厚生労働省へ「今後の障害者雇用促進制度の在り方」について要望書を提出



 2017年11月24日(金)、厚生労働省/第5回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会において、関係団体ヒアリングが開催され、当連盟からの意見書(PDF:279KB)が参考配布されました。当日は厚生労働省の担当者が意見書の概要(下記枠内)を読み上げました。
 2018年夏頃に、(1)障害者雇用納付金制度の在り方、(2)障害者雇用率制度の在り方等について、提言がまとめられることになっています。

厚生労働省/今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(厚生労働省HP)
2017年10月6日、厚生労働省へ聴覚障害者に対するヒアリングについて要望書を提出
2017年11月24日、第5回参考資料:一般財団法人 全日本ろうあ連盟 提出資料(PDF:279KB)

2017/11/24 第 5 回 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(意見書の概要)

団体名: 一般財団法人 全日本ろうあ連盟

 聴覚障害者の就労先は、1976年の身体障害者雇用促進法(現障害者雇用促進法)改正による障害者雇用の法的義務化や、医師法などの欠格条項の撤廃などを受けて、専門性の高い職域への進出が進んでいるが、担当業務が高度化し、会議や研修、外部との折衝など従来以上に広範で複雑なコミュニケーションが求められるようになっている。
 このため、従来の就職の問題に加え、職場定着上の問題に関してもますます手厚い支援が必要となっているが、聴覚障害者に対する公的な就労支援体制は依然として整っていない。
 例として、各地のハローワークの障害者担当部門や障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターといった障害者を対象とした就労支援機関には、聴覚障害者の就労問題に的確に対応できる専門家はほとんどいないため、聴覚障害者やその雇用企業は就労上の問題に直面しても適切な助言を得ることが難しい状況にある。このため、ハローワークにおいて聴覚障害者支援の専門性を備えたスタッフの育成・配置また現行の手話協力員制度のさらなる拡充や聴覚障害者に対応できるジョブコーチの育成など、障害者向け就労支援機関における聴覚障害者の支援体制の構築が大きな課題となっている。
 さらに、聴覚障害者が職場で手話通訳者など業務上必要となる支援を受けられるようにするための公的な支援制度も十分に整っていない。このため、聴覚障害者に対する業務上の支援は企業の自発的な対応に任されており、企業における聴覚障害者雇用促進上の大きな負担となっている。特に高齢・障害・求職者雇用支援機構による助成金制度として、「手話通訳担当者の委嘱助成金」をめぐっては、年間利用額の限度額が低額に抑えられている上に、利用可能期間も10年に限定されており、聴覚障害者のキャリアアップや長期就労を効果的に支援する制度とはなりえていない。さらに、同助成金において要約筆記者は対象外とされており、文字による通訳を必要とする多くの聴覚障害者のニーズに対応できていないという致命的な問題も抱えている。こうした制度上の不備をふまえた適切な改善が求められている。
 身体障害、知的障害、精神障害、という3つの大きな枠組みを前提として進められてきた雇用政策の結果として、身体障害の区分に包含される各種の障害者に対するそれぞれの障害特性に応じた適切な支援の取り組みが進んでいない。とくに、現行の障害者雇用率制度、障害者雇用納付金制度は、障害者雇用の量的側面の拡大を促す一方で、能力発揮やキャリアアップのしやすさといった質的側面の向上にはつながっていない。さらに、雇用管理上の負担が少なく雇いやすい障害者の雇用を促す一方で、雇いにくい特定の種別の障害者の雇用を十分に促せていない。特に最近の施策当局や企業の姿勢を見ると、身体障害者の雇用促進が置き去りにされ、特に視覚・聴覚障害者の雇用促進が見過ごされているような観があり、危機感を覚えている。
 今後の施策の方向性として、障害者雇用納付金制度について、合理的配慮の提供状況や障害者の昇進状況を障害者雇用納付金に反映するシステムを導入するなどの工夫により、企業における障害者雇用の質的側面を実効的に改善していくことが必要である。さらに、重要なこととして、障害種別において生じている雇用格差を解消できるように、障害種別ごとに雇用率を算出する方式の導入することにより、各障害別の雇用状況を目視できるよう、施策当局・企業に意識させることが重要である。

以上