総務省へ聴覚障害者の参政権等について要望書を提出



 2018年6月1日(金)、三団体政見放送検討委員会(全日ろう連/全通研/士協会)は総務省を訪問、聴覚障害者の参政権等について要望書を提出し、意見交換を行いました。

 【出席者】全日ろう連/小椋武夫・中西久美子、全通研/荻島洋子、
      士協会/小椋英子・武居みさ・渡邉照子・望月香代

総務省選挙部管理課長へ要望書を提出
総務省選挙部管理課長へ要望書を提出

面談の様子
面談の様子
総務省面談の様子

2018年6月1日

総務省 政見放送関係事務担当者 様

三団体政見放送検討委員会
委員長 小 椋 英 子 

総務省訪問時確認事項について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、手話言語法制定の早期実現をめざし、全国的な運動展開をした結果、手話言語条例を制定する自治体は全国で178か所になり、「手話を広める知事の会」の加入は100%に至りました。これらの状況は、「手話に対する認知・評価」が広がり、聴覚障害者の情報保障を担う手話通訳士が必要不可欠となることを示しています。
 また、2016年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され、行政機関等には障害のある方に対し積極的な合理的配慮の提供が求められています。聴覚障害者の参政権が、全ての国民と同等に保障されるよう6月1日に貴省を訪問し、以下の内容について、話し合いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

1 聴覚障害者の参政権保障について
 2011年4月から、都道府県知事選挙の政見放送に手話通訳を付けることが認められ、参議院議員比例代表選出選挙、衆議院議員比例代表選出選挙と合わせ、政党(都道府県知事選挙では候補者)の「任意」という条件ながらも、手話通訳付政見放送が実現しており、手話通訳の付与率は徐々に上がっています。また、2013年の参議院比例代表選出選挙から字幕の導入が実現し、参政権保障が手話のわからない聴覚障害者にも拡大したことを嬉しく思います。
 しかし、現状では、手話通訳が全くつかない政党(候補者)もあり、聴覚障害者の参政権を保障した政見放送とは言い難いのが現実です。聴覚障害者が国民の一員として平等に選挙に参加する機会を保障すべく、来年の参議院選挙区選挙政見放送への手話通訳付与を含め、衆議院・参議院・都道府県知事選挙のすべての政見放送に手話通訳及び字幕を義務づけられるように早急にご検討ください。

2 政見放送や候補者の演説等に携わる手話通訳者の身分について
 公職選挙法により「選挙運動に従事する者のうち、専ら手話通訳のために使用する者」とされていることは、手話通訳士が選挙運動員とみなされ、手話通訳士が掲げる公正・中立な理念に反します。また、基本的な人権としての参政権を求める聴覚障害者の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳士については、「選挙運動に従事する者」に含めないこととし、手話通訳士の社会的信用と公正・中立の立場を保障していただきたい。
 2016年、総務省が「手話通訳士公務員数」の実態調査を行うとのことでしたが、結果について報告をお伺いしたい。合わせて、地方公務員法36条では、特別職員の政治的活動が厳しく制限されたと報告を受けましたが、どのように制限されているのかご教授ください。

3 政見放送に関する研修会の公費開催について
 現在、政見放送の手話通訳を担っている者は、「政見放送及び経歴放送実施規程」により手話通訳士となっております。2017年は総務省研修会を、岐阜・山形・山口・富山で開催し、履修者は新規、再履修を含め延べ70名が研修を受けることが出来ました。今後も、新たな手話通訳士や関係法令等の改正の理解及び政見放送内容に関わる新しい手話の習得のために「政見放送従事者研修会」が必須となっております。
 衆議院・参議院・都道府県知事選挙のすべてに対応できるよう、総務省研修を選挙ブロック内で開催し、研修履修者を増やすことが求められています。2018年以降も総務省研修が継続できるようご検討ください。

4 政見放送収録時の手話通訳士の環境整備について
 手話通訳士は、政見放送の手話通訳を担うにあたり、様々な準備を行った上で手話通訳現場に臨んでいますが、選挙関係者が集まり、時間等の制約もある中での収録は、極度の緊張が強いられます。また、候補者によっては、事前の資料がなく、内容が把握できないまま収録となるケースもあります。
 担当する手話通訳士が、本来持っている技術を十分発揮できるよう選挙関係者とは別の場での収録、それが難しいのであれば、環境整備や事前資料の準備をしていただけるようご検討ください。

5 キャンセル時の補償料について
 県知事選挙収録当日に、担当手話通訳士とサブ手話通訳士はすでに収録現場に到着していましたが、候補者の都合で収録が行われなかった例があります。
 急なキャンセルが発生した場合でも、手話通訳士側にキャンセルによる補償料を支払う必要がありますが、手話通訳士にどこから支払われるのかという手続き事務に混乱がありました。今後も、同様なことが起きないように、国政選挙・知事選挙の政見放送収録においてのキャンセル時における手話通訳士に対する補償料の支払い基準を定めることが重要です。

6 小選挙区(持ち込みビデオ収録)について
 現在衆議院小選挙区においては、政党が作成した持ち込みビデオ方式に手話通訳挿入可能となりました。手話通訳報酬は一収録最低額54,800円となっていますが、地域により報酬費がまちまちです。全国統一化を図るようご周知をお願いいたします。
 また持ち込みビデオ収録通訳者においても、手話通訳士資格者及び政見放送従事者研修修了者であることも条件に含めていただきたい。

三団体政見放送検討委員会事務局
 一般社団法人日本手話通訳士協会