自由民主党ユニバーサルデザイン社会推進議員連盟へ「聴覚障害者にかかる政策に関する要望書」を提出



 2015年2月20日(金)、自由民主党ユニバーサルデザイン社会推進議員連盟のヒアリングがあり、長谷川副理事長と久松事務局長が出席、要望書を提出、説明を行いました。

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連本第140628号
2015年2月20日

自由民主党 ユニバーサル社会推進議員連盟
会長 石破 茂 様

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者にかかる政策に関する要望について

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 2014年2月19日をもって我が国は「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)同条約の締約国となりました。この障害者権利条約では「アクセシビリティ」が重要な権利として位置づけられています。また、2年後の施行に向け内閣府でも整理が進められている「障害者差別解消法」においても「アクセシビリティ」は重要な理念として掲げられており、この理念を具体化することが急務となっております。
 2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。世界中から選手を含め多様な障害をもつ多くの外国人が日本を訪れます。身体の運動機能に障害をもつ人だけでなく、視聴覚等の感覚機能に障害のある人もたくさんいます。障害者が安全に移動することができ、あらゆる情報に自由にアクセスすることができ、また旅行等を楽しむことができるように整備する必要があります。私たち聴覚障害者が社会参加に必要な「情報アクセス・コミュニケーション法」「手話言語法」も含め、以下のとおり要望いたします。

1.障害者差別解消法について
1-1. 「合理的配慮」について
 障害者差別解消法にかかる合理的配慮について、基本方針が閣議決定後、各省庁等において対応要領・対応指針の検討が始まりますが、聴覚障害者への合理的配慮は「筆談等」のみで対応するという方針でまとめられようとしています。貴党においては自主的に手話講習会が開催され、「手話」に対する理解が高まってきております。国及び各省庁等においても、職員研修に「手話」を導入する等で「手話」に対する理解を徹底していただき、併せて合理的配慮の指針は、「手話・筆談等」で対応すること、および対応要領・対応指針においても同様に統一することをお願いいたします。
1-2. 「合理的配慮の提供」における「人的支援」について
 聴覚障害者にとっての合理的配慮は、手話通訳や要約筆記、文字情報の提供といった人的支援が必要不可欠です。全省庁・全分野において、障害がある当事者への人的支援による「合理的配慮」に応えられるよう施策とその予算措置を推進してください。

2.「情報・コミュニケーション法」の早期制定を!
2-1. 情報アクセス・コミュニケーション手段の自己選択について
 コミュニケーション手段は当事者自らが選択すべきであり、その選択によって不利な扱いがされないよう、情報アクセスやコミュニケーション手段を保障するための法律を制定してください。
2-2. 「検討会」の設置について
 各省庁に横断的に関わる事項を統括する立場にある内閣府において、視覚、聴覚、言語の機能障害その他の障害のため「情報アクセス・コミュニケーション保障」の法制化を検討する「検討会」を立ち上げ、同時に聴覚障害をもつ当事者等に委員を委嘱するよう推進してください。

3.「手話言語法」の制定について
3-1. 「手話言語法」の早期制定を!
 昨年10月に鳥取県において「手話言語条例」が制定されて以来、全国に手話言語条例の制定が相次ぎ、今年度も全国各地で手話言語条例を検討している県市町が増えてきています。また全国で1700市町村を超える自治体のうち1550を超える議会が「手話言語法」の制定を求める意見書を採択しております。早急に「手話言語法」の制定を進めてください。
3-2. 「手話言語」の教科導入を進めてください
 障害者権利条約では「手話の習得」を容易にすることが謳われていますが、ろう学校には「手話言語」を教科として学ぶ仕組みがありません。ろう児のもっとも自然な言語である「手話」の文法力、表現力、手話が生まれ育まれてきた歴史や文化を学ぶことによって、ろう児は自らのアイデンティティを確立し、主体的に生きるための総合的な言語活動が充実します。また手話で国語を学ぶことによって、思考力や判断力、表現力が発達し、「生きる力」を身に付けることが期待できます。

4.障害者のための防災ネットワークの構築について
 災害時の被害を少しでも減らすためには、平常時からの防災に向けた取り組みが重要です。東日本大震災では障害者の死亡率は住民全体の2倍以上であったとされています。聴覚障害者は災害時や復興時に適切な情報を受け取ることができず、多くの方が犠牲となりました。
 災害時に障害者が適切な情報や支援を受けられるような地域体制を検討し、体制構築のための取り組みを推進してください。
 (提案:NPO法人CS障害者放送統一機構が提供している「聴覚障害者用情報受信装置・アイドラゴン3(厚生労働省各市町村日常生活用具)」を全国の指定福祉避難所と、主として障害者が日常的に出入りする公共施設に配置する等)

5.「障害がある当事者」主体の政策審議について
 障害者の権利条約・改正障害者基本法・障害者総合支援法・障害者差別解消法に基づき進められていく障害者施策や政策を審議する国・地方の審議会や委員会の選任の際には、それぞれの分野で、あらゆる種別の障害がある当事者の声が反映されるようにすべきであり、情報・コミュニケーションに障害がある当事者団体を必ず含めてください。

6.「ユニバーサルデザイン」の促進及び普及について
 障害者の権利条約第四条にも明記されておりますが、障害者に適した新たな機器や支援機器、支援サービスについて、文字表示機器をはじめとする「ユニバーサルデザイン」の製品・サービス・設備及び施設利用を促進させるための施策を進めてください。今後施策を進めるための検討の機会が設けられるときには、必ず当事者も委員にいれて、はじめから検討に関われることを必ず行ってください。またサービス産業等が提供するサービスにおいて情報アクセスやコミュニケーション保障が図られる施策を推進してください。

以 上