自民党障害者特別委員会へ「障害を理由とする差別を禁止する法制」について要望を提出



 2013年3月21日(木)自民党障害者特別委員会による「障害者の差別禁止に関する施策について」ヒアリングがあり、長谷川副理事長と久松事務局長が出席し要望書を提出しました。

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連本第120611号
2013年3月21日

自由民主党 政務調査会
障害者特別委員長 衛藤晟一様

財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

「障害を理由とする差別を禁止する法制」について

 日頃より、聴覚障害者の福祉向上について、格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申しあげます。
 昨年9月14日、内閣府障害者政策委員会差別禁止部会から「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見が発表されました。障害者の社会参加には、障害を理由としての排除をなくし、その障害による不利益をなくすための「合理的配慮」を取り入れることが必要な条件となります。私たち聴覚障害者の社会参加に必要な「情報アクセス・コミュニケーション」も含まれる「障害者差別禁止法」についてその成立を求めたく以下の意見を提出いたします。

① 「障害者差別禁止法」の早期制定・今後のガイドライン策定について
 内閣府障害者政策委員会差別禁止部会の意見を最大限反映し、本法律を一日も早く成立させていただくと共に、今後、国や地方で行われる「差別禁止にかかるガイドライン策定」について、必ず障害当事者を含めるようにしてください。

② 紛争解決にあたる機関の在り方
 紛争解決の機関は、すべての障害者に対し開かれたものにする必要があります。差別禁止法を運用するにあたり、紛争解決のために設置される機関とその役割については、裁判所と同様に、内閣からの独立性を担保しつつ、この場面においても、当事者間の情報アクセスやコミュニケーションの保障がなされることを明記してください。

③ 横断的に存在する「情報・アクセス」の明記
 各則「情報・コミュニケーション」では、「情報提供・意思疎通」という枠組みで提言されています。しかしながら、コミュニケーションには常に相手方が存在し、どの分野においても必ず発生します。情報保障やコミュニケーション保障が不要な分野は存在しません。各則に明記されるあらゆる分野の差別をなくすためにも、どの項目にも「情報・コミュニケーション」の「合理的配慮」について明記してください。

④ 言語及びコミュニケーション手段の自己選択
 聴覚障害者は音声からの情報を得ることができないため、手話言語や文字情報といった視覚的手段から情報を入手することも少なくありません。しかし、残存聴力の程度も個々人によって異なるように、手話通訳を選択する人もいれば、要約筆記や文字通訳を選択する人もいます。盲ろう者も同様です。コミュニケーション手段は当事者自らが選択できるよう明確に記載されることを求めます。

⑤ 情報・コミュニケーションでの「差別をしてはならないとされる相手方の範囲」
 部会意見では「一般公衆へ情報を提供する相手方」の中に事業者も含めた記述となっていますが、中でも「電気通信事業法(昭和59年法律86号)に基づき電気通信役務を行う事業者」については、音声通信のみならず、それに代わる通信手段(電話リレーサービス等)も提供することが、音声通信手段へのアクセスが制限されている障害者にとって合理的配慮となることを明確にするためにも、「差別をしてはならない相手方」として記載する必要があると考えます。

⑥ 教育分野における「環境」について
 部会意見では「インクルーシブ教育」に主眼が置かれていますが、聴覚障害教育の分野では、聴覚障害児には、おかれる環境が非常に重要なものであることも指摘されています。聴覚障害児にとって、地域の学校の一般学級はもちろん、選択しうる環境の1つとしてろう学校や難聴学級があり、そういった情報を保護者や本人へ提供しないことは差別であることを踏まえ、インクルーシブ教育と併記して、こういった障害特性に合わせた教育環境を整備する場があることを明記していく必要があると考えます。

⑦ 合理的配慮の不提供についての制約
 医療や司法等、個人の生命や人権を脅かす可能性のあるものについては「合理的配慮の不提供」について、「過度の負担」を容易に認めることのないよう一定の制約を設けてください。

⑧ 「合理的配慮」の実行を担保する財源の明記
「合理的配慮」が国民の理解が得られ広く実行するためには、財源の保障が必要です。「合理的配慮」の実行を確実にするためにも財源を明記してください。

⑨ 法的救済と損害賠償請求権
 部会意見では、法的救済については、差別禁止法ではなく民法等の一般法によって定められるとなっています。「合理的配慮を行わないことは違法(差別)である」ということをより明確に打ち出すためにも、損害賠償請求権については、差別禁止法の施行後、段階的に検討すべき事項として取り組んでいただきたいと考えます。

⑩ 既存の法律に点在する権利制限について
 成年後見人制度では、被後見人となった場合、判断能力がないということで選挙権が剥奪されています。障害者の保護という名の下に、本人が本来持つ権利を国が制限することは、障害者の意思決定支援の観点から見ても再考すべき内容です。障害者差別禁止法と併せ、既存の法律に点在する権利制限についても見直しをしてください。

以 上