外務省へ「障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見及び要望」を提出



12月17日付で、下記の通り修正意見及び要望文を提出しました。
「Sign Language」を「手話」ではなく「手話言語」と和訳するよう依頼したものです。

【参考】
・外務省 障害者権利条約
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html
・外務省 第1回政府報告に関する障害者権利委員会からの事前質問(和文仮訳(PDF))
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000546852.pdf

要望書をPDFでダウンロード

連本第190644号
2019年12月17日

外務省総合外交政策局
局長 山田 重夫 殿

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

障害者の権利に関する条約の事前質問外務省仮訳への修正意見及び要望

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、ご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、12月17日現在、外務省のホームページに掲載されている「障害者の権利に関する条約の事前質問の外務省仮訳」について、下記のとおり修正を要望いたします。

◆第21条
◇事前質問事項
(a) The process of recognizing in law Japanese sign language as an official language at the national level;
(c) The measures taken to make television programmes accessible for persons with disabilities through the use of audio description, sign language interpretation and captioning;

◇外務省仮訳
(a) 日本手話を国レベルで公式な言語として法律上認めるプロセス。
(c) 音声解説、手話通訳及び字幕の使用を通じ障害者が理解しやすいテレビ番組を制作するためにとられた措置。

【修正案】
(a) 日本手話言語を国レベルで公式な言語として法律上認めるプロセス。
(c) 音声解説、手話言語通訳及び字幕の使用を通じ障害者が理解しやすいテレビ番組を制作するためにとられた措置

【修正の理由】

(1)音声言語の音声は聴覚機能と発声器官を、手話言語の手話は視覚機能と腕、手指、顔の表情等の身体機能を利用し、どちらも言語としての機能を有する。そのため、言語として使用するときは「音声言語」と「手話言語」とし、手話言語等の言語を表出する手段として「手話」を用いるべきであり、国レベルでの公式な言語として、「Sign Language」を「手話言語」と訳するのが適切である。

(2)米国、英国、オーストラリア、豪州等の英語圏では「Sign」と「Sign Language」の両方を使い分けている状況があり、前者は言語を表出する手段の意味で用い、後者は言語として用いている。しかるにわが国では長い間、「Sign」と「Sign Language」どちらも「手話」と翻訳を続けてきた。言語としての「手話」と、言語を表出する手段としての「手話」を混同して使い続けていたので、「手話」を言語としてなのか、言語の表出手段なのかその意味を文章全体から読み取る(解釈)ことをしてきた。英語圏で用いている「Sign」と「Sign Language」の意味を日本語の読み手に正確に伝えるためには、「手話」と「手話言語」に翻訳する必要がある。

(3)わが国では「International Sign」を「国際手話」と翻訳して使用している事実がある。これは国際的に共通するコミュニケーション手段として生み出されてきた。まだ言語としての地位を付与されていないので、英語圏では「Language」を結合していない。そのためにわが国では「International Sign」を「国際手話」と訳し、「国際手話言語」とは訳さない。よって、「International Sign」は「国際手話」、「Sign」は「手話」、「Sign Language」は「手話言語」、「Japanese Sign Language」は「日本手話言語」、 「Sign Language Interpretation」は「手話言語通訳」と正しく翻訳し、整理する必要がある。

【修正の理由を証する資料等】

(1)米国等の高等教育機関の留学生を送り込んでいる実績を有するNPO法人ASL協会は定款等で「American Sign Language」の日本語訳に「アメリカ手話言語」と公表している。

(2)筑波大学名誉教授の草薙進郎教育学博士等の著作物「アメリカ聴覚障害教育におけるコミュニケーション動向」では、「American Sign Language」を「アメリカ手話言語」と翻訳している。

(3)会員550名を超える市区長で構成されている全国手話言語市区長会では「手話言語」と「手話」をそれぞれ「言語を意味するもの」と「言語を表出する手段」とに分けて使用している。

(4)全国の道府県において「手話言語」条例を多数制定している。

(5)全国の市町において「手話言語」条例を多数制定している。

(6)大学等の高等教育機関において、「手話言語学」と称する学問が増えている。

(7)わが国で初めて手話言語を言語学的に探究した「手話言語の記述的研究」(1986年米川明彦著)において、「手話」と「手話言語」について詳細に説明している。

(8)「手話言語白書」において大杉豊筑波技術大学教授、武居渡金沢大学教授等多くの研究者が「手話言語」を使用している事実がある。

(9)韓国ではわが国と同様、長い間「手話」を使用していたが、韓国手話言語法の制定を機に「Sign Language」を意味する「手話言語」を使用し、その略語として中国語と同様の「手語」を創り出した。

以 上