(独)高齢・障害者雇用支援機構に「聴覚障害者の福祉施策への要望」を提出



連本第070321号
2007年9月10日

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
 理事長 荒川 春 様

東京都新宿区山吹町130 SKビル8F
電話 03-3268-8847・FAX 03-3267-3445
財団法人 全日本聾唖連盟
理事長 安 藤 豊 喜

聴覚障害者の福祉施策への要望について

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 日頃より、私ども聴覚障害者の福祉向上については、深いご理解とご配慮をいただき、厚くお礼申し上げます。
 さて、障害者自立支援法施行に伴う障害者の雇用促進のための検討が行われているところでありますが、昨年12月13日国連総会にて障害者権利条約が採択されました。今後はこの条約をふまえた聴覚障害者の労働及び雇用の施策推進が求められているところであり、下記の通り要望いたします。

  1. 各企業が法定雇用率を達成できるように、また聴覚障害者の雇用拡大できるように強力なバックアップを図って下さい。
    (説明)
     昨年は障害者の就職件数が過去最高の43,987件と初めて4万件を超えるなど明るい話題をもたらしました。それは障害者の「働きたい」という意欲の高まりと企業とハローワークの取り組みの強化とがあいまって、就職件数が伸びたものと思います。
     昨年6月の実雇用率は1.52%と前年に比べて0.03ポイント上昇したものの、中小企業の実雇用率は引き続き低い水準にあり、特に100〜299人規模の企業においては、実雇用率(1.27%)が企業規模別で最も低くなっています。法定雇用率未達成企業のうち、1人不足企業が58.7%と過半数を占め、障害者を1人も雇用していない企業が未達成企業の64.1%となっているなどの課題が残っています。
     法定雇用率を守らない企業名が公表されるなど企業の社会的責任が問われる中、すべての企業が障害者の社会参加を後押しするためにも、法定雇用率を守れば、障害者の失業問題も改善される部分があると思います。そのために下記の要望を実現して下さい。
    (1)「障害者の雇用の促進等に関する法律」を実効性のあるものとするために、企業納付金のあり方や雇用率改善を図って下さい。
    ・雇用率を達成し、また平成20年までに障害者雇用数を60万人と設定した「新障害者基本計画」を実現させるために、企業名を公表するだけでなく、300人未満の企業からの納付金の徴収、雇用納付金の値上げ等、納付金制度の改善や雇用率のアップを強力に推進して下さい。

    ・各企業が積極的に聴覚障害者を雇用できるように障害者介助等助成金制度の中の手話通訳担当の委嘱制度を改善し、さらに使いやすい制度にして下さい。
    ① 等級制限をなくし、10年間の支給期間の延長など聴覚障害者の職場での情報・コミュニケーションを十分に保障していくものにして下さい。
    ② 企業が手話通訳者を設置できるようにするための助成金としての活用の検討をして下さい。
    ③ 情報が行き渡らず、コミュニケーションが十分でないために誤解されやすく、職場定着がままならない聴覚障害者を理解してもらうために、職場環境改善好事例集の普及や聴覚障害者職場定着マニュアルの改訂版の作成など図り、聴覚障害者を受け入れる環境の整備を引き続き指導して下さい。特に企業に対して手話通訳を企業秘密等の理由で断ることのないよう指導してください。

  2. 障害者職業能力開発校に手話通訳者等を派遣し聴覚障害者が学べる環境の整備を充実して下さい。
     職業能力開発校は、新たに技術を身につけ、就職できるようにするために大切な場になっております。ノーマライゼーション理念に添う職業教育環境を推進するためにも、すべての新規の訓練施設や開発校への手話通訳者や要約筆記者の派遣ができるように図って下さい。

  3. 職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の拡充を図って下さい。
     ジョブコーチ支援事業が本格化し様々な障害者に活用され、徐々に成果を挙げております。
    この事業を現在36ヶ所に設置されている聴覚障害者情報提供施設における聴覚障害者への就労支援に使えるよう充実させて下さい。また聴覚障害者の職場定着を確実なものとしていくために、聴覚障害者が手話コミュニケーションの心配なく、職場定着指導や職業相談などが受けられるよう、ジョブコーチの条件に「手話ができる」ことやジョブコーチ養成のカリキュラムに「手話」を取り入れられるようにしてください。

  4. 「聴覚障害者職域拡大等研究調査事業」報告書を基づいて職場定着マニュアルの改訂版を発行してください。また、聴覚障害者のための職場定着マニュアル策定も検討してください。
     上記事業は3年間、当連盟に委託され、聴覚障害者の就労の現状を把握し分析されたものを報告書として提出しております。この報告書は今後の聴覚障害者の職場定着に関して様々な手段を紹介し、大きな意義を持つものです。この報告書を、さらに聴覚障害者職域拡大につなげていくためにさらにわかりやすい職場定着マニュアルの改訂版として発行できるようにして下さい。
     また職場定着のために企業だけでなく、当事者である聴覚障害者自身の努力が求められています。聴覚障害者のための職場定着マニュアル策定について検討の場を設けて下さい。

以 上