第2回「障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合」ヒアリングにて意見書を提出



●第2回「障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合」ヒアリング
日時:平成26年8月4日(火)17:00~19:00
場所:厚生労働省 専用第12会議室(12階)
出席:長谷川副理事長
資料:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000051912.html (厚生労働省ウェブサイト内)

障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合
(第2回/2014 年8 月4 日)への意見書

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野富志三郎

 聴覚に障害がある場合は、その聴力の程度や失聴の時期によって、また、音声言語の獲得環境によって、音声をまったく発することができないか、発語しても発声機能を喪失している場合があります。しかし、多くの聴覚障害者は、その喪失しているとされる「音声」を自身の聴覚で聞き取ることが難しいため、国民年金・厚生年金保険障害認定基準にある「言語機能喪失(ここでの言語とは音声言語をいう。)」を認識することが希薄です。また、聴覚障害者の場合、自身の「言語機能」として「手話」や、音声言語の「文字」で意思を伝達するため、手や指の切断等により手話でのやりとりができなくなることや、視力の低下によって文字を読み取ることができなくなるといった事態を、障害として重く感じることが多くあります。このような事態を障害認定の対象とされることを別の機会にご検討されることをお願いしたいと思います。

1)認定要領にある、2級(音声又は言語機能に著しい障害を有するもの)の認定基準には、下記の記述があります。

「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

ア.音声又は言語を喪失するか、又は音声若しくは言語機能障害のため、意思を伝達するために身振りや書字等の補助動作を必要とするもの

イ.4 種の語音のうち3種以上が発音不能または極めて不明瞭なため、日常会話が誰が聞いても理解できないもの

聴覚障害者の場合、自身の発音を確認できないこともあり、一般に「発声訓練」を行います。しかしながら、発声訓練を施しても発声の個人差が非常に大きく、聴覚障害の程度と必ずしも比例していないことも特徴です。また語音としての発音と文節を伴った会話としての発音の聞き取りやすさは、全く別物であり、一つの語音の発音は出来ても、文章としての発音に困難さを伴う聴覚障害者もいます。
 「発音不能な語音」として4 種の語音のうち3種以上が挙げられていますが、これを音声による日常会話が理解できない基準とすることに問題があると考えます。音声による日常会話が理解できるかどうかは、語音一つひとつの明瞭度(あるいは不明瞭度)によって測られるものではなく、語音の組み合わせ、その組み合わせの長さ、音の高低、長文・短文を用いての発音の明瞭度等によって、文節を伴った日常会話が理解(成立)できるかどうかが決まります。従って、4種の語音の発音の明瞭度による判断ではなく、音声による日常会話が成立するあらゆる要件を勘案した総合的な判断を採択すべきであると思います。

2)3級(言語の機能に相当程度の障害を残すもの)の認定基準にある「日常会話や電話による会話において「家族は理解できるが、他人は理解できない程度」という記述は、音声言語の障害による「生活の不自由さ」の判定が正しく反映されない基準であると考えます。家族が理解できるかどうかということではなく、他人へ自分の伝えたいことを音声で伝えることができるか否かが重要であり、この「家族は理解できる」という記述については見直しが必要であると思います。

3)聴覚障害者の(音声)言語機能障害は、「聞き取れないことにより、発音がうまくできない」という聴覚障害に起因するものであり、聴覚障害に由来する別の障害(言語機能障害)が障害と認定されること自体を知らない聴覚障害者は多く存在します。発音に困難を伴う聴覚障害者に対し、(音声)言語機能の障害も認定が行えるという情報そのものを提供する機会を増やしていくことをお願いします。

以 上