独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構へ「聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について」を提出



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雇用支援機構訪問

 2013年1月18日(金)、連盟福祉・労働委員会は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構を訪問、聴覚障害者の労働及び雇用施策について要望書を提出し、意見交換を行いました。
 
写真:雇用支援機構訪問:松本福祉・労働委員会委員長
 

連本第120479号
2013年1月18日

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
 理事長  小林 利治 様 

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、昨年、国連・障害者権利条約の批准に向けて、障害当事者が参画する「障がい者制度改革推進会議」において審議されてきた改正「障害者基本法」が施行されました。
 貴機構におかれましては障害者権利条約及び障害者基本法の趣旨に基づき、来年4月から施行される「障害者総合支援法」が、「障害者総合福祉法の骨格に関する提言」と障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意文書を尊重した法となるよう、聴覚障害者の労働及び雇用の施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

1. 各企業が法定雇用率を達成できるように、また聴覚障害者の雇用を拡大できるように強力なバックアップを図ってください。
(説明)
 昨年6月の障害者の実雇用率は、一般民間企業が1.65%と増加しておりますが、まだ、法定雇用率が達成されていない状況が続いています。
 障害者の社会参加を後押しするためにも、すべての企業が法定雇用率を遵守することで、障害者の失業問題も改善され、社会参加が促されるものと思います。そのためにも下記の要望を実現してください。
(1)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものとするために、企業名を公表するだけでなく、雇用納付金の値上げ等、納付金制度の改善や雇用率のアップを強力に推進してください。

2. 各企業が積極的に聴覚障害者を雇用できるように障害者介助等助成金制度の中の手話通訳担当者の委嘱助成金を改善し、さらに使いやすい制度にしてください。
(説明)1回の助成額を1人3/4(6千円)ではなく、手話通訳料1回の3/4にしてください。年間の助成額の上限28万8千円を取払い、必要に応じ、手話通訳料に対して助成ができるようにしてください。
 職場においてすべての聴覚障害者の手話通訳要求に応じられるよう、等級制限撤廃や契約期間最長10年間で更新不可という制限を撤廃してください。大阪の場合、長く制度を利用している場合、10年間助成金を使った後はやむを得ず正規料金で通訳依頼されています。数としては、まだ多くはありませんが、10年の期間は厳しいと感じています。また、全国の利用状況を教えてください。
 また、助成金制度の拡充を図るとともに、企業に対して企業秘密等の理由で手話通訳を断ることのないよう手話通訳派遣事業所との契約締結をすすめる等指導してください。

3. 企業に『聴覚障害者のための職場定着推進マニュアル』等の普及を図り、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を指導してください。
(説明)聴覚障害者の職場定着を一層推進するためには、企業への理解だけでなく、当事者である聴覚障害者自身の努力も求められています。しかし、情報が行き渡らず、コミュニケーションが十分でないために誤解されやすく、職場定着がままならない聴覚障害者について理解してもらうために、『重度障害者(聴覚障害者)の職域開発に関する研究報告書』(2003年~2005年機構委託事業)の活用や『聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集』、『聴覚障害者の職場定着推進マニュアル』改訂版の普及などを図り、企業に聴覚障害者を受け入れる環境の整備を引き続き指導してください。

4. 障害者職業能力開発校に手話通訳者等を設置し聴覚障害者が学べる環境の整備を充実してください。
(説明)職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場となっております。ノーマライゼーション理念に添う職業教育環境を推進するためにも、機構で運営している2校が、すべての県立訓練施設や開発校のモデルになるよう手話通訳者や要約筆記者を設置する等、聴覚障害者が学べる環境を整備してください。

5.職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充を図ってください。
(1)聴覚障害者の就労支援強化のため、職場適応援助者助成金の「当該法人の支援を受けた障害者で就職した者が過去3年間で20名以上であること」の要件を緩和して、現在44ヶ所に設置されている聴覚障害者情報提供施設においても聴覚障害者の就労支援活動の強化のために実施できるようにしてください。
 「20名以上であること」について、聴覚障害者の場合は訓練施設のような母体がないので、3年間の実績を見ても他の障害に比べて低い為、基準を下げてください。
(2)聴覚障害者の職場定着を確実なものとしていくために、聴覚障害者が手話コミュニケーションの心配なく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話ができる」ことやジョブコーチ養成カリキュラムに「手話」を取り入れるようにしてください。
(3)聴覚障害者がジョブコーチ養成研修を受けられるように手話通訳者の配置等、情報保障を整備してください。

6.障害者職業センターにおける準備訓練・リワーク支援等のサービスに対して、聴覚障害者が利用しやすいように、手話通訳をつけて下さい。
(説明) 障害者の就労支援をしている障害者職業センターでは、聴覚障害者がサービスを利用する場合の情報保障が十分ではありません。コミュニケーションが十分でないために情報が行きわたらず、就労のための貴重な情報や訓練がきちんと身に付けることができません。
障害者職業センターで行われている各サービスに、必要に応じて手話通訳者を配置し、聴覚障害者が学べる環境を整備して下さい。

以   上