各省庁へ聴覚障害者の福祉施策に関わる要望書を提出



 例年7月に、要望書を持参し省庁との意見交換を行ってきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、今年度はすべて要望書を送付いたしました。

要望書一覧:

  1. 衆議院:ろう者等の情報保障について(要望)
  2. 内閣官房:ろう者等に係る施策への要望について
  3. 人事院:公務部門におけるろう者等の採用および労働環境の整備への要望について
  4. 内閣府:「『国歌』の手話言語」の策定について(要望)
  5. 内閣府:ろう者等の福祉施策等への要望について
  6. 警察庁:ろう者等に係る福祉施策への要望について
  7. 金融庁:ろう者等に係る施策への要望について
  8. 消費者庁:ろう者等に係る施策への要望について
  9. 総務省:ろう者等に係る施策への要望について
  10. 消防庁:ろう者等に係る施策への要望について
  11. 外務省:国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について
  12. 文部科学省:ろう教育等に関する要望について
  13. スポーツ庁:ろう者等のスポーツ施策への要望について
  14. 文化庁:ろう者等の文化振興施策への要望について
  15. 厚生労働省:ろう者等の雇用・福祉施策への要望について
  16. 経済産業省:ろう者等に係る施策への要望について
  17. 国土交通省:ろう者等に係る施策への要望について
  18. デフリンピック支援WT:「『国歌』の手話言語」の策定について(要望)

連本第200146号
2020年7月20日

衆議院 
議長 大島 理森 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等の情報保障について(要望)

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.衆議院本会議や各種委員会に手話通訳を付与できるよう早急に対応してください。
<説明>
 2018年より、首相の所信表明演説など一部に字幕付き放送の実現で、初めて国会中継の様子を生で知ることができました。しかし、字幕がついたのは国会中継の一部であり、全てをきこえる人と等しいタイミングで国会審議の情報を得ることができません。
 参議院においては、本会議や委員会のインターネット配信において手話通訳付与することが決定しました。
 今後、衆議院においても、手話通訳付きで審議の内容も知ることができるよう、早急な対応をしてください。

以 上

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 連本第200147号
2020年7月20日

内閣総理大臣
 安倍 晋三 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.首相官邸の記者会見等における手話通訳については、テレビ放映でも手話通訳者が映るように見直してください。

<説明>
 2011年3月11日の東日本大震災の発生後、首相官邸の記者会見には手話通訳が付くようになり、長年、手話言語による情報保障を求めてきた我々にとっては大きな前進でした。また、今般の新型コロナウイルス感染症関連の記者会見においては、多くのテレビ局がライブ放送で手話通訳者も入れて放送されており、リアルタイムに情報を得ることができました。私たちろう者にとって、手話通訳の有無により、入手できる情報量に大きな差が生じます。
 手話通訳者が話者のすぐ隣に立ち、話者と手話通訳者をひとつのカメラで撮影しそのまま放送する方法や、ソーシャルディスタンスを保つことが必要な場合などには、別カメラで収録した手話通訳者の映像をワイプ処理する方法など、場面によって工夫をしながらも、引き続きテレビ放送において手話通訳者が映るようにして、きこえる人とろう者との情報格差が出ないよう、見直しをしてください。
 なお、この要望事項については総務省にも提出をしています。

2.新型コロナウイルス感染症で休業していた各種事業者の、事業活動再開に向けた「業種別ガイドライン」の公開について、ろう者も含めた全ての人が、知りたい情報にすぐたどり着ける「わかりやすい掲示」を行うよう、都道府県に通知してください。

<説明>
 新型コロナウイルス感染症の影響で休業していた事業者に対し、内閣官房ホームページや各都道府県のホームページにおいて、休業していた事業者への「業種別ガイドライン」が公開されていますが、多くの情報が掲載されているために、知りたい情報にたどり着けないことが多くあります。
 ろう者の中には、日本語の読み書きが苦手な方もおり、複数ページに渡る資料や、細かい文字が羅列されているだけのものでは、その意図が充分に伝わらないことがあります。
 ろう者も含め、すべての人が知りたい情報にすぐたどり着ける「わかりやすい掲示」を行うよう、内閣官房ホームページでもご尽力いただくとともに、都道府県にもその旨を通知してください。

以 上

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 連本第200148号
2020年7月20日

人事院 総裁
 一宮 なほみ 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

公務部門におけるろう者等の採用および労働環境の整備への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者等の採用について、採用後、ろう者等が自らの能力を発揮できるよう職場環境の整備を図るとともに、定着支援制度の構築やキャリアアップを目指せるような環境改善を図るよう各省庁に周知徹底してください。

<説明>
 採用だけではなく、採用時には長期の職場定着ができるよう厚生労働省のアドバイザーとも連携し各省庁に周知徹底してください。
 昨年も同様の要望をしましたが、具体的な対応や状況をご教示ください。

2.国の行政機関における障害者採用状況と定着率を教えてください。民間企業の模範となるべくろう者等の採用条件や職場環境の改善を図ってください。

<説明>
 国の公部門における障害者雇用率の未達成が発覚して以降、積極的な障害者雇用に感謝申し上げます。国の行政機関における障害者別(聴覚障害がわかるよう身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。
 また、その中でろう者等の職場環境整備において情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障をどのように図っているか、ご教示ください。また、その 障害職員への環境整備における配慮や好事例などあればご教示ください。 

以 上

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連本第200149号
2020年7月20日

内閣総理大臣
 安倍 晋三 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長 石野 富志三郎

「『国歌』の手話言語」の策定について(要望)

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解とご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 当連盟は、2025年夏季デフリンピックの日本招致に向けた取り組みを行っています。
 2017年にトルコで行われましたデフリンピック バレーボール競技において、日本女子チームが金メダルを獲得した際、選手たちが日本国歌を手話言語で斉唱した様子が動画で全世界に流れ、大きな話題となりました。日本では、正式な「『国歌』の手話言語」がまだ定められておらず、国内で国歌を斉唱するような行事の度に、主催団体ごとで国歌の手話言語表現を検討しているため、統一性がない状況です。
 来夏開催される東京オリンピック・パラリンピックを契機に、広く世界に発信するとともに、将来のデフリンピック日本開催のためにも、「『国歌』の手話言語化」について、下記の通り要望いたします。

1.ろう者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。ぜひ、内閣府でこの取り組みを牽引していただき、関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
(参考:別添要望書(内閣府・文部科学省・スポーツ庁・文化庁・厚生労働省・総務省)

以 上

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連本第200150号
2020年7月20日

内閣総理大臣
 安倍 晋三  様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等の福祉施策等への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まりつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.「手話言語法」を早急に制定するよう、また「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」を早期に制定するよう進めてください。

<説明>
 全日本ろうあ連盟では2010年より「手話言語法」、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の早期制定を求めて取り組みを進めています。改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知され、同法を中心に関連施策が進められている点は承知しています。しかし、ろう者の手話言語獲得や手話言語を使えるための環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報アクセス・コミュニケーションを保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策を行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。
 特にろう児への手話言語獲得の保障は急務であり、ろう乳幼児の手話言語獲得支援が盛り込まれた手話言語法の制定は早急に進めるべきだと考えます。
 併せて、ろう者等をはじめ広く障害者を対象とした「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定を進めてください。また、昨年から現在までの進捗についてご教示ください。

2.ろう者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
(参考:別添要望書(内閣府・文部科学省・スポーツ庁・文化庁・厚生労働省・総務省)

以 上

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連本第200151号
2020年7月20日

警察庁 長官
 松本 光弘 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.緊急自動車の警光灯に緊急走行か、それ以外の走行か、がろう者等にもわかるような表示を義務付けてください。

<説明>
 昨年も同様の要望をしましたが、パトカーや消防自動車、救急車等の緊急自動車は、警光灯の点灯・回転が緊急時も緊急時以外でも同じである場合があり、ろう者等の場合はサイレンの音が聞こえず、緊急走行か、そうでないかを判断することが困難です。
 ろう者等も、緊急自動車が緊急走行をしているかどうかを判断できるような警光灯の表示もしくはそれに代わる視覚的な表示を義務付けてください。
 海外の事例も参考に、どのような検討がすすんでいるのか進捗をお聞かせください。

2.都道府県の警察本部にろう者等への理解を深めるための研修を行うように働きかけてください。

<説明>
 事件や事故現場など緊急時の対応では、福祉行政や警察、消防、医療など、垣根を超えた協働作業が求められます。
 そのためには、常日頃より現場で働く警察官のみならず、県警通信司令室等の警察本部職員が、聴覚障害の特性や障害の理解、手話言語の実技などを研修ができる場(手話学習・手話講座)の確保及び都道府県警察本部で予算化できるよう、働きかけをしてください。

以 上

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連本第200152号
2020年7月20日

金融庁 長官
 氷見野 良三 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者等の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、金融機関への問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレス掲載の義務化を講じてください。

<説明>
 昨年も同様の要望をしていますが、全ての金融機関の問い合わせ先に電話番号やFAX番号が設置されているわけではありません。ろう者等が問い合わせたい時には、家族や手話通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。
 貴庁の広報誌やパンフレット、ホームページ等は率先してFAX番号もしくはEメールアドレスを掲載することはもちろん、貴庁だけでなく金融機関等に対しても同様の対応をするように周知徹底してください。

