厚生労働省/改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会(第2回)ヒアリングにて意見書を提出



●厚生労働省/改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会(第2回)ヒアリング
日 時:2013年10月11日(金)14:00~16:00
場 所:経済産業省 別館312 各省庁共用会議室
出 席:松本正志福祉・労働委員長

 全日本ろうあ連盟より下記の意見書を提出いたしました。
 厚生労働省職業安定局ウェブサイト:
  http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ajmk.html#shingi157916

(別紙1)

ヒアリング項目案(差別禁止)

第1 指針の構成について
 ○別添の指針の構成(案)について意見、他に盛り込むべき内容・項目があればお聞かせください。

第2 基本的な考え方に、
 対象となる障害者の範囲に加えて、障害者基本法の障害者の定義を入れ込むこと、それぞれの障害特性に基づく配慮を行うこと、その基本的な内容を記載すべきです。

第2 禁止される差別の具体例について
 ○募集・採用における禁止される差別の具体例をお聞かせください。
 ○採用後における禁止される差別の具体例をお聞かせください。

●募集・採用時の差別の具体例
1.聴覚障害への理解不足による採用拒否
 工場、サービス業等の分野で、音による判断や音声による指示ができない(指示が受け取れない)、また聞こえないことにより作業の際、危険があると判断され、採用そのものがなかなかされない状況があります。
2.募集要項の業務内容に「電話対応、接客対応」と掲載されている場合、その業務が勤務上、音声での対応が必須なのか、メール・FAX等の代替え措置の対応が可能なのかを明記されておらず、応募することができない場合があります。
3.採用面接時に手話通訳・要約筆記等の通訳が配置されないことがあります。
 
●採用後における差別の具体事例
1.スキルアップ(教育訓練)のための研修に際し、障害特性による配慮(聴覚障害者で言えば手話通訳・要約筆記等の情報保障)が明確ではないため、社内で行われる資格取得、教育訓練などの研修受講が、健常者の受講より難しいという状況があります。
2.配置・異動では、健常者のケースと異なる場合が多くあります。それらの理由として受け入れ先の体制や業種の制限等を挙げていますが、一般配置・異動とあまりに大きく乖離する場合、差別的取扱いとなりえると考えます。

第3 その他
 ○その他、指針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

・国の責務を明確に示すこと
・直接的な差別だけでなく、消極的な(間接的な)差別をなくすための差別防止の取り組みについても明記が必要である。
・「対象となる事業主」の範囲に、国家公務員及び地方公務員の雇用主である国と地方公共団体は入らないが、国と地方公共団体についての指針も必要である。

(別紙2)

ヒアリング項目案(合理的配慮)

第1 指針の構成について
 ○別添の指針の構成(案)について意見、他に盛り込むべき内容・項目があればお聞かせください。

第2 基本的な考え方に、
 対象となる障害者の範囲に加えて、障害者基本法の障害者の定義を入れ込むこと、それぞれの障害特性に基づく配慮を行うこと、その基本的な内容を記載すべきです。
 また、合理的配慮は「障害者からの申し入れ」により行われるものであるが、申し入れがなければ「提供しなくともよい」ものでもないことを、明記すべきであると考えます。

第2 合理的配慮の具体例について
 ○募集・採用における合理的配慮の具体例をお聞かせください。
 ○採用後における合理的配慮の具体例をお聞かせください。
 ※中小企業においても対応できると考えられる措置の具体例、事業主が取り組むことが望ましいと考える措置の具体例を御回答願います。

1.採用後における合理的配慮の具体的例について
① 情報保障の導入
聴覚障害者の場合、聴覚による情報収集ができないため、周囲との情報量に差が生じます。また、仕事上のやり取りはメール・FAX等で補完ができたとしても、周囲との日常的なコミュニケーションがない場合、些細なことでの行き違い等により、職場定着が困難になる場合もあります。
障害者がその能力を発揮するためにも、聴覚障害者採用の際は「情報をいかに本人に合った形で共有することができるか」に取り組む必要があります。
 
●コミュニケーションについて
1)1対1の場合、社内で手話学習者の協力を得る、仕事の流れを可能な限り見て分かるようにする。(PCメール等の利用)、口話、筆談等、本人と相談の上、双方にとって負担の少ない形でのコミュニケーション方法を確認する必要があります。
2)1対複数の場合(朝礼、会議等)は、会社内での情報共有化を図るために、手話通訳等の情報保障だけでなく、IT等の設備を活用し、音声情報を見て分かるようにする必要があります。
また一般の社員に、情報保障が聴覚障害者にとって、いかに重要であるかを理解してもらうためにも、聴覚障害の特性について、ガイドラインやマニュアル、研修等にて学習する必要性があります。
 
