサービスを公的インフラまたユニバーサルサービスの観点で、きこえない・きこえにくい人のみが過重な負担をすること無く、きこえる人と平等な負担のもとに使えるようにしてください。

(2) 電話リレーサービス啓発普及事業を実施してください。
 電話リレーサービスを公的インフラとして定着させるためには、社会そしてきこえない・きこえにくい人の周知・啓発が重要となります。総務省の先進的な取り組み『デジタル活用支援員推進事業』を好事例にし、電話リレーサービス啓発普及事業(電話リレーサービス活用支援員)を創設し、各都道府県の聴覚障害者情報提供施設および聴覚障害当事者団体による、きこえない・きこえにくい人への周知啓発を行ってください。

4.災害時における、きこえない・きこえにくい人の命を守るため、情報保障体制を推進してください

(1) 緊急災害放送や緊急記者会見の放送時また配信時には、手話通訳及び字幕の付与、手話通訳ワイプをつけるよう、放送局への義務化を図ってください。
 2021年2月13日23時08分頃に発生した福島県沖の地震を受けて、2月14日午前1時10分より、気象庁及び内閣官房長官の緊急会見が行われ、いずれにも
記者会見には手話通訳が付与されましたが、中継放送の際には各局によっては残念ながら手話通訳者は映し出されていませんでした。
 きこえない・きこえにくい人が命を守るためには、緊急災害放送や緊急記者会見を観る際に、手話言語、字幕等で災害に関する情報を迅速かつ正確に受け取れるようにしなければなりません。
 緊急災害放送や緊急記者会見の放送時また配信時には、手話通訳及び字幕の付与、手話通訳ワイプをつけるよう、放送局へ義務付けるようにしてください。

(2) 公共施設や避難所等に、「公衆手話言語電話」や「アイ・ドラゴン4」の設置を促進してください。
 きこえない・きこえにくい人の災害等緊急時における通信手段の確保のため、公共施設や福祉避難所への「公衆手話言語電話」を推進してください。
 また、災害時におけるきこえない・きこえにくい人への情報提供の向上のため、避難所等へ『手話と字幕の放送 「目で聴くテレビ」』を受信できるアイ・ドラゴン4の設置を推進してください。

5.公共交通機関の移動等円滑化について

 現在、国土交通省を中心として公共交通機関の移動等円滑化のガイドライン整備が進められおり、当連盟からも関連する委員会を通じ、要望を伝えています。ここに再掲させていただくと共に要望いたします。

(1) 緊急車両について
 緊急車両のサイレンや呼びかけがきこえないので、回転灯の工夫やデジタルサイネージの装備をする等、音ではなく見て分かるようにしてください。
 また、他の車両に隠れて緊急車両が見えず、きこえない歩行者と横断歩道でぶつかることが起こらないように信号機を操作し、緊急車両走行の方向の信号を青に切り替えられるようにするなど、きこえない・きこえにくい人の命を守れるよう、環境整備をしてください。

(2) 鉄道について
 駅・車内での音声情報を可視化し災害時にも避難経路や振り替え輸送の情報がわかるようにしてください。
 また、全国どこでも障害者割引料金でスムーズに購入できるように、事前にICカード等の登録情報で、自動券販売機で購入できるようにしてください。

(3) 高速道路について
 無人料金所でスムーズに障害者割引で、料金を支払えるよう環境整備をしてください。もし好事例があれば利用者である障害者団体に周知してください。

(4) 飛行機について
 搭乗口の音声案内や機内の音声案内及び機内エンターテイメント(動画、番組等)がきこえない人にもわかるように、字幕等付与などでの情報保障をしてください。

以 上

唯藤理事
説明をする唯藤理事

盛山議員と石破議員
議連の事務局長 盛山議員と会長の石破議員