フォトギャラリー16

インフォメーション > フォトギャラリー(目次) > フォトギャラリー

朝日新聞に、「ゆずり葉」の記事が掲載されました。
(2008年9月5日付夕刊)


手話で演じるきずな ろうあ連盟が映画
長男に障害 今井絵理子さんも

全日本ろうあ連盟が創立60年を記念して映画を作る。タイトルは「ゆずり葉」。監督・脚本をはじめ、半数以上の役はろう者が演ずる。長男(3)に聴覚障害がある歌手でSPEEDのメンバーの今井絵理子さん(24)も主人公のかつての恋人役で出演する。来春の完成を目指して1日から撮影が始まった。
 物語は、健聴者の恋人を病気で亡くした過去を背負う58歳のろう者が主人公。この主人公が恋人の死で中断していたろう運動の記録映画の製作に再度立ち上がるという設定で、人と人のつながりの大切さが描かれている。
 監督・脚本の早瀬憲太郎さん(35)は先天的に耳が聞こえない。東京都内で経営する学習塾で将来の夢をもてないろうの子供が多いことにショックを受け、先輩たちの姿を見せたいと2年前に映画制作を提案した。昨年、創立60年を迎えたろうあ連盟が記念映画にすることを決めた。
 だが、早瀬さんが本格的な映画の脚本を書くのは初めて。ろう重複障害者と家族の姿を描いた「どんぐりの家」の作者で漫画家の山本おさむさんの指導を受け、1年半かけて書き上げた。「ゆずり葉」は河合酔茗の詩から思いついた。障害を理由に医師などを認めない「欠格条項」見直しの原動力となり、日本で初めて聴覚障害者で薬剤師免許を取得した妻の久美さん(33)の話も盛り込んだ。
 早瀬さんは「今の社会で忘れられている“ゆずること”と“ゆずられること”の大切さを聞こえない人にも聞こえる人にも楽しめる映画にしたい」と意気込む。
 今井さんは早瀬さんの塾で5月から手話を学び始めたのが縁。出演依頼に「息子に見せたい映画」と快諾した。生後3日で長男に聴覚障害があることがわかり、最初は泣き続けたが、あるとき寝顔を見て「この子は私を選んで生まれてきた。耳のことで泣くのは息子に失礼だ。母の私は笑顔でいる」と誓ったという。
 今回、長男のことを公表した今井さんは「息子を通して障害は個性だということがわかった。障害は不便だけど不幸じゃないよ、ということを多くの人に伝えたい」。
 映画では出演者のほとんどが手話をしながら演技する。現場では手話通訳者を介してろう者と健聴者が意見を交わし、撮影が進められている。一般劇場公開も目指す。
 ろうあ連盟の久松三二・本部事務所長は「映画を通して人とのきずなや家族の大切さを再確認してもらいたい。ろう者の置かれた状況も理解してもらえれば」と話す。連盟は制作費として7千万円を目標に寄付を募っている。

2008年(平成20年)9月5日 金曜日 朝日新聞(夕刊)掲載