2.「本人確認」の方法を改善してください。電話による確認以外の方法を選択できるようにしてください。
 2021年度より電話リレーサービスが公的サービスになりますので、金融機関へその周知をしてください。

<説明>
 「本人確認」の方法を本人からの電話による音声確認のみの金融機関がまだ数多くあります。これは、本人確認を音声で行えない障害者をサービスから締め出すことにもなります。ろう者等の代理による電話やファクス、メール等で、本人確認が可能となるよう貴庁から指導及び周知ください。
 2020年6月に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」が成立、2021度より電話リレーサービスが公的サービスとして開始される予定ですが、この電話リレーサービスでも本人確認が可能となるよう、国として金融機関等へ働きかけてください。

3.現金自動預け払機(ATM)において故障などのトラブルが生じた時、備え付けの電話以外の方法で問い合わせできるようにしてください。

<説明>
 有人店舗が併設されていない現金自動預け払い機(ATM)でトラブルが生じた際、備え付けの電話で問い合わせることになっていますが、ろう者は家族や手話通訳者といった支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。電話に代わる方法として、タッチパネルによる文字送信等を導入するなど情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、関係会社に働きかけてください。
 2019年度進捗および好事例があればご教示ください。

以 上

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連本第200153号
2020年7月20日

消費者庁 長官
 伊藤 明子 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、地域にある消費者センター等の問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレスの設置していただきたく周知徹底をしてください。
 また消費者ホットライン(188番)をはじめ貴省の相談窓口をろう者も利用できるよう、FAX番号やEメールアドレスを設置し広く周知してください。

<説明>
 地域の消費者センターへ相談したいときに、その問い合わせ先にFAX番号が必ずしも設置されているわけではありません。ろう者が問い合わせたい時には、家族や手話通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。
 貴庁から消費者センターをはじめとする所管する事業所の問い合わせ先にFAX番号もしくはEメールアドレスの設置をしてください。
 また消費者ホットラインのポスターをよく見かけますが、電話番号の188番だけでなくFAXやEメールアドレスも目立つように掲載をしてください。

2.「本人確認」の方法を改善してください。電話による確認以外の方法を選択できるようにしてください。
 2021年度より電話リレーサービスが公的サービスになりますので、民間企業等、関係団体への周知をしてください。

<説明>
 「本人確認」の方法を本人からの電話による音声確認のみで対応する機関がまだ数多くあります。改善するように様々な機会を利用し貴庁から指導及び周知ください。
 2021度より公的なサービスとして、手話言語や文字のオペレーターを介し、ろう者も電話ができるようになりますが、このサービスを周知いただき、電話リレーサービスによる本人確認が間違いなくできるようにしてください。

以 上

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 連本第200154号
2020年7月20日

総務大臣
 高市 早苗 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者等の参政権の保障のために、下記の通り要望します。

(1)市町村選挙を含むすべての選挙について、ろう者等の参政権の保障のために手話通訳、字幕・要約筆記等を義務付けてください。また、ろう者等の被選挙権の保障のために手話通訳、要約筆記等の情報保障を義務付けてください。

<説明>
 現在、国政選挙・都道府県知事選挙では政見放送での手話通訳や一部字幕の付与が可能であり、演説会での要約筆記者の配置や報酬の支払いが認められるなど、ろう者等への情報保障は少しずつ改善されてきています。しかし、政見放送ではまだすべてに手話通訳・字幕の付与が実現されておらず、義務付けも行われていません。
 また、市町村長選挙では候補者の演説会などに手話通訳、要約筆記等をつけることについては、市町村の選挙管理委員会における判断がまちまちです。
 ろう者等がすべての選挙に関する情報を得て、その参政権を保障するために、すべての選挙について手話通訳、要約筆記等の付与の義務付けができるよう、公職選挙法の改正について総務省主導で進めてください。
 また、きこえない市議会議員等が、その選挙活動において音声に代わる手段に制限があり、きこえる人と等しく選挙活動ができない状況があります。今後、すべての人の被選挙権が等しく保障されるためにも、ろう者等の選挙活動に際しては、手話通訳や要約筆記等の情報保障を義務付け、手話言語及び文字による選挙活動を認めてください。

(2)手話通訳者及び要約筆記者を公職選挙法の「選挙運動に従事する者」に含めず、独立した条項になるよう改正してください。

<説明>
 公職選挙法により手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」と規定されています。手話通訳者及び要約筆記者は公正・中立を重要な倫理としており、選挙運動員とされることは手話通訳者及び要約筆記者の社会的信用に関わるだけでなく、基本的な人権としての参政権を求める私たちろう者等の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳者及び要約筆記者については「選挙運動に従事する者」に含めず、社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたく、公職選挙法を改正してください。

(3)2017~2019年度、貴省予算で実施しております「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)を2020年度以降も継続して行えますよう、引き続き予算化をしてください。

<説明>
 「政見放送手話通訳士研修会」(地方研修会)は、2019年度参議院議員選挙区選挙における政見放送での手話通訳付与を目指して、2017年度から貴省にて予算化いただき御礼申し上げます。すべての政見放送において手話通訳挿入が実現した後も、政見放送を担える手話通訳士を継続して増やす必要があります。更に政見放送では社会情勢や時事問題等、専門的かつ新しい用語が使われ、手話通訳士も継続して通訳技術を磨く必要があることから、研修の履修更新制を設けております。2020年度以降も地方研修会を継続して行えるよう、予算化をしてください。

2.首相官邸の記者会見等における手話通訳について、テレビ放映でも手話通訳者が映るように見直してください。

<説明>
 2011年3月11日の東日本大震災の発生後、首相官邸の記者会見には手話通訳が付くようになり、長年、手話言語による情報保障を求めてきた我々にとっては大きな前進でした。また、今般の新型コロナウイルス感染症関連の記者会見においては、多くのテレビ局がライブ放送で手話通訳者も入れて放送されており、リアルタイムに情報を得ることができました。
 しかしこれまでの記者会見等のテレビ放送では、話者のクローズアップ映像のみで手話通訳者が映らないという状況が多く見受けられます。
 手話通訳者が話者のすぐ隣に立ち、話者と手話通訳者をひとつのカメラで撮影しそのまま放送する方法や、ソーシャルディスタンスを保つことが必要な場合などには、別カメラで収録した手話通訳者の映像をワイプ処理する方法など、場面によって工夫をしながら、テレビ放送において手話通訳者が常に映るような状況を私たちは望んでいます。放送法の見直し等も含めて検討をしてください。
 なお、この要望事項については内閣府にも提出をしています。

3.操作方法が見てわかりやすいweb会議システムに関して、開発予算を付与し、より一層の課題改善に努めてください。

<説明>
 現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、多人数が集まる会議等が自粛・中止・延期されています。
 そのような状況で、ろう者も、スマートフォンやタブレット、パソコン等で、web会議システムを活用して会議等を行っていますが、高齢のろう者等には、各種アプリやシステムの操作方法や説明書きが理解できず、仕事相手や仲間と繋がることができない方もいます。
 また、ろう者等の中には、日本語の読み書きが苦手な者もおり、web会議システム等の長文の説明書きが読みこなせないことがあります。
 子どもから高齢者まで、 誰もが使いやすいweb会議システムの開発について、積極的な検討を行ってください。

4.ろう者等も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
(参考:別添要望書(内閣府・文部科学省・スポーツ庁・文化庁・厚生労働省・総務省)

5.2021年度から開始となる電話リレーサービスについて普及啓発をしてください。

<説明>
 本年6月に電話リレーサービス法案が国会で可決され、2021年度からの制度開始となったことに対し、お礼を申し上げます。この法律はまだ成立したばかりであり、今後、制度の充実と国民への周知啓発が重要となってきます。

①現在もモデルプロジェクトとして電話リレーサービスを利用ができますが、このサービスを知らない相手に電話をした場合に、不審な電話と勘違いされて電話を切られたり、説明に時間を要したりすることがあります。総務省が責任を持って国民への周知啓発を行ってください。

②制度開始後は、きこえる人からの通話も可能になります。職場で電話リレーサービスを利用することは、ろう者等の仕事の幅が広がることにもつながります。電話リレーサービスが、双方向に利用可能であることを、多くの人に理解していただくことが必要です。

③110番や119番などの緊急通報も可能になるため、通報を受ける全国の警察や消防に対して周知をしてください。

④これまで電話を利用したことがないろう者等は、電話の受け答えなどのマナーを身につける機会がありませんでした。単にサービス内容や利用登録などの説明だけでなく、電話の受け答えマナーなども含めた学習会等の開催について、当連盟とも相談しながら進めてください。

以 上

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 連本第200155号
2020年7月20日

消防庁 長官
 林﨑 理 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者を含め、いつでもだれでもどこでも緊急通報をできるNet119緊急通報システムが全国の消防本部で導入されるよう、引き続き働きかけを行ってください。
 また、居住地とは違う場所でNet119通報をした場合、双方の消防本部が契約した会社が異なっていても、迅速な対応ができるよう改善してください。

