厚生労働省の障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方に関する論点整理のための作業チーム」(第2回)によるヒアリングへ意見書を提出



日時:2015(平成27)年3月12日(木)14:00~16:00
場所:TKPガーデンシティ竹橋10階ホール10C
出席:小中副理事長、長谷川副理事長
厚生労働省HP会議情報:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000076291.html

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写真左:(右より)小中副理事長、長谷川副理事長

全日本ろうあ連盟より、下記の意見書を提出しました。

2015年3月12日

団体ヒアリング等を踏まえた事項について

一般財団法人全日本ろうあ連盟

○意思疎通支援事業についてどのように考えるか。
○現行制度の内容・運営についてどのように考えるか。

  • 意思疎通支援事業の対象者の範囲をどのように考えるか。
  • 介助技術に関するものや意思決定に関するもの等と意思疎通支援事業との整理についてどのように考えるか。
  • 意思疎通支援事業についてそのニーズや支援のあり方についてどのように考えるか。
  • 小規模市町村等での事業実施についてどのように考えるか。

 ⇒対象者の範囲については、中軽度難聴者も意思疎通に困難があり要約筆記等の支援を求めている。また18歳未満の聴覚障害児もニーズがあり検討が必要である。

 ⇒手話通訳事業において設置・派遣される手話通訳者は、相談支援事業と同様に、様々な障害福祉サービスを利用するための前提としての意思疎通支援の役割を担ってきた。かつ、意思決定支援の側面も合わせて行ってきた実態がある。意思疎通支援と意志決定支援が一体になっているケースを踏まえ、十分な検討が必要である。

 ⇒障害者差別解消法における行政サービス分野の合理的配慮と、障害者雇用促進法における合理的配慮の施行をひかえ、これらの合理的配慮の推進とこれまでろう者の生活領域全般を対象領域としてきた意思疎通支援事業の今後の果たす役割を整理していくなかで、意思疎通支援事業についてのニーズや支援のあり方を検討する必要がある。

○意思疎通支援事業についての財政的措置のあり方についてどのように考えるか。

  • 個別給付化した場合のメリット・デメリットの整理についてどのように考えるか。

 ⇒メリットとしては、現在、地域による格差が大きいことから個別給付化により全国均一のサービスが受けられ、地域格差の解消がすすむものと考えられる。
 一方でデメリットとしては、

  • 意思疎通支援は手話通訳の利用をろう者だけが受けるものとされ、ろう者に利用者
    負担が発生する。
    しかし、手話通訳は聞こえる人もろう者も等しく恩恵を受ける支援であり、利用者 
    の負担は無料とされてきた。
    あらためて述べるまでもないが障害福祉サービス事業を利用するための相談や説明
    を受ける場合の利用者負担は考えられない。
  • 複数、あるいは不特定のろう者が集まる会議、研修、集会などの団体派遣は、個別
    給付になじまない。
<参考>
 障企自発0327第1号、平成25年3月27日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長名「地域生活支援事業における意思疎通支援を行う者の派遣等について」別紙1「○○市(区市町村)意思疎通支援事業実施要綱」では、第14条に「意思疎通支援者の派遣に要する申請者の費用負担は、原則無料とする。ただし、意思疎通支援業務を行う際に必要となる意思疎通支援者に係る入場料、参加費その他これらに類する費用は申請者が負担しなければならない。」とし、また、別紙2「○○県(都道府県)意思疎通支援事業実施要綱」でも第14条に同じ書きぶりで利用者負担についての考え方を示している。
 また、当事者団体等への派遣については区市町村にあっては第12条で、都道府県にあっては第9条で示している。

 ⇒メリット、デメリットを十分に検討し、全国どこでも必要なサービスが同じ仕組みで提供されるシステムに加え、地域の特性が生かされる仕組みについても検討が必要である。

○意思疎通支援関係の人材養成についてどのように考えるか。
○意思疎通支援の人材養成についてそのニーズや支援のあり方についてどのように考え
るか。

  • 研修カリキュラムのあり方等についてどのように考えるか。
  • 専門的な知識を必要とする意思疎通支援についてどのように考えるか。

 ⇒現在、行われている手話通訳技能認定試験の実態は、広く手話通訳者を対象とし、一定の力量を持った手話通訳者を認定する制度と考えられる。このことは国語など学科が4科目、実技が2科目と極めて限定された知識を問うこととなっているものから明らかである。さらに限定された試験範囲ではあるが合格までの学習経験年数を見ると専門学校など学校養成の場では5年未満、自治体が実施している地域養成では10年から15年が多く、手話通訳士の平均年齢が50歳程度となる現状を生み出している。
 したがってこれまでの地域での養成カリキュラムと併せ、高等教育機関等での手話通訳士養成が行えるようにすることで、障害者福祉の担い手として基礎教育に視点を移し、仕事を通じて成長できるシステムとするための検討が必要である。

 ⇒地域で養成する手話奉仕員及び手話通訳者養成については、講師不足に悩む地域が多く、講師の養成システムが必要な状態に直面している。講師養成のカリキュラムがなく、国の予算がない現状では、都道府県の財源状況によって講師養成の実施方法がまちまちという状態である。早急に地域での養成のありかたを検討するとともに、講師養成カリキュラムについても講師養成のかかる財源の確保を含めて検討が必要である。

○意思疎通支援に係る支援機器の活用等についてどのように考えるか。
○支援機器の活用、開発普及の取り組み等についてどのように考えるか。

 ⇒支援機器の役割は大変大きなものがあると認識している。これらの機器が使えず、あるいは更なる困難を抱え込む対象者もいることを考慮する必要がある。また障害者福祉の対象としてどのような支援が必要になるかの検討が必要である。

 ⇒このことを前提に、ろう者・難聴者に必要な支援機器の一例として、電話リレーサービスと遠隔手話・要約筆記通訳サービスがある。手話通訳者がその場にいなくてもタブレットにより手話通訳支援を行う事ができる遠隔手話通訳サービスは、手話通訳者不足の地域や夜間等緊急時の対応で大きな成果をあげることができる。手話言語条例を制定した都道府県、市町村においてこのようなサービスを導入しているところがあることを申し添える。

○合理的配慮との関係についてどのように考えるか。

 ⇒合理的配慮に基づく施策により、基礎的環境の整備と共にアクセシビリティ政策を推進していくことで、社会のあらゆる分野、場面での意思疎通支援が十分に進展していくことが望まれる。この合理的配慮が十分進展すれば意思疎通支援事業の占める役割は小さくなるものと考えられる。しかし、そのためには、まず合理的配慮に基づく意思疎通支援の在り方(支援者の確保の方法など)について十分検討していくことが必要である。意思疎通支援事業を単に縮小するということではなく、国として責任をもってどのように合理的配慮を推進していくか、その上での障害者福祉における意思疎通支援事業のあり方を十分に検討し、国として責任ある方向を示されたい。

○教育・放送分野等福祉施策以外の分野との関係についてどのように考えるか。

 ⇒上記、合理的配慮との関係について述べたことと同様である。