民進党へ聴覚障害者にかかる政策について要望書を提出



 2016年4月28日(木)、民進党 障がい・難病政策推進議員連盟との懇談会があり、石野理事長と久松事務局長が出席し、聴覚障害者にかかる政策に関する要望書を提出、説明を行いました。

【写真左】原口一博会長よりご挨拶  【写真右】左:石野理事長、右:久松事務局長

民進党へ要望書を提出

連本第160050号
2016年4月28日

民進党 障がい・難病政策推進議員連盟
会 長 原 口 一 博 様
幹事長 中 根 康 浩 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者にかかる政策に関する要望について

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 本年4月1日より「障害者差別解消法」が施行されました。障害者の社会参加の促進に寄与するこの法律においても「アクセシビリティ」は重要な理念として掲げられており、この理念を具体化することが急務となっております。
 また、2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。世界中から選手を含め多様な障害をもつ多くの外国人が日本を訪れます。身体の運動機能に障害をもつ人だけでなく、視聴覚等の感覚機能に障害のある障害者が安全に移動することができ、あらゆる情報に自由にアクセスすることができ、また旅行等を楽しむことができるように整備する必要があります。私たち聴覚障害者が社会参加に必要な「手話言語法」「情報アクセス・コミュニケーション法」も含め、以下のとおり要望いたします。

1.障害者差別解消法について

1-1.「合理的配慮の提供」における「人的支援」について
 聴覚障害者にとっての合理的配慮は、手話通訳や要約筆記、文字情報の提供に係る人的支援が必要不可欠です。全省庁・全分野において、障害当事者への人的支援による「合理的配慮」に応えられるよう施策とその予算措置を推進してください。

1-2.省庁を横断する取り組みと予算の確保
 現在の意思疎通支援事業では、分野にかかわらず意思疎通支援のための手話通訳・要約筆記者等の設置・派遣を行っていますが、障害者差別解消法の施行に合わせ、各分野での基礎的環境の整備と合理的配慮の提供を進めていく際には、すべての分野において、意思疎通支援のための予算を確保し、その利用を推進することが必要です。
 合理的配慮や基礎的環境整備による支援の推進について、省庁を横断する取り組みを行ってください。

1-3.意思疎通支援事業の強化
 合理的配慮提供と基礎的環境の整備の推進のためにも、障害者総合支援法の意思疎通支援事業において「正職員による手話通訳者設置事業」を推進し、意思疎通に関わる人的な社会資源の確保を促進させることが重要です。また全国で50施設ある聴覚障害者情報提供施設は、意思疎通支援事業の人的支援において、地域センター的な役割を担っており、災害等への支援も含めて、その運営強化を図ることで、人的支援に関わる人材の確保が促進されます。これらのために必要な予算措置をぜひ講じてください。

1-4.「障害がある当事者」主体の政策審議について
 障害者の権利条約・改正障害者基本法・障害者総合支援法・障害者差別解消法に基づき進められていく障害者施策や政策を審議する国・地方の審議会や委員会の選任の際には、それぞれの分野で、あらゆる種別の障害当事者の声が反映されるようにすべきです。政策審議の場には情報・コミュニケーションに障害がある当事者団体を必ず含めてください。

2.緊急災害時にローカル番組を含むテレビ番組への字幕・手話通訳の付与について
 災害時には被災地における住民、そして被災地を見守る国民にとって、テレビ放送による迅速にして正確な情報提供はもっとも大切な情報源になります。基幹放送(民放)事業者では、地震発生直後から緊急放送を行っていましたが、字幕は各局によって付与状況がまちまちであり、手話通訳の付与はありません。そのため聴覚障害者は情報が得られにくい状況に置かれており、対応が遅れることで命を失う危険にいつも直面しています。
 緊急災害にこそ、ローカル番組を含むテレビ番組には常に「字幕」と「手話通訳」の付与を義務付けるよう、施策とその予算措置を行ってください。

3.「手話言語法」の制定について
 2013年10月に鳥取県において「手話言語条例」が制定されて以来、全国に手話言語条例の制定が進んでおり(2016年4月27日現在:6県36市5町)、手話言語条例を検討する県市町も増えています。
 また全国で1788ある都道府県・区市町村のすべての議会で「手話言語法」の制定を求める意見書が採択されました。国民の民意として「手話言語法」の必要性は支持を得ており、また、全国市長会、全国県議会議長会等も手話言語法の制定を求めています。早急に「手話言語法」の制定を進めてください。

4.情報アクセス・コミュニケーション手段の自己選択について
 情報へのアクセス手段やコミュニケーション手段の選択は自由に認められるべきであり、改正障害者基本法では障害当事者に手段の「選択の機会」が保障されています。選択手段によって障害者が不利な扱いをされないよう、情報アクセスやコミュニケーション手段を保障するため「情報アクセス・コミュニケーション法」を制定してください。

5.「手話マーク」および「筆談マーク」の作成について
 聴覚に何らかの困難をもつといわれる人は国内でも推定で1,000万人と言われており、身体障害者手帳を聴覚障害で取得している人数でも30万人を超えています。しかしながら、行政施設等の受付等で「手話での対応が出来ます」や「筆談での対応が出来ます」といった、聴覚障害者のコミュニケーション手段への配慮を示すマークがありません。「耳の不自由さを示す」マークや「手話」をあらわすピクトグラムは団体・個人によって作成されており、マークの乱立が懸念される状況です。
 聴覚障害者への配慮をよりわかりやすく示すためにも、「手話」や「筆談」といった配慮内容を示すマークを、当事者団体を含めたチームで作成し、そのマークを官民に関わらず自由に使用することができる国内共通のマークとして、啓発普及に取り組んでください。

6. ICTを利用した通信サービスの拡充について
 聴覚障害者の情報アクセスの一助として電話リレーサービスやテレビ電話等があり、海外の多くの国では整備されている制度ですが、わが国ではこの制度が整っていません。電話による情報アクセスが聞こえる者にとって社会の必須インフラであるように、聴覚障害者でも電話を利用できるためのシステム構築は、聴覚障害者の社会参加を飛躍的に向上させます。この通信サービスシステムの整備・拡充をぜひ進めてください。

以  上