<説明>
 Net119緊急通報システムの導入状況は、726本部中235本部(2020年1月1日現在)となっており、着実に導入する本部が増えていることに対しお礼申し上げます。しかし、令和2年度中にすべての消防本部が導入という目標にはまだ至っていません。引き続き全国の消防本部で導入が進むよう積極的な働きかけをしてください。
 また、居住地とは違う場所でNet119通報した場合、居住地が所管する消防本部が契約した会社と、通報した場所を所管する消防本部が契約した会社が異なった場合、連絡に時間を要する恐れがあるという話があります。契約する会社が違っていても、一元的に迅速に対応できるよう、改善してください。

2.緊急自動車の警光灯に緊急走行か、それ以外の走行かが、ろう者等にもわかるような表示を義務付けてください。

<説明>
 パトカーや消防自動車、救急車等の緊急自動車は、警光灯の点灯・回転が緊急時も緊急時以外でも同じである場合があり、ろう者等の場合はサイレンの音がきこえないため、緊急走行か、そうでないかを判断することができません。
 ろう者等も、緊急自動車が緊急走行をしているかどうかを判断できるような警光灯の表示もしくはそれに代わる視覚的な表示(信号機などの点滅の工夫等)を義務付けてください。
 昨年も同様の要望しましたが、検討の進捗をお聞かせください。

以 上

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連本第200156号
2020年7月20日

外務大臣 
 茂木 敏充 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

国連やアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連への会議参加及び
在外大使館・領事館、観光客における情報アクセシビリティの実現について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.国連やESCAPの関連会議における情報保障にかかる費用が障害当事者の負担とならないよう、国連やESCAPに日本政府から強く申し入れると共に、情報保障にかかる費用の助成を検討してください。

<説明>
 現在、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が開催する、2013-2022年アジア太平洋障害者十年に関するワーキングループ会合(以降、WGとする)に、当連盟からも、ろう者である世界ろう連盟アジア地域事務局副事務局長を派遣しております。
 我々ろう者が国際会議に参加し発言するためには、日英の音声言語通訳者に加えて、日本語の音声から日本の手話言語への手話通訳者、また盲ろう者の場合は触手話通訳者による情報保障が、他の障害者もそれぞれの介護者が必要であり、自分だけでなく通訳者及び介護者の渡航・宿泊・謝礼も必要になります。これらの情報保障にかかる費用はESCAP及び開催国政府の全額負担となっていましたが、2016年以降は予算不足を理由に自己負担を強いられており、我々、障害当事者が会議に容易に参加できない状況となっています。
 一方で、2019年のWGにおいては、ESCAPより国際手話通訳者が2名用意されたおかげで、日本人の障害当事者である、ろう者が副議長を務めることができました。
 障害当事者が会議に参加するためには情報保障が必須です。日本政府の姿勢として引き続き、ESCAPに情報保障の必要性を働きかけるともに、ESCAPへ情報保障における資金提供の協力をしてください。

2.国際機関にオンラインによる会議に情報保障をつけるよう働きかけてください。

<説明>
 新型コロナウイルス感染症の流行により、国連、ESCAP、WHO、UNESCO等の国際機関において、オンラインによる国際会議が増えてきています。しかしながら、音声のみで行う会議へろう者は参加することができません。そのため、オンライン会議においても情報保障(国際手話)を徹底することを、日本政府としても積極的に働きかけてください。

3.貴省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針」に基づき、貴省管轄の在外公館及び国内の部署においても、障害者がアクセスしやすい環境整備、改善を図ってください。

<説明>
 貴省が公開している「障害者差別解消法に基づく対応指針」が、在外公館にも周知、適用されるようにしてください。
 例えば、在外公館の建物へ入る時にインターホンのみやマジックミラー越しに人物を確認する場合がありますが、聴覚に障害がある我々は音声でやり取りすることが困難です。聴覚に障害がある日本国民が、旅行中にパスポートを紛失する等、緊急の事態に遭ったときに、現地の在外公館における円滑な情報アクセシビリティが実現されるように改善と配慮を要望します。
 当連盟は、国内においてろう者等に対するコミュニケーション手段を一目でわかりやすくするため、「手話マーク」・「筆談マーク」を策定しました。
 経済産業省・総務省等をはじめ、各省庁・行政等の窓口で、この「手話マーク」・「筆談マーク」が設置されるところが増えています。
 ぜひ、貴庁の在外公館および国内の部署におきましても、情報保障に対応した体制を構築したうえで、それぞれの入口及びホームページに「手話マーク」・「筆談マーク」を表示してください。

4.訪日する聴覚に障害をもつ外国人に対する情報保障を含めた支援の在り方について検討してください。

<説明>
 観光立国の実現に向けた政府の各種取組等を受け、また東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、我が国を訪れる外国人数は急速に増加を続けており、我が国の言語や制度に不慣れな外国人が何らかのトラブルに巻き込まれるケースや、事件・事故の被害に遭うケースの増加が懸念されています。特に外国人のろう者が国内でトラブルにあったときに、その国の手話言語がわからないからと、国内での公的支援や対応が、なおざりになったり、強制送還されたりすることのないようにしてください。
 また、外国人のろう者に対する情報保障の在り方を含めて国内の支援方法について、当連盟と貴省において協議する場を設けてください。

5.国連が推進している障害者権利条約(CRPD)と持続可能な開発目標(SDGs)の内容を日本手話言語で発信してください。

<説明>
 国連の障害者権利条約第9条「施設及びサービス等の利用の容易さ(英文ではAccessibility『アクセシビリティ』)」において、「締約国は、障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること」として、障害者のためのアクセシビリティの確保を締約国に求めています。この障害者権利条約(CRPD)を始め、国連が推進している「持続可能な開発目標(SDGs)」についても、様々なメディアを通して情報発信がされていますが、すべて日本語を通してであり、中には音声だけになっている場合もあります。
 ろう者は音声での情報獲得の困難さに加え文書を読むのを苦手な者もいます。特にSDGsの内容は難解であり、これまでにも平易な日本語で解説しようとする試みがされていますが、日本手話言語を主に使うろう者にとっては依然として難解です。CRPD第9条やSDGsの「誰一人取り残さない」精神に鑑み、SDGsやCRPDの内容の利用が容易になるよう、まずは貴省が発信しているSDGsに関する動画に手話言語をつけてください。

6.国際条約における「Sign Language」の和訳は「手話言語」にしてください。

<説明>
 一例として、国連の障害者権利条約に、「Sign Language」の記載がありますが、貴省ホームページにある和訳ではいずれも「手話」と記載されています。当連盟より2019年12月17日付で貴省に提出した「連本第190644号 障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見及び要望」(添付)にも記載してあるとおり、手話は言語であることを明確にするためにも「Sign Language」を「手話言語」と和訳したうえで、公開してください。

以 上

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連本第200157号
2020年7月20日

文部科学大臣
萩生田 光一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう教育等に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より私どもろう者等の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 我が国は2014年にようやく「障害者権利条約」を批准し、2016年4月より障害者差別解消法が施行され、障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、教育現場では未だ課題が山積している状態です。今年は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、きこえない子どもたち、きこえない保護者、きこえない教職員を取り巻く環境が、平常時にも増して不安定なものとなっています。
 当連盟は「手話言語法」の制定を視野に入れ、子どもたちが教科として「手話言語を学び」学問を「手話言語で学ぶ」環境整備を強く求めます。
 今後、きこえない子どもたちや保護者、教職員、ひいては国民全体のために、より一層の課題改善に取り組んでいただきたく、下記の通り要望いたします。

1.きこえない子どもたちのアイデンティティ確立のため、きこえない子どもの言語権の保障、きこえない子どもの家族が手話言語を学ぶための支援に関する具体的な取り組みを行ってください。手話言語獲得の支援には、積極的に当事者を参画させてください。

<説明>
 貴省では昨年、厚生労働省と共同で「難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト」を実施するとともに、本年度予算において、モデル事業として「特別支援学校(聴覚障害)における保健、医療、福祉など、厚生労働行政と連携した教育相談の実施体制構築に係る実践研究」「医療・療育・教育関係者を中心とした難聴児の早期支援に係る研修」の費用を新規計上されていますが、モデル事業において、きこえない子どもの支援に精通した専門職の活用や、当事者としてろう者を支援の輪に参画させるようにしてください。
 また、貴省において、子どもや保護者の手話言語の獲得について、どのようなお考えをお持ちかご教示ください。

2.大学での教職員養成課程及びろう学校教職員の現任研修に、手話言語を学ぶ授業を組み入れてください。その際の指導者については、各地域の聴覚障害者団体や聴覚障害者情報提供施設等と協議してください。