●会議、朝礼等の「情報保障」について
レジュメや議事録の配布は「記録の補完」であって、会議や朝礼の場所で、何が行われているかをリアルタイムに知ることはできません。
話し合いの場で、どういった情報が取り交わされているのかを知り、またその場で自分の意見を発言する機会が保障されることが必要です。
障害の程度や本人の希望するコミュニケーション手段を選択できるよう、筆談やFMマイクの活用、手話通訳・要約筆記派遣等の情報保障を検討することが重要です。
 
② 被雇用者の相談支援体制
コミュニケーション不足・情報不足によって、人間関係での問題が発生した場合に備え、第三者的な相談支援機関(聴覚障害者情報提供施設等)との連携(または社内設置)が必要になります。
 
③ 中企業における合理的配慮の措置などについて
中小企業の多くは、財政的な面もあり、聴覚障害者採用後の合理的配慮が十分に行えない可能性があるため、国からも積極的な支援が必要になります。
・全国の労働局主催で、障害の特性に対する理解、支援方法などの研修を行うこと
・聴覚障害者に対する合理的配慮を図るための支援機器の購入の助成制度を導入すること
・情報保障のための通訳料の負担を軽減する措置を図ること
 
等が挙げられます。

第3 過重な負担の判断要素について
 ○過重な負担の判断要素はどのようなものが考えられるかお聞かせください。

 手話通訳・要約筆記派遣等の「情報保障」費用や、文字等、視覚によって分かるよう配慮された職場環境整備のためのIT機器の導入費用等の負担があげられます。
 しかし、情報保障の質・量については、企業・被雇用者とも十分協議をし、一律的でなく、情況に合わせた柔軟な対応をお互いに考えていくべきであると考えます。
 
<事例>
・定例会議や面談、研修 →①手話通訳・要約筆記派遣、②社内に手話通訳者・要約筆記者を設置(職員採用あるいは社内研修で養成)
・朝礼や緊急会議 →IT等の設備がなくとも、ホワイトボードの活用や、隣にいる社員がメモをとって見てもらう等の協力体制を敷く(音声情報の可視化)。
 
 また、「過重な負担」の判断は、誰によって、どのように行われるかを明示すべきです。
 
 以上の費用負担軽減のため、国では「重度障害者介助等助成金制度」において「手話通訳者担当者の委嘱」という項目で費用助成を行っています。
 しかしながら、この助成金には申請は3級以上の聴覚障害者という制限や年間利用の限度額(28万8千円)や、助成期間(10年)という制約が設けられています。
 障害者雇用の助成は、あくまで採用初期にかかる経費補助という位置づけであり、助成期間後は各企業にて、障害者雇用にかかる費用を予算化すべしとの見解であると理解していますが、ハード面での整備とは異なり、情報の保障は聴覚障害の社員の入社から退職までの期間において、質・両を変化させながらも継続的に必要な配慮になります。
 企業において、採用後10年とは、社員が独り立ちをし、まさにこれからという時期であり、情報保障がますます必要となる時期に差し掛かります。
 中堅社員の能力が最大限発揮でき、会社活動に大きく貢献できる環境整備が必要となります。会社への貢献の度合を考慮した場合、情報保障の取組みが過重な負担となるような判断は避けるべきです。

第4 相談体制の整備等について
 ○相談体制の整備の具体的方法、プライバシーの保護、合理的配慮に関し相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止の周知を記載することでよいかお聞かせください。

 現時点においても、勤務先に合理的配慮を申し入れることにより、その障害者が不利益を被る例が後を絶ちません。
 被雇用者のみならず、雇用者が障害者の採用にあたって、いつでも相談し、対応できるための相談機関の強化についても、記載に含めるべきだと考えます。
 
例:聴覚障害者情報提供施設、行政のろうあ者相談員、職業安定所(ハローワーク)の手話協力員等の活用等。

第5 その他
 ○その他指針の作成に当たり留意すべき点や整理すべき点等があればお聞かせください。

・企業の「過重な負担」を頻発させないためにも、国の支援体制を明確にするとともに、障害者雇用支援について、一律ではなく、雇用されている障害者の特性や状態などに合わせて柔軟に支援を受けられるよう、助成金制度の見直しについても、項目に加えるべきではないかと考えます。
・「対象となる事業主」の範囲に、国家公務員及び地方公務員の雇用主である国と地方公共団体は入らないが、国と地方公共団体についての指針も必要である。