総務省へ聴覚障害者の参政権等について要望書を提出



 2016年4月27日(水)、3団体政見放送検討委員会(全日ろう連/全通研/士協会)は、総務省を訪問、聴覚障害者の参政権等について要望書を提出し、意見交換を行いました。

【写真】総務省訪問の様子
【出席者】全日ろう連/中橋道紀・嶋本恭規、全通研/荻島洋子、士協会/武居みさ

総務省訪問の様子

2016年4月17日

総務省 政見放送関係事務担当者 様

三団体政見放送検討委員会
委員長 小 椋 英 子 

総務省訪問時(4月27日)の確認事項について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、手話言語法の早期実現をめざし、全国的な運動展開をした結果、手話言語法制定を求める意見書は、全国全ての自治体議会で採択されました。また、手話言語条例を制定する自治体も増え、「手話に対する認知・評価」が広がり、今後、ますます手話通訳士が必要となります。
 また、今年の4月には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され、行政機関等には合理的配慮が求められます。聴覚障害者の参政権が、全ての国民と同等に保障されるよう4月27日に貴省に訪問し、以下の内容について、話し合いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

1 聴覚障害者の参政権保障について
 2011年4月から、都道府県知事選挙の政見放送に手話通訳を付けることが認められ、参議院議員比例代表選出選挙、衆議院議員比例代表選出選挙と合わせ、政党(都道府県知事選挙では候補者)の「任意」という条件ながらも、手話通訳付政見放送が実現しており、手話通訳の付与率は徐々に上がっています。また、2013年の参議院比例代表選出選挙から字幕の導入が実現し、参政権保障が手話のわからない聴覚障害者にも拡大したことを嬉しく思います。
 しかし、現状では、手話通訳が全くつかない政党(候補者)もあり、聴覚障害者の参政権を保障した政見放送とは言い難いのが現実です。聴覚障害者が国民の一員として平等に選挙に参加する機会を保証すべく、衆議院・参議院・都道府県知事選挙のすべての政見放送に手話通訳及び字幕を義務付けられるよう早急にご検討ください。

2 政見放送や候補者の演説等に携わる手話通訳者の身分について
 公職選挙法により「選挙運動に従事する者のうち、専ら手話通訳のために使用する者」には「報酬を支払うことができる」とされていることについて、公正・中立を重要な倫理とする手話通訳者が選挙運動員とされることは、手話通訳者の社会的信用に関わるだけでなく、基本的な人権としての参政権を求める聴覚障害者の取り組みが選挙運動とみなされる懸念があります。手話通訳者については、「選挙運動に従事する者」に含めないこととし、手話通訳者の社会的信用と公正・中立を保障するとともに、公務員の手話通訳者も従事できるように早急にご検討ください。

3 政見放送に関する研修会の公費開催について
 現在、政見放送の手話通訳を担っている者は、「政見放送及び経歴放送実施規程」により手話通訳士となっておりますが、毎年、資格を取得する新たな手話通訳士や関係法令等の改正の理解及び政見放送内容に関わる新しい手話の習得のために「政見放送従事者研修会」が必須となっております。現在、未実施である参議院議員選挙区選挙や都道府県知事選挙に対応できるよう、選挙ブロック毎での研修会を1年に1回以上国の責任の元に開催していただくようご検討ください。

4 政見放送収録時の手話通訳士の環境整備について
 手話通訳士は、政見放送の手話通訳を担うにあたり、様々な準備を行った上で手話通訳現場に臨んでいますが、選挙関係者が集まり、時間等の制約もある中での収録は、極度の緊張が強いられます。また、候補者によっては、事前の資料がなく、内容が把握できないまま収録となるケースもあります。
 担当する手話通訳士が、本来持っている技術を十分発揮できるよう選挙関係者とは別の場での収録、それが難しいのであれば、環境整備や事前資料の準備をしていただけるようご検討ください。

三団体政見放送検討委員会事務局
一般社団法人日本手話通訳士協会