<説明>
 きこえない教職員の採用を積極的に行うこととあわせ、手話言語のできる教職員養成はとても重要です。
 先般の学習指導要領の改訂では、手話等を積極的に使用し、コミュニケーション能力を伸ばすことを目標に掲げられていますが、教職員養成課程と学校現場を見てみると、必ずしも手話言語を学べる環境が確保されている状況ではありません。
 各教職員によって手話言語の技術に差が出ていることは、貴省でも認識しておられると思いますが、教職員が手話言語を習得できない原因として、特別支援教育教員養成課程に「手話言語の習得」を目指す授業が含まれていないことと、ろう学校における教育的なコミュニケーション手段とする場合の「手話言語」のレベルが明確に定められていないことが挙げられます。
 手話言語で教育指導ができる能力認定の仕組みを組み入れるとともに、聴覚障害児教育を学ぶ学生たちや、聴覚障害教育の現場にいる教員が、手話言語によってきこえない子どもたちを指導する力を身に着けるための取り組みを行ってください。
 また、生きた手話言語を身につけるためには、地域の手話講習会等での指導の経験を持つ当事者と関わることが有効です。聴覚障害者団体や聴覚障害者情報提供施設と連携、協議してください。

3.きこえない子どもたちが求めるあらゆる教育ニーズに対応できるよう、きこえない子どもたちが在籍する学校に「専門性の高い教職員(きこえない教職員を含む)」を配置してください。

<説明>

①きこえない子どもたちの成長には、ロールモデルの役割を担うきこえない教職員の存在が大切です。都道府県教育委員会と連動しながら、全国のろう学校において、きこえない教職員の採用を推進できるよう、具体的な取り組みを行ってください。

②きこえない子どもたちの最も自然な言語である「手話言語」で教科を教えることができる専門性の高い教職員の配置を促進するなど、ろう教育の専門性を高めるための施策を積極的に行ってください。
 また、補聴器や人工内耳を装用し、難聴学級に通級するきこえない子どもを担当する教員の専門性担保について、具体的な取り組みをご検討ください。

4.きこえない教職員が職務を遂行するうえで、その能力を最大限に発揮するための職場環境の改善、研修機会の充実について、具体的な取り組みを行ってください。

<説明>
 「障害者権利条約」21条では、障害者が自ら望む意思疎通支援手段の行使を謳っています。職員会議等では会議内容を視覚化する等の工夫をしている学校もありますが、同僚の教職員からのインフォーマルな形での情報保障支援を受ける例も多く、このような状況では双方に負担が生じます。
 加えて、きこえない教職員が管理職になったときの校外会議や、電話応対時の情報保障、ろう学校以外の特別支援学校や、地域の学校等へ異動した際の情報保障は皆無に等しい状況です。
 きこえない教職員がその能力を最大限に発揮するための職場環境の改善や、情報保障などを促進させる取り組みを行ってください。
 また、きこえない教職員が法定研修や免許更新講習を受ける際の情報保障についても、公的に整備し、きこえない教職員の研修の機会を充実させてください。

5.貴省がその配置を拡充しようとしている「スクールカウンセラー」及び「スクールソーシャルワーカー」を、全てのろう学校に設置・派遣し、早期教育段階での相談支援も含めてその機能を十分発揮できるようにしてください。

<説明>
 昨年度、いくつのろう学校にスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されているか、現状を把握してほしいと要望しています。把握できた状況や活用実例をご教示ください。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置がないろう学校に対して、早急に配置が行われるよう、具体的な働きかけを行ってください。
 また、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーに対して、聴覚障害に関する十分な研修はもとより、聴覚障害支援の専門家から柔軟にアドバイスを受けられる体制を整備してください。

6.コロナウイルス感染症拡大による、学校のオンライン対応(授業、PTA会議等)に関して、きこえない子どもや保護者が、十分に情報を受け取るための体制を整備してください。

<説明>
 ご承知の通り、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大状況をふまえ、義務教育段階、高等教育段階ともに、オンラインでの対応が増加してきています。
 しかし、特に、地域の学校に在籍するきこえない子どもにとって、授業で手話通訳等の情報保障がない場合、情報が得られないというケースが挙がってきています。
 ろう学校においては、オンライン授業できこえない子どもへ情報を伝える手段についてさまざまな工夫がされていますが、一方でPTAの会議がオンラインで行われる際、きこえる親のほうが多い場合、手話言語が十分に使えず、きこえない保護者が満足に会議に参加できない例があります。
 こうした喫緊の課題に対し、貴省として、きこえない子どもや保護者に対する情報保障や合理的配慮に関して、具体的な検討を行ってください。

7.ろう者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
 貴省は、スポーツ庁や文化庁等、オリンピック等に縁の深い庁を管轄しておられます。また、国歌の手話言語化は、きこえない子どもに夢を与える大変重要な取り組みでもあり、貴省のご尽力が不可欠となります。是非、積極的にご検討ください。
(参考:別添要望書(内閣府・内閣府大臣官房・スポーツ庁・文化庁・総務省・厚生労働省)

8.障害者基本法に「言語(手話を含む)」の記述があることに基づき、国立の手話言語研究所を整備してください。

<説明>
 改正障害者基本法で手話が言語のひとつとして明記され、日本語に並び我が国の言語のひとつとなりました。また手話通訳を目にする機会の増加や、令和3年度からスタートする電話リレーサービス法案の国会での審議など、手話言語に対する社会の認知は進んできています。
 今後、ろう児者が手話を言語として学習し習得していくため、また、手話通訳者がより良い翻訳技術を習得するためにも、手話言語の基礎的な研究が重要となります。
 手話言語の歴史、文法等の理論的な整理、地域や性別、年齢等による使用表現の違いなど、研究、分析し形として残していくことが、今後の手話言語の広がりにつながります。
 研究機関として国立国語研究所と同様に国立手話言語研究所を整備してください。

以 上

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連本第200158号
2020年7月20日

スポーツ庁 長官
 鈴木 大地 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等のスポーツ施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者等の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 国連の障害者権利条約において、障害のある人が平等にあらゆるスポーツ活動に参加できるよう定めております。また、2021年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国内における障害者へのあらゆるバリアフリーを推進させる施策について具体的な審議がされていることと思います。これら障害者のスポーツ施策への取り組みがより一層、国民の皆さまから後押ししていただけることを期待しております。
 つきましては、さらなるろう者等のスポーツ(以下、デフスポーツ)の更なる施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.障がい者スポーツの啓発及び認知度向上のため、「障害者スポーツ週間」を定めてください。また、デフリンピックの認知度の目標値を設定した長期計画を策定してください。

<説明>
 わが国における障害者スポーツの総合国際競技大会の認知度は、パラリンピックは98.2%、スペシャルオリンピックスが19.8%に対し、デフリンピックは11.2%にとどまっています。さらに、同調査によると、パラリンピック以外のスポーツの直接観戦の経験はわずか4.7%しかありません。東京パラリンピックの開催を間近に控え、「パラリンピック」「パラスポーツ」は社会に浸透してきましたが、「デフリンピック」「デフスポーツ」について社会の認知度は低いままです。このため、デフアスリート達は競技に専念する環境が得られない等、競技環境面や金銭面でも苦しい立場に置かれています。
 2025年デフリンピック日本招致が実現し、大会がわが国で開催される際に、ほぼ全ての国民がデフリンピックを知っていることを目標とし、「認知度前年比プラス15%」と具体的な数値を設定した長期計画を策定と共に具体的な施策を講じてください。
 また、「障害者週間」と同様に「障害者スポーツ週間」を設け、各地自体で行われるイベント等でデフスポーツのみならず全ての障害者スポーツについて取り上げることや、政府広報等での積極的な啓発を行ってください。
 加えて「障害者スポーツ週間」中に特別支援学校だけでなく、全ての学校の授業等で「デフスポーツ」を啓発する機会も作ってください。

2.スポーツ庁の中に「デフリンピック課」を設置してください。

<説明>
 スポーツ庁内には2015年の発足当初から「オリンピック・パラリンピック課」が設置されています。現在、デフスポーツは「障害者スポーツ」という枠組みには入っており、基本的な担当部門は決まっておりますが、国内事業と国際大会派遣では担当課が異なっている状態です。
 そこで、「障害者スポーツ」の枠組みを超え、前項でも要望した「デフリンピック」の認知度向上をはじめ、2025年デフリンピック日本招致の実現に向けての国際総合大会開催に向けて国として招致活動から大会開催、デフアスリートの支援等、さまざまな課題を解決するため、「デフリンピック課」を設置してください。これにより国としてデフスポーツやデフリンピックについて統括的かつ継続的に施策を推進できる効果が見込まれます。
 単独課の設置が難しい場合は、担当係の設置やデフスポーツの知識を持つ専門官の配置等をしてください。

