農林水産省へ「聴覚障害者等の獣医師免許交付に対する要望について」を提出



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 2013年4月26日(金)、連盟福祉・労働委員会は、農林水産省を訪問、聴覚障害者等の獣医師免許交付に対する要望について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
写真 → 農林水産省訪問:松本福祉・労働委員会委員長
 

連本第1300047号
2013年4月26日

農 林 水 産 大 臣
    林 芳 正 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者等の獣医師免許交付に対する要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申しあげます。
 さて、貴省管轄下の「獣医師法施行規則」では、聴覚障害者等の獣医師免許取得に不当な制限をし、聴覚障害者等の「完全参加と平等」が阻まれる文言が存在しています。
 一方、政府は、障害者権利条約の批准に向けての国内法整備の一環として、「合理的配慮の不提供」は差別に当たると解し、障害者への差別を解消するための取り組みを盛り込んだ障害者差別解消推進法案を国会に提出する準備を始めております。
 聴覚障害者等の資格取得を阻む欠格条項の見直しに着手し、聴覚障害者等の社会参加促進を図ることができるよう下記の通り改善を要望いたします。

1.獣医師免許の資格制限条件から「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能」障害を理由とする条項を撤廃し、障害のある人の免許取得が容易となるよう、強く求めます。

2.獣医師試験に合格した聴覚障害者の免許取得について、速やかに獣医事審議会に諮り、直ちに公正な決定を行い、4月に遡って免許交付を行うことを求めます。

【経緯】
 ある聴覚障害者が、本年3月に獣医師国家試験に合格しましたが、聴覚障害の理由により免許の交付が遅れているという問題が起きました。
 今般、聴覚障害者が免許申請の手続きをした際、貴省畜水産安全管理課から、「獣医師免許を付与するかどうかは獣医事審議会の審議にかける。本年4月1日から審議に入るので、免許交付は遅れる」との連絡を受けました。通常であれば、一般の合格者は4月1日に免許が交付されますが、聴覚障害者への交付は2カ月ほど後になり、「最悪の場合、障害を理由として免許を与えないこともある」と説明されています。
 その後、聴覚障害者は、本年4月に就職しましたが、上記の獣医師免許が交付されていないとの理由により、現在は、臨時職員扱いとされております。国家試験に合格したにもかかわらず、国の法律によって免許取得が遅れ、その結果、就労も阻まれました。
 なお、過去に聴覚障害のある者が獣医師免許を取得している例があることを申し添えておきます。

【意見】
 獣医師法の第5条の1において、「心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者として農林水産省令で定めるもの」は免許を与えないことがあると定め、獣医師法施行規則第1条の二で、「心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者」として 「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により獣医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と規定しています。
 しかし、獣医学分野は非常に幅広く、臨床だけでなく、感染症の予防、食の安全といった公衆衛生分野、基礎医学的な研究分野など、様々な分野に広がっています。
 懸念されているであろう聴診に関しても、現在、様々な器具が開発されており、聴診器を通さずに、心音、肺音等を増幅して確認できる方法もあります。
 また、健聴者とのコミュニケーションにおいても、メモやパソコンを使っての筆談、メールやインターネットによる交信、音声と文字・手話変換用ソフトの活用等、国内外を問わず、種々の専門職種との討議、意見交換や情報交換ができるようになってきています。
 なお、上記の聴覚障害者の就職先でも、聴覚障害を補う手段や働ける条件は整っているので、働きやすい環境であり何ら問題はないとのことです。
 ご存知かと思いますが、すでに多くの聴覚障害者が医師、薬剤師等の医療分野に従事しています。障害の有無にかかわらず、全ての人が共生していける社会を構築していくことがわが国の命題となっております。
 獣医師免許の資格制限条件から、視覚、聴覚、音声や言語機能等の障害を理由とする条項の撤廃を強く求めます。

以 上

【獣医師法】
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO186.html
 
第5条
次の各号のいずれかに該当する者には、第三条の免許を与えないことがある。

一 心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者として農林水産省令で定めるもの

二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 罰金以上の刑に処せられた者

四 前号に該当する者を除くほか、獣医師道に対する重大な背反行為若しくは獣医事に関する不正の行為があった者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者

五 第八条第二項第四号に該当して免許を取り消された者

2 前項各号のいずれかに該当する者から免許の申請があったときは、農林水産大臣は、獣医事審議会の意見を聴いて免許を与えるかどうかを決定しなければならない。

【獣医師法施行規則】
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24F00601000093.html
 
(心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者)
第一条の二

法第五条第一項第一号 の農林水産省令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。

一 視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により獣医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者

(障害を補う手段等の考慮)
第一条の三

農林水産大臣は、獣医師の免許の申請を行った者が前条に規定する者に該当すると認める場合において、当該者に免許を与えるかどうかを決定するときは、当該者が現に利用している障害を補う手段又は当該者が現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない。

(薬剤師法)
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO146.html
 
(相対的欠格事由)
第5条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

1.心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの

2.麻薬、大麻又はあへんの中毒者
3.罰金以上の刑に処せられた者
4.前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があった者

(薬剤師法施行規則)
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36F03601000005.html
 
第一条(免許の申請手続)

 薬剤師法施行令 (昭和三十六年政令第十三号。以下「令」という。)第三条 の薬剤師の免許の申請書は、様式第一によるものとする。

2 令第三条 の規定により前項の申請書に添えなければならない書類は、次のとおりとする。

二 視覚若しくは精神の機能の障害又は麻薬、大麻若しくはあへんの中毒者であるかないかに関する医師の診断書

(障害を補う手段等の考慮)
第一条の三

 厚生労働大臣は、薬剤師の免許の申請を行った者が前条に規定する者に該当すると認める場合において、当該者に当該免許を与えるかどうかを決定するときは、当該者が現に利用している障害を補う手段又は当該者が現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない。