文部科学省へ「ろう教育等に関する要望について」要望書を提出



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 9月30日、文部科学省特別支援教育課を訪問し、要望書を手渡し、意見交換を行いました。
 
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左から:久松事務局長、小出教育・文化委員長、石橋教育・文化副委員長、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課井上課長

連本第140350号
2014年9月30日

文部科学大臣
下村 博文 様

〒162-0801東京都新宿区山吹町130SKビル8階
 Tel03-3268-8847・Fax03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎  

ろう教育等に関する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて当連盟は、2014年6月14日長野県長野市において開催された第62回全国ろうあ者大会にて、ろう教育に関する大会決議を行ないました。
 ついては、ろう児が手話による教育を受ける権利の保障に関して、下記の通り要望いたします。

1.ろう児の求めるあらゆる教育ニーズに対応できるよう、ろう児が在籍する学校に高い専門性を有する教職員の配置を進めてください。
(説明)
 2014年2月に日本が批准した「障害者権利条約」24条(教育)では、一人ひとりのろう児にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段の確保、及び手話の習得等が謳われています。
 ろう児はろう学校においても地域の学校においても、聞こえる子どもたちと平等に教育を受ける必要があります。合理的配慮のある環境整備を推進し、ろう児のもっとも自然な言語である「手話」で教科を教えることができる専門性の高い教職員の配置を促進するなど、ろう教育の専門性を高めるための施策を積極的に行ってください。
 また、教職員が手話で教えるためには、手話の習得が必須となります。障害者権利条約では手話について能力のある教員の雇用、並びに研修が謳われています。教員に対する手話習得の研修制度を採り入れ、研修制度の拡充を積極的に図ってください。

2.ろう児のアイデンティティ確立のため、ロールモデルの役割を担うことができるろうの教職員の採用促進と、職務遂行のうえでその能力を最大限に発揮するための配置や職場環境の改善について、具体的な取り組みを行ってください。
(説明)
 障害者権利条約24条には「聾社会の言語的な同一性の促進を容易にすること」が謳われています。一人ひとりのろう児が自身の成長や将来像を描くためにも、ロールモデルの役割を担うろうの教職員は極めて重要です。ろう学校におけるろうの教職員の採用を積極的に推進してください。
 また、「障害者権利条約」第21条では、障害者が自ら望む意思疎通支援手段の行使を謳っています。意思疎通手段として手話の使用を認め、ろう者の教職員が能力を最大限に発揮するための配置や情報保障等、職場環境の改善などの合理的な配慮を促進させる取り組みを行ってください。

3.貴省がその設置を推進している「スクールカウンセラー」について、ろう学校にもその設置や派遣について、更に推進するようにしてください。
(説明)
 児童生徒や保護者の抱える悩みを受け止めるため、貴省ではスクールカウンセラーの設置や派遣を推進していますが、現状では、地域や学校ごとに大きな差があります。
 全国のどの地域においても、特別支援学校やろう学校へのスクールカウンセラーの設置・派遣が行われるよう、格差の是正を図ってください。また、就学前の幼児(0~5歳児)や保護者への相談等支援体制の構築を進めてください。

4.国語と同様に「手話言語」を体系的に学ぶことで、ろう児が自分の力で考え、判断し、意見を表出できることによって、総合的な言語力と生きる力が身につくことができるよう、「手話言語」を教科として導入することを早急に進めてください。
(説明)
 障害者権利条約では「手話の習得」を容易にすることが謳われていますが、ろう学校には「手話言語」を教科として学ぶ授業がありません。ろう児のもっとも自然な言語である「手話」の文法力、表現力、手話が生まれ育まれてきた歴史や文化を学ぶことによって、ろう児は自らのアイデンティティを確立し、主体的に生きるための総合的な言語活動が充実します。同時に手話で国語を学ぶことによって、手話と日本語の二つの言語を繋げ、思考力や判断力、表現力が発達し、「生きる力」を身に付けることが期待できます。
 貴省学習指導要領の前文にある「生きる力」を育むためにも、早急に「手話言語」の教科を導入することを推進してください。

5.学習指導要領にある「総合的な学習の時間」に、ろう者や手話等の理解・普及のための副読本を取り入れてください。
(説明)
 小学校、中学校、高等学校で行われる「総合的な学習の時間」では、教科書や副読本は使用されず、それぞれの学校で任意に内容を決め、授業が行われていますが、この時間に、様々な障害者について正しく学ぶことが必要と考えます。この時間に活用するろう者や手話等の理解・普及のための副読本について、文部科学省として検討を行ってください。