3.政策の一つとして、ろう者等が見てわかる、参加できる、スポーツ観戦できる施設整備を検討するワーキングチームを設置してください。

<説明>
 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて建設中の新国立競技場では、今後の競技施設のモデルとして、数多くのバリアフリー施設が設置され、ろう者等に配慮した設備も整えられています。しかし、国内の多くの競技場では、ろう者等がスポーツをする際の設備(例:陸上競技のスタートランプ、視覚的情報保障のための競技場内の電光掲示板)が整備されていません。また、観戦をする際にも場内放送等音声情報を目で見て分かる視覚的情報に変えるシステムは、ほとんどの施設で整備されていないのが実状です。ろう者等に配慮した設備を既存の施設にも出来る限り取り入れられるよう、都道府県の管轄する施設に整備基準に新たに加えるよう通達してください。
 また、貴庁がWebサイトで公表している政策「スポーツ施設の整備・運営」には、障害者が使いやすい施設作りに関するものが見受けられません。施設整備というと段差の解消などの身体的なハード面を解消するものばかりイメージされますが、ろう者等にとっては視覚的な情報の提供、呼び出し機の貸出、施設の予約・問い合わせ等の手段(電話リレーサービスも含む)の多様化、施設管理者へのろう者等や手話言語についての研修の実施等、数多くの対応策が考えられます。
 これらの政策を着実に遂行するため、ろう者等がスポーツに参加できるためのワーキングチームを設置し、デフアスリート当事者・経験者の意見を取り入れながら全国的にろう者等がスポーツを楽しめる環境作りを推進してください。

4.国内で開催する国際総合大会等、大規模スポーツイベントの開催時のアナウンス・ハーフタイムイベント、選手へのインタビュー等の手話通訳や字幕を設置する助成制度を設けてください。

<説明>
 日本で開催される多くのスポーツイベントには、競技開催会場をはじめ、それを中継するコンテンツの多くに手話通訳や字幕が付与されていません。地上波で放送されるスポーツ中継に字幕放送が付与されるようになってきましたが、タイムラグがあるなど、十分なものとは言えません。
 ろう者等が、きこえる人と同等にスポーツ観戦を楽しめるようにするため、現地の会場やテレビ中継等のコンテンツでも、スポーツイベント開催時のアナウンス・ハーフタイムイベント・選手へのインタビュー等、音声がある場面では手話通訳やリアルタイム字幕を付与する予算を主催者に付与するよう通達してください。また、イベント内でデフスポーツ等障害者スポーツの啓発を行うための助成制度を創設してください。
 好事例として、プロ野球チーム埼玉西武ライオンズの「フレンドリーシティ感謝デー(手話グリーティング)」や、サッカーJリーグ大宮アルディージャの「手話応援デー」などがあり、選手や観客、関係者が一体となったもので、共生社会の実現に向けて素晴らしい取り組みです。
(参考URL)
 フレンドリーシティ感謝デーで、「吠えろライオンズ」の手話ミックスバージョン披露!
  https://www.seibulions.jp/news/detail/00003002.html
 6/8・京都戦 「手話応援デー」の実施について
  https://www.ardija.co.jp/news/detail/15475.html

5.デフスポーツ選手が国内大会やデフリンピック等の国際大会に出場するにあたり、経済的な負担を軽減すべく、自治体の障害者スポーツアスリート助成制度の対象をデフスポーツ選手にも拡充するよう働きかけてください。

<説明>
 来年開催される夏季デフリンピック競技大会(ブラジル)に向け、デフスポーツ選手は日々練習を行い、競技力の向上に取り組んでいます。しかし、認知度が低いことも相まって、選手の経済的な負担が重く、練習に専念できる環境にありません。また、都道府県や市町村が実施している障害者アスリート助成でも「パラリンピック競技」のみに限定されている場合があります。障害者アスリート助成はパラリンピック競技だけでなく、デフスポーツをはじめとする幅広い障害者スポーツに拡充するよう各自治体に通達を出してください。
 また、デフスポーツ競技団体も選手達の活動を支援し、今年度からスタートした「スポーツ団体におけるガバナンスコード」に準拠すべく適正な運営を行い、また新しい選手の発掘等、デフスポーツの発展に向けて活動を行っていますが、その運営やスタッフはほとんどがボランティアです。
 さらに、日本語と手話言語という言語間の壁があるため、手話通訳者の確保や費用負担の問題もありなかなかきこえるNF(国内競技連盟)と繋がることができない状況にあります。きこえるNFとデフスポーツ団体を繋ぎ、一流のきこえるアスリートや指導者からの指導を手話言語で受けられる、きこえるアスリートにもデフスポーツの特性を知ってもらう等、恒常的に共に活動ができる環境を整える体制を作ってください。

6.デフスポーツ競技大会開催における支援施策の実施と拡充を行ってください。

<説明>
 当連盟が主催する全国ろうあ者体育大会(夏季大会は毎年1回、冬季大会は4年に1回、全国各地輪番制)は、国内最大のろう者等の総合スポーツ大会であり、デフリンピックや世界選手権等への競技力向上の場となっています。このような意義のある大会に対しては、スポーツ基本法においても国がその経費について補助することができると謳っています。
 ろう者等が参加する大会では、競技補助員や手話通訳者の配置、補助設備(スタートランプ等)の設置等の視覚的な情報保障が必要になります。また、競技人口の少ないウィンタースポーツ大会、全国ろうあ者冬季体育大会(次回2021年度開催予定)では、会場の確保(施設の借用)等、アスリートの競技環境を整えるだけでも大変苦労している実情があります。
 全国ろうあ者体育大会(夏季・冬季)については、独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施している「スポーツ振興基金助成」、「スポーツ振興くじ助成」の制度の枠組みを活用する等、国としての経費補助が行えるよう施策を講じてください。

7.きこえないことについて理解があり、手話言語ができる指導者・コーチの育成、またスポーツに精通した手話言通訳者の養成を行ってください。

<説明>
 近年では、地域の学校やきこえるスポーツ団体の中で競技活動をしているデフアスリートが増えています。また、デフのトップアスリートでも、普段はきこえるチームに所属して練習を行っていることがほとんどです。しかし、専門的な知識を持ち、選手に対して手話言語で対応できる指導者・コーチはわずかであり、多くの場合は筆談や身振りを駆使して指導を受けており、指導者から直接手話言語で、または手話通訳者を通して円滑な指導を受けられる機会はまれです。
 このため、手話言語や視覚的な方法で円滑に指導できる指導者・コーチの養成に助成を行う等、競技団体への支援を行ってください。
 また、引退したデフアスリートが後進育成のために指導者資格を取得しようとしても、受講にあたり、手話通訳費用の負担が大きな壁となります。指導者資格をとるための手話通訳費用が本人負担とならないよう、主催者が責任を持って手話通訳者を設置する等、合理的配慮の考えに基づき、情報保障環境を整えられるよう関係各所に通達してください。
 また、スポーツという専門分野に精通した手話通訳者の確保も早急な課題です。スポーツ用語は競技ごとに専門的なものが多く、当該スポーツについての知識がないと通訳を行うことは難しく、デフスポーツの発展にはスポーツに精通した手話通訳者の存在は欠かせません。全国の手話通訳者に対し、スポーツの知識や競技の専門用語等の手話言語を習得する機会を作ってください。これについては昨年度も同様に要望を出しており、検討を進めていただいていると伺っていますが、その進捗状況をお知らせください。

8.ろう者等がeスポーツに参加・観戦する際、視覚的に情報を掴めるような工夫を行うように周知をしてください。

<説明>
 国際的に広がりを見せている「eスポーツ」について、主に若い世代を中心に、ろう者の中でも関心が高まりつつあります。
 しかし、インターネット上の中継の観戦や、実際にプレイヤーとしてeスポーツを行う際の情報保障は現時点では皆無に等しい状況です。中には、音を頼りに操作したり、観戦を楽しんだりするような趣向のものもあり、そのようなものの場合、ろう者は身体特性上不利な状況に置かれてしまいます。
 eスポーツを見て楽しむことができるような工夫がされるよう、関係団体等に周知を行ってください。

9.きこえない者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
(参考:別添要望書(内閣府・文部科学省・スポーツ庁・文化庁・厚生労働省・総務省)

以 上

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連本第200159号
2020年7月20日

文化庁 長官
 宮田 亮平 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等の文化振興施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より私どもろう者等の文化活動にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 当連盟は、ろう者の当事者団体として、日々全国の仲間とともに、ろう者が暮らしやすくなる社会の構築に向けて活動を行っています。
 我が国は2014年に「障害者権利条約」を批准し、2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、障害者を取り巻く環境は一歩前進しましたが、文化的な活動時の課題の改善に取り組む姿勢はまだまだ充分とは言えません。当連盟は「手話言語法」の制定を視野に入れ、きこえる人と同様の文化的な生活が享受できるよう、ろう者の文化芸術活動の環境整備を強く求めます。
 今後、ろう者、ひいては国民全体のために、より一層の課題改善に取り組んでいただきたく、下記の通り要望いたしますので、その早期実現をお願い申し上げます。

1.「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」第9条、第10条に則り、「障害者が文化芸術を楽しむ機会の確保」、「障害者が文化芸術を表現する機会の確保」を徹底してください。

