内閣府「障害者基本法の改正案」について



2011年3月2日

内閣府「障害者基本法の改正案」について

財団法人全日本ろうあ連盟

 内閣府より提示された「障害者基本法の改正について(案)」は、「障がい者制度改革推進会議」で多くの時間を費やして議論し、取りまとめた「第二次意見」とは大きく乖離しています。私たちろう者にとって非常に残念であり落胆の念を禁じ得ません。ここに遺憾の意を表し、下記の事項を「障害者基本法改正(案)」に盛り込むことを強く要求します。

1 障害者の権利保障を明記すること
 「改正案」は、障害者の権利保障ではなく国及び地方公共団体の努力義務を定めているに過ぎない。これでは基本的人権の保障・障害のない国民と同様の情報獲得が不十分という聴覚障害者の現状を変えることは困難である。
 障害者基本法の改正は、障害者が福祉施策の客体ではなく、権利の主体であること、かつ社会モデルの視点を明確にし、障害の種類と程度を問わず障害者の権利を保障するための施策を実施する規定とすること。

2 合理的配慮の欠如が差別であることを明記すること
 「1」と同様に、「改正案」は、障害者の権利保障ではなく努力義務を定めているに過ぎない。また定義が抽象的である。聴覚障害者、盲ろう者の社会参加に必要な仕組み(例:手話通訳者や要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員の配置と派遣等、対象者に合わせたコミュニケーション手段の提供)が強制力のある権利として保障されないのであれば、聴覚障害者、盲ろう者の社会参加に結びつくことは困難である。
 障害者権利条約の規定に基づいて、差別の定義及び合理的配慮の定義を行い、合理的配慮を行わないことが差別であることを明記すること。

3 情報アクセス・コミュニケーション保障を明記すること
 「改正案」には障害者の情報アクセスや、言語、コミュニケーション保障の記載がまったくない。これでは聴覚障害者をはじめとする情報アクセスやコミュニケーションに困難がある障害者の社会参加の実現には結びつかない。
 第二次意見書にまとめられた「手話等の非音声言語が言語であることを確認し、障害者が、必要な言語を使用し、必要なコミュニケーション手段を利用するという障害者権利条約における『表現及び意思の自由についての権利』を有することを確認すること」を反映する規定とすること。なお、「改正案」にある「可能な限り」という文言は、「障害のない人と同等に」と言う文言に変えること。

 以上、全日本ろうあ連盟は、聴覚障害者、盲ろう者の社会参加の保障が権利として保障される公的制度の実現を目指す立場から、障害者基本法の改正にあたっては、障がい者制度改革推進会議の意見を踏まえ、障がい者制度改革推進本部設置の趣旨に沿った内容となることを強く求めます。

以 上