厚生労働省(自立支援振興室)へ「聴覚障害者の福祉施策への要望について」を提出



連本第110333号
2011年12月21日

厚生労働大臣
 小宮山 洋子 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話03-3268-8847・Fax.03-3267-3445
財 団 法 人 全 日 本 聾 唖 連 盟
理 事 長 石野 富志三郎

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上にご理解ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、国連・障害者権利条約の批准に向けて、改正「障害者基本法」が施行されました。また、障害者総合福祉部会において一年以上かけて審議されてきた「障害者総合福祉法」に関しては同法「骨格提言に関する総合福祉部会の提言」としてまとめられ、9月26日の「障がい者制度改革推進会議」にて了承、内閣特命担当大臣へ手交されました。
 貴省におかれましては障害者権利条約及び障害者基本法の趣旨に基づいて更なる聴覚障害者の福祉向上及び社会参加のための施策推進と、障害者にとって有効な「障害者総合福祉法」となるべくその策定をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

1.聴覚障害者情報提供施設について下記事項を要望します。

(1)全ての都道府県及び政令指定都市に平成24年度までに、聴覚障害者情報提供施設を設置するよう、指導・支援を図ってください。

(2)聴覚障害者情報提供施設における運営費の増額を要望します。

2.ろうあ者相談員について下記事項を要望します。

(1)地方自治体独自施策の「ろうあ者相談員」制度を「聴覚障害相談支援員(仮称)」制度として国の制度に位置づけて実施いただきますようお願いします。

〈説明〉東日本大震災後、貴省の通達によりろうあ者相談員が被災地支援のための公的派遣の対象となりましたことについて、御礼申し上げます。
 特にこのような災害後の聴覚障害者の生活再建・メンタル支援には全国のろうあ者相談員の連携が必要になります。
 緊急災害時のみならず、聴覚障害者の相談支援には聴覚障害者と同じ言語・コミュニケーション手段を持ち、当事者の特性や生活実態等を理解しており、更に相談支援のノウハウを身につけていることが大切です。
 現状ではろうあ者相談員は地域によってその条件や身分がまちまちであることから、相談支援の地域間格差をなくし、地域内だけでなく必要に応じて広域で支援できる体制となるよう、ろうあ者相談員制度と国の制度に位置付けて実施いただきたくよろしくお願い申し上げます。

(2)「ろうあ者相談員」制度が国の制度となるまでの間、ろうあ者相談員の専門性の確立と資質の向上を図るための研修事業費を新設して下さい。

3.地域間格差が大きく、ろう者に負担を強いる「障害者自立支援法」を廃止し、新たな「障害者総合福祉法」(仮称)を総合福祉部会提言に基づいて、障害者にとって実効性のある法律に策定してください。また、「障害者総合福祉法」(仮称)に下記について盛り込んでください。

(1)地域で自立した生活を営む基本的権利として「障害者は、自ら選択する 言語(手話など非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・ コミュニケーション支援を受ける権利が保障される」ことを規定して下さい。

(2)「コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」は、全国共通のしくみで 提供される支援と位置づけ、利用者に費用は求めないことと規定して下さい。

(3)15万~30万人の圏域を単位に設置される「総合相談支援センター」に手話通訳士有資格者やろうあ者相談員等を配置することを規定して下さい。

(4)総合福祉法(仮称)の適用範囲は、障害者手帳を所持する障害者に限定 することなく、現行の身体障害者程度等級表に該当しない聴覚障害者も コミュニケーション支援等を利用できるようにして下さい。

4.ろう重複障害者の豊かな地域生活のために下記の事項を要望します。

(1) ろう重複障害者の生活と職業について、施設入所者も含めた全国的な実態調査を実施し、その結果に基づき、一日も早くろう重複障害者が地域で生活できるよう施策を図るようにお願いします。

(2) ろう重複障害者施設を存続し、ろう重複障害者が希望する場所、形態で生活できるよう、社会資源の充実を要望します。

〈説明〉「障害者総合福祉法」(仮称)では障害者の地域移行を促進する内容になっており、その趣旨に基本的には賛同します。しかしろう重複障害者はコミュニケーション等の特性から集団で生活し、支援者にも専門性が求められます。この意味でろう重複障害者施設は彼らの生活の場として大変重要な役割を担っています。
 ろう重複障害者施設、グループホーム、ケアホームといった形態を充実させ、ろう重複障害者が安心して生活できる社会資源の充実を要望します。

以上