<説明>
 2018年6月に公布された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」の第9条では「障害者が文化芸術を鑑賞する機会の拡大を図るため、文化芸術の作品等に関する音声、文字、手話等による説明の提供の促進(中略)障害の特性に応じた文化芸術を鑑賞しやすい環境の整備の促進」が、第10条で「障害者が文化芸術を創造する機会の拡大を図るため、障害者が社会福祉施設、学校等において必要な支援を受けつつ文化芸術を創造することができる環境の整備」が謳われていますが、環境整備は未だ充分とは言えません。
 ろう者等が文化芸術活動を享受する際の情報保障として、ハード面の整備では、ICT技術を活用して、展示物ごとに、タブレット端末などにQRコードをかざすことで解説文や手話言語動画を表示すること、ソフト面の整備では、学芸員が手話言語による解説を行うことなど、さまざまな方法が考えられます。
 良い取り組みがある施設には、一覧を作成し、「好事例マーク」を付与するなどして、配慮の整った施設を見つけやすくする等、手話言語等による鑑賞機会の拡充とともに、ろう者等の演劇や、芸術作品の制作等の豊かな表現機会の確保のために、必要な財政支援や活動の啓発、技術研鑽の場における情報保障整備を通して、ろう者等の文化芸術活動全体を発展させる取り組みを、全国のすべての地域で行ってください。

2.来たる「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に関わる文化プログラムにおいて、手話言語・字幕などのアクセシビリティの確保を推進してください。

<説明>
 来夏、我が国において「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されます。この競技大会に関わる文化プログラムを、ろう者も他の人と同様に楽しめるよう、必要に応じて手話言語や字幕等の付与などによる情報保障を行ってください。

3.文化施設の説明表示や、手話言語・字幕付与された映像作品等、手話言語のできる学芸員の育成に、貴庁の補助金を活用して取り組みが進められるような仕組みを作ってください。

<説明>
 予算に限りがあることは承知をしておりますが、ろう者を含めた多くの人の、文化芸術活動の充実へ寄与するための取り組みをぜひ行ってください。

4.きこえない子どもや若いろう者、手話言語学習者への継承を目的とし、昔の手話言語表現の保存、研究を行ってください。

<説明>
 私たちの用いる「手話言語」は、音声言語と同じように、地方や世代によって表現が異なります。特に、主にろう高齢者が用いていた手話言語表現は、使用者がいなくなることで表現も消滅する危険があり、その保存が喫緊の課題となっています。
 ろう者同士のやり取りの中で生まれ、受け継がれてきた手話言語を、これからも生まれてくるきこえない子どもたちや、若いろう者、手話言語学習者に伝えていくためにも、少数言語を所管する貴庁において、その保存と研究を行ってください。

5.ろう者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
 東京オリンピック・パラリンピックが目前となっておりますが、貴庁ではこの大会を契機とした日本文化の発信について、さまざまな取り組みを進めておられると存じます。
 4.でも記載したように、少数言語を守り、継承していく責務を遂行する貴庁の取り組みの一環として、全国統一の「『国歌』の手話言語」の策定にご尽力いただきたく、お願いいたします。
(参考:別添要望書(内閣府・内閣府大臣官房・文部科学省・スポーツ庁・総務省・厚生労働省)

6.ろう者がeスポーツに参加・観戦する際、視覚的に情報を掴めるような工夫を行うように周知をしてください。

<説明>
 国際的に広がりを見せている「eスポーツ」について、主に若い世代を中心に、ろう者の中でも関心が高まりつつあります。
 しかし、インターネット上の中継の観戦や、実際にプレイヤーとしてeスポーツを行う際の情報保障は現時点では皆無に等しい状況です。中には、音を頼りに操作したり、観戦を楽しんだりするような趣向のものもあり、そのようなものの場合、ろう者は身体特性上不利な状況に置かれてしまいます。
 貴庁が取り組む文化的活動の推進の一環として、eスポーツを見て楽しむことができるような工夫がされるよう、関係団体等に周知を行ってください。

以 上

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連本第200160号
2020年7月20日

厚生労働大臣
 加藤 勝信 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等の雇用・福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.国の行政機関、地方自治体、民間企業すべての法定雇用率制度の徹底を図り、聴覚障害者の積極的な採用を行ってください。

①国の行政機関、地方自治体、民間企業すべてが法定雇用率を達成するよう、また未達成の団体に対しては法定雇用率を遵守するよう、雇用率のアップを図ってください。
 また採用後の職場定着支援についても国の行政機関、地方自治体、民間企業の隔てなく採用された障害者が長く働けるよう支援体制を構築してください。

<説明>
 2019(令和元年)年12月発表の障害者の実雇用率は過去最高ではありますが、民間企業における実雇用率は2.11%(昨年比0.06%)で法定雇用率達成の企業割合は48%と半分以下の状況が続いています。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html
 すべての民間企業が法定雇用率を遵守するよう、対策を講じてください。
 また一昨年官公庁や地方自治体でも、障害者雇用率の未達成が明らかになりました。再発防止と雇用率アップを図ってください。
 国が率先し、採用されている聴覚障害者の職場での情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障や職場環境作りの範を示していただき、貴省をはじめとする各省庁、地方自治体、民間企業において聴覚障害者への理解を促進するとともに、民間企業に派遣されているジョブコーチのような支援体制も公務部門に構築し長く働ける職場環境を作ってください。
 国の行政機関における障害者別(身体障害種別も明記)の採用状況とそれら定着率もご教示ください。

②「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものにするためにも、障害種別の雇用の状況を表示し、雇用納付金制度のあり方を再検討してください。
<説明>
 雇用率を算出する際に「身体障害者」は一括りされています。聴覚障害者をはじめとする障害種別の障害者雇用率の表示をしてください。
 また、聴覚障害者の雇用数と離職数が公表されていないため、聴覚障害者の雇用の実情が分かりません。聴覚障害者に対する情報アクセスの保障やコミュニケーション・意思疎通の保障が必要なことを理解されていない事業所が多い中で、聴覚障害者の雇用改善のための分析を行い、聴覚障害者の実雇用率増加を図るためにも、障害種別の実雇用率、雇用数、離職数が分かるようにしてください。

③ろう重複障害者(盲ろう者含む)の就業について全国的な実態調査を実施し、その結果に基づき、一日も早くろう重複障害者の働く場の保障に関する施策を講じてください。
<説明>
 厚生労働省の施策として、「医療・福祉」から「一般就労」へ転換する方向を進めています。しかし、ろう重複障害者の就労状況は依然として厳しい現況です。ろう重複障害者の就労をスムーズに進めるために、まず、全国的なろう重複障害者の就労状況に関する実態調査を実施し、その結果を踏まえて、適切な施策を実施してください。

2.厚生労働省の所管である、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者介助等助成金による「手話通訳担当者の委嘱助成金の制度」の一層の拡充および事業所や職業安定所に利用の周知徹底を図ってください。

①1回の助成額を1人3/4(6千円)ではなく、その地域で支払われている手話通訳料1回の3/4にしてください。

②年間の助成額の上限28万8千円を取り払い、必要に応じて手話通訳を利用できるようにしてください。

③申請提出期間は、事業所が必要と認めた場合いつでも申請できることとし、利用可能期間も雇用後10年間と限定することなく聴覚障害者が就労している限りにおいていつでも利用できるようにしてください。

<説明>
 昨年、「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正される際に、付帯決議もありましたが、どのような検討がすすんでいるのか、進捗をご説明ください。

3.聴覚障害者等ワークライフ支援事業を国の制度として新設してください。
<説明>
 現在、大阪府の独自事業として実施されている聴覚障害者等ワークライフ支援事業は、就職前後の聴覚障害者(重複聴覚障害者を含む)に対して、個々のニーズに応じた雇用・労働相談・支援を行い、聴覚障害者の職場定着に成果を上げています。聴覚障害者の就労面での相談支援機能の充実を図るため、聴覚障害者等ワークライフ支援事業を国の制度として実施してください。また地方の好事例を積極的に周知するようにしてください。

4.ろう者等の職場定着を確実なものとしていくために、ろう者等がコミュニケーションや意思疎通に不安を感じることなく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話言語ができる」ことを明記し、ジョブコーチ養成のカリキュラムに「手話言語」を取り入れてください。
<説明>
 現在、手話言語ができるジョブコーチが非常に少なく、ろう者等に対する支援が十分にできていません、手話通訳を介すのではなく手話言語のできるジョブコーチの育成をしてください。

5.ろう者等が安心して利用するために、全国に約300ヶ所設置されている障害者就業・生活支援センターに手話通訳者を配置してください。
<説明>
 聴覚障害者にとって、公的な就労相談の場である障害者就業・生活支援センターでは、筆談対応を中心とした支援が多く、手話言語を第一言語とするろう者等にとっては利用しにくく、相談支援機能が十分に果たされているとは言えません。当事者団体である私どもも働きかけては行きますが、貴省からも委託費から手話通訳の雇用は可能であることを周知いただくとともに、聴覚障害の特性を理解した手話通訳者の配置を働きかけてください。

6.貴省の労働政策審議会 (障害者雇用分科会)の委員に聴覚障害者を加えてください。
<説明>
 労働政策審議会障害者雇用分科会には身体障害のうち視覚障害者、肢体不自由の委員はいらっしゃいますが、聴覚障害者の委員がおらず、その意見や状況が反映されにくい状況です。貴省の社会保障審議会 (障害者部会)では聴覚障害者が委員に入っていますので、同様に聴覚障害者の委員を加えてください。

