(独)高齢・障害者雇用支援機構へ「聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望」を提出



連本第090425号
2009年10月20日

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
 理事長 戸刈 利和 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 石野 富志三郎

聴覚障害者の労働及び雇用施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私たち聴覚障害者の福祉向上については、深いご理解とご配慮をいただき、厚くお礼申し上げます。
 さて、国連では昨年5月3日、障害者権利条約が発効しました。日本においても批准に向けて、国内法制度の見直しが求められているところであり、貴機構におかれましてもこの条約をふまえた聴覚障害者の労働及び雇用の施策推進をお願いしたく、下記の通り要望いたします。

  1. 各企業が法定雇用率を達成できるように、また聴覚障害者の雇用拡大ができるように強力なバックアップを図って下さい。
     
     昨年6月の障害者の実雇用率は、一般民間企業が1.59%と法定雇用率が達成されていない状況が続いています。
     法定雇用率を遵守しないと企業名が公表されるなど企業の社会的責任が問われる中、すべての企業が障害者の社会参加を後押しするためにも、法定雇用率を遵守することで、障害者の失業問題も改善されるものと思います。そのためにも下記の要望を実現して下さい。
     
    (1)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものとするために、企業名を公表するだけでなく、雇用納付金の値上げ等、納付金制度の改善や雇用率のアップを強力に推進して下さい。
     
  2. 各企業が積極的に聴覚障害者を雇用できるように障害者介助等助成金制度の中の手話通訳担当の委嘱制度を改善し、さらに使いやすい制度にして下さい。
     
     必要としている聴覚障害者すべての手話通訳要求に応じられるよう、等級制限撤廃や10年間の支給期間を、「聴覚障害者が雇用されている間、聴覚障害者の求めに応じ、利用が出来ること」に改正し、助成金制度の拡充を図るとともに、企業に対して企業秘密等の理由で手話通訳を断ることのないよう指導してください。
     
  3. 企業に職場定着推進マニュアル等の普及を図り、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を指導してください。
     
     情報が行き渡らず、コミュニケーションが十分でないために誤解されやすく、職場定着がままならない聴覚障害者を理解してもらうために、『重度障害者(聴覚障害者)の職域開発に関する研究報告書』(2003年~2005年機構委託事業)の活用や職場環境改善好事例集や聴覚障害者職場定着推進マニュアル改訂版の普及などを図り、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を引き続き指導して下さい。
     
  4. 障害者職業能力開発校に手話通訳者等を派遣し聴覚障害者が学べる環境の整備を充実して下さい。
     
     職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場となっております。ノーマライゼーション理念に添う職業教育環境を推進するためにも、すべての新規訓練施設や開発校へ手話通訳者や要約筆記者の派遣ができるように図って下さい。
     
  5. 職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充を図って下さい。
     
     ジョブコーチ支援事業が本格化し、様々な障害者に活用され徐々に成果を挙げております。
     この事業を現在37ヶ所に設置されている聴覚障害者情報提供施設において聴覚障害者への就労支援として実施できるようにして下さい。また聴覚障害者の職場定着を確実なものとしていくために、聴覚障害者が手話コミュニケーションの心配なく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話ができる」ことやジョブコーチ養成カリキュラムに「手話」を取り入れるようにしてください。また、聴覚障害者がジョブコーチ養成研修を受けられるように情報保障を整備して下さい。
     
  6. 聴覚障害者のための職場定着推進マニュアル策定を検討してください。
     
     聴覚障害者の職場定着を一層推進するためには、企業への理解だけでなく、当事者である聴覚障害者自身の努力が求められています。また、このようなマニュアルは人事担当等、社員を教育する立場の健聴者としても非常に有効なものになると考えます。聴覚障害者のための職場定着マニュアル策定について検討の場を設けて下さい。
     

以   上