公職選挙法改正 ~「ネット選挙」解禁への、視聴覚障害者のアピール~



公職選挙法改正
~「ネット選挙」解禁への、視聴覚障害者のアピール~

 今般、公職選挙法が改正され、本年7月21日投票の「第23回参議院議員通常選挙」から、いわゆる「ネット選挙」が解禁となりました。
 これまで法律によって制限されていた、ウェブサイト、ソーシャルメディア、電子メールなどでの選挙活動が、公示日後も行えるようになり、候補者から有権者に対し、ネットを通して直接自分たちの政策を訴えることができるようになりました。それにより、有権者はこれまでより多くの情報を得ることが可能になると思われがちですが、私たち、視覚や聴覚に障害がある有権者には、それらを十分に享受できるわけではありません。
 例えば、候補者がそれぞれのホームページで自らの政策を動画で訴えても、その動画に手話通訳や字幕が挿入されていなければ、聴覚に障害がある者はその情報を得ることはできませんし、視覚に障害がある者は情景などを音声で解説を付けてもらわない限り、十分に情報を把握できません。政見放送には手話通訳や字幕を付けることが認められていますが、それはあくまでも「政党の申し出」に委ねられており、政見放送のすべてに手話や字幕をつけることが義務とされているわけではありません。
 候補者が自分の政策をウェブサイトにアップしても、視覚障害者の使用する「読み上げソフト」で読める形のものでなければ、何がそこに書かれているかを知ることはできませんし、画面の白黒反転や文字を大きくするなどの見やすさへの配慮も不可欠です。また「選挙公報」については、公職選挙法に点字版・録音版・拡大文字版の選挙公報の規定がないために、視覚障害者選挙情報支援プロジェクトの全文点訳・音訳・拡大文字版を依頼する選挙管理委員会と、地元のボランティア団体に製作を依頼するところなど、地域間格差が生じています。
 視覚や聴覚の両方に障害のある盲ろう者の多くは、パソコンから情報を得ることができない環境におかれています。特に、文字・点字・音声による情報取得が困難な盲ろう者は、そのコミュニケーション方法とニーズに応じた通訳・介助員による支援がないと選挙公報やウェブサイトの内容を知ることができません。
 私たちは、視覚や聴覚に障害を有するため、情報へのアクセスに困難さが生じます。それを解決するため、手話通訳や字幕、点字や読み上げソフトによる「情報保障」が必要ですが、このことを発信者側も意識して対応しなければ、私たちは情報を的確に受け取ることができません。
 情報は、発信者側の環境整備だけでなく、受け手側の状況に合わせたものでなければ、伝わらないものなのです。
 今回の改正で、これまでより多くの情報を文字や音声で得ることが可能となりましたが、障害がある有権者への情報発信はより一層強化すべきです。そのための情報保障への取り組みをなお一層強化して欲しいと願っています。
 
 2013年7月9日

社会福祉法人 日本盲人会連合
一般財団法人 全日本ろうあ連盟
一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
社会福祉法人 全国盲ろう者協会