7.「手話言語法」および「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の早期制定を進めてください。
 特に、「手話言語法」ではろう乳幼児の手話言語の獲得の保障と、そのための保護者への必要な情報提供の規定が重要な条項の一つとなっております。ろう児の療育の面から「手話言語の獲得」を含めた情報提供や関連の支援体制の構築のためにも「手話言語法」の一日も早く制定してください。

<説明>
 改正障害者基本法で「手話」が言語のひとつとして認知され、貴省においても障害者総合支援法・意思疎通支援事業において手話通訳制度が実施されているところですが、ろう者等への手話言語獲得・手話言語を使える環境整備を保障する「手話言語法」、ろう者、盲ろう者、視覚障害者等の情報アクセス・コミュニケーションを保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の双方を制定させ、福祉・医療・雇用・教育・司法等の様々な場面で具体的な施策行うことで、ろう者等の真の社会参加を推進できるものと考えます。
 関係省庁との連携状況をお聞かせいただくと共に、「手話言語法」および、ろう者等をはじめ広く障害者を対象とした「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法」の制定をしてください。

8.意思疎通支援事業の手話通訳者設置事業の拡充が重要であることについて、自治体へ改めて周知してください。
<説明>
 遠隔手話サービスについて、2017(平成29)年度地域生活支援事業の予算で、手話通訳者を設置できない自治体における導入が認められ、2019年度からは「派遣が困難な場合」の利用について派遣にカウントできるよう導入が始まりました。また、今般の新型コロナウイルス感染症対策として、遠隔手話サービスの環境整備費として補正予算を組んでいただき、更に導入が進んでいくものと思われます。
 しかし、ろう者の育った環境によっては必要不可欠な情報を充分に獲得することができず、自己選択、自己決定のための補足説明や相談、生活支援などの様々な支援を必要とするろう者等も少なくありません。また、より深い内容になると遠隔手話サービスのようなタブレット等を介しての「翻訳技術の提供」では、周りの状況までを伝えることができず不十分です。このような聴覚障害の特性やニーズ、また場面に合わせた対人支援のためには遠隔手話サービスは、手話通訳設置事業および派遣事業の補完的な役割を担うものであり、代替手段ではないことを各自治体に改めて周知いただき、手話通訳者設置事業を実施していない自治体に対しては、事業実施を促進してください。

9.遠隔手話サービスの安定的運用を進めるため、運用経費について継続的な予算措置をしてください。
<説明>
 新型コロナウイルス感染症対策として遠隔手話サービスの環境整備のための補正予算を組んでいただきましたが、初期費用の他に、システム保守などのランニングコストがかかるため導入を見送るというケースがあり、地域格差を生む要因となってしまいます。意思疎通支援事業とは別に、遠隔手話サービスのランニングコストあるいは人件費について、継続的な予算措置を講じてください。

10.電話リレーサービスの手話オペレーターについては、手話通訳士や統一試験合格などの有資格者であることが望ましいと考えます。ついては、その養成にあたっても、一定の有資格者が手話オペレーターとなるような仕組みで進めてください。
<説明>
 手話オペレーターは音声言語と手話言語の両方に精通し、的確に理解・伝達できる能力が求められます。電話リレーサービスでは一般的な手話通訳と異なり、緊急性のある内容も多く、事前に参考となる資料や情報が無い中で、手話言語と音声言語のメッセージを的確に理解し、正確に伝達するためには、手話通訳士や手話通訳者の資格を持つ者がその業務に当たることが必要であると考えます。また、今後、オペレーター養成のためのカリキュラムを制定し、その研修を履修できる体制を講じてください。

11.障害者差別解消法施行後の手話通訳派遣について、各自治体の担当部局や団体等で通訳者に要する経費の予算化を福祉部局からも働きかけるように周知してください。また予算化されるまでは、引き続き意思疎通支援事業による手話通訳派遣制度を利用できるように周知してください。
<説明>
 2016年4月より「障害者差別解消法」が施行され、手話通訳派遣についても改善がみられる地域も出てきています。一方で、ろう者等が公的機関を利用する場合、今まで利用できた意思疎通支援事業による手話通訳派遣が、公的機関の合理的配慮事項とされ、利用できないという誤解が生じています。
 ろう者等への情報保障が後退しないように、各自治体の担当部局や団体等で手話通訳者に要する経費を予算化されるよう、福祉部局からも働きかけるように周知してください。また予算化されるまでは、引き続き意思疎通支援事業による手話通訳派遣制度を利用できるように都道府県に周知説明・配慮をしてください。

12.きこえない子どもたちのアイデンティティ確立のため、きこえない子どもの言語権の保障、きこえない子どもの家族が手話言語を学ぶための支援に関する具体的な取り組みを行ってください。手話言語獲得の支援には、積極的に当事者を参画させてください。
<説明>
 昨年、文部科学省と共同で「難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト」を実施するとともに、本年度、文部科学省予算において、モデル事業として「特別支援学校(聴覚障害)における保健、医療、福祉など、厚生労働行政と連携した教育相談の実施体制構築に係る実践研究」「医療・療育・教育関係者を中心とした難聴児の早期支援に係る研修」の費用を新規計上されています。モデル事業は厚生労働行政と連携していることから、貴省として、きこえない子どもの支援に精通した専門職の活用や、当事者として、ろう者を支援の輪に参画させるようにしてください。
 また、貴省において、子どもや保護者の手話言語の獲得について、どのようなお考えをお持ちかご教示ください。

13.きこえない者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。
<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。 関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
(参考:別添要望書(内閣府・文部科学省・スポーツ庁・文化庁・厚生労働省・総務省)

14.テレワークやオンライン研修の導入に伴い、ろう者等が働く環境が不安定なものとならないよう、企業や事業者に周知してください。
<説明>
 今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、テレワークや、新入社員のオンライン研修を導入する企業が増えていますが、ろう者等にとって、テレワーク中のオンライン会議では、マスクの着用により口元が見づらい、カメラをOFFにしたまま音声のみで会議が進められることにより、話の内容が理解できないという事例が出てきています。
 また、オンライン会議に手話通訳を同席させたくても、人数制限の関係で断られるケースも存在しています。
 ろう者等が働いている企業や事業者に対して、円滑な職務遂行のために必要な配慮を提供するよう周知してください。

15.きこえない学生の就職活動に際し、就職相談・採用面接をオンラインで行う場合の合理的配慮について、企業や事業者に周知してください。
<説明>
 企業採用についても、「三密」を避けるために、就職相談や、採用面接をオンラインで行う企業が増えています。この際、きこえない学生が手話言語や文字等によって情報を得ること、また、採用担当者が、きこえない学生の個性や熱意を理解することが可能になるよう、企業や事業者に対して、きこえない学生が就職相談や採用面接時の、情報保障について周知してください。

16.新型コロナウイルス感染症拡大の状況に伴う、自治体への電話以外の問い合わせ方法に、メールアドレスやSMS等を追加するよう自治体へ要請してください。
<説明>
 今般の新型コロナウイルス感染症に関する問い合わせ窓口について、当連盟や加盟団体からの要望で、FAX相談窓口を設ける自治体が増えています。しかし、主に若いろう者を中心に、自宅に固定電話を置いていない人も増えており、そういった人たちはFAXではアクセスすることができません。
 FAX相談窓口を置くのと同時に、メールやSMS等を用いて相談が行える窓口についても設置が行われるよう、自治体へ要請してください。

17.医療機関等において、医師や看護師などの表情・口元(口形)が見える工夫を行ってください。
<説明>
 新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、あらゆる場所でマスク着用を求められ、とりわけ、医療機関において、医師・看護師がマスクを外せない状況にあります。
 ろう者等にとって、口形や表情は、話の内容を理解するために重要です。特に医療機関においては、意思疎通の齟齬が生じることは、命が脅かされることにもつながりかねません。
 そのようなことを未然に防ぐためにも、ろう者等との円滑なコミュニケーション方法として、マスクが外せない場合、メモやイラスト、身振り等の視覚的な情報を交えながら、コミュニケーションを取る等の配慮をしていただくよう、医療機関等にご周知ください。

18.透明マスクの制作・普及に関して、生産を行っている(過去に行っていた)企業や業者に助成を行うなど、具体的な取り組みを行ってください。
<説明>
 ろう者を含めた、相手とのコミュニケーションをスムーズにするために、口元が見える「透明マスク」や「フェイスシールド」等があります。しかし、通常の不織布マスク等と比較して、現時点では生産を行っている企業や業者も少ない状態です。透明マスクやフェイスシールドを生産している(過去に生産していた)企業や事業者に対して助成を行うなど、ろう者等との意思疎通と、感染拡大防止に役立つ物品生産への支援を行ってください。

以 上

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連本第200161号
2020年7月20日

経済産業大臣
 梶山 弘志 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

1.ろう者等の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、自治体や民間企業等が発行しているいわゆるメディアのサービスに対する問い合わせ先に、電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレス掲載の義務化を講じてください。

<説明>
 昨年も同様の要望をしていますが、きこえない者が問い合わせたい時には、家族や手話通訳者等の支援者に電話を依頼しなければならず、もし支援者が周りにいない場合は問い合わせすらできません。
 貴庁の広報誌やパンフレット、ホームページ等は率先してウェブアクセシビリティのAAAである手話言語の付与もお願いいたします。
 新聞、書籍、パンフレット、チラシ等広報誌またテレビショップ、ネット広告等に電話番号だけでなくFAX番号もしくはEメールアドレスを掲載し、「基礎的環境」の整備を図るよう、周知徹底したご指導をしてください。

2.「本人確認」の方法を改善してください。電話による確認以外の方法を選択できるようにしてください。
 2021年度より電話リレーサービスが公的サービスになりますので、民間企業等、関係団体へその周知をしてください。

<説明>
 「本人確認」の方法を本人からの電話による音声確認のみで対応する機関がまだ数多くあります。改善するように様々な機会を利用し貴庁から指導及び周知ください。
 2021度より公的なサービスとして、手話言語や文字のオペレーターを介し、ろう者等も電話ができるようになりますが、このサービスを周知いただき、電話リレーサービスによる本人確認が間違いなくできるようにしてください。

3.障害者がICTを利活用しやすい環境を整備するため、規格の統一化を図ってください。

<説明>
 ICTツールは障害者の情報入手方法において、ICT製品・サービス等における障害者の情報バリアフリー対策等は重要な課題となっています。情報通信技術の標準化や規格化が不十分なために解釈が曖昧になっている隙間を、メーカーが各々独自の技術を盛り込んで製品化したために、メーカーの間で互換性がとれなくなったという技術的な問題も一因となっています。
 コロナ渦において遠隔による会議や、遠隔診療などが急速に浸透し、手話言語通訳においてもタブレット等を活用した遠隔手話サービスの導入が増えてきます。
 今後、障害者がICTをより利活用しやすい環境となるために、「家電製品並び家事等に関するよかったこと調査委員会」の報告書に基づいて、規格の統一を図ってください。

4.ろう者等がeスポーツに参加・観戦する際、視覚的に情報を掴めるような工夫を行うように周知をしてください。

<説明>
 国際的に広がりを見せている「eスポーツ」について、主に若い世代を中心に、ろう者の中でも関心が高まりつつあります。
 しかし、インターネット上の中継の観戦や、実際にプレイヤーとしてeスポーツを行う際の情報保障は現時点では皆無に等しい状況です。中には、音を頼りに操作したり、観戦を楽しんだりするような趣向のものもあり、そのようなものの場合、ろう者は身体特性上不利な状況に置かれてしまいます。
 貴省が取り組むコンテンツ産業の発展の一環として、eスポーツを見て楽しむことができるような工夫がされるよう、関係団体等に周知を行ってください。

以 上

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連本第200162号
2020年7月20日

国土交通大臣
 赤羽 一嘉 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

ろう者等に係る施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもろう者の福祉向上にご理解ご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を擁するろう者の当事者団体です。
 「障害者差別解消法」および「バリアフリー法」の制定により、障害者に対する合理的配慮や支援についての取り組みが広まってきつつあります。しかしながら、その認知は充分とは言えず、改善すべき課題は山積しています。
 すべての国民が安心、安全に生活ができ、そしてアクセシブルな社会になるよう、下記の環境整備を講じていただきたく、お願い申し上げます。

(航空局)

1.ろう者等の情報アクセス、コミュニケーション保障の観点から、空港及び機内での音声情報は緊急時のみでなく、すべて可視化できるようにしてください。機内でも、音楽や映画などエンターテイメントなども楽しめるようにしてください。
 また日本に乗り入れている海外の航空会社や海外の航空会社の共同運航便でも日本の航空会社と同様の方法で購入できるようにしてください。

<説明>
 国内の航空会社では、機内アナウンスや緊急時の放送に関する情報アクセシビリティは整備されつつありますが、混雑するピーク時間帯に保安検査場付近で、音声による出発直前便への優先搭乗案内がされていることがあります。ろう者等は何を案内されているのか分かりません。内容が見て分かるようホワイトボードを持ちながら案内していることもありますが、簡潔な内容のみとなっている事あります。音声による案内と同様の内容がわかるように、グランドスタッフの手話研修なども含め工夫をしてください。
 またフライト中の機内のエンターテインメントサービス(特に音楽や邦画)は字幕挿入しているものもいくつかありますが,音声のみが多く、きこえる人が無料貸出のイヤホンやヘッドホンで楽しめるのに対し、ろう者等は字幕がないため楽しむことができません。また機長の挨拶や話も音声なのみなのでわかりません。
 字幕や手話言語の映像を流すことが難しければ、UDCast(専用の眼鏡(グラス)に字幕が映る)等の機器の貸し出しやフライトアテンダントの手話研修等、情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、国内便を有するすべての航空会社に働きかけてください。
 海外の航空会社からのチケット購入において、共同運航、国際線乗継便、また介助員のいないろう者等の団体旅行では航空券購入ができなかったという事例があります、国内の航空会社と同様に、スムーズに購入できるよう海外の航空会社にも働きかけていただきたいと昨年要望しましたが、どのようにご対応いただいたかご教示ください。

(自動車局・総務課・鉄道局)

2.公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキングや無人駅や無人料金所におけるインターホンによる音声やり取りについて、ろう者等も安心して利用できる仕組みに改善し、好事例があればひろく周知してください。

<説明>
 利用者が少ない公共交通機関(駅・バス・高速道路等)やコインパーキング等において、自動券売機また精算機等が増加しつつありますが、これらの機械にトラブルが生じたとき、ろう者等はインターホンによる音声やり取りができません。
 また、無人駅の自動券売機で障害者割引適用の切符を買う際、インターホンによる音声やり取りで、カメラに障害者手帳をかざす方法になっているため、ろう者等は音声での対応ができません。
 インターホンに代わる方法として、タッチパネルによる文字送信や遠隔手話サービス等を導入するなど、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、引き続き関係会社に働きかけてください。なお、民間事業者について2019年度の進捗および好事例があればご教示ください。

3.観光地や名所等において、音声による車内ガイダンスをろう者等も楽しめるように改善してください。

<説明>
 電車が観光地や名所を通る時に、歴史や背景など、音声による車内ガイダンスがありますが、ろう者等は楽しむことができません。
 字幕や手話言語の映像を流すなど、あらゆる情報が視覚的に分かるよう、情報アクセシビリティの基礎的環境の整備について、すべての鉄道会社に働きかけてください。
 昨年も同様の要望をしましたが、2019年度の進捗および好事例があればご教示ください。

4.国土交通省バリアフリー法関連の会議に参加されている交通事業者等をはじめとする各種業界団体と障害者団体の意見交換場を設けてください。

(総合政策局 物流政策課)

5.宅配や郵便物の再配達の依頼について、FAX等での連絡が行えるよう、関係業者等に働きかけてください。

<説明>
 宅配や郵便物の再配達を依頼する方法として、不在連絡票に記載のある電話番号に電話をかける、インターネットを通して手続きをする等があります。しかし、インターネット環境のない(あるいは使いこなすことが難しい)ろう者にとっては、再配達の依頼は物理的障壁となり、負担が生じています。
 きこえない人向けに、FAX等で再配達の依頼が可能となるよう、貴省から関係業者等に働きかけをしてください。

以 上

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連本第200163号
2020年7月20日

デフリンピック支援ワーキングチーム
座長  衛藤 晟一 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8階
電話03-3268-8847・Fax 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理 事 長  石野 富志三郎

「『国歌』の手話言語」の策定について(要望)

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私どもきこえない人の福祉向上にご理解とご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 当連盟は、2025年夏季デフリンピックの日本招致に向けた取り組みを行っています。
 2017年にトルコで行われましたデフリンピック バレーボール競技において、日本女子チームが金メダルを獲得した際、選手たちが日本国歌を手話言語で斉唱した様子が動画で全世界に流れ、大きな話題となりました。しかしその一方で、日本では、正式な「『国歌』の手話言語」がまだ定められておらず、国内で国歌を斉唱する際に、主催団体ごとで国歌の手話言語の表現を検討しているため、統一性がありません。
 来夏には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。これを契機に世界に取り組みを発信し、デフリンピックの招致につなげるためにも、「『国歌』の手話言語化」について、下記の通り要望いたします。

1.ろう者も国民の一人として国歌に親しめるように、全国統一の「『国歌』の手話言語」を定めてください。

<説明>
 現在、全国統一の「『国歌』の手話言語」化がされていないため、歌詞の解釈によって手話言語の表現が様々です。
 オリンピック・パラリンピックのような国を挙げての行事に、全国的に統一された手話言語で「『国歌』を斉唱したく、各関連省庁や専門家、当事者団体の意見をふまえた上で、「『国歌』の手話言語」を定めてください。
 また、昨年より、いくつかの省庁へこの要望を提出しておりますが、いずれも「担当ではない」という旨の返事をいただくに留まっています。関係省庁と相談のうえ、担当窓口を明確にしてください。
 東京オリンピック・パラリンピックが目前となっておりますが、貴チームからも働きかけをお願いいたします。
(参考:別添要望書(内閣府・内閣府大臣官房・文部科学省・スポーツ庁・総務省・厚生労働省)

以 上

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